第98話『話し合いをしましょう』

◇◇◇


待つ事30分くらいだろうか、スーツイケメンが部下のスーツを2人連れて現れた。


あっジニスの腕にこの世界の手錠的な物をはめられてる。この時点で圧倒的な犯罪者の風格を感じるのは私だけじゃないはずだ。


こちらを見て一時仰天、その後は親の仇でも見るような視線が中年に突き刺さる。


そしてシアちゃん、こちらも視線だけでジニスを殺せそうな気配がビンビンだ。


飛び掛かっていないのが奇跡の様な状態である。


そこで更に転移してきた者達がいた、もちろんリエリとユーリとイオちゃんである。


……取り敢えずユーリとイオちゃんには謝っておくかな、いきなりこんな所に連れて来られた訳だし。


「すみません、イオさん、ユーリ2人まで巻き込む様な真似をしてしまって」


「ご主人様、ユーリはむしろ嬉しいと感じていますので頭を上げて下さい」


「その通りですよアオノさん、私もまた自分が何も知らないうちに全てが終わっていたなんて言うのは御免ですからね…」


2人からの頼もしい言葉に中年の涙腺が怪しくなる、こう言うのにも弱いんだよな。

リエリは静かに微笑んでいる、その大人な態度と秘書感増し増しなスーツが映えて……え?。


見ればユーリもメイド服を装備、イオちゃんもファンタジー世界の女教師的な服を装備している。そしてリエリも。


ってかこの場でアロハシャツみたいな上に半ズボンなんて夏休みスタイルなのは自分しかいないだと!?。


「アオノ、この2人がお前のパーティーメンバーなのか?」


イヤッいた、いたぞ!シャツに長ズボンでラフスタイルを地で行くヤツが。


「はいっそうです、皆頼りになる方達ですよ?」


「…………そうか」


「あっアオノさん?そちらの女性は?」


「ええっ彼女の名はシアさん、実は彼女は……」


そして私の口からも事の詳細を知っている限り伝える、まぁ私も全てを把握している訳じゃないのだけどな。


すると美女に囲まれる私を見て更に怖い顔をするジニス。


それに気づいたイオちゃんやユーリも不快そうにしてシアちゃんは殺気を飛ばし出した。


………なんか場の空気が怖いのでさっさと転移してしまおう。このままでは話し合いをする雰囲気じゃなくなる。



私はこれから話し合いをする予定地に転移する旨をパパッと伝えたのちにシアちゃんに転移を頼む。


シアちゃんは場所をしっかり把握しているらしく直ぐに了承の返事が来た。

そして直ぐに転移した我々である。


そして転移した先は、森のとある場所とだけ聞いている。


日が高い事もあり、森の中でも明るい、とても神秘的な光景に見える。


そこに木の切り株のテーブルと椅子が何個か用意されており、その1つには既にボスさんが座っていた。


「ボスさん話した通り、責任者を連れて来ました」


「おおっその者達ですか、見れば確かにその様ですな」


ちなみにボスさんはモンスターの時の姿である、その後ろにはフードを被ったヤツが2人。

魔力感知の結果からして片方はモンスター、もう片方は奴隷の誰かだな。


「なっ!?もっモンスターの分際で我々よりも先に椅子に座っているなど無礼な!」


やかましいよ、面接じゃないんだよ。

相変わらずこちらが理解出来ない所でキレるオッサンである。


「ホッホッホッこれは失礼、何分歳でしてな。立っているのも疲れるんじゃよ」


一方のボスさんは大人の対応、この時点で両者の人の上に立つ者としての器の違いが徐々に見えてくるよな。


「ジニスさん、ここには話し合いをする為に来たので……」


「黙れ冒険者!私はいきなり拉致して連れて来られたんだぞ!?話し合いなど誰がするか!」


あっやっぱ。拉致して連れて来られたんだな。


「しかしあちらのボスさんは既に話し合いを了承してもらっているのですよ?」


「だからなんだ!?私は何も了承などしていない!何故モンスターと話し合いなど、さっさと皆殺しにすれば……」


「ジニス、元はお前がトップを勤める仕事ビジネスが起こした今回のトラブルです、それをこのアルバトラスにお客様として来られたアオノさんがここまで取り成して貰った事が、まだ分からないのか?本来ならそこで土下座して礼を言うのがお前の立場なんだぞ?」


