8月 1/3

月が替わって八月。

夏、真っ盛りです。

といっても、体感では最高気温は三十度行ってないから過ごしやすいけどね。


村はね、正式に街に昇格しました。

そして魔力変換水晶を使った魔道具が発表されました。


王都ではマギ君の株が急上昇して、今まで庶民王子と蔑んできた貴族たちが、慌ててすり寄って来てるんだって。

でも残念でした。

魔道具作るには魔力制御とレベル上げ、ソード君の指導が必須だから、魔学研究所所長であるマギ君と、ダンジョンを管理してる領主様、魔学研究所辺境支部長のソード君が認めなきゃ、覚えることも出来ないよ。

しかもマギ君は功績を盾に、魔道具は民の為の物だから販売価格を制限するって宣言したから、貴族が転売で暴利をむさぼることは出来ないよ。


レベル上げのために極秘のダンジョン前トラップ使うから、魔道具作成技術者見習いの審査は厳格。

技術者には守秘義務が課せられ、毎月一度の魔学研究所職員による面談義務もあるから、技術者拉致っても直ぐ足が付くよ。

賢者がらみの案件だから公表はされてないけど、貴族家当主には違反時の厳しい罰則が通知されてるらしい。


あ、ソード商会と魔学研究所辺境支部は完成してるよ。

この二つの建屋は建設途中の領主館同様に、全室水晶ランプ、水洗トイレ、スライム式浄化槽、魔道具式水道、お風呂完備です。


領主様なんて私のおうち視察に来て、大絶賛で帰って行ったから、床暖房とか冷蔵庫とかコンロとか、絶対付けてると思う。


ソード商会はソード君の王都仲間たちが来たんだけど、なんとほとんどが青年。

ソード君、意外に交友関係広かったんだね。

みんな忙しそうに働いてるよ。

魔道具の販売が開始されたからね。

ほとんどマギ君に売ってるらしいけど。

この忙しそうにしてる商会員たちが技術者一期生らしいけど、ソード商会が独占しちゃってるよ。

前の世界じゃダメだけど、この世界ではありなんだって。


他にもあちこち建物が建ちだして、拡張部分がかなり埋まって来てます。

徐々に街らしくなってるね。

私のレンガ、しっかり活躍してるよ。

土台を削って作った分も含めて全部街に持ってきたんだけど、まだ足りないらしい。

ソード君が従業員と一緒に、毎日ズリ山でレンガ作りさせられてるそうです。

何で魔道具使わないんだろうって思ったら、修行なんだって。


鉱山は邪魔なズリ山無くなってルンルン、領主様はクロム見つかってウハウハ、ソード商会員はタダで練習材料提供されてルンルン、ソード商会は仕入れタダのレンガ売ってウハウハ、建築作業員は安いレンガが輸送費無しで手に入ってルンルン、施主は建築代金が安くなってニマニマなんだって。

凄いな、見事にWin-Winが繋がってる。


私のおうち回りも完成したよ。

玄関前はテラコッタタイル調のポーチと階段、ポーチ横には花壇作って花(雑草だけど)が咲いてます。

犬走りもテラコッタタイル風にして、テラスっぽくなってます。

小屋前からは、幅2mのレンガ道が続いてます。

土台周りはU字溝が囲ってて、滝のU字溝に排水出来ます。


削った土地にもレンガ置き場跡地にも雑草生えだして、ハゲは無くなりました。

おうちの室内もカーテンや小物類が増えて、生活感出てきました。

依然、家具がオーラを放ってるけど、慣れて来ちゃった。

あとは西側の小広場を庭にしたいんだよね。

庭、どんなのにしようかな。


おはようございます。私です。

今日は水晶鉱山の、トンネル掘り指導日です。

ソード君は実際のトンネル掘りは未経験なので、鉱山主任や掘削作業員のみんなと共にお勉強です。


場所は東の森の更に東部分の傾斜した平原です。

ここ、不自然に森が無くなってるなーと思ってたら、花崗岩が露出してました。

多分土が少なくて、森になれなかったんだろうな。

すでに小規模な露天掘りみたいになってて、石英混じりの層が出てきてます。


どっち向いて掘るの?

