8月 2/3

祝福来た。

私、今日からレベル11です。


今日も朝から日課を終え、森を巡回してからポーションとお薬作りました。

お昼摂って少しまったりしたら、ガゼボ作ります。


イメージでは丸いガゼボだったんだけど、円形は作るのがなぁ…。

なので八角形のガゼボです。

同じサイズの板作って、張り合わせれば出来るからね。


まずは地面に正方形を描きます。

対角線を二本引き、交点を求めます。

四角の四つの角を中点にして、半径が交点の長さになる1/4円を紐を使って描きます。

四角形と交わった部分が八角形の角なので、直線引いて八角形の出来上がり。


次に八角形の一辺を底辺にして、四角形対角線の3/4の位置が頂点になる三角形の壁を八枚作ります。

三角壁を地面の八角形に沿って張り合わせれば、とんがりお屋根の出来上がり。

後はひさしになる部分を三角形の底辺に取り付ければ、屋根部完成。


続いて八角形の一辺の長さに合った高さ80cmの壁を八枚作ります。

そして2.5mの柱を八本作り、それぞれに色塗り代わりの蒸着を施します。


いよいよ組み立て。

先に屋根に柱を取り付けて、屋根を立てます。

続いてベース部になる四角い壁を八枚張り付ければ完成です。


屋根は濃い茶色、柱は白、ベースは赤レンガ調です。

おうちちゃんとお揃いにしてみました。


…芝生っぽい刈り込んだ草の上に、ぽつんと立つガゼボ。

周りが寂しすぎる!

明日こそは森の奥行くぞ。


暗くなってきたので、ガゼボ用のベンチとテーブルはおうちで作りました。

材料の木、例の端材は野外で使うにはもったいなすぎるので、薪を合成しちゃいました。


あーさー。

やった、晴れた!採取に行けるよー。


そそくさと日課を終え、岩山ダンジョンの岩石地帯を近道に使い、やってきました西の森奥。

リンゴベリーやブルーベリーがいっぱいあるー。


せっせと掘ってたら魔力感知に反応が…。

ダンジョン三つともトラップ化しちゃったから、ここ最近スライムに会ってなかったんだけど、森で会うの久々だなー。


………クマやん。

体長2.5mくらいのヒグマが、木に爪立ててる。

多分倒せる気はするけど、持って帰れない。

倒した獲物は有効に使うのが辺境の常識だから、持って帰れないのはまずい。

魔法使えば持って帰れそうだけど、今日はベリーちゃんが優先なんだよ。


よし、さっさとベリー持って逃げよう。

根っ子周りの土ごと掘って固めたベリーちゃん、四つ抱えて猛ダッシュです。

数分走ってから後ろを確認。

…よかった、追って来ないね。


西の森奥はベリーの宝庫だけど、ヒグマいるのかぁ…。

中央の森奥は岩石地帯だったから、期待薄なんだよね。

東の森は先日行ったけどいいの無かったし、奥にあったとしても…遠すぎて持ってくるの大変だしな。


うーん、イングリッシュガーデンと苔庭、意外に遠いな。

今日の収穫はブルーベリー二株にリンゴベリー二株。

ブルーベリーはそのままでも食べられるけど、リンゴベリーはすっぱ過ぎ。

でも、赤い実が可愛いの。

おうちに戻って大きめのプランターに植えて、玄関ポーチ横に置いておきました。

ある程度量が無いと、配置も決められないからね。


庭の植木でしばらく悩んでたんだけど、解決策を思いつきました。

“注文すればいい”

危なかった、またソード君に指摘されるところだったよ。


今度街に行ったら注文を…あ、どこへだ?

