第102話『フィッシング』

◇◇◇


それから1週間程、私達は夏休みを満喫した。


スーツイケメン達商人は表に出る様な事はなく水面下で忙しそうにしているのだろう。

アルバトラスを歩いているとドムル族が人に化けていると思われる方々を何度か見た。


あのドムル族の人々って皆魔法が得意な種族なのかも知れない、森の賢者とか言われてたけど魔法が得意って部分がエルフと被るよな、イオちゃん的にはどう考えているのだろう?。


そして獣人達だけど子供は親御さんがいると言う村や街に送り届けられ、働くと言う人はアルバトラスで清掃作業やらに従事していた。


話を聞いた限りは労働条件も給金もかなり良いらしい、スーツイケメンなりの配慮があるのかもな。


アルバトラスの至る所に獣人とドムル族がいるのは、やはりジニスの事を警戒してるのもあるだろうがスーツイケメンとしては今回の一件でドムル族と獣人達にかけてしまった被害を少しでも補填出来る様にしたいとのことだ。


たまに会って捜索の進捗状況を話してもらう時に言ってた、他の観光客と変ないざこざが起きない様にそれとなく動いているんだろうし、出来る男は違うな。


そう遠くない時にマーガレッドちゃんとその父親と知り合いであるボスさんの顔を合わせたいとも言っていた。


ジニスの事件を報告するならマーガレッドちゃんの家族の事についても触れない訳には行かないからだ、その辺りも上手くやって欲しいもんである。


そして私達はこの1週間の間は……快適に夏休みを過ごしまくったよ?当然だろ。


真面目なイオちゃんは捜索に協力をした方が良くないですか?的な事を言ってたけど、今回の一件では私達が下手に動いて事件を解決するよりも彼らに任せた方が事件の事を考えても良いのではと伝えたら折れてくれた。


正直心配がないわけではないけど、危なくなったらその時は私達がジニスもそのバックにいる何者かもボコってしまえば良い。


事件解決はいつでも出来る、なら私達は当初の予定通りにと言うわけで夏休みを満喫する事にしたのだ。


海で泳ぐイオちゃんやゴーレムツインズを見たり、アルバトラスで買い物をしたり、時には私が生み出した魔法部屋マジック・ルームで私が前にいた世界の料理を作ったりした。


隠すのも面倒くさいのでシアちゃんも魔法部屋に招待したら結構驚いていた。

まぁ魔法部屋のモデルになったのは現代の方の高級リゾートホテルの部屋なのでファンタジーな世界とは建築様式がまるで違うからね。


手軽なサンドイッチとかも喜んでくれたよ(顔は相変わらず怒ってる見たいな感じだったけど、美味いと一言言ってくれた)、今後は彼女とも少しずつでも距離をなくしていきたいな、だって美人だし。


………まぁ魔法で化けてるから、本来の姿はあのマントヒヒみたいな感じだろうけどな。


護衛って事で私達と行動を共にするって話だったから最初はあまり親しくするつもりはなさそうだったけど、イオちゃんやリエリが上手い事説得してくれたのだ。


出来ればシアちゃんにも夏休みを満喫してもらいたい。


後はイオちゃんとゴーレムツインズ達とシアちゃんでアルバトラスの観光名所的な場所を回ったよ。

大きな灯台とか何とかって教会とかを見て回った。


アルバトラスにはかなり凝ったプール施設もあってそこにも向かった、他にもいる観客も多過ぎないで丁度いい感じの活気があった。


水着の美女に視線がいきそうになるのを必死で堪えた私グッジョブって感じだった。

イオちゃんとシアちゃんがこちらを見てくるのでそうしなければならなかったんだよ。


このアルバトラスには山に入ってするアクティビティ的な物もあったりどっかの国の貴族やらどっかの国の王族とかがお忍びで夏休みを満喫し、避暑地として使われる場所もあるとか。


