BEN-K

更楽茄子

第1話 序



しんしんと降る雪の中、狭い山道を馬で駆ける者がいる。



馬には2人乗っており、二人分の重さと登りを駆け続ける馬の息は大きく乱れていた。


手綱を握っていた大男はそこで馬を止め、一人馬から降りる。



「お前、なぜ降りるのだ?」


「主殿は一人山を越えませい。幸いここは一本道、拙僧が追っ手は食い止めます故に、さぁお早く!」


大男の言に馬上の若き主人は首を大きく左右に振る。


「何を言ってるのだ!?。さぁ、早く乗って一緒に逃げるぞ!」


「いいえ、なりませぬ。このまま2人乗っていては間もなく追いつかれるでしょう。そうなれば2人とも討たれる事になりまする」


大男は馬上の主人をまっすぐ見て笑う。


「なぁに、拙僧の強さは主殿が一番分かってましょう。主殿は必ず逃げ、必ずやあやつを討って下され。それが拙僧の最大の望みです」


「…分かった。だが、命令だ。絶対に死ぬなよ?。絶対だぞっ!」


そして背の軽くなった馬は、また再び山道を駆け始める。



それから間もなく、追って来たらしき集団が馬でやってくる。


大男は道の真ん中で背に背負った籠から大きな長刀を取り出すと、集団に向かって構える。


「主殿…あとは宜しくお願いいたします…。やぁやぁ、あいや、待たれいっ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る