ああ、東も西も両方掘るのね。


「あの、このまま掘ると雨で水没しちゃうけど、いいの?」

「ああ、水晶出そうなら屋根を掛けて排水路付けるから心配すんな」


主任さんが言うなら大丈夫だね。


「じゃあ掘ってくけど、花崗岩やその周辺はもろいから固めるだけじゃ危なくて、圧縮すると同時に融着させて固めるの」

「融着ってレンガくっつけるみたいにか?」


うん、ソード君は慣れてるよね。

実演してみたけど、ソード君以外は微妙な表情だね。


「えっと、その辺にある砂でレンガ作ってみて」

みんなしゃがみ込んでレンガ作ってるけど、ソード君以外はぼろぼろ崩れてるね。

ソード君は大丈夫そうなので、掘り起こした土の粘土部分でレンガを作ってもらいます。

他の人は練習続行です。


「固めると同時に溶けてくっつくようなイメージで。こんな感じ」


わざと粘土を捏ねるみたいに見せながら、ゆっくりとレンガにしていきます。


「このレンガをよく見てもらうと、砂粒同士が溶けてくっついてるみたいになってるでしょう。これを見ながら作ってみて」


みんなの分も見本のレンガ作って渡しました。

お、主任さんは出来そうな感じ。

他のみんなも形までは無理だけど、くっついた塊にはなってるね。


「じゃあ、出来たのを何度かぶつけ合ってみて。割れたり崩れたりしなかったら合格」

はい、主任さんは合格。

後二人は形が整えられたら合格です。

残りの人はしばらく練習してもらいます。


私は暇なので、トンネル掘りです。

うーん、足元の方が砂粒が大きい気がする。

もうちょっと下かな。


階段作りながら、下方向に掘り下げていきます。

しばらく掘ってたら、水がにじんできました。

水が出てくる方向向いて水平に掘り進みます。


おっと、壁が決壊した。

注意していたので、サッと飛び退き、階段まで退避。

足元に来た水をバスケットボール大の水球にして浮かせ、凍らせていきます。

氷球が十個になったら、浮かせて外に運びます。

草の斜面まで出たらさようなら。

おー、結構下まで転がったな。

再度階段まで行って、同じ作業を繰り返します。


あれ?なかなか水量減らないな。

これ、水脈に当たっちゃった?


「ソード君、レンガそのくらいでいいから、こっち手伝って」


言いながら氷球リリース。

ごろごろごろ

ソード君に運搬してもらいながら氷球作ってたら、みんな手伝いだしてくれました。

バケツリレーならぬ氷球リレーです。

私のトンネルは高さが足りないから、みんな座ってリレーしてます。


おお、氷球作成が追い付かん。

せっせと氷球作ってたら、徐々に水量減ってきました。

さらに作業を続けること数分、やっと水が止まりました。

よかった、水脈じゃなかったっぽい。

でも、壁の側面が穴になっちゃって危ないので、左右に柱立てて天井のアーチ部と繋ぎました。


トンネルにぽっかり空いた穴、奥は暗くてよく見えません。

穴に手を突っ込んで魔力放出!

水晶ちゃんとあったみたいで、しっかり光ってくれました。


うおー!広い!!

