第85話『観光都市アルバトラス』
アルバトラス、そこは夏のリゾート地として大陸中に知られた観光都市だ。
白い砂浜が何十キロと続く海岸と隣接した都市で半円状に築かれた城壁を越えるには結構な入場料がかかる。
まぁお金に関しては事前に頑張って貯めてたので何の問題もなかった。法に触れそうな怪しい物も持ち込んでいないしな。
アルバトラスの城壁は三重に張られていて1枚目はさっき言った半円状、そして二枚は更に小さくなった半円状でここで結構な入場料が取られた。
その二枚から先がいわゆる高級リゾート地で何かで成功して大金を持ってる一部の人間だけが入れる場所なんだとか、そして3枚は更に更に小さな……っと言っても普通に広大な土地である、そこがいわゆるVIPの世界。
金持ってるだけの人間では決して入れない、何処ぞの大国の大公爵とか大侯爵とか或いはマジモンの王族、つまりロイヤルファミリーが休暇を取って訪れる場所何だとか。
そして私達がいるのは城壁の二枚から先、高級リゾート施設を有する区画である。
お買い物する場所も沢山である、ビーチもこれまた広いさっき行って泳いで来たから知ってる私だ。
流石にビーチまで城壁を広げられてはいない、けど小市民としては金やら権力やらを変に持ってる連中があるであろう区画に立ち入る様な真似はこの世界の人達はまずしないって考える。
………やっぱあるんだってさ、お偉いさんにそれと知らずに噛み付いてしまった人がって話。
その後どうなったか知らないが、一悶着あった翌日からその人を見かけた人はいないって話だ。
怖いね。
おっと怖い話は要らないな、後は様々な料理を提供してくれるレストラン的な施設が最高だな。
時刻は既に日が沈んだ頃合、私達は晩御飯をいただいていた。
入った店は広く、海に面していて海の方の窓は全面ガラス張り(かなり透明だからガラス的なヤツだと思う)で夜の水平線を眺めながら食事をいただく我々である。
長方形のテーブルに私とユーリ。向かいにリエリとイオちゃんが座る。
出て来た料理は魚介類の料理がメインだ。ホタテにクリソツな大きな貝のブイヤベース、パエリア的なヤツ、伊勢海老サイズの海老のバターソテー、大盛りサラダ(なんか赤色や青色の野菜も確認出来たわ)。
デザートはちゃんとしたアイスとコーヒーが出て来てビックリした。まぁ原材料は一切不明だしここは私が元いた世界じゃないのだ、何が出ても驚かないぞ。
「このアイスは美味しいですね、イオさん」
「これはフリットと呼ばれる大きな果実の果肉なんですよ?冷たいし甘いのでアオノさんがたまに出してくれたアイスにそっくりな食べ物なんです」
「……………ッ!?」
えっこの世界にはバニラアイスみたいな果物があるの!?……いかん、速攻で驚いてしまった私だ。
異世界スゲェ~~よ、まだまだ視野が狭い中年である。
そして食事を取っていく、そしてたまに夜の海を眺める様にするのだ。
この世界の夜の海はとても美しい、以前いた世界だと夜の海って星は綺麗だけど海は真っ黒ってイメージだった。
しかしこの世界の夜の海は凄い、まず輝く星の数が前の世界とは違う、様々な色合いの星が星雲を纏って輝いている。
更に月も出ている、この世界の月は複数あり季節毎にその数が変わる。
春は2つ、夏は3つ、秋は4つ、冬は5つ……けどこれはいる大陸の場所によっては季節も違くないか?。
アメリカ大陸とか、私の故郷の島国ですら季節は徐々に訪れるものなのに……。
まぁ細かいツッコミはいいや、今は夜の海についてである。
その月がこの季節だと3つ出ている色合いもそれぞれ違う、普通は月が出ると星明かりって見えなくなるのにこの世界では星も輝いている。
おかげで海は多くの光に照らされてキラキラと光を放っている、こんなに綺麗な海を私は知らない。
これだけでもリゾート地に来たかいがあると思えた。
「本当に綺麗ですね」
「「「……………ッ!?」」」
