6.無言の掃除タイム

騒がしい居住者が触手で殴られたりしながら立ち去り、ようやく清掃業務を始める。


毒入りの粘液は乾いたペーパータオルで拭き取った後、専用の消毒液をかけて無毒化する。

これもペーパータオルで吸いとり、廃棄物は密閉できる蓋付きのゴミ箱へ。

毒を取り除けば、いよいよ肉体労働のメインである水で薄めた洗浄液入りのバケツとモップを担ぎ上げる。


まずは廊下から。

端から端まで百メートルほどを直進。

突き当たりにモップの毛先が当たれば、Uターン。少しずれて来た道を帰る。

ごしゅしゅ、洗浄液で床が磨かれていく音を聞きながら、モップを擦り付けて、走って。

マッピーは頭を使わない単純作業が好きだ。

小難しく考えなくても正しいことをしているという爽快さがあると常々思っている。


やがて隅から隅まで、モップが走り終える。

残った廃液を廊下端の排水溝に流し込めば、一段落だ。

輝きさえ放っているような廊下に塗り残しがないことを確認すると、マッピーは達成感にむふんと鼻息荒く、額の汗を拭った。


廊下が終わったので、次は魔族達の個室だ。

もう一踏ん張り、とずり落ちかけていたエプロンの肩紐を、兜の緒を締めるがごとくきゅっと引き締めるのであった。

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