「…………ッ!?」


スーツイケメンがマジギレすんの初めて見た、冷徹な視線をジニスに向けております。イケメンって怒っていてもモテるんだろうな、だってイケメンだし。


リエリやイオちゃんは冷静に事の成り行きを傍観、ユーリは大きく頷いていた。


「さっさと席につけ、お前に拒否の選択肢などありはしない、アルバトラスで働く全ての人間の顔にどれだけ泥を塗ったのか分かっているのか?」


「ぐぐっ!わっ私はアルバトラスをより発展させる為に仕方なく……」


「その結果が人さらいが集めた何の罪もない獣人を奴隷にして強制労働、更には我々に何の断りも無く彼らの領域を荒らしたと?」


「ふっふざけるな!この森を開拓して生まれたのがアルバトラスだ!最初に同じ様な真似をしたのは先代のオーナーであるマジナス様だろ!?私はそれを見習って……」


なんか私の心意看破でも知らないあれやこれやな部分の話もしてるな。

あの魔法にはたまに余計な事まで私に知らせる事があるからな、加減を日々勉強中の私だ。


心意看破で何もかも知ってトラブルを速攻解決もたまには良い、しかしこんな風に当人達に解決させなければいけない物がある。


そんなイベントは、今後私も見守る係に回るのだ。


ジニスの発言に、反応したのは何とボスさんである。


「……マジナス?彼を知っているのか?」


「マジナス様だ!モンスター!様をつけろ!」


「……マジナス様はアルバトラスを作った先代のオーナーですが、それが何か?」


「ホッホッホッ……何かも何も、あやつがこの森に来て街を作りたいと言う相談を受けたのはワシじゃからなぁ」


「「ッ!?」」


ボスさんの言葉にアルバトラスの人々の表情が凍り付いた。なにか心当たりかある様だ。


「では、まさか貴方達が森に住む賢者の一族ですか!?」


「賢者?ワシらはドムル族だとヤツには話したがの?」


「ドムル族の……ボス様?」


「本名はもっと長いぞ?ボボスランロボス、言いにくいからボスと名乗っておるのじゃ」


「そっその名は!?」


賢者の一族ってワードは私も初めて耳にした、どうやらマーガレットちゃんのお父さんとボスさんは過去に面識があったと言う事か?。


いやっボスさんは初めて会った時にそれらしい発言も確かにしていたな。


何よりボスさんが発言する度にスーツイケメンが心底驚いた顔をして、ジニスはこの世の終わり見たいな顔をしている。


「でっでは貴方の一族が先代のオーナーと共にアルバトラスを開拓したあのドムル族で間違いないと?」


「ホッホッホッ何でもこの森の傍にある海はとても美しいと言っての?この景色を多くの者達に見せたいとワシらに森を切り開く許可を貰いに頭を下げてきた若造がおったよ……」


ボスさんは笑っている、しかし何も楽しい訳ではない。


「…………そうか、近頃めっきり会いにこんなと思っとったら。あやつは死んだのか、悲しいの」


そうか、いつまにか死んでるって、後から聞かされると悲しいよな。私は悲しい。


「あやつは曲がった事が嫌いでのぉ~あまりに愚直だったから心配もした、いつの間にかヤツに力を貸すようになっておったわ」


ジニスの顔が真っ青だ、そりゃあアルバトラスと先代のオーナーにとって大恩人に当たる相手をモンスター扱いして排除しようとしたから当然だよな。


さてっでは改めて………。


「ジニスさん?いい加減、席につくべきかと思いますが?」


「………………ッ!?」


まぁ、もう話し合いと言うより罪人に判決を下す裁判だけどな。

既に実刑は確定してる感じの方である。








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