第14話 坂井 かりんのクリスマスプレゼント
「こんにちわ、天使さん」
少年は困ったように、少女を見る。
「こんにちわ。僕は天使じゃないよ?」
小学生くらいの少女。坂井かりんは少年の抗議を聞いてないかのように話してくる。
「天使さん、寒くないの?」
「カイロを持ってるから平気だよ」
「ふうん」
「今日はかりんちゃんは用事があるの?」
「クリスマスプレゼント買いに来たの!」
「クリスマスプレゼント?誰にかな?」
「ママとパパ!」
満面の笑みで答える。
「今日は誰と来たのかな?」
「ママと来たんだよ」
「そうなんだ、プレゼントなに買うか決まったの?」
「うん!決まっているの。」
「へぇ・・何かな?」
「秘密!」
「秘密なんだ」
「かりんちゃんのプレゼントはサンタさんにお願いしたのかな?」
「やだなぁ、サンタさんがいないことはもう知ってるよ?」
「そうなんだ」
「でも、天使さんはいるけどね」
「ええと・・」
「じゃあ、ママが来たから行くね。バイバイ天使さん。」
「バイバイかりんちゃん。またね」
横で聞いていた榊 怜子は少年に聞いた。
今は昼前。少年のところで話をしていたところで、少女が来たのだ。
「ええと・・・・天使?」
「かりんちゃんは、なぜかそう呼んでくるんだよ。」
困ったように言う。
「心当たりはあるの?」
「全く無いよ」
「ふうん・・・」
そして、少年をじっと見てもう一度言った。
「天使なの?」
少年は苦笑しながら
「やだなぁ、怜子さんまで何言うの。やめてくださいよ。」
ーーーー
少女は、キャラクターグッズなどを売っている店でお目当てのものがあるのを見て、嬉しそうに笑みを浮かべた。
一緒に来た母親は店の外で待たせてある。
店員が声をかけてきた。
「お嬢ちゃん。これが欲しいの?」
「ううん。私が欲しいんじゃ無くて、プレゼントしたいの。」
「そうなんだ、クリスマスプレゼント?」
「うん、そうなの」
「1つでいいのかな?」
「違うの、3つなの。」
「別々にプレゼントするのかな?」
「うん!別々!」
「それじゃあ、ちょっと待っていてね。」
そうして、少女はお目当てのものを抱えて店の外に出てきたのであった。
そこで待っていた母親。
「かりんちゃん、何を買ったのかな?」
「秘密!」
ーーーー
クリスマスイブの日。
いつものように交差点の横の手すりに座っている少年。
そこに、坂井かりんはやってきた。
赤いコートに白い手袋。
可愛らしい服装である。
向こうでは、母親が待っている。
「こんにちわ、かりんちゃん」
「こんにちわ天使さん。」
「ええと、僕は天使ではないよ?」
「天使さん、メリークリスマス。」
少女は少年に紙の包みを差し出した。
「かりんちゃん、これは・・」
「クリスマスプレゼント!天使さんにはお世話になったから!」
「ありがと・・・開けてみてもいいかな?」
「うん!」
包みを開けると、人形がでてきた。
背中に白い羽根と頭には輪っかのある少年。天使の人形である。
「天使さん、そっくりなの!」
「ありがとう。嬉しいよ」
にっこりと笑う少年。
「じゃあ、かりんちゃんに僕からも・・」
背中に背負っていたデイバッグから、紙の包みを出して、少女に手渡した。
まるで、少女が来るのがわかっていたように・・・
「はい、メリークリスマス。」
「ありがとう!」
「開けてごらん」
ガサゴソと包みを開けると、白い暖かそうな帽子。
少年はそれを少女にかぶせてあげる。
今日の少女の服装によく似合っている。
「ありがとう!天使さん」
「こちらこそ、ありがとう。」
にっこり笑う少年。
「ほら、お母さんが待ってるよ」
「うん、またね!天使さん。」
「またね、かりんちゃん」
手をふる少女に手を振り返す少年。
クリスマスらしい一幕であった。
隣で一部始終を聞いていた耕助が聞いた。
「・・・・天使?」
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