9月 2/3
おはようございます、私です。
平凡な日常を過ごしてたら、朝晩はちょっぴり寒くなってきたので、短い夏はもう終わりだね。
苔庭のもみじ、緑の葉はしっかり堪能したので、紅葉が楽しみです。
野菜ちゃんたちも、部屋を三つに分けてから順調に育ってます。
開花したものはせっせと受粉作業して、キュウリなんかはちっちゃな実が付いてます。
葉野菜も、もう半月ほどで収穫できそうです。
育成温度、大事だね。
ソード君も週に一、二回顔出してくれてます。
洗濯機と掃除機の設計図面持ってっちゃったけど、また忙しくならない?
だって、スライム式浄化槽が王都で話題になって、スライムの出荷待ちがすごい事になってるからって、兵士さんたちと新しいダンジョン探してるらしいんだ。
うちのダンジョン使っていいよって言ったんだけど、私のおうち近くには賢者の件がバレないように極力人を寄せたくないから要らないって言われたの。
私が納品するのも、ダンジョン使ってるのがバレるからダメだって。
後ね、マギ君が核を使った薬草栽培始めたらしいんだけど、枯れたり黒薬草になったりで四苦八苦してるらしい。
何とか出来た濃緑薬草も、薬師の魔力が弱くってポーションに出来ないんだって。
確かに、色が濃くなるほどこちらの魔力に対して抵抗力上がるから、レベルと魔力操作低い人だと無理かもね。
だから、王都近くの直轄領にあるダンジョンをトラップ化する工事中らしい。
でも、トラップの仕組みがバレないように信用できる少人数で工事してるから、まだ、しばらくかかるそうな。
ダンジョンはあちこちにあるけど、秘密守らなきゃいけないから大変なんだよね。
ソード君の言う通り、この近くで新しいダンジョン見つかるのが、一番秘密守りやすいよね。
…中央の森と西の森、奥の方に行くとたまにスライムいるから、まだダンジョンあるよね。
何も協力しないのも申し訳ないから、私も探してみよう。
よし、今日はお弁当持ってダンジョン探ししてみよう。
まずは巡回ルート無視して、一直線に西の森奥に。
縄張り変えたクマは1匹だったのか、今日は会わないね。
ここからは山脈を目印にして、北上します。
レベルアップで私の探知領域は20m近くになってるので、探知全開で進みます。
しばらく進んだら魔力探知に反応が出ました。
これ、結構魔力大きいな。
またクマかな?
…おうふ、ヘラジカの団体様だよ。
相変わらずでっかいなー。
馬と比べたら、成馬がポニーに見えちゃうよ。
こいつら角でスライムやれるから、レベル上がってるのかもね。
大きい奴なんて反応がレベル3か4の人並みだよ。
こんなとこでダンジョン見つかっても、危なくて来れないよ。
こっそりと東に移動しよう。
ヘラジカの団体さんから離れて東進してたら、スライムいました。
さくっとやっつけて更に東進。
あ、またスライムだ。
東に進むにつれ、スライムに遭遇する頻度が上がってきました。
でも、薬草の反応無いからダンジョンはなさそうだね。
スライム、どっちから来てるんだろう。
山脈の見え方と太陽の方向からすると、そろそろ中央の森奥の岩石地帯を超えた更に奥あたりまで来ました。
ちょっとお腹が空いてきたので、高い木に登って枝の上で昼食です。
ベーコンサンドかじりながら遠くを見ると、木と木の間に岩が見え隠れしてる。
あれ、中央の森奥の岩石地帯だよね。
知らない場所に長居するのは危ないから、岩石地帯通って帰ろうかな。
するすると木を降りて岩石地帯に向いて歩き出したら、結構な頻度でスライムに遭遇します。
あ、薬草反応もありました。
ここ、ダンジョンあるよね。
スライムがやってくる方に向かってあたりを探りながら歩いてたら、結構大きな穴を発見しました。
中央の森から見ると、ちょうど岩石地帯が終わったあたりの急斜面に、縦3m横2mほどの穴が開いてます。
中を覗いてみると、壁が光ってるからダンジョン確定です。
これ、岩石地帯の下がダンジョンなんじゃない?