奥まで見えないけど、結構な広さの晶洞です。

こんなに広いと落盤怖いな。

露天掘りで5mくらい、私が階段で降りたのも5mくらい。

上には10mの土、しかも風化花崗岩ぽい。

補強しないとめっちゃ怖いな。

後ろを振り向いたら、すぐ後ろでみんなしゃがんでこっち見てた。


「あ、ごめんなさい。つい掘るのに夢中になっちゃった。説明再開するね」

「いや、大体見てたから工法は分かった。後は練習すれば大丈夫そうだ」


先頭のソード君が返事してくれたけど、主任さん、反応してくれないよ。

とりあえず、みんなしゃがんでんの辛そうだから、外に出ようよ。


「こんな方法で掘ってるとは思いもしなかった。掘り方といい水の抜き方といい、鉄鉱石の鉱山でも使える方法だ。しかもたった小一時間で掘り当てちまった」


良かった、外に出たら主任さんからお墨付き貰えた。

でも、掘り当てられたのはただのラッキーだよ。

下手すりゃ水脈ぶち抜いて、大洪水だったからね。


「しかし、ほとんど魔法で掘るんだな。祝福回数が多い奴集めろっていうのはこういう意味か」

「ああ、そうだ。魔力制御うまくなりゃあ、お嬢みたいに掘れるんだ」

「鉱山の作業員にも練習させる。こんな掘り方出来たら効率が段違いだ。嬢ちゃんすげえな」

「いや、私は力ないから魔法でしか掘れないだけだから」

「何でそんなに掘方うまくなったんだ?」


あ、この質問はやばい。

隠れて洞窟掘ってたとは言えない。


「お嬢は自宅作るのに広い土地が無くて、ポーション作る小屋横の小山、崩してたからな」

「そういや、小山が削れてくと同時に家が出てきて話題になってたな。村の自宅に住めなくなるからってみんなで心配してたんだが、嬢ちゃん頑張ったんだな」


一瞬どう答えようか迷った私より早く、ソード君がフォローしてくれたよ。ありがとー。

そして主任さん、私は半分以上趣味でおうち作りしてたんだから、そんなしみじみ褒めないでよー。


その後、ソード君が作った粘土レンガで壁を補強する方法説明してお開きになりました。

私は東の森で、お墓参りと薬草摘みして帰りました。


おうちに帰って小屋でポーション作りしたら、最近習慣になったお昼をおうちで食べて、東の庭を眺めながらお茶してます。


うん、芝刈り機作ろう。

この地方ではあんまり伸びない雑草も、長いのは背丈が30cmくらいになってます。

草ぼうぼうは、おうちにマッチしてない気がするから、刈り取って芝生っぽくしよう。

構造はならしー君みたいにして、スキー板の代わりに小さめの車輪にして、草を斬り飛ばす水晶作って並べて…あとは送風の水晶で切り飛ばした草を横方向に飛ばすか。

自分が草まみれになるのは嫌だから、風向板代わりの板付ければいけるかな。


早速作成開始!

カッターの水晶は六個作って、幅1.5mくらいが刈れるようにして、風向板は断面が半円になるような形で、斜め上に刈った草を吹き飛ばす設計です。


………

……


でけた。

命名、かったろう君。


早速動作テストです。

む、多少自分の方に草が飛んでくるし、刈った草がたくさん下に落ちてる。

もっと風向板と水晶近づけて、送風水晶は地面すれすれに位置変えて…再度挑戦。

おー、いい感じになったね。

あ、盛り上がってる土のコブ、切り飛ばしてハゲちゃった。

かったろう君の幅、取りすぎたか。

でもまあ土を均してると思えばいいか。

ぬう、さらに欠点が。

草を飛ばす方向が一方向だから、往復すると刈った場所に草が飛んでく。

仕方ない、復路は動作させずに引いて帰ろう。


……


東の庭刈れた。

所々土削って禿げちゃったけど、何度か刈ってるうちになだらかになるだろう。

夏だからすぐ雑草生えるし。


これはこれできれいだけど、変化が無さ過ぎてゴルフコースみたいでさみしいな。

そうだ!イングリッシュガーデンにしよう。

今なら森の奥に行けば、リンゴベリーやブルーベリー生ってるはず。

リンゴや洋ナシの木もあったから、なんとか持ってこよう。

バラとかはないから少し寂しいけど、ゴルフ場っぽいよりはましなはず。

ついでに池は…止めよう、凍ってる未来しか見えん。

あ、丸いガゼボでも立てよう。


よし、調子に乗って西の庭も刈ろう。

…今まで西側の庭はあんまし観察してなかったけど、結構な広さで苔が生えてる。

崖下のU字溝作る時や木材置き場作る時に、苔生えてるなーくらいにしか思ってなかったけど、よく見たら半分くらいは苔だったよ。


元々崖と小山に囲まれて日が当たる時間短かったし、滝の水がどこからか染み出してて、育成条件出来てたのかも。

苔には詳しくないけど、たしか日照時間で種類が違ったはず。

君らは半日影がいいんだね。


これ、苔庭作れない?

