第38話 母と子

「あ・・・」


 ゴールデンウィークに入った4月末。

 いつものように少年が手すりの上で交差点を見つめている。

 その足元で、これまたいつものように山崎純子がスケッチをしている。


 昼過ぎに、純子は歩道の方を見て声を漏らしたのだ。


「どうしたの?」

 少年が聞くと、少女は少年を見上げて困ったように言った。

「例の子供・・見つけちゃった」


 ヒロが歩道の方を見ると、子供が歩いているところである。

 確かに、この間見せられた少年とよく似ている。


 ただ、一つ問題は・・・

 母親と思われる女性と手をつないで歩いているというところだ。


「これが、迷子か行方不明なら問題解決済みだろうね」

 ヒロが言う。だが、釈然としない口調である。

「それならいいけど・・」

 少女もスケッチをしながら言う。どうやら、母子のスケッチをしているようだ。時間もメモしている。

「まぁ。あとで恭兵さんに会ったら言おうか」



 夕方、立花恭兵が交差点にやって来た。

「やあ、ヒロ。頼んでた人探しの進捗はどう?」

「僕のほうが先に頼んでたと思うんだけど・・」

「ごめんな~。そっちはちっともわかんない。それで、どうよ」

 ヒロは、恭兵を見てため息をついた。

「写真の少年って、まだ探してるの?」

「もっちろんよ~、で・・・どうなんだよ」

 ヒロは、困ったように言う。

「今日見かけたよ」

「え?まじ?ほんとかよ!なんですぐ言わないんだよ」

「連絡方法知らないもん」

「電話番号わたしたろう!」

「そうだっけ?」

 とぼけるヒロ。

「それで!いつどこで見たんだよ」

「昼頃、ここの歩道で見かけたよ。ただ・・・」

「ただ?」

「母親と一緒だったみたい。探してるのって家族じゃないの?」

 ポカンとする恭兵。

「あ・・・あぁ。そうらしいんだけど」

「僕の予感を言っていい?」

「あぁ・・なんだよ」

「たぶん、この件をこのまま続けると・・ものすごく面倒なことになるよ?」


 立花恭兵は、それに対しポカンとした。

「かもな・・・」


 だが、にかっと笑って言った。

「だから・・燃えるぜ!」


 ヒロは思った。


”あ・・・こいつ、バカだ”




◇◇◇◇◇

『大国主大神と水の精霊との出会いの話』

https://kakuyomu.jp/works/1177354055266589888


カクヨムコン短編部門で参加してます。

この作品の関連作品となります。


つまり・・・

   どちらも、同じヒロが主人公ですよ。

良かったら読んでみてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る