5月 3/3

おあようごじゃいまふ。

やっぱり七歳児に夜更かしはきついです。

しかも祝福来ちゃって、完全な寝不足です。

私、レベル9です。


…ねむい。

でも、昨日、森の見廻りさぼったので、今日は行かなきゃ。

………。

雨、降っとる。

森はダメだね。

丁度いいや、日課したら屋根の雨漏りチェックしよう。


じゃーん、初お目見え!

その名は、『スズランプ』

昨日夜なべして作ったフロアライト。

高さ約180cmのスズラン型です。

丸いベースから茎が伸び、ゆっくりと弧を描いた下側に、八つのかわいい白い花が咲いてます。

中には水晶が仕込んであって、白い石英で作った花が光を拡散します。


はい、これ作ってて寝不足になりました。

だって、花の球体部分、めっちゃ難しいんだもん。

あの、金魚鉢を逆さにしたような部分、設計で八個も付けるんじゃなかったと、ちょっぴり後悔しました。

でも、ちゃんとかわいく出来た。

今からリビングに置くのが楽しみだよ。

でも、リビングまだ出来て無いから、今日の所は出来かけの屋根裏部屋で我慢しておくれ。

がんばっておうち作るからね。


屋根チェック、二か所も雨漏りしてました。

二か所とも接合忘れ。

ソード君、意外におおざっぱなの?


