第104話『報酬は……』

話は船内にて続けられる。


「素直に言うと、アオノとやらの言うとおりです。私達人魚の国は今、その呪いによって大変な事になっている」


「……大変な事ですか?それは一体」


「話したいのは山々なのですが、流石に私の独断で全てを話す事は出来ません。そこで時間を少し貰えませんか?」


「確かに、それは最もですね、ミチェルさん達の方に時間的な余裕があるのなら、私達は構いませんよ」


いきなりな話で私も戸惑っているのは同じ、ここはお互いに誰かの意見を聞く時間が必要だろう。


何しろ、人魚の国が大変らしいからな、中々に大事である可能性は高い。


「すみません、突然こんな話をしてしまって、恐らく数日は話し合いに時間が掛かると思うのですが……」


「人魚の国の一大事言うことなら仕方ないかと、しかし1度別れてしまうと私達の居場所を探すのは大変だったりしませんか?」


「いやっこの辺りの海の近くなら、私達人魚ならまず探している相手を見つける事が出来ます。1度会った相手なら確実にですね」


マジで?人魚スゲェ。


「分かりました、それでは後日にまたその話を…」


「ふむ、それでは失礼しましたっ!」


言うと子供人魚は船からダイブ、青い海に消えていった、あの魚な下半身で上手いこと泳ぐものである。


そしてイオちゃんは折角会えた人魚が直ぐにどっかに行ってしまってガックシしていた。

シアちゃんは何やら考え事をしている。


ゴーレムツインズは特にリアクションはなし、多分頭の中で今後私達がどう動くべきかを色々考えているんだろう。


取り敢えず1度アルバトラスに戻るか。


「ふうっそれにしても釣りをする気分でもなくなってしまいましたね、ここは1度アルバトラスに戻りましょうか?」


私の言葉に同意する面々。

まぁアルバトラスに戻ったからと言って何か出来る訳でもないのだが、向こうさん待ちである。


話し合いが数日は掛かるって言ってたし、私達が慌てても仕方がない、助けを求められたら頑張るだけの話だ。


っと言う訳で陸を目指して帰還する事にした。


◇◇◇


そしてレンタルしてた魔導船を返してから我々は1度停まっている宿泊施設に帰る事にした。


シアちゃんは転移魔法で自分達の集落まで一瞬で帰れるので建物の前で別れた。


移動中はイオちゃんがかなり興奮していて本当に人魚がって話を何度もされた。

やはりあの人魚との出会いは相当にレアな体験だったのだろう。


そんなイオちゃんの相手をリエリと私の交代性で対応した。ユーリは面倒くさかったのか距離を置いていたな、お陰で私が話を聴くことになったぞ。


まぁ美人とのトークなんて前の世界では縁もゆかりなかったイベントだ、私的にはとても楽しい物なので嬉しいけどな。


その後はそれぞれの個室でそれぞれの時間を過ごす、日が沈み夜になろうって時間が来た。


やはり観光都市アルバトラス、毎日違う所に食べに行ってるのにまだまだ半分も行きたいレストラン的な場所にいけてないのだ。


っと言う事で今夜も外食をイオちゃんやゴーレムツインズを誘って行おうと考えていた時の事だ。


コンコンっとドアをノックする音がした。


私は今出ますっと伝えてドアに向かう、一応魔法で外にいる人物が敵意のある相手だったりしないかも確認してたりする。


……問題ないな、私はドアを開けた。


そこにはこの宿泊施設で働いているらしき女性のスタッフさんがいた、エロすぎない感じのメイド服を装備した結構美人な女性だ。


「お客様に用事があるという方が来ております」


「分かりました。こちらで対応しますから案内をお願い出来ますか?」


こんな時間に誰だろう?っとか考えながらついて行く。

するとそこには部下スーツの1人がいた。


「貴方はハロルドさんの?今晩は、今日どうしたんですか?」


「夜分に申し訳ありません」


ジニスの事?何か進展でもあったかのか?それとも………。


「本来ならハロルド様がここにいるべきなのですが。例の事がまだ片付いていないので、ここに来る事が出来なかった事を先に謝罪させてほしいと言われていました」


やっぱりまだまだ進展はなしか、スーツイケメンとボスさんの顔を立てるつもりでお任せしてるが、私達がアルバトラスから離れる時期が来れば彼らには悪いけど、中年が解決するつもりでいる。


しかし今回はその話ではなさそうだ。


「そうですか、ではハロルドさんはまだ忙しいと言う訳ですね。それでは貴方は」


「………これを」


ん?何やら黒いカードの様な物を渡された。


「これは?」


「これが先日の一件での報酬と言う事になります、これはポータルカードと言う魔道具です」


これがポータルカード、本物は初めてみた。

私はこの世界に来たときに魔法やそれに類似する物や事柄についてだけ、何故かファンタジーな知識をインストールされている。


かなり偏った知識で虫食い穴だらけなので困っている。

しかしそのインストールされた知識の中にこのポータルカードと言う物について情報があった。


これは要は転移魔法が使えない人向けのマジックアイテムで、最低限の魔力があれば誰でも転移が出来る代物だ。


但し、このカードにあらかじめ登録された場所と自分が登録した場所の2つしか行き来出来ないと言う欠点もある。


転移魔法が使える私にはあまり必要はないのだが。

恐らくこのカードに登録された場所に、あのジニスをゴーレムツインズやイオちゃんがコテンパンにしてやった報酬とやらがあるのだろう。


最終的には逃げられた訳だけど、スーツイケメンとボスさんの前でジニスの片足の腱を切ってたり色々やった、それが結構な活躍だったと私も思った。


頑張ったのイオちゃんとゴーレムツインズなんだけどね。


私は見ていただけである、ジニスがバックにいるであろう何者かに回収されて消えた時も普通に見逃してたしな。


あの時はいつでも追撃出来るからと放っておいたんだよな。

その後はスーツイケメン達のやりたい様にさせる為に何も手を出していない私だ。


まだ余裕がないわけじゃないし、彼らが納得出来る形で終わらせてあげたいってのもある。

だから未だにジニスの馬鹿を拿捕せずに泳がせているのだ。


そして部下スーツからの説明に耳を傾ける。


「報酬はこのポータルカードの行き先として登録されているとある………」


「……………成る程、それはまた」


私は部下スーツから報酬とやらについて詳しい話を聞いた。

その内容は、やっぱり金を持っている商人って凄いなって物であった。


そして話を終えた部下スーツは、自分もまだまだ忙しいらしく直ぐに転移魔法で何処かに姿を消した。


「このポータルカードを使うのは、明日皆を集めてからにするか」


色々と気になる事は残っている。しかし夏休みは夏休みだ。

私は旅の仲間たちと共に全力でこの夏休みを満喫すると決めたのだ。


青春に青さとかなくて、1人で過ごしたあの灰色の時代を取り返す様に。

この1人の中年は夏休みと夏のバカンスと言う物に抱いた憧れを現実にするように頑張るのだ。


全ては綺麗なチャンネーのエロい水着姿を拝む為に。…………拝む為に!(既に拝んでいるが、まだまだ拝み足りないのだ)。


決意も新たに、さしあたって今夜の晩御飯は何処に皆で行こうかと考える私だ。







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