第103話『人魚』
船内は騒然となった。何しろ人魚の登場である。
歳は中学生くらいか?幼さが残る少女である、人魚と言う言葉通り、下半身がお魚だ、しかし貝殻のブラはしていない。普通に水着の上を着ていた。
髪は水色で髪の端に行くほど紫色に変色していくと言う実にファンタジーな髪の色をしていた、ボブカットである。人間の耳の辺りが魚のヒレみたくなっている。
頭の貝殻はオシャレアイテムかな?歳はまだ子供だが、将来は確実に美女になれるであろう美少女だ。
そんな美少女が私が発動した魔法でグルグル巻きにされて簀巻き状態で船内に転がされた。
って何時までも放置するのは酷いよな、ここは人魚って万が一にもモンスターでこっちを襲って来ないかどうかをシアちゃんに聞いてみるか。
「シアさん、こっこの人魚って解放しても平気なんですか?私は人魚と言うのに会った事がなくて、よく分からないのですが」
「おっ俺に聴かれても、俺も人魚なんて初めて見たからな、ボスならともかく俺にはわからん」
え?このアルバトラスの近くに住むシアちゃんでも知らないの?ならもしかしてかなりのレアな存在だったりするのか?。
「イオさん、この辺りで人魚とはどの様な扱いなんですか?」
困った時のイオちゃん先生だ。
「にっ人魚とかまた……このアルバトラスにも伝説の中にだけ出て来る存在ですよ、歌声が美しいとか泳ぎは速いとか、私も今の今まで実在するなんて思ってもいませんでした……」
成る程、イオちゃんの目が研究者見たいに怪しい気配をしてるのは探求心が刺激されてるのか。
ユーリとリエリは無言で臨戦態勢を取っている、情報が無い相手には2人は手抜かりはしない。
「にょあぁあっ!おのれこんな鎖~~っ!離せ!離すのですーーーっ!」
………取り敢えず解放しようかな、子供を何時までも簀巻き状態にしてるのはあんまりだし、もしも襲ってきたらゴーレムツインズが動ける様にしてるから大丈夫だろう。
私は魔法を解除した、そしてあまり近付き過ぎない様にしながら話し掛ける。
「こんにちは、私は青野と言う旅の者です。貴方は人魚の様ですが。ここには何か用事が?」
「用事も何も、貴様の魔法で拿捕されたのは魔法を使ったら貴様が1番ん分かってるでしょうが!ヌケヌケとよくそんな事が言えますね!?」
……確かに、言われて見ればその通りだった。
私は魚を捕らえるつもりで魔法を発動した、そしてどうやら魔法が魚だと判断した1番近くの存在がたまたま彼女だったのだ。
私が吊り上げる予定だった魚はどこへ?謎は尽きない。
「む?俺とアオノのエサが絡まっている?」
成る程、どうやら素人の凡ミスだったか、謎は全て解けた。
…………子供人魚よっ本当にごめんなさい。
私は素直に謝る事にした。
「人魚さん、本当にすみませんでした。見ての通り私達は釣りをしに来ていまして、どうやら熱が入り過ぎていたみたいです」
シアちゃんから、コイツ魔法まで使って魚をゲットしようとしたなって感じの冷めた視線を感じる、私はその視線を無視した。
子供人魚も似たような視線を向けてくるよ、挟み撃ち的なヤツである。
「私の名前はミチェルです、まぁ突然の事で取り乱したのは私にも非礼があったので、お互いそこは水に流しましょう」
子供人魚。おっとな~~。
「我々人魚はその存在を基本的に秘匿しています、理由は言えませんが、本来なら出会った人間や他の種族には魔法で我々の事は忘れて貰うのです……」
成る程、それなら人魚がずっと伝説の中にしかいなかった理由は分かった。
もしかしたらこの世界でも人魚と血とか肉には不老不死的な効果があるとか言われてるのかも知れない。
こんな風に当たり前の様に会話が成り立つ種族だ、それにこの子供人魚ですらこれだけの美しさを持っているのだ。
人間や他の種族とすら下手に関わると碌な未来が浮かばないのは、私が悲観的な人間だからだろうか。
「……しかし実は今私はとある人物を探している、その方について何か情報が欲しいのです」
「とある人物?」
人魚の知り合いとかかな?。
「それならどう言った方か話して見てくれませんか?私がかけた迷惑料代わりにその人物について人間の街で探して見ましょう」
「………そ、そうですか?それは助かるのですが」
嬉しそうな子供人魚である。
しかしシアちゃんが、コソコソと私に話し掛けて来た。
「おいっそんな安請け合いをして平気なのか?あの伝説の人魚が探している者なんて何者なのかわかったもんじゃ……」
「まぁ人を探す手段なら幾らかありますから、実在する人物ならそこまで手間は掛かりませんよ」
私の魔法なら目的の人物が星の裏側にいても見つける事が出来るのでね。
それにイオちゃんだけでなくユーリとリエリも興味深いって感じで関心を示す人魚。
この実にファンタジーな人々とお近づきになれたらこの夏休み、きっといい思い出の1つになるに違いない。
そもそも困ってる様だし見捨てる様な事は出来るだけしたくない私だ。
「ではミチェルさん、その方の特徴とか外見とかを教えてくれませんか?」
「いっいや、実は私が知っているのは同胞がその方に世話になったと言う話を聴いただけなんです、それ故にそこまで大した事は…」
「成る程、それでは何をした方なのかだけでも教えてくれませんか?」
人魚が探す存在、まぁアルバトラスにいるのかまでは分からないがスーツイケメンとかに話せば何かしら情報くらいは…。
「実は今、この海の同胞達が何者から呪いの類を受ける事が度々起こっていて。私達人魚は気を揉んでいたのです。するとその呪いを一瞬で回復させたと言う者が現れたと聞いたのですよ!」
「「…………………」」
無言なのは、私とユーリだ。
「ああっその呪いを解いて貰ったと言う同胞達の話によれば相手は恐らく人間、ボケ~ッとしてる顔立ちで肌が黄色いとかっなんとか、後はそこそこ歳をとっていて……」
「「…………………」」
この無言はイオちゃんとリエリな。
ってかボケ~っとしてる顔立ちってなんだよ、そこそこ歳をとっていてって流石に三十路相手にその説明は酷くね?。
呪いを解いてもらっといてそんな風に説明してたのかあのカニとロブスター共め。
「………………おいっまさかお前の同族じゃないかアオノ?」
「同族っと言うより、私ですね」
シアちゃん的には私をボケ~っとしてる顔立ちの肌が黄色い一族だと認定してるっぽいセリフだ、それなら平たい顔族の方がまだマシだよ。
「なっ!?きっ貴様があの厄介な呪いを解いた人間だと言うのですか!?」
「ええっまああの時はたまたまでしたけど」
「信じられません、こんな偶然があるのですか?しかしその顔立ちと黄色い肌は確かに聴いていた物と同じではありますね……」
まぁ確かに出来すぎた話だとは私も思う、けどそこに疑問なんて持っても話が進まないのだ。ならさっさと話を前に進める方が私は良いと考える。
「う~ん、1番簡単に証明するには呪いに掛かった誰かの呪いを解除する事ですが、それならむしろミチェルさん達が私を探していた理由を想像する限り問題はないのでは?」
「ッ!?……そうか、やはり頭が良いですね、私達人魚が貴様を探す理由について理解していると?」
「いえっ呪いを解いた者を探しているのなら、普通は誰かの呪いを解いて欲しいんだと考えるものですよ?」
私の指摘に子供人魚はまっそれもそうですねって顔で頷いた。
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