そんなお店知らないよ。

仕方ない、困った時のソード君。

今度会ったら聞いてみよう。


でも、ソード君、最近来ないんだよね。

理由は二つ。

一つは私が修行終了を言い渡したから。

だって、もう教える事無いんだもん。

もう一つは、ソード君自身が忙しくなったから。

商会長と魔学研究所辺境支部長を掛け持ち、魔道具の商談から魔力変換水晶の作成指導、夜には商品作成、さらに領主様の仕事も手伝ってるんだよ。

水晶鉱脈探しや、昨日の露天鉱山の件も領主様のお手伝いだったし。


今は相談事なんかでたまに会うくらい。

私がポーションやお薬納品に行っても、いない事が多いからね。

まあ、私も、『お昼はソード君来るからおうちにいなきゃ』って思わなくてもよくなったんだけどね。


ただ、昼食の習慣が出来ちゃったから、結局お昼は家にいること多いんだ。

夕方、ふと思いついてステンレスで工事用一輪車(孤輪車)作りました。

森で庭に植えるもの見つけても、抱えて持って来れるのはごく少し。

荷車なんて入れないから、一輪車で何とかしようと考えました。

ただし車輪もステンレス。

田植え機の車輪みたいな歯車っぽい奴です。

だってゴムタイヤ無いし、森は柔らかい土の場所あるから沈みそうだし、何より木製じゃ強度が心配だったんだよ。


翌朝も晴れ。


日課終わったら街へ納品に行って、ついでにソード君探してみよう。

あと一輪車試運転がてら持ってって、帰りに草原で花摘んでこよう。


草原の中、一人一輪車を押す幼女。

客観的に見ると、すごい絵面だろうな。

軽く諦観の念を覚えながら、ソード商会到着です。


ポーションとお薬納品する時にソード君のこと聞いたら、お昼には一旦戻るそうなので、お店で待たせてもらいました。

しかし、お店の人ってソード君の友人たちなんだよな。

年齢層ばらばらだな。

ソード君って、どんな交友関係だったんだろう。

お茶出してもらってまったりしてたら、ソード君帰ってきた。


「よう、お嬢。鉱山ではありがとな」

「いや、ソード君も一緒に働いたじゃん」

「俺は仕事、お嬢は善意の助っ人。お礼は当たり前だろ」

「あー、それもそうか。じゃあ、返礼に相談乗ってよ」

「おう、じゃあ執務室で聞くわ」


ソード君と執務室に入ったので、庭木の事を相談してみました。


「お、ちょうどいいな。父上の館、もうすぐ完成だから庭木とか注文するぞ。そん時、一緒に注文すればいい。父上が鉱山でのお礼したいって言ってかからな」

「あー、タイミングいいけど、またタダで来ちゃう感じ?」

「人手使って排水路掘ったらいくらかかると思ってんだ。しかも水抜けるまで鉄鉱石掘削できねえし。正当な報酬だからあきらめて受け取ってくれ。恩ばっかり売ってないで、たまには返させろ」

「マギ君のお礼みたいなのは勘弁してね」

「わかった。どんなのが欲しいか教えてくれたら俺が注文しとく」


どんなのがあるか、ここで育つかもわかんないから、樹高やら枝ぶり、葉の形状など、色々希望を伝え、業者さんと相談してもらうことになりました。


「ところで、店の前にあった車輪一つの奴、あれなんだ?」

「あれはね、狭い場所でも通れる荷車みたいなものだよ。車輪が一つなのは、足場板の上を通れるように」

「…足場板って、あの狭い板か?」

「そうそう」

「…実演してくれ」


お店の横にあったレンガを足場板みたいに並べて実演しました。


「水晶鉱山、道が無いから運搬に困ってる。作りたいから見本に貸してくれ」


庭木注文できるみたいだから、帰りのお花摘みはいいか。

一輪車はソード商会へ貸し出すことになりました。


ソード君と一緒に昼食摂ってから帰ったんだけど、西の庭見て気付いた。

苔、森から持ってくるのにも一輪車使うんだった。

早く一輪車返してー。


昼食食べてて更に気付いた。

一輪車に大量にステンレス使ったから、もう無いんだった。

ステンレスで角型ショベルや金属鏡作るつもりだったのに…。

買い忘れたー。


…おとなしく薬草のお世話して、ポーション作ろう。

ポーション作り終わった…。

暇だ。

ぽけーっとする時間も好きなはずなのに、何かしてないと落ち着かない感じする。


…ああ、そうか。

やりたいことがあるのに進められないから、もどかしいんだ。

庭は庭木待ちと苔増殖待ちだから、しばらく進展ないよね。

苔は一輪車戻ったら森に採取に行くとして……。


よし、冬に向けた準備でもしよう。今、夏だけど。

以前から思ってたんだけど、この地方の冬って野菜が無いんだよ。

冬に食べられる野菜って、酢漬けか塩漬けだけ。

食卓は保存食ばっかりでつまんないんだよね。


“洞窟菜園作ろう”

年中温度がほぼ一定の洞窟内なら、冬でも野菜作れないかな?