スライム反応も結構あるので、このダンジョン、大きいかもしれません。
さすがに一人で入るのは危ないので、入口付近に目印付けたら帰ろう。
近くの土を使って長めの竿と旗を作ります。
旗も土製だからはためかないけどね。
急斜面の上にジャンプしながら登って、ダンジョン入口の上の岩に旗をぶっ刺して固定します。
これで次に来ても発見は容易なはず。
よし、岩石地帯パルクールして帰ろう。
ここ、岩石地帯って言うより完全に岩山だな。
もう、パルクールじゃなくてボルタリングじゃなきゃ進めないし。
中央の森との間に、土がほとんどないトゲトゲな岩山が続いてます。
高い岩山には、ダンジョン入口上の旗と東の森奥が直線になるように、目印の旗を立てときます。今度は石の旗です。
これれで方向は分かるよね。
かなり進んできたけど、たまに薬草反応あるから、地下にはダンジョン続いてるっぽい。
しかし、ダンジョン見つけたはいいけど、来るの大変だね。
回り込むにしても、西の森奥はやばいヘラジカいるし、東の森からは岩石地帯が邪魔してかなりの大廻りになりそう。
まあ、ソード君に報告して相談しよう。
やっと中央の森に着いたけど、疲れたよ。
距離的には1km無いくらいだと思うけど、アップダウン激しすぎ。
抜けるのに一時間くらいかかっちゃったよ。
街に行く前に中央の森ダンジョンに寄ったら、ソード商会の人がスライム檻詰めしてたのでソード君の居場所聞いてみた。
今日は商会にいる予定らしいので、街まで報告に行こう。
軽く駆け足で街に来たけど、疲れは回復してきたし、三十分くらいで着いた。
中央の森からだと5kmくらいあるはずなのにね。
比較すると、岩石地帯の難所ぶりがよく分かったよ。
ソード君はちゃんと商会にいたので、簡易的な地図を描いて説明しました。
「まじか、そんな近くに在ったなんて。東の森はかなり奥まで行ったんだが、しらみつぶしに探しながらだから時間掛かってたんだ」
「でも、私でも疲れるような岩山あるから、簡単には行けないよ」
「ああ、中央の森奥は俺以外行けそうになかったから断念したんだ。でも、在るのが確定なら何とか行けるようにしなきゃな」
「地下道はダンジョンにぶつかるだろうからダメだし、岩山くり抜きながら地上に道作るしかないね」
「お嬢と俺で道作るか」
「いや、大人も通るんだから、背の高い人も必要だよ」
「あー、それもそうか。じゃあ、兵士の兄ちゃんも連れてくか」
「そうだね、お兄ちゃんなら手を伸ばせば2m以上掘れるね。でも、岩だから石削り用の魔道具作らなきゃね」
「材料は商会にあるの使っていいから、作ってくれるか?」
「いいよ。今日中に作っとくよ」
「じゃあ、明日晴れてたら、昼に中央ダンジョン前に集まろう」
話がまとまったので、ロッド型の筐体と水晶を三本貰って帰りました。
戻ったら、まずはポーション作り。
メンバー全員が魔力量多いので、5.5ポーションを九本、予備に9.0ポーションを三本作りました。
続いて、削岩用の水晶も二本作って筐体に取り付けました。
ついでにレンガ作成ロッドも作っとこう。
後はスライムの核入れに核詰めて…ゴーグルとツイスト式のペンライト(捻るとL型になるやつね)も作ろう。
あれこれと準備してたら夜になったので、明日に備えて早めの就寝です。
翌朝は晴れ。
早起きして良かった、作業出来るね。
ササっと日課済ませたら、お弁当作り。
箱型オーブン作ったから、パン焼けるんだー。
一週間分まとめて焼けるように、結構大型だよ。
調子こいてフルーツ酵母も作っちゃった。
新鮮な卵が手に入らないからマヨネーズ作れないけど、チーズとかで代用しちゃいます。
ピザパン、焼きそばパン、フランク巻き、コーンチーズパン、BLTサンド。
頑張って作るよー。
お弁当出来たら森の巡回に出発です。
今日は採取はせずに、巡回だけしながら中央の森ダンジョンに行くつもりです。
東の森、異常なし。スライムもいない。
ちょこっと両親のお墓にお参りしたら、中央の森へ。
森奥を重点的に巡回してたら、スライム一匹発見。
サクッと討伐しました。
最近は森でスライムに遭遇するのも稀で、森の動物たちが急速に戻って来てます。
ダンジョン三つもトラップ化して、スライムが森に出れなくなったおかげみたいです。
ダンジョン前に着いたら、もうソード君たち来てた。
「ごめん、遅れた?」
「いや、スライム檻詰めするのに早めに来たんだ。もう終わったから昼食べたら行くか」
おお!ホットドッグだけじゃなくて串肉もある。
狩りでお肉が手に入るまでに、森の環境が回復したんだね。
私も早朝からの力作を並べたら、案の定ソード君とお兄ちゃんにせがまれた。
元々あげるつもりでいっぱい持ってきたんだけどね。
ソード君とお兄ちゃん、幸せそうな顔でイスに座ってダレてます。
余るだろうから夕食に回そうと思ってたのに、全部無くなっちゃった。
君らホットドッグと串肉、二つずつ食べてたよね。
食いすぎ!
