19.ミスはやっぱり引き起こる

なにも間違ったことは言っていないはずなのに、悪いことをしたみたいだ。

剣を握る手に力が入る。

これ以上考えると取り返しのつかない結論に行き着いてしまいそうで、マッピーは剣を一旦鞘に収め、片足を引いて構えを取る。

小屋の中は静まり返り、しん、と無音の世界が出来上がる。


静寂は一刀のもと、破られた。


ザシャ。

考えなしに振るった斬撃は一瞬でマットレスを五つほどに刻んでしまった。


悩みの解決を器物破損の爽快感とすり替えたマッピーは、なにも解決していないくせに満足げに頷いてマットレスだった欠片を焼却炉へ入れていく。


「……あぁ」


しかしその充足感も、全ての廃棄物を焼却炉に押し込めて扉にロックをかけ、振り返るまでだった。

灰色の床には、誤魔化しきれないほどの深い割れ目が幾筋も入っていた。

マッピーの斬撃は、下のコンクリートまでもを切ってしまったのだ。

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