雨漏り直して、いざ二階部分に取り掛かります。

屋根裏部屋へのアクセスははしごの予定なので、まずはそこから穴を空けます。

次は、屋根裏の各部屋の四隅に50cmほど穴を掘り下げます。

これで二階の部屋と屋根裏の位置関係がシンクロします。

次は二階の外壁と十字煙突部分を作っていきます。


「うわ!なんだこの明かり。花が光ってる!」


おろ?ソード君、来たの。

あ、知らない間に雨あがったのね。

じゃあ、屋根裏部屋の外壁塗装しなきゃ。

二階部分からはしごで屋根裏部屋に戻ります。


「いらっしゃーい。いいでしょう、スズランプ。昨日作ったんだけど、私のお気に入りだよ」

「おう、こんなランプ初めて見た。なんつーか、芸術的だな。名前センスも独特だし」

「えへへー」


ほうほう、ソード君はこのスズランプの良さが分かりますか。さすが貴族様だね。センスいいね。


「王族への献上品でも、こんなすごいの無いぞ。…これは人に見せない方がいいぞ」

「えー、見せたいのにー。何でダメなの?」

「王都なら一発で盗まれる」

「いや、ここ辺境だから、そんな悪い人いないよ」

「見た人は必ず人に話す出来だぞ。噂になって盗みに来る奴出るって」

「…出来が良すぎて噂になるのか。そこまでは考えてなかったよ。じゃあ、自分の部屋用にするよ」

「ああ、人に見られないようにな。…しかし、剣といいランタンといいこのランプといい、お嬢のセンス、すげーな」


あー、オリジナルはこのスズランプくらいなんだけど。

しかも、前世の世界に卓上スズラン型ランプはあったよね。


「いや、ほとんど前世にあったものだから、単なる真似っこだよ」

「王族も見た事無いようなものがいっぱいあるなんて…すげー世界なんだな」

「うん、物が溢れてたからね。王都まで二時間で行ける地上の乗り物有ったり、空飛んだら1時間かかんないのも有ったよ」

「はぁ!?空を飛ぶ乗り物だと!?…まさかお嬢、作ったりは…」

「あはは、さすがにそんなのは作れな…」


あれ?回転力に変換する水晶作ったら、プロペラ機くらいなら…。


「うおい!!何で黙った!止めろよな!さすがにそれはまずすぎるぞ!!」

「あ、うん、大丈夫。作れないから」


アルミやジュラルミン無いし、ベアリングも無いから作れないよね。うん、嘘じゃない。


「あー、びびったー。そんな物作れたら絶対王都に連れてかれるからな。絶対作んなよ」

「だから作れないってー」


うん、作らない。

ここを離れるなんて絶対嫌だ。


「話すのも止めろよな。出来ると勘違いされたら大変だぞ」

「うん、わかった。お口チャック」

「…ちゃっくって何だ?」

「…ボタンの代わり。上げ下げするだけで止めたり外したり出来るやつ」

「ま、まあそれくらいならいいか…」

「作るの大変だから作らないよ」

「はぁ…『作れない』じゃないんだな…」

「…」


ちょっぴり教育的指導受けちゃったけど、作業再開です。


用意したのは、花崗岩君。

洞窟の水晶エリアから取ってきました。

この花崗岩を砕いて砂にしていきます。

石を砕くのは洞窟掘りで慣れたもんです。

花崗岩は風化が激しいから、スライス貼り付けじゃなく、砂にしてからしっかりと外壁レンガに融着させます。

これで地のレンガの色と相まって、淡いベージュ色になります。


お、ソード君、石割初挑戦だね。

かなりたどたどしいけど、少しずつ削れてるね。


お次は、砕いた砂を外壁にくっつけていきます。

ひっつけー、くっつけー

うん、なかなかいい感じです。

ソード君が一生懸命砂作ってくれるので、私はせっせと塗装屋さんです。


三十分もかからずに出来上がりました。

屋根裏部屋の外壁は、両側面は屋根だから、三角の二面しかないから早いよね。


ちゃんとドーマーの壁も塗ったよ。

思ったよりいい感じに出来てるよ。


さて、外回りでやり残したことが無いか、しっかりと指さし確認。

あー、破風塗ってない。

どうしよう、普通は破風って白が多いけど、壁とおんなじ色になっちゃうな。

よし、破風は屋根と同じこげ茶にしよう。


…もう一か所塗ってなかった。

軒天無いから垂木が丸見えだった。

ここもこげ茶に塗っとこう。


今から足場代わりの小山削るから、しっかり見とかないとね。

おう…煙突の雨よけも無かったよ。

煙突は赤レンガ色だから、雨よけは屋根と同じこげ茶で、四角い蓋が三段になったような感じで、ルーバーは少し下方向に傾斜付けとこ。

もう見落とし無いよね。


ソード君とダブルチェック…って、ソード君は完成外観知らないんだから、あんまし意味ないかも。


じゃあ、そろそろ小山、削りますか。

二人で頑張ったけど、二階部分の半分くらいまでしか削れなかったよ。


恒例のお風呂前に、ソード君が布に包んだ本みたいなの渡してきた。


「これ、預かってる荷物掃除してたら見つけたんだ。よく分かんねえけど、何かのレシピっぽいからお嬢に渡しとこうと思って持ってきた」

「…これ、母ちゃんのレシピ帳だよ。自宅出る前に探してたんだけど、見つけられなかったんだ」

「あー、高い引き出しの奥の方にあったから、見つけにくいかもな」


ぐ、こんなとこで背の低さに足を引っ張られるとは思わなかったよ。

母ちゃん、もう少し低いとこにしまってよ。


「見つかってよかったよ。私、解毒薬関係は教えてもらってなかったから作れなくて、隊長さんに他の町からの仕入れをお願いしてたんだよ」

「そうなのか、じゃあこれからは作れるな」

「練習しなきゃだけどね」

「おう、がんばれ」


ソード君、言うだけ言ってお風呂行っちゃった。

私はレシピ帳読もう。


あー、懐かしいな。母ちゃんの字だ。

この字で読み書き教わったんだよね。

あ、この草が毒蜘蛛の解毒薬の材料か。

採取は一緒に行ってたから、材料は分かるね。

あ、こっちは毒蛇用か。

お、化膿止めもあるね。

明日は頑張って採取して、練習してみよう。

おうち作りはちょっとお休みだね。

早く一人前の薬師になりたいからね。


その日は寝るまでレシピ帳読み込みました。

最後の方に、年齢別のポーションの効き方の違いが書いてあったんだけど、惜しいよ母ちゃん。

同じ年齢で背格好も同じくらいなのに、なぜか効き方が違うって書いてある。

多分、祝福回数で魔力の上限が違うからだよ。

母ちゃん、私がしっかり用法用量見つけるからね。


翌日、さっさと日課済ませて西の森に入りました。

ポーション用の薬草だけじゃなく、解毒薬用の材料も探してるんだけど、ここで思わぬ落とし穴が。

薬草は魔力高いから魔力感知で簡単に見つけられるけど、他の材料は魔力で判別できないから目で探すしかないんだよ。

結構探し回ってるけど、まだ二種類を一本ずつしか見つけてないのにタイムアップだよ。

仕方ない、今日はこれだけで練習しよう。


小屋に戻って、まずはポーション作り。

もう、ポーション作りは慣れすぎててサクッと終わります。


では、いよいよ解毒薬です。

昨日、レシピ帳読み込んだから、手順は頭に入ってます。

読みながらじゃタイミング逃して劣化することもあるからね。

さて、レッツクッキング!…料理じゃないけど。


………手順通りには作ったけど、これ、ちゃんと出来たかどうか判定してくれる人いないじゃん!

