6月 3/3

朝ですよー。

祝福来た。

私、レベル10だ。


今日も頑張ってお仕事しようと思ったのに、雨降ってる。

じゃあ、今日は日課したら家づくりだね。


まずは薬草ちゃんに水やりしよう。

わー、薬草ちゃん、核の箱付近だけ緑が濃くなってて子株まで出来てる。

こりゃ、品質にばらつき出ないように考えなきゃね。


うーん、何メートルもあるほそながーい箱作って、天井に吊るしてみよう。

等間隔にちっちゃな穴開けたら、漏れる魔力量増えて促成栽培できるかも。

よし、ササっと作って今からぷするスライムの核入れよう。


洞窟内作業終わって外に出たら、雨あがってた。

でも、地面の状態悪いから、今日はお出かけしません。

よし、おうち作ろう。


今日の作業は…はい、レンガ作りです。

まだ二階部分が完全には露出していません。

ひたすら小山をレンガにして削っていきます。

すごいなー、ここまで削っても、まだ粘土だよ。

ひょっとしてこの小山、全部粘土なのかな。


「うお!家が出来てやがる!」


あ、お兄ちゃん来た。

でも、『やがる』って何さ。


「これ、私のおうち。さすがに小屋は狭いから新築してるの」

「…俺たちはダンジョン前囲う木の小屋で四苦八苦してるのに、家を新築って…。しかも無駄に凝ってやがる」

「無駄じゃないもん!可愛い家に住みたいじゃない!」

「いや、家なんて住めりゃいいだろう」


やっぱりお兄ちゃんとは嗜好が合わない。

なんでこの可愛さが分かんないのよ。


「私のおうちにケチ付けに来たの?」

「え?あ、いや、連絡事項」


お兄ちゃんが言うには、なんと、村を拡張するらしい。

といっても直ぐに建物が建つわけではなく、防御壁(城壁?)を

拡張して、村の敷地を増やすらしい。

こういった大掛かりな工事の場合、働ける村人全員が持ち回りで参加するんだよ。

私もこの村の所属なんだから、当然お手伝いするよ。


思わぬところで馬が六頭もいた理由が分かりました。

資材や職人さんを運んできた先発隊の馬を借り上げたんだって。


工事は明後日から始まるそうで、領主様が開始までに相談事があるらしい。

私、建築は素人だけど、何の相談だろう?

あ、レンガか!レンガ作りは得意だからお手伝いするよ。

じゃあ行こうか、お兄ちゃん。


お屋敷に着いたら領主様から昼食に誘われました。

食べながら相談したいって。

うん、忙しいんだね領主様。


「まずは息子とマギ君への協力ありがとう。件のご令嬢は私も知っているから、事故の知らせを聞いて気になっていたんだ」

「いえ、まだお礼は早いです。助かったわけじゃないし、私の見立て違いなら、かえって患者さんを苦しめる可能性もあるから」

「そうだね、では、感謝は彼女が助かった時にするよ」

「そうしてください。治って感謝されるのが薬師にとって一番うれしいから」

「そうしよう。…それで相談なんだが、お嬢さんが作った土の圧縮用水晶を使うかどうか迷っているんだよ。公表した場合、同じ技を使うお嬢さんと結び付けられないかと思ってね」


ありゃ、レンガ作りじゃなかったよ。


「別に大丈夫だと思うよ。私が土を圧縮したりしてるのはバレてるはずだから、私の魔法を見たソード君が研究所と共同で開発した試作品で、今回が実地テストとかってしてもらえばありがたいけど」

