第20話 幕間 人魚姫の独白 (一部修正)

「おはよう、体調はどう?」

ヒロはいつも体調を気遣ってくれる。

それも仕方ないことなのかもしれない。

この命も後数年持つかどうか。

「平気よ、ありがとう」

「それは良かった」

ニッコリと微笑むヒロ。

だけれども、その奥にある心は隠しきれていない。

「残念だけど、まだ見つからないよ」

「無理しないでね、私はまだ大丈夫だから」

ここは今は朝。日本は夜だろう。

日本において、昼間はあの子を探し続けている。

夜になると、毎日来てくれる。それは大変なことだろう。

だけれども、ヒロは何も言わない。ただ、毎日来て一緒にいてくれる。


私は海には入らず砂浜に座っている。

ヒロは、私の隣に座って肩を抱いてくれた。

「ヒロ、そんなふうに悲しまないで。私は十分幸せよ」

「あぁ、わかってる」

「それと・・もう、彼を恨まないであげてね」

「わかってる・・・」

わかってる・・だけれども、割り切れていないのもわかる。

「そういえば、あの高校の卒業生に会ったよ。松下 奈美って知らないかな?」

「ううん・・聞いた記憶はないわ。多分同じ時期にはいなかったのでしょうね。」

数年前、精霊である私は日本で人間の高校生の真似事をした。

それはそれで、楽しかった思い出。

「そうだろうね・・」

でも、あの事件が会ったのもその時。

精霊である私がもうすぐ死ぬことになる原因となった、あの事件。

「もう、あの事は忘れましょう?私は高校生になって楽しかったわ」

「そうだね・・・」

「私は、日本であの子にも会えたしね」


----



私は日本に行ったとき、あの少女に出会った。

人間でありながら魂の器を持つ少女。

私は彼女と交流を持った。

あの子なら、もしかすると精霊になることができるかもしれない。

だけれども、それは・・あの少女が人間ではなくなるということ。




あぁ・・それでも・・







私はわがままだ。

私はわがままを言い、そのせいでヒロはあの少女を探し続けている。

私のわがままで、あの少女は人間ではなくなるかもしれない。





それでも、私は願わずにはいられない。






私の最期のわがまま。

もうすぐ、私は死ぬ。それは仕方のないこと。

それでも、願わくば・・・

私が死んだ後、ヒロを一人ぼっちさせたくない。


----


僕は毎日彼女に会いに行く。

会うたびに彼女の命がどんどん減っているのがわかる。

壊れてしまった彼女の魂の器。そこから命が流れ続けている。

もう、あと数年持つかどうか・・

水の精霊なのに、ここの海の水ですら不純物によって体力を消耗している。

もっと、水のきれいなところに移動しないと。

ここは彼女の故郷だから、できればここにいさせてあげたかったのだけど。


彼女の肩を抱きしめる。

彼女は微笑んで見つめ返してくる。

初めて会ったときと変わらない、その瞳。


初めて会ったとき、瞳をキラキラさせて彼女は僕に言った。

『私、あなたと一緒に行くことにするわ!ねえヒロ。私とあなたが一緒なら何でもできる気がするの!!』

あれから、ずっと一緒に行動してきた。彼女と一緒なら、本当に何でもできた。

それなのに、こんなことになるなんて。



もう、僕にできることは彼女の最後の望みをかなえることくらいしかない。

彼女が日本で会ったという子に会いたいという望み。

その願いをかなえるためなら、僕は何だってする。

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