背もたれに寄りかかって空見て呆けてるけど、森の中で気を抜きすぎだよ。
「お嬢、後でレシピ頂戴」
うわ、満腹だろうに、まだ食べること考えてるよ。
男子の胃袋怖え―よ!
ダレる二人を叱咤して、何とか森奥で作業開始です。
私が立てた目印の旗の下に向けて、邪魔な岩を崩しながら、1mほどの幅の道を作っていきます。
大きな岩もすっぱり水平にカットして、道の床に。
もっと大きな岩は、くり抜いてトンネル化。
へこんだ部分には砕いた岩をレンガ化して敷き詰め、平坦な道にしていきます。
300mほど進んだあたりからは岩山が乱立してるので、お兄ちゃんに魔道具でトンネル化してもらいます。
そろそろ時間切れ。
本日の成果は350mほど。
開通まで、あと二日はかかるね。
帰り道に相談してたんだけど、私は明後日の午後に来ることになった。
明日明後日は午前中から工事して開通させるから、トラップと待機所作りを手伝って欲しいんだと。
私だと低いトンネルしか掘れないから、開通するまでは出番無いよね。
登り道の途中で別れておうちに帰ってきたら、もう夕方でした。
埃っぽいからお風呂入ろう。
二日後、朝からお手伝いに行ったら、すっかり道が出来てました。
トンネルには、ちゃんとドアが付いてます。
このドアは、道を肉食獣やスライムに使われないようにって話してたやつだね。
きちんとのぞき穴代わりのスリットまで入ってるね。
道の終わりは急斜面で下ってるから、縄梯子になってる。
下には建材用なのか、レンガが山積み。
その横には一輪車。
道にレンガ置いてなかったから、一輪車で全部回収したんだね。
あ、ソード君、もうトラップ作り始めてる。
「ソード君、来たよ。私は、何すればいい?」
「良かったら待機所作って欲しい。俺は商会の奴らと兵士にトラップの作り方教えるから」
「待機所は好きに作っていいの?」
「一応、兵士四人が仮眠出来て、いざって時には籠城出来たらどんなでもいいぞ」
「わかったー」
ふむ、好きに作れとな。
しばし周辺状況を観察。
…うん、一階は急斜面に埋まるようにして、二階の屋上が道と繋がるようにしよう。
ミニ砦だね。
縄梯子引き上げたら、遠慮なく岩山削っていきます。
ん?この岩山、砂岩か?めっちゃ削りやすい。
砦型だと豆腐ハウス二段積みするだけだから、構造は簡単だね。
待機所と仮眠室で八畳二段積みでいいね。
シャー
有り余る魔力でガンガン削って石材化。
一階は三面岩山に埋まっちゃうから、外に出る面は外壁硬化して20cm厚にしよう。
あ、外のレンガ、石レンガも結構あるね。
補強とデザイン兼ねて、外壁に使おう。
にゃははー、砂岩って加工しやす過ぎ。
粘土は水抜いて固めなきゃいけないけど、切っただけで石材になってるし。
しかも、切るのもめっちゃ楽。
お昼までに二階の壁まで出来ちゃった。
「うおい!誰が砦作れって言った。レンガ二重に積んだ一部屋でいいんだよ!」
「あ?…ソード君って、ヒグマやヘラジカに会った事無いの?」
「は?ねえけど…」
「レンガだと二重じゃ崩されるよ」
「え?…マジ?」
ほら、周りの兵士さんたち、うんうん頷いてるよ。
「大マジ。ここってかなり奥だから、絶対来るよ。今は大勢で騒いでるから近づいてこないで様子見してると思う」
「……そ、そうなのか、俺が悪かった。ついスライムだけだと思っちまった。兵士の安全第一で頼む」
「うん、トラップの処理層へも、地上通ったら危ないから地下道にするね」
「お、おう、任せた」
みんなでお昼食べたら作業再開です。
トラップは完成したみたいなので、兵士さんたちがレンガ三重にして囲ってます。
ソード君に地下室と地下道任せて、私は屋上と道への橋づくり。
