第3話 絶望の現在
目の前に槍に貫かれながらも両手を広げ、道を塞ぐ大男がいる。
死してなお主人の為に尽くそうというのだろうか。
「無駄に手間を取らせおって。おいお前達、逃げたとはいえ小僧一人、そんなに遠くまでは逃げれまい。早く追うぞ!」
私は率いて来た討伐隊に指示を飛ばす。
「「「はいっ」」」
「………ぴがー」
返事の中に、妙な発言が聞こえた気がする。
「今変な返事を言ったのは誰だ!?。残り小僧一人とはいえ油断するとは何事だ!。猛省せよっ!」
「「「ハイッ」」」
「…ぴがー」
また妙な返事が聞こえる…というか、背後から聞こえてないか?。
目の前に立つ部下が、何やら私を指さしながら明らかに驚いた顔をしていた。
「貴様!。人の顔に指をさすとは何事だっ!!」
「いえ、隊長。後ろ、うしろっ!!」
部下の言う様に後ろを見てみると、絶命した筈の大男がゆっくりと動き、足元に落ちていた長刀を手に取る。
「…‥…キドウカイシします。ぴがー」
そして呆然としてる私を、その丸太の様な腕で激しく薙ぐ。
私はそんな打撃をまともに受け、道脇へと飛ばされ山道に転がる。
「おのれ、まだ息があったとは化け物め!。えぇい、斬れ斬れっ!!」
「「「おーっ!」」」
痛む体を起こし部下達に指示を出すと、刀を取り大男へ向かって一気に斬りかかる。
だが大男は、手の長刀を軽々と振ると眼前の部下数人を一瞬で真っ二つにする。
横に回り込んだ者が腹部へと深々と刀を突き刺すが、全く気にもしていないかの様にその部下の首を掴むと、崖下へとポイと投げる。
それから斬りかかってくる部下を逆に斬り、己は斬られ様が刺され様が気にも留めずに前に出てくる。
そんな鬼神の様な強さに、残ったわずかな部下が後ろへ振り返り逃げ出した。
大男は少し腰を落としたかと思うと、大きく跳躍して逃げ出した部下達の目の前へと着地し、逃げ道を塞ぐ。
「な、なんだ今の跳躍は!?。舟八艘分はゆうに跳んだぞっ!!?」
私はその、明らかに人の範疇を超えた動きに愕然とするしかなかった。
それから目の前の部下達を始末し終えた大男は、ゆっくりとこちらへ向かって歩いてくる。
そして手にした長刀を大きく振り上げた。
「主人を思う余りに、まさに神が与えた奇跡というところか…弟君に追っ手を出すようなあの方は、やはり将の器ではなかったという事なのだろうな…」
目の前の大男が長刀を振り下ろした始めたところで私の意識は消えた…。
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