第100話『話し合いをしろって言ってんのによ…』
「邪教!?ジニス貴様!先代を襲い殺した邪教の手の者とはやはり………ッ!」
「ハハハハッ!この際だ教えてやる、その通りだよ!私がヤツを殺した、無論他の者を使ってな」
「………何故そんなバカな真似を」
「あの男は事もあろうに私のアルバトラスの拡張計画を不要だと言った、それどころかモンスターとも歩みよる事がこれから成すべき事なんだと、実に下らん、バカな事を言っていたんだよ」
「………………まさか、そんな理由で?」
「この私が何度もモンスター風情にそんな事をする意味は無いと言っても聞かずに、それどころか私を今の立場に相応しくないなどと抜かしてな?仕方なかったのだよ」
「……………ゲスですね」
「確かに」
「全くですね」
イオちゃんとゴーレムツインズがとても素直な意見を言ってる。
「言った筈だ、私は何も自身で手を下してはいない。いいか?つまり私は潔白なんだよ」
「何が潔白だ!?貴様程に腐った性根の者は最早人間ですらないぞ!」
「あの赤い眼の男はさっきから何を言っているんだ?自身が殺さなければ自身には何の罪も無いとか潔白だのと……頭がおかしいんじゃないか?」
「はいっ自分で手を下さずともそこまで関与すれば証拠も何も必要ない、悪は等しく裁かれるのが当然、あの男はその魂までも歪んでいます」
スーツイケメンの怒りにシアちゃんとイオちゃんも同意している。私も同意だよ。
………まぁ私の故郷では、証拠さえ無ければ本当にあんな人間でも野放しにしてしまうんだけどな。
平和ボケした結果、どこまでも権力と古すぎる法律が肩幅をきかせる様になったのだろう。恥ずかしい限りである。
あのジニスが吠えている不遜で馬鹿げた戯れ言は、どこぞの思い上がったある種の人種達の本音なのかもと、そんな気持ちを
「………のぉ、そこの馬鹿者よ」
「ッ!?モンスター風情が!そのふざけた言葉遣いを改め……」
「何故。お前は自分達と同じように言葉を交わし、意思を持ち感情を持つ獣人達を奴隷だ何だと見下し、そして物として扱えるのじゃ?ワシらとも違って見た目の差違など大してなかろうに……」
「アアッ!?バカか!?そのもうろくした頭では理解出来ないのか!?人間とその他の亜人や異種族、そしてモンスター風情が同列に語る事自体が愚かなのだよ!。
全ての種は人間の下にあるべきなのだ!支配され、管理されてこそ貴様の有用性は示される、無論人間にも上下はある下の味噌っカスは貴様らと大差ないぞ?重要なのは、その上に立つのが私の様な選ばれし人間だと言うこ……」
「すみません、ジニスさん。貴方の話はもう聞く価値もないから決着をつけるなり早くして欲しいんですよ、お願い出来ますか?」
あっウザすぎて思わず口を挟んでしまった、まぁ謝りはしないけどな。
「……………………」
「「………………………」」
「「「………………」」」
え?ジニスはともかく、スーツイケメンとボスさん、更にはイオちゃんとゴーレムツインズにまで視線を向けられる私だ。
え?だってもう幾ら話を聞いても『聞く価値も無い下らない話』を延々と繰り返すだけでしょう?あんなのさ、だったら割って入って。
お前の話なんて誰も聞く価値があると思ってないからさ、もう黙ろうよって教えてあげる事が優しさじゃね?。
………まぁ前の世界で同じ事を上司にやったら怒られるけどね、何故なら。
「キッキキキキキキキサマァアアーーーーッ!?冒険者如きがこの私の有り難い言葉を……」
ホラね?こんな風に本気で自分の言葉には人に聞かせる価値があると勘違いしているんだ、ある意味幸せな妄想だけども。
勘違いは正してあげようか、最早手遅れだろうけどさ。
「貴方の言葉に
「キッキキッ!?キサマァアアーー貴様貴様貴様貴様ーーーーーッ!!殺す!殺してやるぞ!このゴブリンかオークだか分からん亜人種めぇえーーっ!」
ジニスが指をパチンと鳴らす、すると赤い瞳のドーベルマンモドキがこちらに殺到する。
ジニスのこれまでの強気発言の理由はこのドーベルマンモドキにある。
コイツら大型犬サイズのくせに、このファンタジー世界では結構強いのだ。
その素早さ、持久力、そして相手を殺傷する力も私がテレビとかで知るドーベルマンとは別物であり、更には攻撃魔法まで使うし数が多いと連携もしてくるのだ。
……以上がジニスの心を読んで得たドーベルマンモドキの情報である、無論どんな魔法を使うのかまでも把握しているので我々に敗北はないけどな。
あっちなみにジニスの過去とかは一切覗いていない、この後の事を考えるとそこはノータッチでいた方が私も気が楽だからね。
知らんオッサンの過去とか覗いて情が移るとか、迷宮都市での黒騎士の一件で十分である。
「死ねぇーーーーーっ!」
「あっちなみに戦うのは私じゃないんで」
「ではここからは私達が……」
私の仕事は挑発くらいである。
ザンッ!。
こちらに向かったドーベルマンモドキが剣の一閃で切り裂かれる。
いつまにか剣を手にしたユーリの一撃だ。
更に追撃が行くぞ。
「ええっその通りです」
ドゴォオオッ!ボゴガァアンッ!。
更に他のドーベルマンモドキには攻撃魔法が炸裂してその身を焼かれた。リエリの魔法だ。
ジニスもさっさと逃げるなりすれば良かったのに、ベラベラと無駄な話をして、私の挑発に乗ってるから……。
不完全燃焼だったこちらの狂犬ゴーレムツインズが火を噴く事になるんだぜ?。
「ご主人様、ここはユーリとリエリが」
「ええっもちろん任せます」
「「……ッ!」」
これまで何度も単独行動ばっかしてイオちゃんには怒られ、リエリやユーリにも不満顔をさせた私だ。
それから学んだ事は人に任せる事も大事って事だ、仕事の丸投げと信頼しての委託の線引きを忘れない様にな。
それにドーベルマンモドキが強いと言っても、内のゴーレムツインズに比べれば雑魚だからな。
あくまでも私達を抜きした驚異がそこそこ高いって話だ。
「くっ!冒険者風情がメイドや秘書を持つなど!身の程を知れーーー!」
「さっきから聞いていれば、モンスター風情だの冒険者風情だのと、お前は他者につまらないケチをつける事しか出来ないのですか?」
全く持ってその通りである。このジニスはどれだけ自分が上だと思っているのだろうか。
回りが自分より全て下だ~~っとか今どきそんなバカは会社組織の経営者でもあまり居ないぞ……多分な。
呆れるリエリ、然してその魔法は強力無比である。
今度は雷が正確にドーベルマンモドキのみに直撃する、ヤツらの早さでも雷速を躱すのは無理だ。
ボゴォドドドドドドッ!。
「バッバカな、こんな……あのモンスター達が………あっさりと……そんなバカなぁっ!?」
「アオノさん……彼女達は一体?」
狼狽えるジニスの間抜けな顔を見てると、スーツイケメンからは質問が飛んできた。
「彼女達は私の魔法で創りだしたゴーレムなんですよ、強いでしょう?」
別に隠すつもりないので素直に話す、引き抜きとかされたら面倒くさいからね?。
私の言葉にジニスもスーツイケメンも、そしてボスさんやシアちゃんまでも驚愕って顔をしていて面白い。
ジニスは気づいてるのだろうか?ドーベルマンモドキ……もう半分も残ってないぞ?。
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