距離は短いけど、アーチ式の橋にして石門も付けました。
さて内装をと思ったら、内装は兵士さんたちの魔力制御の練習がてら、自分たちでやるからいいそうです。
時刻は午後三時前。
そろそろ撤収準備に入ってます。
「ソード君、帰り道遠回りに付き合ってくんない?」
「ん?いいけど、何だ?」
「辺境のお勉強」
お昼のヘラジカやクマの一件で、納得はしてくれたけどいまいち実感してないみたいだから、実際に見てもらおうと思ってね。
ここはヘラジカやクマ、狼が支配する領域だから、多分会えるから。
ソード君と私の足なら、西の森奥経由でも時間はあるしね。
みんなと別れ、二人して森の中をスライム倒しながら疾走します。
西の森奥手前で探知に反応があったので、こっそり反応に近づきます。
おー、ナイスなタイミング。
クマと狼の一団が戦ってます。
風下に回ってしばし観戦。
あ、ソード君、面白い顔。
クマが飛び掛かって来た狼の頭を吹き飛ばしました。
首ちょんぱです。
ソード君、何か言いそうなので、手で口を塞いでシーのポーズで黙らせます。
よし、クマの脅威は見たね。
次はヘラジカだね。
私の探知、正確に探知できるのは20mくらいだけど、それ以上でも強い反応はぼんやりと方向くらいは分かるようになってきたんだよね。
例のレベルアップヘラジカ探して移動開始。
ぽつぽつスライム反応あるけど、進行方向のだけ討伐して進みます。
お、これかな?
ちょっと遠そうだけど、ダッシュで向かいます。
いましたね、ヘラジカ家族。
でも、こないだ見たのよりレベル高そうなんだけど…。
あはは、また面白い顔してるー。
笑わせないでよ、声出したら気付かれちゃうじゃん。
よし、目的終了。
西の森に向けてこっそり移動します。
西の森の中ほどまで来たので、小声でのおしゃべり解禁です。
「実際に見てどうだった?」
「…何だよあれ、腕の一振りで相手の首もぐとかどんな怪力だよ。ヘラジカも馬鹿みたいにでかいし」
「あー、訂正一つ。ヘラジカの方が強いからね」
「は?大きいけど草食だろう?」
「うん、草食。でも、さっきのクマはレベル2くらいで、でかいヘラジカは多分レベル5」
「え?…動物ってレベルアップすんのか?」
「ソード君も動物じゃん」
「え、あ、そ、そうなのか。じゃあ、あの大きさでレベル5ってことは…、人間が太刀打ちできるわけねえ!」
「声は抑えてね。森は彼らの領域で、私たちは彼らにとって害獣なんだから」
「あ、すまん。でも害獣ってさすがに…」
「こう考えて。森は彼らの領地。私たちは彼らの領地に無断侵入して森の恵みを頂いてるの。出合ったら縄張り争いするしかないの」
「…領地を争うなら、人間同士でも殺し合いだな。森ではなるべくしゃべるなってお嬢に注意された事、今実感した。あ、じゃあさっきの砦って…」
「うん、相手が友好的じゃなきゃ襲われるね。だからしっかり強化したの。出来たら砦からの道、周り囲ってトンネルみたいにして、中間の大きな岩山のこっちまで繋げた方がいいよ。今は獲物や食べ物が無いから岩石地帯に猛獣来ないけど、人っていう獲物が行き来しだしたら危ないよ」
「あんなトンデモ生物に友好を求めるなよ。来たら死人が出るわ。わかった、ちゃんと安全策考える。…うちの領地だから勝手していいと思ったのが間違いだったか」
「わかってくれて嬉しいよ。でも、こっちも動物だから、縄張り争いはしていいと思うよ」
「国境じゃあ人同士が縄張り争ってるけど、辺境は相手が猛獣ってことか。しかも向こうに先住権ありかよ」
「おお、すごいよ。ナイスな例えだね」
「褒められてる気がしねえ…」
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