第13話 山田 耕助のクリスマスプレゼント

「おつかれさまっす」

山田 耕助はスポーツ用品店のバイトが終わり、家路につく。

途中で、あったかい缶コーヒーを買う。


そして、駅の近くの交差点まで来る・・そこには、手すりの上に座る少年。

「こんばんわ、お兄さん。」

「おっす。もう暗いのにまだいるのかよ。ほれ」

缶コーヒーを少年に渡し、隣で手すりにもたれて自分も缶コーヒーを飲む。

「バイトの帰りかな?お疲れ様」

「おう、ありがとよ。ここにいたら寒いだろう。」

「カイロを持ってるから平気だよ。コーヒーありがと。」

少年も缶コーヒーを飲む。

山田耕助はたまに少年にコーヒーなどをおごるようになっていた。

なんとなく、弟みたいな気がするという理由だからだ。

二人で街を眺めながらコーヒーを飲む。


街は、クリスマスの飾りつけでにぎやかだ。

いつもより、行きかう人の数も多い。

「バイト忙しかったんじゃない?」

「まぁな。クリスマスプレゼントを買う人が多いからなぁ。」

「おにいさんはクリスマスは彼女と過ごすの?」

「いや、彼女は家族と家でお祝いだってさ。前の日には会うけどね。」

耕助も、彼女も大学生。二人とも実家暮らしだ。

「へえ、うまくいってそうでよかったね。」

「まぁな。お前はクリスマスの予定は?」

「もちろん」

キシシと笑って言った。

「ここに来るに決まってるじゃない。」

「やっぱりな」

苦笑する耕助。

「それにしても、クリスマスプレゼントかぁ。何にしようかね。」

「まだ買ってないの?」

「うーん。いいのが無くてね。」

「香水とかは?」

ニヤッと笑って言う。

「流行の歌かよ。さすがにそれは安直だよな。」

「別れたカップルの歌だしね。」

「おまえ詳しいなぁ・・。でも、なんかいいアイデアないか?」

「アクセサリーとか?」

「高いしなぁ・・どんなのが似合うか難しいんだよ。」

「ふうん・・彼女の趣味とは?」

「ライブに行ったり・・あとは映画とか?」

「ふうん・・・他には何かないの?」

鳶色の瞳で、いたずらっ子のように笑いながら見つめてくる。

「そういや、美術館によく行くとか言ってたな。俺は行ったことないけど。」

「じゃあ、なんか絵とか置物を贈るとか?」

「なんか高いんじゃないか?」

「複製品とかなら買えるんじゃない?」

美術なんか、さっぱりわからないんだが。

「まぁ、この近辺にはギャラリーとか美術品のお店があるから見てみたら?」

「うーん・・・考えてみるよ。」


その後、たまたま通りかかった時に見かけた美術品店を覗いた耕助。

その店頭に置かれたガラスの置物に耕助は、一目ぼれしてすぐに購入した。

幸いそこまで高い金額ではなかった。

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後日。それを彼女にプレゼントしたところ、物凄く喜ばれた。

”意外とセンスがよかったのね”

と言われて、耕助も悪い気分ではなかった。

彼女は、それを自宅のリビングに飾った。

すると、父親にも気に入られたらしい。

期せずして、彼女の家においても耕助の株が上がったのである。

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