第88話『オッサンの夏休み(4)』
チンピライケメンを排除したスーツイケメンは次はこちらに話し掛ける。
「………あの、もう土下座をしなくてもいいと思いますよ?」
「…………そうですね」
言われて見れば全く以てその通りである、さっさと起きる私だ。
取り敢えず土下座の件はなかった事にして話をしよう。
「助かりました、ありがとうございます」
「礼だなんて、変わった方ですね?普通は文句の1つでも言われるものですよ?」
「ははっまぁそれはそれという事で……」
まぁ確かに、入るのに結構な額(20万だよ?)が掛かったってのにあんなチンピラが普通にいるとは、折角のリゾート観光が台無しである。
けどこの人が先程本人の説明通りに責任者の1人なら責任とか取らされるって可能性もあるから、中年的にはそっちの方が心配だったりする。
あっ後、もう一つ気になる事がある。
「後、もしかして私も捕まったりしますか?」
「まさかっあの状況で貴方に何か非があると考える人間はいませんよ、それよりも助けるのが遅れてしまってすみませんでした」
スーツイケメンはそう言うと頭を下げた。かなり偉いみたいな人の筈だし歳も私と大差ない筈だけどずっと人間が出来ている様だ。
私が頭を上げて下さいと言うとスーツイケメンは頭を上げた、そして戻ってきたスーツ2人に耳打ちされると『では、失礼します』っと言ってどこかに行った。
立場がある人間みたいだし、忙しい身なんだろう。
私も飲み物を売店で買って急いでユーリの元に急いだ。
そして戻ると試合は中盤、2人の女性闘士は共に剣と盾を手にし激しい攻防を繰り広げていた。
コロシアムに広がる歓声は相変わらず凄いの一言である。
ユーリの視線も女性闘士に釘付けだった。
案外ユーリって強くなることに貪欲なのかも知れないな、きっと彼女なら更に強いゴーレムに成れると私は思うんだよね。
私は手にした果実のジュースを手にして席に戻った。
「ユーリ、持ってきましたよ」
「ご主人様ありがとうございます……しかし少し時間が掛かった様ですが、何かあったんですか?」
「いえいえっまさか、ただ私がどんくさいだけですよ」
「……………分かりました、ご主人様がそう言うなら私はその言葉を信じます」
「……………」
全然信じてる感じがしないよユーリ、これ何かしら気づいてるかもな。
まぁチンピライケメン達は既にどっかに折檻済みだし、これ以上何かが起こる訳ないだろう。
ここは流すとしよう、私も席に着いて女性闘士達の戦いを観戦する。
正に激戦って感じだった、中年の男子ってこう言うので熱くなる手合いなんだよね。思わず私も声を上げて声援を送ってしまったよ。
◇◇◇
コロシアムで闘士達の戦いを観戦し終わった私達は昨日と同じようにまた海に来ていた。
白い砂浜は何キロ先まであるんだって感じでずっと続いてる、そして海の青い水平線と蒼穹の空は本当に夏ってヤツの到来を告げるものに感じるよな。
まさか初日にちょろっと入ったくらいで中年の海への熱い想いが満足する訳がないだろう?。
……何故なら私の青春時代に、女性と海に行った記憶なんてないからだ。
若さ故にアホな事をやった連中と海水浴をした記憶はあるのに、彼女と海に行った記憶なんて欠片もないからだ。
何故か?そんなの私が、年齢イコール彼女がいない歴の中年野郎だからだ。
救いようがない………童貞野郎だからだ!!。
そんな、そんな私の海への情景はっ!美女との真夏のランデブーでしか満たせないんだよ!。
私は、この世界での初めての夏を、最っ高の夏にしたい。したいったらしたいんだよーー!。
「…………………」
ボッ!(中年野郎の身体に青き情熱のオーラがほとばしる!)
(ごっご主人様の身体からいきなり魔力が溢れるとは、あれはご主人様がとても集中してる時に現れるもの……つまり今のご主人様はかなり高い集中力を発揮していると言う事!)
ユーリは魔法でラフスタイルから水着スタイルに換装完了、その刹那に一瞬でもヌードを期待した私だが……。
残念ながら魔法のガードは高かった、くそう。
(……?ご主人様の魔力が普通に戻りました、一体何だったんでしょうか?)
ションボリする私にユーリが話し掛けてくれた。
「ご主人様?そう言えば昨日はイオと海中に向かってましたが。何をしていたんですか?」
「ああっあれは……」
私はイオちゃんとの海中散歩を簡単に説明した。
するとユーリが『それは楽しそうですね』っと期待を込めた視線で見てきた。
中年に美女の視線から逃れる術などないんだよ、私は魔法鎧の魔法をユーリに発動して再び海の中に入る私だ。
そして海の中に入るとまた海に生きる様々な生き物の楽園を目にした、前の世界でも本当に多くの生命がいた海の世界だけどこの世界でもそれは変わらず、むしろ前の世界で見かけた生き物に近い筈の見慣れた生き物が……マジでデカイ。
クラゲもやたらとカラフルでデカイし、エビも赤以外にも青色とか緑色とかいたしな。
そしてサンゴ、あれもまた色とりどりで様々な種類がいるんだと思ったね、本当に宝石で出来てるみたいである。
「しかしよくあれだけ大きくなりますよね、一体何を食べているのやら」
「ご主人様!それならユーリが説明しましょうか?」
え?ユーリ、知ってるの?。
「例えばあの赤い大きなエビですが、アレはマリンロブスターと言う生物で、あの大きさですがモンスターには分類されていない生物です」
「え?アレは普通のエビって事ですか?」
てっきり攻撃的じゃなくても何でもかんでもモンスター扱いしてるイメージだったから以外だった。
「アレは普通のエビではありません、あの身体の大きさは海底に溜まった
「ほうっ魔素を……」
魔素は目に見えない粒子で、何処にでも存在する物である。しかし魔力を溜め込む性質を持っており魔素が魔力を溜め込み過ぎると魔力溜まりが出来るのだ。
魔力溜まりはこの世界の様々な場所に出来るのだけど汚れた魔力が1カ所に集まると強力の異常個体のモンスターとかが生まれたり、周囲の環境を汚染したりする事がある。
あのマリンロブスターってのはそういう問題が起こらない様な仕組みを作る役目がある生命ってとこなのだろう。
魔力であれ何であれ、問題なく循環するシステムってのはちゃんと世界にあるものなんだな。
そんな事を考えればながら海底を歩くマリアロブスターを眺めていると……ん?。
「ユーリ、あのマリアロブスター身体に怪我をしていませんか?」
「え?……アレは」
ユーリの目が鋭くなった、私はもう一度ロブスターの傷を見てみる。………っあ。
「あの傷は、魔法っいや呪いの類による物ですね、脱皮で殻を脱いでもおなじ場所にまた同じ傷が現れてしまうのでしょうね」
「一体誰がそんなもの物を……」
「分かりません。しかしマリアロブスターにせよ攻撃的じゃない生き物でも人間は獲物と判断すれば乱獲しようとしますから。あの呪いはそんな時代の名残ではないかと…」
「……………」
そんな時代があったのか、それもずっと前の事を言ってる感じでもないしきっとそこまで過去の話でもないのだろう。
………よしっここは中年魔法使いの出番だ。
【我が力を持って、命のある者を癒やす。
私の魔法の光がマリアロブスターを包み込む、そして一瞬でロブスターの傷と呪いとやらを消し去った。
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