……よし、日当たりの良い場所は木を数本植えよう。

木陰が出来れば、苔ちゃん頑張って増殖してくんないかな。

ダメなら苔移植しよう。

森の中、いっぱい苔あるからね。


…とりあえず雑草抜かなきゃね。

刈ると根が残るから、かったろう君はお休み…いや、東の庭でハゲ作ったじゃん。

なら、水晶の位置調整して、土削り機にしよう。

さくっと調整終えて、いざ実践。


……土は削れるんだけど、どんどん平坦になってくなー。

苔庭だと、地面に変化あった方がいいんだけど、雑草手で抜くのは大変だから、後で土寄せて変化付けよう。


西の庭、三角に半分ハゲましたー。

若干苔も剥いじゃったけど、君らのための場所作ってるんだから許してね。

君らへの水やり、朝の日課に追加するからね。


でも、植える木どうしよう。

森にはもみじっぽい木もあったはずだけど、持って来れるかな?

浅い部分は間伐進んでるから、わりと奥に行かないと無いんだよね。

でも、東側の庭も何とかしたいな。

あっちはおうちに来るときに通るから、東の庭が先かな。

苔庭は、木だけ植えて増殖待ちにしときたいな。

どっちにしても植えるもの探しだね。


よくじつ―。

大雨降ってるー。


これじゃ、てるるんあっても足元がずぶずぶだよ。

仕方ない、今日は日課だけしたらおうちでなんか作ろう。


日課を終えてしばしまったり。

すごい降ってるなー。

一応おうちの雨漏りチェックしとこう。

これだけの雨でも大丈夫なら、雨漏りは心配ないよね。


…雨漏りは大丈夫だった。

扉や窓からの水侵入も、深い軒のおかげで皆無でした。

でも、裏のU字溝溢れてる。


西の庭は土地の段の端の方に向かって傾斜してるから、溢れた水は流れ落ちてくれてはいるけど。

屋根に降った雨と小屋とおうちの間の庭(東の中庭?)に降った雨の一部、そして滝の水がプラスされたから溢れちゃったかー。

雨止んだら裏のU字溝拡張しなきゃ。


をう…東の庭のレンガ置き場跡地、池みたいになってる。

あそこはレンガたくさん置いてたから、へこんじゃってるんだね。

おうちへのレンガ道、大雨時の水路にならないように少し高さ上げちゃったから、水の逃げ場が無いんだね。


土入れるのは大変だなー。

でも、排水路作ったら見た目変だし、土盛るしかないな。

せっかく大ハゲ無くなったのに、また大ハゲか…。


でもこの大雨、鉱山大丈夫かな?