「む、バレてるだと。どこからか情報が漏れたのかね?」

「いえ、漏れるも何も、毎日見えちゃってるから」

「ん?何が見えるのかね?」

「私のおうち。毎日どんどん出来上がってるのが村から見えてるはずだから、私がなにがしかの技術持ってるのはバレバレだと思う」

「…情けない、見落としていた。工事の職人が村から出ないのに、立派な家が出来ていけば誰でも気付くか」

「うん、だからレンガ作りとかも協力するよ」

「レンガは基礎が出来てから、街で購入して運ぶ予定になっているんだ」

「え?もったいないよ。せっかく材料も近くにあるのに」

「ん?近くの材料?」

「鉱山のズリ山。露天掘りだから粘土質の土も一緒に掘ってるでしょ。あそこでレンガ作れば鉄鉱石輸送用の道と荷車使えるから便利だし、ズリ山も減るからお得だよ」

「…まいったね、確かにそうだ。なぜそんなことに気付かなかったのか…」

「ソード君が言ってたけど、王都では外に頼るのが当たり前。でも、辺境は内で何とかするのが当たり前だって」

「…息子の成長が早すぎて、嬉しいやら寂しいやら、複雑だ」

「ソード君は、まだまだ成長する気だよ。努力家だからどこまで行っちゃうやら」

「息子をここに連れてきて本当によかった。今、しみじみと実感したよ」

「うん、私もものすごく助かってる。連れてきてくれてありがとう、領主様」

「自身のためにしたことが住民に感謝される…これが領主の醍醐味か!」


なんだか領主様、変な感動してる。


その後の話し合いの末、着工前の領主挨拶で、私の魔法を参考にして研究所が開発した魔道具だって公表することになりました。

私の魔法は土を固めたりレンガ作ったりするだけで、強度の違いはあるけど、誰でも出来ることだから。

これなら重要なのは私じゃなくて、魔道具を開発した研究所になるもんね。


結局、私のお手伝いは、中央ダンジョン前の罠づくりになりました。

でも、罠づくりは内緒だから私も村の拡張工事手伝うって言ったんだけど、すでにレンガの件で予算を大幅に浮かせる手伝いをした上に、ダンジョンの罠まで作るんだから来ちゃダメだって。


一人が過剰に手伝うのは公平性に問題出るし、それ以前に未成年は対象外だって。

うん、私、七歳児だった。

罠は作るけどね。


今日もお泊り誘われたけど、時刻が昼過ぎだったので森へ行くからと辞退して帰ってきました。

実際に西の森を見廻りしたかったからね。


西の森で採取した薬草でポーション作ってから、洞窟入ったら大変なことになってた。

穴を空けた核の箱を設置した薬草部屋、薬草が緑を通り越して黒っぽくなってる。

葉も硬くなってるし。

慌てて核箱の穴、塞いだよ。


こんな薬草見た事無いけど、試しにポーション作ってみよう。


でも、一次処理でつまずきました。

薬草から水分だけ抽出して乾燥させ、粉々にすり潰しながら自分の魔力でコーティングするように処理するんだけど、まず水分が抽出できない。


ダメ元で乳鉢ですり潰してみたんだけど、コーティングもはじかれます。

この反応、動物に魔法使った時と同じです。


動物って人間含めて魔力濃度が高いから、魔法弾いちゃうんだよね。

多分魔力が自己防衛的に働いてるんだと思う。

植物や土は魔力濃度が低いから、ごり押しでいけるんだけどね。

例えば、植物は魔法で直接切断できるけど、ネズミの尻尾は切れません。


おそらくこの黒薬草、魔力濃度が動物並みになって、自己防衛してるんじゃないかな。

ポーション作りは魔力で反応させる工程が多いから、これじゃあポーション作れないよ。


ぐすん、薬草ダメにした。

薬師としては大失態です。

教訓。魔力の与えすぎはダメ、絶対!


