第93話『奴隷とモンスターの連合軍』
◇◇◇
謎の美女の登場に、この場でジニスをちゃっちゃと片付けてしまおうとした私の計画は一旦ストップと言う事になった。
ってか美女の登場の方が優先された、スーツイケメンもジニスも他の商人貴族とやらも畏まっております。マジで?相手は若い美人さんだよ?。
この美女は何者?って考えてる所でスーツイケメンの補足が入った。
「アオノ殿、こちらはマーガレット様です、このアルバトラスのオーナーで私達商人をまとめている方です」
ってそれ1番偉い人じゃん。
「そうですか、私は青野と言います」
「私はマーガレットよ、ハロルド、こちらの方は一体?」
スーツイケメンが私とリエリが今回の騒動の解決に乗り出そうとしている事を要点をまとめて説明してる間に私は美女にチラ見を敢行する。
さっきも思ったけど、スタイルは抜群で赤を基調とした、正に女性の貴族が来てそうな(ゲームとかで)ドレス姿。
そして青い瞳に何より特徴的なのは長い金髪をロールしてる所である。
本物の金髪ロールとか初めて見た、本当に綺麗にロールしていてなんかスゴイ。
ロングヘアーの下半分をロールしている、正にゲームとかに出て来る貴族の令嬢スタイルの王道を行く美女である。
こう言う美女に出会うと、異世界に来たって感じあるわ。
「……成る程、話は分かった、しかしそのアオノと言う方は、このアルバトラスに観光目的で来ているのでしょう?そのお客様に危険な真似は了承出来ないわ、ここはお客様に日頃の憂さを忘れてもらう為の場所なの、万が一の事故で怪我をさせたりしたらアオノ様の休暇が台無しなのよ?」
おっあまり上から目線の会話をしない美女か、普通にこちらの事を考えてくれる発言にやはり客商売のトップとしての自負を感じる。
言葉は丁寧だけど譲れない信念のあるタイプのやり手実業家とかに稀に見られるタイプだ。
無論、運も絡むがこう言う人は好かれる人にはとことん好かれるから成功する手合いが多い。
人を惹きつける魅力とかカリスマとか期待出来ると私は見た。
「それについては私も了承していますよ、万が一も含めて私の自己判断ですから、このアルバトラスの商人の方々に何があっても文句は言いません」
私の言葉にスーツイケメンも援護を加える。
「マーガレット様、今回の騒動はもしかしたら我々が知らない裏があるのではないかと…」
「何ですって?」
スーツイケメンは意味深な事を言ってジニスをチラ見、他の商人貴族もジニスになんかコイツ胡散臭さよなって感じの視線を向けるもんだから速攻でマーガレットちゃんがジニスに視線を向ける。
ジニスは自分は何も悪くなんてないって身振り手振りで訴えている。
それからしばし考えるマーガレットちゃん、きっと私のオツムでは分からない様な事を考えてるんだよな。
そして彼女は落ち着いた様子で口を開く。
「アオノ様、確認ですが。これは下手をすれば命を落とす可能性もある案件です」
「分かってますよ」
「お金を積まれたり、何かこの問題を解決しなければならない理由があるんですか?」
「お金の話は特に何も、理由はあります。私はここに観光と休暇が目的で来ました、だからこのアルバトラスがなくなったら困るんです。少なくとも我々がいる間は…」
「………………成る程」
私の言葉にマーガレットちゃんはまた少し考える、報酬とかについては本当に考えてなかったな。
何しろ押しかけみたいな感じで来たのはこっちだからさ、タダでもまぁ仕方ないかなって感じで来ていた私だ。
「分かりました、それでは護衛の者を…」
「いやっ私は争う下手に争う姿勢を見せたくありません、出来れば話し合いをと考えています」
「何をバカな!相手は奴隷とモンスターだぞ!?」
「ジニス、黙りなさい。アオノ様、本気ですか?」
「はい、もちろん本気ですが?」
「……………………分かりました、そちらの事はアオノ様に任せます。私達は私達で、調べる事が沢山ありそうですから」
マーガレットちゃんの視線がジニスとスーツイケメンに向けられる。
ジニスはビクッてなってスーツイケメンは静かに会釈した。
成る程、どうやらマーガレットちゃんとスーツイケメンにジニスはお任せして問題なさそうだな。
権力も金も持ってる商人ってなんか怖いイメージもあるから詳しくは調べないけど、きっと上手いこと事は進むのだろうさ。
私は東の森に行く旨を伝えて、リエリと共に飛行魔法でその場を後にした。
◇◇◇
そして魔法で空を飛んで東の森に向かった私達だ。
地図を持ってる訳でもなく、心意看破で東の森って言うワードだけを拾った中年は早々に迷子になった、しかしリエリが案内をしてくれたからその後に続く私だ。
もうそろそろ夜が明ける頃合、普通なら一旦寝るなりして日が高くなってからの方が良いのだろう。
だって夜に森、しかもモンスターが出て来る場所に行くとか結構危険だからな。
魔法でしっかり安全マージンを確保する事を意識する様に心掛けよう。
都市と森の境目と思われる場所を発見。
「ご主人様、あそこからが森の入り口になります」
「分かりました、では1度下りましょう」
着地する、森の方は明かりの類は一切ない。不気味何だよな、この真っ暗闇って人間の恐怖を呼び起こす何かを感じる。
夏のホラーとかって苦手なんだよ。
「この森からは多くの気配を感じます、ご主人様、もしかしたら向こうは既に我々を監視しているのかも知れません」
え?もう見つかってるの?どんだけアルバトラスに近い所にまで来てるのだろう。
「魔法ですか?無論私もモンスターと呼ばれている存在にはかなりの魔法の使い手がいる事は知っていますが……」
「分かりません、後は
リエリとの会話で気になった私は魔力感知で森に生きる魔力を持った者を探る。
まぁこの剣と魔法のファンタジー世界じゃあ大抵の生物は魔力を持ってるらしいので、単純に魔力の大小を探る程度だけどな。
「………確かに何体か、高い魔力を持った者がいる様ですね。遠視の魔法の1つや2つは使っても不思議ではありませんね」
正直それくらい使われなかったらジニスの私兵が一方的にやられたって話は納得出来ない。
心意看破の魔法でも心を丸裸にする所まではしてないのであの男の事情を完璧に把握してる訳じゃないけどな、そもそもジニスはこの現場にはいなかった。
所謂報告だけを受けて現場には顔を一切出さないタイプの経営者の系譜だ、それでも私兵の連中がコテンパンにやられたらしいのは事実の様だ。
多分相手さんには上級魔法使いクラスの手合いが何体かいる、まさかこれが奴隷とは思えない、恐らくモンスターでかなりの知性を持った者と考える。
この世界はモンスターも魔法を使う、しかし知能も知性もない獣や昆虫をデカくしただけのモンスターとかは殆ど魔法を使えない。
………まっ何事も例外はあるらしいが、今はそれは関係ないので割愛する。
要はこの森に潜んでいる連中と敵対するのは得策ではないと言う事である。
「リエリ、私が先に行きます」
「ご主人様、ここは私が……」
「言えっリエリには後ろをお願いします、まぁ私は争うつもりもないのでそこを丁寧に説明すれば」
「人間の言葉など信じはしない」
「「!?」」
いきなり現れた、これっ転移魔法じゃね?。
マジかよ、そのレベルの魔法まで使えるとか完全に予想以上だわ。
視線を声のした方に向ける、森の奥に誰かいるな、フードを被ってる。
森の茂みの先、フードを被った何者かからは鋭い殺気が感じられた。
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