第45話 次の日
ヒロがいなくなった次の日の夕方。
交差点には人が集まっていた。
泣いている山崎純子を山崎美智子と山田耕助が慰めている。
純子から榊怜子が話を聞いている。
「それじゃあ、昨日のお昼に会って以来ヒロくんを見ていないのね」
「うん・・いつも、こんなに交差点に来なかったこと無いのに・・」
鳴きながら質問に答えている。
「ヒロくん・・どうしたのかしら・・」
松下奈美も心配している。
「あなた、なにか見ていないの?」
怜子が立花恭兵に聞く。
「いや、俺もその時間はいなかったし・・」
実は、山崎純子を見守るために交差点から離れていたのだ。
すると、そこに通りかかったのは本庄武史だった。
「ええと、なんの騒ぎ?」
妹と一緒に買い物に来たらしい。
「あぁ・・ここにいつもいるヒロって少年がいなくなったので、みんなで話しているんだよ」
耕助が教えると、妹の本庄瑠璃子が言った。
「ヒロ?昨日見たけど?」
「「「え?」」」
みんなが驚いて瑠璃子を見た。
「え?どこで?」「どこで見たの?」
囲まれて一斉に聞かれ、驚く瑠璃子。
「どこって・・・ここでだけど・・」
「いつごろに見たのかしら?」
冷静に聞く怜子に対して、瑠璃子は小さな声で答えた。
「お昼頃・・・ここから走っていく所を見たんだ。交差点を離れるの珍しいなぁって思って・・」
「え?どっちにいったの?」
「通りを渡って、あっちに行ったよ。その時・・・なんか言ってた」
「なんて言ってたの?」
「とらば・・・とらばと?なんのことかわからないけど・・」
みんな、ぽかんとした顔をする。
なんのことかわからない。
そのときに、通りかかった女性が話しかけてきた。
「Trovato? それなら、イタリア語で”見つけた”ね」
通りかかったのは、イタリアンレストラン『レガーロ』の奥さんだった。
「見つけた・・・・?」
みんな、ぼうぜんとしている。
「ヒロくん。ここに人を探しに来てるっていつも言ってたね・・」
松下奈美がポツンと言う。
探している人・・・それがついに見つかったということ。
少年は、ついに目的を果たしたということ。
それはきっといいこと・・・ヒロにとって、とても良かったことなんだろう。
でも、それならば
もうヒロはここに来ないのだろうか・・・?
誰も、答えを持たないまま立ち尽くしていた。
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