結局、細長い核箱も撤去しました。

濃緑薬草作る時は、監視しながらじゃなきゃ薬草無駄になるね。


失意をごまかすように暗くなるまでレンガ作りして、二階部分を完全に露出させました。

夜は土圧縮水晶と、レンガ生成水晶作りました。

さすがに魔力がやばくなったけど、大失敗の後だけに、ちゃんとした成果が欲しかったんだよ。


翌朝、まずは薬草部屋の整備です。

黒化してない無事だった子株を等間隔に植えなおし、試験部屋からも子株を持って来て植えました。


森から取ってきた腐葉土と灰を混ぜて、追肥代わりに撒いておきます。

これからは、薬草に無茶な実験は止めよう。

自分へのダメージがでかい。


気分転換にスライムぷすったら、昨日作った魔力変換水晶の筐体作りです。

今までは試験的にランタン型にしてたけど、実用性重視な形に変更します。

円筒形の先に、水晶がちょっこと出てる形状です。

フラッシュライトをイメージしてみました。


魔力変換水晶、六個もあるから円筒形も六個。

…つらい。


いっつも円筒形で苦労するので、今日は作り方を変えてみます。

まずは高圧縮レンガ超高圧縮バージョンで円柱を作ります。

円柱なので当然苦手だけど、これを母型にすれば、後は金属巻き付けるように変形するだけで、円筒形が出来ます。


ぐぬぬ、超高圧縮なので修正も大変です。

なんとかでけたので、次はステンレス巻き付けていきます。


………母型抜けねーです。

ステンレスを柔らかい状態にして、母型を廻しながら抜きました。


………

……


気付いたらお昼過ぎてましたが、何とか六個、完成しました。

水晶の根元近くにスリットを刻み、石英ガラスをはめ込んで中が見えるようになってます。

中には筒の内径とほぼ同じサイズのΦ状の円盤が取り付けてあり、この円盤を魔法で回してON-OFFします。


……なんか世界観ぶち壊しな近未来的デザインのような…。

ま、まあ、出来たからよしとしよう。

じゃあ、さっさと届けよう。


びっくり。

森への登り口で領主様たちと出会った。

中央ダンジョンの小屋作りしてる兵士さんたちに、差し入れ持って慰問だって。

そっか、小屋先に建てた方が、罠作り見えないからいいよね。


ついでに先に渡してた土とレンガの魔道具、使って慣れておきたいんだって。

うん、使用法説明するのに、誰かがうまく使えなきゃダメだよね。

『王都から借り受けた魔道具』って言ってるから、私が作ったことは兵士さんにも内緒なんだね。


罠づくりの下見の名目で、私も同行することにしました。

到着後、離れてお茶の用意してる従者さんにこっそり新作渡し、使い方も説明しました。

ちゃんとテーブル作ってお手伝いもしたよ。


…遅めの昼食、またホットドッグです。

微妙な顔してる私に気付いたのか、領主様が説明してくれました。


スタンピード以降、森での狩猟は鳥以外捕れないんだって。

だから隣町から入ってくるソーセージや野菜を使ったものが、一番手に入りやすいそうな。


スライムめ、お前らのせいでホットドッグ主食なのかと感違いしたじゃないか。

帰ったらぷすってやる。


休憩終わって魔道具操作体験。

ちゃんと、私の魔法を参考にして王都で開発されたって説明してくれてます。

あ、旧型使わないんだね。

だよね、使いにくいよね。


どうせなら罠づくり用に使えるようにと、ダンジョン前で実地体験です。

私が説明する訳にはいかないので、私は一人で黙々と縦穴と処理層作りました。

落下用配管作ってたら、漏斗部と繋がってしまった。

上部作業早いなと思ったら、上は六人で作業してたよ。

領主様まで、心なしか嬉しそうに作業に加わってるんだよ。

レンガが横に山積みされてたので、左右に積んで、壁も作りました。


「レンガ接合用の魔道具も有れば便利だね。研究所で作ってくれないかな」

「いや、もう十分すぎるほどに協力してもらっている。これ以上は借りが大きくなりすぎるから止めておこう」

『接合用魔道具作ろうか?』って匂わせたら、『これ以上はいい』って断られちゃった。


ちょっとした試用体験のつもりが、罠完成しちゃいました。

しかも、ちょっと進化してるんだよ。

小屋用の木の板の残りがいっぱいあったから、シーソー両側になりました。

これで床が真ん中から開くようになって、スライム落ちやすくなったよね。


奴らバカなんだよ。

床板張る前に出口に来てたのいたんだけど、出口前が穴開いてるから出てこないの。

なのに板差し出したら、とたんにジャンプして落ちていきやがった。

うん、奴らに思考力は無いな。


自動討伐用のトゲトゲ付けて様子見してる間に、私は薬草摘みに出かけました。

ダンジョン前に戻ったら、三匹出たけどきちんと処理されたそうなので、みんなで帰りました。


登り道の途中でみんなと別れ、小屋に戻ったらまずポーション作り。

ある程度ストックできたので、これで緊急時も安心です。


夕方前からは屋根の延長とおうち二階の内部づくり。

スズランプが活躍しました。

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