お昼過ぎになってやっと雨が上がったので、池になっちゃった所を確認したら、やっぱりレンガ道でせき止められてた。

不幸中の幸いか、せき止められた部分が水の底に近いので、とりあえずレンガの一部を剥がして下の段に水を流しました。


…土盛るの面倒だから、レンガ道の下に排水溝掘って道で隠そう。

幅5cmほどの小さなU字溝作って、溝の入り口が池の底より低くなるように、元レンガ置き場の土を調整しました。

よし、残りも全部流れた。

後はレンガを蓋代わりにして、わざと隣のレンガと接着せずにしておきます。

これで掃除する時も楽々です。


お次は滝の水排水用のU字溝です。

あー、上の段から流れ落ちてきた雨水も入っちゃてるのか。

これじゃあ溢れて当たり前だね。

単にU字溝の幅広げると、ごっつくなって見た目がなあ…。

よし、断面が丸底フラスコみたいなのにしよう。

滝の水を止めると溢れちゃうので、水が流れたまま拡張です。


ずごごごごご


底の傾斜を一定に出来たかどうかは疑問ですが、まあ、溢れなくなったらOKです。


…やっぱり鉱山気になるな。

街までは固められた道だから、行けるよね。

作りだめたポーション持って、街へお出かけです。

うん、道は大丈夫だ。走ろう。


門に着いたので、門番の兵士さんに被害が無いか聞いてみました。


「街は大丈夫だったが、鉱山は広範囲に水没してるらしい。ケガ人の話は無いが、外せない任務の者以外、兵士総出で手伝いに行ってる」


あれだけ降れば、露天掘りはそうなるよね。

私も行ってみよう。

走ったので、鉱山にはすぐ着きました。

警備の兵士さんもいないので、中まで入っちゃいます。


あちゃー、大池になってる。

露天掘りの斜面の傾斜から推測すると、多分1/3くらい水没してます。

これ、50mプール入っちゃうね。

渦巻状の道に一段ずつ人が立ってバケツリレーで汲み出してるけど、水捨てに走る距離があるから人が全然足りてない。

下の段から受け取る時、腰痛めそうだね。


えっと、半径30m、深さ10mとして、適当計算で30x30x10

うげ、約九千トン…。

桶十リットルとしても、き、九十万回!?

無茶だー。

あ、ソード君も汲み出してる。


「お嬢!なんかいい方法無いか?手作業じゃらちが明かん!」


これだけ高低差あるとサイフォンの原理じゃむりだね。

仕方ない、掘るか。


「みんな一旦上に上がって。排水トンネル掘るから水流す方向教えて」


私はソード君がいる池の手前まで、渦巻道をジャンプしながら直線で降りて行きます。


「主任、どっちが近いんだ?」

「一番近くて低いのは南東だ」

「ソード君はランタンと土圧縮とレンガ作りの魔道具持って来て。あと核も」


主任が指さす方向を確認して、ソード君に指示を出したら、水面より少し上の地面を斜め下に掘っていきます。

10mほど下がったところでほぼ水平に掘り進みます。

ガンガン掘ってるのでそろそろ魔力がやばい。


「お嬢、持ってきたぞ」

「ありがとう」


私は土圧縮用の魔道具を操作して、どんどん土を圧縮して壁を作ります。

ソード君は私の後ろから手を伸ばして、残った真ん中の土をレンガにしながら、ランタンを見やすい位置に移動させてくれます。

さすがソード君、ナイスアシスト。


「レンガは端っこにくっつけといて」


水を流した時に詰まるといけないので、一応くっつけといてもらいます。

トンネル狭いから持ち出すのも面倒だよね。


…長い。

何メートルあるの?

もう500m超えてない?

ソード君と二人、黙々と作業を続けます。


あれ?圧縮出来なくなったぞ。

魔道具を振っても音がしません。

うわ、核無くなった。

ソード君が持って来てた核を入れて、作業再開。

延々と続くかと思われた作業も、日の光が見えて、やっと作業終了しました。


二人で戻り、水とトンネルを隔てている壁をレンガにしてどけ、いよいよ排水です。

よしよし、どんどん水が流れて行きます。


「…すげえ。普通排水トンネル掘るなんて総出で一週間はかかるぞ。二人だけで二時間かからねえなんて、とんでもねえな」

「俺たちも練習して出来るようになったんだ。練習すりゃあ誰でも出来るようになるさ。しかも今回は虎の子の魔道具使ったしな」

「…魔道具もすげえが、俺たちも本当に出来るようになるのか?」

「祝福と練習で誰でも。魔道具が普及すれば子供でも出来るようになるな。あ、俺たちも子供か…」

「わかった。いずれにしても今回は助かった。壁崩してくだけなら俺たちにも出来るから、二人は休んでくれ」


ソード君と私、顔まで泥だらけ。

二人して街に帰りました。


後で聞いたんだけど、いつも段々に直線並びで汲み出してるんだって。

それで腰痛めてポーション買いに来てたらしい。

なんでみんな人力が好きなの?

魔法、頼ろうよ。


泥だらけの私たちは、ソード商会のお風呂で汚れを落としました。

魔道具の実演用を理由に、ソード君が作ったらしい。

出来上がっててよかった。


お風呂出たら、メイドさんが新品の着替え一式と靴持って待ってました。

思わず申し訳ない顔しちゃったら、『御屋形様ご自身の娘のつもりで対応するようにと申しつかっております』だって。

どう反応すればいいんだろう…。

ポーションバッグ以外、靴まで新品を身に纏って帰りました。


帰宅後、さすがに疲れたので、のんびりして早めに就寝しました。

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