ん?今一瞬空気が変わらなかった?。気のせいかな。
「なっ何をいきなり貴方は………もう!」
「すっすみません、あまりに海が綺麗だったものでつい…」
イオちゃんに怒られた、一体どうしたってんのよ。
すると今度は素直に謝ったのに3人の空気が少しおかしくなったぞ?。
不味い、このままでは不味い。
そんなタイミングでのこと、海のかなり遠くの方から水が弾ける様なバシャンって音がした。
結構ハッキリした音だったので私は思わずそちらを見た。
そこには大きなクジラらしき生き物が海面に身体の1部を出して泳いでいた。
「……アレはクジラですか?しかし大きさが私が知る様な物では」
この距離でもそうだと分かるとかおかしいだろ、そんで普通のクジラよりも全体的に身体がゴツゴツしてる様に見えるんですけど。
私の疑問に答えてくれたのはイオちゃんであった。
「………ふうっまあいいです、アレは聖海獣ケトス、海の神獣とも言われる恐ろしく大きなクジラです。このアルバトラスでは1年にこの時期だけ現れるんですよ」
「このアルバトラスに夏に人が集まる理由の一つらしいですよご主人様」
「いわゆる観光スポットと言う物ですね」
おおうっイオちゃんの説明の後にリエリからのユーリに繋がる説明コンボである。
あの雨の神獣とかって言う大きすぎるカエルもだけど、神獣ってわりとポンポンといるものなのかな?。
観光スポットって。それ何かバチとか当たらないだろうか、けど……。
けどイオちゃんも海の神獣とやらが現れるとその姿の興味津々に見ている、他の客もそうだ。
私めそのケトスに視線を向ける、雄大な海を泳ぐ姿は確かに荘厳さすらあって目を釘付けにされる私だ。
あっ塩を吹いた!本当にクジラなんだなぁ……。
「ご主人様、料理が冷めてしまいますよ?」
「あっすみません」
ユーリに注意されてしまった、イオちゃんも何事もなかったかの様に食事に戻ってる。
私も食べる事に集中する、本当に来て一日で色々な顔を見せてくれる都市である。
そんな感じでアルバトラスの初日は過ぎていった。
◇◇◇
そして次の日、私は普通にまた3人で観光スポットに繰り出そうと身支度を整えて朝から出掛けようと、先ずはイオちゃんの部屋に向かった。
宿屋の部屋は4人とも1人ずつの個室である、魔法部屋と同じだ、………仕方ないよね。
……………………仕方ないのさ。
すると先にリエリがいる様だった、何か話してるのか?。
「イオ、起きているなら速く準備をして出て来て下さい。ご主人様もそろそろ来ますので」
「…………………ッ!!」
「は?今日は行けません?まさか昨日の露出が結構ある水着を来て、リエリとユーリをほっといてご主人様と泳いだ事や手を繋いだ事を思い出して寝られなかったんですか?そしておかげで今日は目の下にくまが……」
「…………………!!」
(ドアに何かがボフッと当たる音、ベッドにあった枕でも投げつけたんでしょうね)
(しっ仕方ないんですよ!目の下の物が中々化粧をしても消えないんですからーー!!)
ん?何やらお取り込みの最中って感じ、ならここは魔法使い青野さんの出番ですかな?。
イオちゃんの部屋に近付く。
「ご主人様、今日はイオは1人でいたいそうですよ?リエリに念話で事情は聞いてきました」
「ユーリ、事情ですか?それは男の私が聞いても問題ない物ですか?」
(………男と言うよりご主人様に話すとイオは本気でキレるでしょうね)
ユーリは黙って首を左右に振る。
「そうですか、なら立ち入る様な真似はしません」
「それでご主人様に1つ提案なのですが……」
「提案、何ですか?」
するとユーリの瞳が少し揺れた様に見えた。
「イオの相手はリエリがするらしいので、今日の所はユーリと2人で観光してみるのは如何でしょうか?」
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