不死身のアリス

渋谷かな

第1話 死にたいアリス

「アリス・・・・・・なんていい響きの名前なんだろう。不思議の国? それともどこかのお姫様かしら? アハッ!」

 ある少女は思っていました。きっとアリスは素敵になれる名前なんだと。

「それなのに!? どうして私の人生は輝かないんだ!? 同じ名前なのに不公平じゃないか!」

 そう、少女の名前もアリスというキラキラネームなのでした。

「私だって輝きたいぞ! 私だって幸せになりたいー!」

 少女の心の叫びは遥か彼方に消えました。

「恨んでやるぞ! 神様め!」

 そして少女は神を呪いました。


「ゲホゲホッ!?」

 アリスは口から血を吐いた。

「これは吐血!? やっと私も死ねる!?」

 アリスは瞳を閉じて横たわります。

「・・・・・・死ねない!?」

 しかしアリスは死にませんでした。

「こうなったら・・・・・・首を斬って死んでやる!」

 アリスは大剣で自分の首をはねて飛ばします。

「どうだ!? これなら死ねるだろう!?」

 しかしアリスは生首として生きています。

「いったいどうなっているんだ!? なぜ私は死ねないんだ!?」

 気が付くとアリスは死ねない少女になっていました。


 なぜアリスが死ねないのか、その理由はこうです。

「生きていても楽しくない! みんなアリスというキラキラネームが重すぎるんだ! アリスだからって「え~!? あの子アリスっていうの、その割には貧乏ね。」とか「アリスって名前のくせに可哀そうな人生だわ。」と散々、陰口をたたかれる私の身になったことがあるか!?」

 不幸なアリスは自殺志望者でした。

「なぜ!? なぜ私なんか貧乏人にアリスという名前を与えた!? 呪ってやるぞ! 神様め!」

 アリスは八つ当たりで神様を呪ってしまいました。

「私を呪うとは不届き者め!」

 その行為が神様の逆鱗に触れました。

「死なせんぞ! 絶対におまえを死なせはせんぞ! おまえは一生生き続けるがいい!」

 逆に神様からアリスは呪われてしまいました。

「え? 私、不老不死なんですか?」

 こうして不幸で貧乏な可愛そうな自殺志願者のアリスは神様によって、不老不死にされてしまいましたとさ。


「人間が不老不死になるなんて、あり得ない」

 自分が不死身になったことに半信半疑のアリス。

「キャアアアアアアー!?」

 その時、横断歩道から女の子の悲鳴が聞こえてきました。

「危ない!?」

 横断歩道を渡っている女の子に暴走した車が突っ込んでいく。

「助けなくっちゃ!」

 咄嗟にアリスは女の子を突き飛ばし助ける。

「ドカーン!」

 アリスが車に引かれ宙に吹き飛ばされた。

「ああ、これでやっと私は死ねる。最後に女の子を救えたのは良かった。これで私もアリスらしく死ねる。」

 そして地面に衝突し粉々のミンチになり血をまき散らすアリス。

「ミョキミョキ。」

 絶命したアリスの血肉が一塊に集まっていく。

「アリス、復活!」

 そしてアリスは生き返った。

「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう!」

 女の子に感謝されるアリス。

「どういたしまして。アハハハハッー!」

 笑うしかないアリス。

「ああ~、私って死ねないんだわ。」

 不死身のアリスが誕生した瞬間であった。


「なんだ!? この動画は!?」

 その様子は野次馬によって世界中に動画配信されていた。

「不老不死だ!」

「永遠の若さだ!」

「高値で売れるぞ!」

 世界中の悪の秘密結社は不死身のアリスの存在を知ることになった。

「アリスは俺の物だ!」

 こうして良いことをしたアリスは悪の秘密結社から命を狙われることになるのでした。


「おまえがアリスだな!」

 そして不老不死を手に入れたアリスの前に変わった人たちが現れます。

「違います。人違いです。」

「え? そうなの。間違いました。」

「では、さようなら。」

 その場を去ろうとするアリス。

「なんでやねん!」

 しかし相手も簡単には騙されませんでした。

「待て! アリス!」

「バレたか!?」

 バレバレであった。

「私は悪の秘密結社ジョッカーの人食い男だ。おまえを食ってやる!」

 現れたのは悪者だった。

「おまえの顔は世界中の裏組織に指名手配されているぞ。不死身のアリスとして有名だぜ。」

「世界中で有名!? やっとアリスらしい人生が歩めるのね! アハッ!」

 命を狙われても幸せそうなアリス。

「死ねえ! アリス!」

「え? 殺してくれるの。やったー!」

 不死身になって、余計に死にたくなっているアリス。

「はあ? なんか調子が狂うな?」

 秘密結社の殺し屋は仕切り直す。

「おまえを殺して、おまえの肉を食って私が不老不死になるのだ!」

「どうぞ。私の肉をかじってください。」

 アリスは笑顔で手を差し出す。

「え? いいの?」

「できれば美味しく料理されて死にたいな。アハッ!」

 アリスの乙女の祈りであった。

「実は私、もう生きるのに疲れたんです。早く死にたいな。アハッ!」

 アリスは生きていても楽しくないので死にたかった。

「それではいただきます!」

 人食い男はアリスの手を噛んだ。

「ああ~、手がもげる。これで出血多量で私は死ねるのね。嬉しい!」

 アリスは昇天する気持ちだった。

「若い少女の生肉は美味しいな。」

 人食い男はアリスの肉を美味しそうに食べている。

「ウウグッ!?」

 その時、突然人食い男が苦しみだした。

「私のお肉は不老不死なので、どんなにミキサーでゴチャゴチャにしても私の体に戻って来ちゃうんです。それとスパイスが不老不死なので、普通の人間の細胞には毒です。アハッ!」

 アリスの肉は普通の人間には猛毒であった。

「は、謀ったな!?」

「恨むんなら天界の神様を恨んでください。」

 バタっと人食い男は息絶えた。

「羨ましい!? 死ねるなんて!? だって私は死にたいんですもの。アハッ!」

 ここに不死身のアリス世紀末救世主伝説が幕を開ける。

 つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

不死身のアリス 渋谷かな @yahoogle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る