温度が少し低いかもしんないけど、扉付けて暖房すればいい。

洞窟入って右側は物置や薬草エリアだけど、左側はマンホールしかないから、左側を野菜エリアにしよう。

よし、今から作ろう。


早速洞窟入って野菜部屋作り。

大きさは薬草畑で実績のある六畳間です。

これ以上広くすると落盤怖いからね。

もう、洞窟に部屋作るのも慣れたものです。


…またレンガいっぱい出来たな。

そうだ!大きめのプランター作って色々と育成条件変えてみよう。

ついでに棚作って積層栽培にすれば省スペースだし、お世話しやすいよね。

あ、後で薬草畑にも導入しよう。


せっせと作業して、棚とプランター作りました。

うん、腐葉土が無い。

種も無い。

く、今日はここまでか…。

あ、薬草畑もやっとこう。

有意義な暇つぶしになったな。


あーさー。

今日も晴れ。


朝から日課をこなして東の森に巡回に行ったら、ダンジョン前にソード君いた。


「お嬢、おはよう」

「おはよう。何してんの?」

「スライムの檻詰め指導。お嬢のせいでほんとに売り物になっちまった」

「…商会員のみんなのレベルアップは済んでるの?」

「ああ、こっち来て真っ先にやらせたからな。おかげでスライム売ることが出来る」

「一般に販売するなら、追跡調査出来るようにした方がいいよ」

「ああ、心配すんな。危険物として販売後も確認できる仕組みにするつもりだ。今は魔学研究所以外に売らないし、こっそり製造番号刻印した金属板埋め込んで管理してる」

「さすがソード君」

「いや、父上の案だ」

「そっか、悪い人たちに渡らないように考えてくれてるんだね」

「ああ、強い極悪人なんて作らせるわけにいかないからな。ところで、お嬢、仕事受ける暇あるか?」

「内容次第」

「魔力変換水晶の製造が全然追いつかねえ。少しでもいいから作ってほしい」

「いいよ。水晶は自前?」

「いや、作って欲しいリストと一緒に持ってかせる。何本いける?」

「うーん、余裕見て一日10本くらいなら大丈夫だよ」

「………俺たち、4人で一日10本が限界なんだが…」

「毎日やってれば魔力制御とイメージ力上がるから、その内増えるよ。あ、私も野菜の種、注文したいんだ」

「どんなのがいるんだ?」

「割と寒い地方で作られるもの全般。少しでいいよ」

「わかった、注文しとく」


ソード君と話した後、東の森で薬草採取して帰りました。

小屋でポーション作ってたら、商会員さんが早速やってきました。

何故か一輪車にステンレスインゴットと水晶積んで。


話を聞いたら、ソード商会、人手不足が深刻らしい。

機密や極秘案件が多すぎて安易に人を雇う訳にもいかず、信頼できる人物だけで魔力変換水晶の製造、スライムの檻詰め、販売折衝、店舗運営をしているらしく、新規案件を手掛ける余裕が無いそうな。

だから一輪車も、私が暇な時に作ってくれないかって。

これ、ほとんど私のせいだよね。

私の事や私の発明品の情報を守るために、少人数で対処せざるを得ない状況なんだろうな。

うん、頑張ってお手伝いしなきゃ。

魔力変換水晶の製造は商会員の練習用以外は私に回してもらおう。

一輪車もとっとと作って、外部に製造委託できるようにしてもらおう。


申し訳ないけど、私が納品や受注のために街を往復する時間も製造に充てるために、雨の日以外はこっちに来てもらう事にして、帰ってもらいました。

うん、私がみんなに迷惑かけてるんだから頑張らねば。


まずは一輪車。

一台は完成させ、もう一台は組み立て前の部品を一式作りました。

そして組み立て要領図を描いて、外注出来るようにしました。


そして魔力変換水晶も、せっせと作りました。

久々に本気モードでお仕事しました。

…あれ?夜やる仕事が無いよ?

しまった、ペース配分間違えたか。

まあ、明日からは変換水晶の仕事量増えるだろうから、このペースでいいか。


夜、お風呂に入りながら考えました。

苔や腐葉土の採取は誰かに頼もう。

日用品や食料の買い出しも、リスト渡して頼んじゃおう。

そうすれば更に仕事する時間が増やせるよね。

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