第2話 前編
「別れよ?」
「え.......?何言ってるんですか?」
「もうね、疲れたんだ」
「ま、まって」
「じゃあね」
「い、いやだ。まってよ」
「さようなら」
「キョウくん!」
恐る恐る目を開けるとそこにはぼやけた凛の姿があった。
俺の額には大量の汗。
少し頭が痛い。
「大丈夫?キョウくん、すっごくうなされてたよ」
「大丈夫です。ちょっと悪い夢を見てしまって」
そう言ってベットから立とうとすると、視界が歪み、酷い頭痛が俺を襲った。
「どうしたのキョウくん!?うわっ。すっごい熱」
どうやら俺は熱を出してしまったらしい。
確かに自分の体が異常に重く感じる。
俺が最後に熱を出したのは小学3年生の時以来でその時はお母さんに看病をしてもらった。
しかし、今は一人暮らしで家に薬もない。
しまったな。風邪薬くらい常備しとけばよかった。
今更後悔していると、リビングの方で凛が高校に連絡を入れていた。
しばらくすると戻ってきて、「今日は仕事休んだからゆっくり休んでね」と話した。
「本当にすいません。仕事まで休んでもらって」
「病人が気を使ってないで、今日は私に任せなさい!」
凛はニコニコした顔でそう言った。
俺は安心したからなのか、布団に入るとすぐに眠ってしまった。
「早く治りそうでよかった。ふふっ。キョウくんの寝顔かわいい」
そう言って凛は部屋を出ていった。
俺は寝たあと順調に熱は下がっていった。
そして、午後6時ごろには既に平熱に戻っていた。
リビングに向かうと、そこにはテーブルに突っ伏して寝ている凛さんの姿と『風邪の治し方』と調べられているパソコンが置いてあった。
「キョウくん〜。元気になってね〜」
寝言なのか、そんなことを口にしながら寝ていた。
「ちょっと起こしにくいな.......」
可愛い寝顔と優しい寝言を聞き、俺はもう少しこれを見ていたいと思った。
そんなことを考えていると、「あれ〜?キョウくん。熱は下がったの?」と話し出した。
また、寝言だった。
俺は静かに凛に毛布をかけた。
そして、俺も向かいの席に座り一緒に寝た。
起きると時刻は朝の6時だった。
俺は相当疲れていたのか、あのまま寝続けてしまった。
また、凛も変わらず幸せそうに寝ていた。
俺は先に起きたのでお風呂に入り朝食を作った。
すると、凛も起きてきた。
「キョウくんおはよう。熱は下がった?」
「はい。ありがとうございます。本当に助かりました」
「いえいえ、治ってよかったよ」
改めてお礼を言うと、凛さんは優しくこう返した。
「朝食の準備しますね」
そう言うと、後ろで「ドンッ!」と思い音が響いた。
振り向くと、そこには倒れた凛が苦しそうな顔をしている。
「だ、大丈夫ですか!?凛さん!!」
「あはは、キョウくんが2人いる。」
「すごい熱だ。もしかして俺のが....」
俺はすぐにベットへ運び、体温計で熱を測った。
そこには、38.8度と見たことも無い数字が並んでいた。
凛は全身に汗をかいていて、とても苦しそうにしていた。
とにかく、俺は昨日凛が買ってきた風邪薬を飲ました。
俺は風邪に対して何が良いのかがあまりよく分からなかった。
「あ、そうだ。パソコン」
昨日、凛が見ていたパソコンで風邪の対処法を調べた。
『手を握ってあげる』
そう書かれたサイトが目にとまった。
俺は半信半疑で凛の手を握った。「キョ...ウ...君。そばにいて」
そう苦しそうに言った凛を見るのは辛かった。
そして、俺は強く手を握りしめ、「治るまでずっとここにいますよ。」と言った。
すると凛は落ち着いた表情に戻り、眠りについた。
よ、よかったー。
大きなため息を吐き、凛さんが落ち着いたことに安心した。
「手を握るのは本当に効くんだな」
少し関心していると、凛の手にギュッと力が入った。
その手は汗で冷たく感じたが、同時に温もりも感じた。
俺は微笑みながら、凛が目覚めるまでずっとその手を握っていた。
凛は午後3時くらいに目を覚まし、熱は微熱まで下がっていた。
「順調に下がってますけど、今日は大人しく寝てましょうね」
「あはは、ごめんね、キョウくん」
「お互い様です。元はと言えば俺の風邪が移ったのが原因ですから」
俺はこれから常に風邪薬を常備しとこうと思った。
自分の好きな人のために。
時刻は8時を過ぎたところ。
凛さんの熱は完全に治り、いつもの元気が戻っていた。
「キョウくん!今日のご飯どうする?何も材料買ってないけど」
「そうですね。2人とも風邪ひいたんで、暖かい雑炊にでもしますか?ご飯と卵のシンプル味付けで」
「いいね!それ!じゃあ、早速作るから待っててね」
今日の晩御飯が決まったところ、俺宛にメールが届いていた。
相手はお母さんだった。
内容はとても恐ろしいことが書いてあった。
『抜き打ち定期確認に結衣を送りました。明日から土曜日だから1晩泊めてあげてね』
「えええええー!!!」
結衣とは俺の妹のことだ。
そして、俺は家族に凛さんと付き合っていることを伝えてない。
俺のお母さんは少ししつこい部分があり、妹とお父さんは隠し事ができない人だ。
そのため、俺は凛さんの存在すらも伝えていない。
そんな中、妹が来るってなったら.......。
ピンポーン
インターホンがなり、勝手に玄関のドアが開く。
そして、凛は玄関へ向かう。
「え。あなた誰?」
「えっと。どちら様?」
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