ああ、どうしよう…。

あ、ソード君来た。

相談してみよう。


「あ?そんなの簡単じゃん。他の薬師に見てもらえばわかるだろ」

「いや、この村、私しか薬師いないから」

「なんで村限定なんだよ。街に送ればいいじゃんか」

「おー!全然思い付かなかった。すごいねソード君!」

「まてまて、何で俺褒められてんの?そんなの常識じゃね?」

「あー、言い訳だけどね、辺境って基本一人で何とかするんだよ。一人で無理なら助けてもらうんだけど、助けを乞えるのは近くにいる人だけだから」

「うん、なんとなく理解した。王都じゃ薪すら他の街に頼ってるから、外に頼るのが常識なんだ。辺境では内で完結するのが常識なのか。初めて王都の常識が役に立った」

「そうだよねー。知らないうちに村までで完結しなきゃダメだと思っちゃってたよ。やー、まいったまいった」

「じゃあ、俺が父上に頼んどくから、それ、預かるわ」

「あ、ちょっと待って。どうせなら他のも作ってから判定してほしいから、作ったら一度に渡すよ」

「ああ、その方が効率いいな。じゃあ今日も家作るか」

「今日は他に作りたいものあるから、お手伝いはいいよ」

「え?…作っちゃだめなのか?」

「なに残念そうにしてんのよ。さすがに私の家をソード君だけに作らせるわけにはいかないよ。いつも手伝ってもらってるのに悪いよ」

「えーと、実は、……家づくりの勉強したいんだ」

「え?何で?」

「………秘密基地作りたい。土の固め方や補強の仕方、壁のデザインや色の付け方、お嬢に説明してもらうとすげー勉強になるんだ。だから作らせて欲しい」

「えっと、…それはソード君が自分からやりたいってこと?」

「おう、カッコイイ秘密基地作るためには、ここで修行しなきゃだ」

「でも、今日は小山削ってレンガ作りだよ」

「それでもやりたい。俺、まだお嬢みたいな硬いレンガ作れないから」

「あー、高圧縮レンガか。確かに普通のレンガ作って慣れないと、あれは難しいよね」

「あと、作業後の風呂も入りたい」

「お風呂はいつでも入っていいよ」

「いや、しっかり作業した後の風呂は、身体が溶けるみたいでめちゃくちゃ気持ちいい」

「そこまで言うなら手伝ってもらってもいい?」

「おう!喜んでやるぞ!」


ありゃりゃ、ダッシュで小山へ行っちゃったよ。

でも、秘密基地かー。

私の洞窟見て、作りたくなったのかな。

おっと、私も仕事しなきゃ。


まずは小さな水晶をポーションに入れてみて、どうなるかな。

お、やった!少し光ってる。

これなら水晶でポーションのマナを感知出来そう。

でも、光じゃ判別しにくいから、メーターとかがいいな。

うーん………………。


よし、基本設計は――

1.物体を押す魔力変換水晶作成

2.上下に動くシーソー機構の指針作成

3.押される部分と水晶との距離を調整できるようにして、感度調整機構を付ける

4.ポーション瓶に蓋のように取り付けられる構造

5.瓶を逆さにしてポーションが水晶と接触する面積が、常に一定になる構造

6.瓶を逆さにして自立できる構造

7.道具全体を保護し、指針部が透過して見えるガラス窓を付ける

8.ガラス窓に十段階の目盛刻む

うん、こんなもんかな。


………

……

ポーショングレード判定機試作一号、なんとか出来た。

命名、『はかるん』!


早速測ってみよう。

うわ、針が振り切れちゃう。

水晶と指針との距離離して…、再度測定です。


まずは劣化した期限切れポーションは…針が2くらい上がったかな。

じゃあ、森で採った薬草で作ったのは…4くらいか。

洞窟産薬草のポーションは…おお、5.5くらい。

最後は洞窟産濃い緑薬草のポーションは…うわ、9超えたよ。

こんなに魔力量違うんだ。

摘んでからの時間経過、結構差が出るな。


これじゃあ治療効果に違いが出て当たり前じゃない。

これは騎士様に報告して、ポーションのランク分けしてもらわなきゃ。

ソード君が帰る時に、一緒に行こうかな。

あー、またお泊りになるかもしれないけど、この情報は大事だから私が行かなきゃね。


騎士様に渡すから、自分用にもう一個作っとこ。

さっき測った一号君の数値を、二号君の指針が同じ数値になるように刻めば、ある程度規格化出来るよね。


あ、ポーションの検証してもらうには複数あった方がいいね。

もっと作ろう。


はかるん三号作ってたらソード君がお風呂から出て来たので、騎士様への面会を話したんだけど、今日、騎士様いないんだって。

明日の午前中には帰るそうなので、私がお昼過ぎに行くことになりました。


よし、今日は『はかるん』量産するぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る