まぁそんな所には行けないけど、まだまだこの都市を楽しむ途中の私達だ。

そんなサマーモードの私達は今日はどこにいるのかと言うと………。


「あっ!見て下さい!釣れましたよアオノさん!」


「流石ですね、イオさん」


そのサバに鳥の羽が生えた魚は一体なんなの?って思ったけど口にはしない私だ。どうせ碌な答えなんて返ってこないからな。


そうっ我々は青い海のど真ん中で釣りをしていた。


この世界のクルーザー的な物である魔導船(デザインは全く違うのであしからず)をレンタルして我々4人・・・イヤッ5人は来ていた。


「ほうっあれはイバリンボだな?味も美味しいらしく大きさも悪くない」


「ムッ…ラブーン、その情報はユーリも知っていたのに……」


「そうか、それはすまなかった。先に解説をしてしまったな」


ユーリと話をしているのはラブーンと言う名の幼女である、しかし見た目とちがって彼女は精霊、年齢は不明なファンタジーな存在である。


黄緑色の瞳と髪を持ちツインテールにしている、ファンタジー仕様の少し露出があるドレスを身にまとい宙をフワフワと浮いていた。


彼女は元はラブーンと言う島にあったダンジョンのダンジョンマスターであり島の精霊でもあったとかで名前も島と同じである。


島では色々とあったのだ、嬉しい事も悲しい事も……まぁそれとは関係なくいつの間にか私が貰った本に勝手に宿ってついてきたワガママ幼女だ。


怒るとネタバレ見たいな言動をし出すから注意がいる存在だ。


まぁ精霊幼女は基本魔法部屋の私の部屋でゴロゴロしている(鍵を掛けても、他の部屋を用意してもいつの間にか入って来てるのだ。普通に怖いよな)、又は人の部屋にある黄金の魔神像、美少女モデルをヤクザキックしてる存在だ。


ただ今回の様に新しい都市や街に行くとこの精霊幼女は全力で観光客になりいつの間にか姿を消して観光しに行く。


恐らく今回も気になる所はあらかた行って来たのだろう、そして1人では暇になったからなのか魔導船で沖に釣りをしに行く我々に同行させろと言って来たのだ。


厚かましさにおいて。精霊幼女に並ぶ存在を私は知らない。


「ん?今、何か私に対して失礼な事を考えたなかったか?」


「…………いえいえまさか」


本当にこの精霊幼女って何者だろう?それをよく知らないで旅に同行させてる私も大概である。


ちなみにシアちゃん、最初は精霊幼女が現れるとかなり驚いていた。何でも精霊がこんな所にいるのはとても珍しいとか何とか言っていた。


「………釣れました。ご主人様、これはアカシムと言う焼くと美味しく戴ける魚ですよ」


あっリエリも魚が釣れたらしい、タイに角が生えた謎の魚だ。これでボウズなのは……。


「何?あの女も連れたのか?」


「はい、その様ですね……」


「アオノ、お前は?」


「………見ての通りボウズ、一匹も釣れてませんよ?」


お互いに無言となる。


隣で無事に釣れて成果を上げた美女達が何やら楽しそうに話をしていた。

精霊幼女は釣りに参加してないので私とシアちゃんの2人だけが何も釣っていなかった。


「ユーリさん、リエリさんはこの船を運転してくれましたし、ここは私達が料理を担当するのは如何ですか?」


「……成る程、海の上で昼御飯と言う訳ですかイオ。しかしまだまだ貴方に包丁を持たせる訳には行きませんよ?」


ユーリの言葉にイオちゃんが不満そうな顔をした、可愛いな。


「むうっ分かりました、今回はユーリさんが料理を?」


「はいっリエリには料理が出来たら私が知らせますからまだ釣りを楽しんでいなさい」


「船の上で食べる料理か、悪くないな」


「「…………………」」


何故だろう、何か釣らないとあの空間には入れない気がする。


シアちゃんも無言で釣りを続行、私も続行する。何か釣りたいんだよ。


「……………………!」


その時、私の釣り竿に初の当たりが来た!。

隣のシアちゃんもほぼ同時に反応があったのか目の色を変えていた。


「……………」


【魔法の鎖よ、我が敵の身体の自由を奪え。縛鎖封チェイン・バインド


私は相手を拘束する魔法を使った。


海中ではお魚さんが光る魔法の鎖で拿捕されている事だろう。………なんとしても釣り上げる。


そして全力で釣り竿を引っ張ると…………ッ!?。


「にょわあぁああーーーーっ!何ですかこの光る鎖はぁあーーーっ!?」


………なんか人魚みたいなのが釣れたんですけど。







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