第31話 GWの予定

「こんにちわ、奈美さん」

「こんにちわ、ヒロくん。暖かくなってきたね」

「あ、おばさん」

純子の言葉に、怒りをこらえながら、松下奈美は言う。

「おねえさん!あと、私には松下奈美って名前があるの!覚える気ないの?」

「ない」

そっけない純子。

相変わらずスケッチブックに鉛筆を走らせている。

「奈美さん、今日は休日出勤?お疲れ様」

「そうなのよ、困ったっもんねえ。昼ごはんを食べようにもどこも混んでて」

GWはまだだが、人がかなり増えている。

「じゃあ、ご飯はどうするの?」

「ここで食べさせてもらうわ。サンドウィッチだけど」

そう言って、コンビニの袋からサンドウィッチを取り出す。

ヒロの方につつつっ・・と近づき、手すりに持たれかける。

「ヒロくんも食べる?あーん・・」

「おばさん、暑苦しい」

「な・・何が暑苦しいのよ」


「ところで、ヒロくんはGWの予定はあるの?」

「もちろん!  ここに来るよ」

「あはは・・やっぱり」

予定がないと言ったら、奈美は遊びに行こうと誘うつもりであった。

「奈美さんは予定はあるの?」

「予定無いのよ。一日だけ学生時代の友達と遊ぶ約束してるんだけどね」

すると、純子がツッコミを入れた。

「デート」

「で・・で・・デートじゃないわよ!?」

「なあるほど、同窓会であった人と遊びに行くのかな?」

ヒロも言う。

「あ・・・あの、バーベキューに誘われたから行くだけだからね。誤解しないでね」

「それはデート」

純子のツッコミは今日も激しい。


そこに、榊怜子が私服でやってきた。

「こんにちわ、怜子さん。今から帰るの?お疲れ様」

「こんにちわヒロくん。純子ちゃん。奈美さん」

「こんにちわ」

「・・・婦警さん?」

「なぜ、疑問系なのよ」

「怜子さん。奈美さんは今度、彼氏さんとバーベキューに行くそうだよ」

「か・・彼氏じゃないわよ?」

「それはいいわね。犯罪に手を染める前に彼氏とくっついちゃえば?」

「犯罪って・・・」

少年はキシシと笑った。


「ところで、ヒロくん宛に手紙を預かったんだけど」

怜子はかばんから出して、少年に手渡す。

「おばあちゃんからなんだけど、なんなの?」

手渡されたのは絵葉書。

4月なのに、紅葉の絵が書いている。

文章はない。絵だけだ。


それを見た少年。

ため息をつく。

何やら忙しいGWになりそうだ。

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