3.触手姫はいじめっこ
「ていうか、ミミック族が日光浴って……」
仲良しの事実の他にもつっこみどころを見つけてしまい、胡乱な目でミミックを見れば、プレゼンタイムとばかりに真っ黒な肌の青年が窓から注がれる日光の下に踊り出す。
しかし悲しいかなその色黒は日焼け由来のものではなく、洞窟暮らしの魔族であるがゆえの保護色である。
「楽しいよ日光浴! お日様の光が暖かくて、まぶしくて、とけてぇいくみたいでぇええー……」
「みたいじゃない、とけてるとけてる!」
廊下に等間隔に並ぶ窓はマッピーの顔すら出せない程の小ささ、しかも嵌め殺しのすりガラスである。
かなり照度の低い日光だが、それでもミミックの身体の輪郭がぼやけてきた。
変幻自在の身体を持つ彼だが、この場合は日光に耐えきれず保てなくなっているだけだ。
それぞれの生息地に対応してきた魔族達の性質、といったところか。
暗闇の中に暮らす3-A区画の彼らは、どうしようもなく光に弱い。
「だからやめときなさいって言ったのに。
ほんとにバカね」
ぺろり。
床へ座り込んだテンタクルが目の前の布を捲りあげる。
布、というか正確に言えばミミックの腰巻き部分である。
位置のせいでマッピーに詳細は分からなかったが、ミミックの後ろに陣取るテンタクルにはその中身がしっかり見えたことだろう。
「ほらぁあああ! すぐそういうことする!」
背後の所業に気づき、ミミックが悲鳴をあげて横へ飛びすさる。
途端、光から逃れた身体が、紙に垂れて滲んだインクが逆再生されるようにはっきりとした輪郭を取り戻す。
廊下の隅、日光の届かない影へ誘導したとも言えるのでテンタクルがミミックを守ったと、言えないこともない。
が、半泣きで腰巻きの裾を押さえつけながら警戒するミミックはなんというかーー
「わざとやってますか、テンタクル」
「さあ、どうかしら」
リアクションが大きいから見てて面白いというか、いじめたくなる反応をしているというか。
子供のいじめなどが取沙汰される昨今、こんなこというと問題になりそうなので、マッピーはそしらぬふりをしてとぼけるテンタクルからついに背を向けて会話を切り上げた。
面倒くさくなったともいう。
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