第27話 にぎやかな春の交差点

3月下旬の水曜日。桜が満開の季節。

交差点は、いつもより人の数が多い。

おそらく、花見に来た人も多いのだろう。

会社の昼休みに交差点に来た松下奈美は驚いた。

「こんにちわ、奈美さん」

「あ、おばさんだ」

山崎純子は相変わらず、容赦がない。

「な・・なんで、あんたがここにいるのよ?」

「え?春休みだから」

たぶん、そういうことを聞いているのではない。

「奈美さん、お仕事お疲れ様。もうお昼ごはん食べたの?」

「うん、パスタを食べたよ〜」

「それは良かった」

ニッコリ笑う少年。

”やっぱり、癒やされるなぁ”

そう思う。

「なんか、顔がいやらしい」

「どこが!?」

するとスケッチブックを見せてくる。

そこには、松下奈美のデッサンが描かれている。

にへら・・と笑っていて、崩れた表情である。

おそらく短時間で描いたはずだが特徴がよく出ている。

「ちょっと、そんな表情してないわよ!」


そこに、交差点を渡って山田耕助がやってきた。

「よう!にぎやかだな」

「こんにちわ、耕助さん。これからバイト?」

「おう、そうだよ」

すると、純子が耕助を見て言う。

「あ、お姉ちゃんの彼氏さん」



ぽかんとする一同。

「あ〜〜!純子ちゃん?大きくなったなぁ」

「え〜?そうなの?」

「へえ、瑠璃子さんって純子さんのお姉さんだったんだ」

「そうだよ」

「すごい偶然ね」

「耕助さんって、瑠璃子さんと付き合って長いんだよね。純子さんとあったことはあるの?」

「あるよ、家に遊びに行ったときに。3年くらい前だなぁ。その頃は中学生?」

「多分そう」

「へえ、確かに偶然だね、不思議な縁だね」

そう話している間も、純子はスケッチブックに鉛筆で絵を描いている。

集中しているのか、口数が少ない。

少年も、交差点を行き交う人をいつものように見つめている。

「じゃあ、バイトあるから俺は行くね。じゃあまた!」

「私も、会社に戻らないと、じゃあヒロくんまたね」


交差点に少年を中心に人が集まりつつある。

にぎやかになりつつある春であった。

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