第2話 やってきた未来



やぁ、初めまして。


私の名は『シュヴァルツ=ディム=ヴィダール』、気さくに『トム』呼びたまえ。


え?、なぜ『トム』なのかって?。


それは愚問というものだよ…私はどう見ても『トム』ではないか、そうだろう『ジェームス』?。


おっと、『ジェームス』は当然君の事だよ。


何故かって?、君がどう見ても『ジェームス』といった感じだからだ…当然だろう?。


どうした?、頭なんか抱えて…頭痛ならおへそに真っ赤に熱した10円玉を貼り付けるとお茶が湧くと聞くぞ?。


頭痛はいいから何をしているのかを教えてくれ?、なんだジェームスはそんな事が気になっていたのか。



私はいわゆる、君達が言うところの『未来人』というものになるな。


そぅ、未来の英知を駆使して過去へ向かい、正しき歴史へと導く者だ。


それは歴史改竄で犯罪じゃないか、だって?。


何を言ってるんだ、間違った歴史を正しくしてるのだから、歴史改正と言ってもらいたいものだね。




ただこの仕事も中々に大変でね、正しき歴史の通りするには人は弱すぎるのだよ。


考えてもみたまえ、普通の人間が武器を持った何百人と本当に戦えると思うかね?。


なので当然そういう英雄譚の陰には我々の努力があるのだよ。



例えば私の先輩の話なのだが、この時代よりもっと前の中国という国に行く事があったそうだ。


そこで、後々の悪役になる恐ろしく強い人間を作る必要があって、少々人体改造を施してね。


そしたら肉体強化の反動で頭に不具合をきたしたらしく、暴れるは、義父は殺すは、主人も裏切るはと無茶苦茶でね。


でも強化しているために普通の人間では全く止めれなくて、仕方なく敵対勢力っぽいパッとしない3人組が居たので、その内2人にマッチョ強化を行ったらしくてな。


その二人にはそこまでの強化をしなかったので頭はある程度まともなままだったんだよ。


ただ、後々一人で数百人を相手に大立ち回りをしたりと、明らかに普通じゃない少々まずい傷跡も残ってね。



それを反省して、改正が終わったら戻せるように強化のリセットボタンを仕込もうという話になったのだ。


そしてそのスイッチを、簡単に押されない様にとボタンの場所を足首にした先輩も居てね。


リセットボタンがあるからと、調子に乗って強化を重ねた結果、その人間がとんでもない化け物に仕上がってしまったんだそうだ。


斬られ様が刺され様が全く傷一つ付かない超人…さすがにこれはやり過ぎだと君も思うだろう…えっと、ジョニー?、いやジェームスだ。


先輩もさすがにこれはまずいと何とかリセットしようと試みたものの、嫌がる超人相手に足首なんか触れるはずもないじゃないか?。


結局誘導式の弓矢型のロボットでなんとか押したりとか色々苦労もあったらしい。



そんな訳で、力を使い過ぎたやり過ぎの人間には自動で自爆させるシステムを組み込む先輩も現れてさ。


そこそこ頑張ってる感じの人間に「使い過ぎたらあなたは死にますからね?」と念を押した上で強化したらしいんだ。


そしたらその強化した人間が、二つの国の戦争を止めるためとダメだって言ったのに、止める先輩の目の前で全力で力を放つ事件があったそうだ。


そのお陰で戦争は回避され、彼は大英雄と語り継がれる事になったんだがね。


ただ、目の前で五体が四散するのを見た先輩はそれからモツ鍋が食べられなくなったそうだ…可哀そうだが、自業自得だね。




さすがにモツ鍋は食べたいという事で自爆システムは止める事にして、使った力に応じて病に侵される時限式を試した先輩も居たそうだ。


その強化をされた人間はそのお陰で天才と呼ばれるほどになり、有名な団体にスカウトもされたそうだ。


ただそこで、調子に乗って力を使い過ぎたみたいで、ビックリするくらい直ぐに病で倒れてね。


結局肝心な時には病気で戦線離脱して役に立たなかったために、その所属していた有名な団体は呆気なくなくなったそうだよ…人体強化とは難しいよね、ジョージ。




そんな先輩の失敗の話の数々を聞かされからさ、私は別の方向性での人体強化を試みようと考えたんだよ。


直接強化してしまっては後々に残る、リセットシステムは色々面倒臭い、ならば外部操作しかない…というわけだ、分かったかね、ジョン?。


というわけで、私は手頃な実験体を求めて日本という国をふわふわ彷徨っているわけなんだよ。


お、なにやら山道の方で人の気配があるね、行ってみよう。



んー…見た所お坊さんが夜盗に襲われている、というところかな?。


これなら多少何か失敗しても後世に残る様はヘマには繋がらないだろう。


ではこの外部操作用のユニットを飛ばしてあのお坊さんに着けるよ。


さぁ、いけ外部ユニット『ジョディー62号改』。



おや、ジョディーが着く前にお坊さんが槍で刺されちゃったね。


とりあえず取り付けてはみたが、果たして絶命後に何とかなるものなのだろうか?。


お、息を引き取って間もないから、まだなんとか行けそうだ。


よし、このままちょっと動かしてみようかね。


よく見ていたまえ、ジョー。


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