プロローグ

ザーーザーーザーーーー。


季節は夏、と言うかイオちゃん曰く雨期があける目前って言う日である。

何で天気予報もないこの世界で何で雨期が終わるのが分かるのかって話だがそこをツッコンでもな、ファンタジー故にって事さっ多分。


雨の中を進む為、我々は立ち寄った町で馬車に乗って移動している。一応嵌め硝子の窓なので雨が振り込んでくる心配はないが、雨は更に強くなっている。


ザーザーザーザー降っている。


オイオイッて思わなくもない、だってもう夏のリゾート地であるアルバトラスは目と鼻の先なのだから、まぁ雨と同時に濃霧まで出て来て今自分達がどの辺りを進んでるのかいまいち分からない私だ。


そして本当に今日で雨期が終わるの?。


気になる私はイオちゃんに話し掛ける。


「あの、本当にこれから雨期があけるんですか?まだまだ雨は降りそうですが」


「フフッアオノさんがそんな疑問を持つなんて以外ですね。大丈夫ですよ恐らくですが今日の昼過ぎなは雨は上がって夏の日差しが広がるでしょう」


だからなんでそんな事が言えるのですかイオちゃん先生。


イオちゃんはエルフである、紫色の髪を後頭部にまとめるシニヨンっぽい髪型をしてる。


このファンタジー世界で魔法を教える学校の教師をしているらしくファンタジーな細かい装飾とかされた教師スーツを着ていてスタイルが良い。巨乳である。


私の考え(スケベな方じゃない)が顔に出ていたのだろうか、イオちゃんが更に言葉を続ける。


「……それなら馬車がもう少しで馬を休める為に休憩に入る筈ですから、その時にでもを見に行って見ましょうか」


「アレッですか?何かは分かりませんが、分かりました」


なんかイオちゃんとプチデートっぽい事になったぞ、やったぁ。


それから馬車はイオちゃんが言った通り休憩を小一時間程取ると行者に言われた。

何でも近くに雨避けに丁度良い洞窟があるんだそうだ。


そしてその洞窟に入って休憩、濡れた馬の身体を拭きながら御者の人と話をする。


イオちゃんは何やらやることがあるそうで少し待って欲しいと言われたからだ、冒険者って行きずりで出会った人と会話するってのもゲームっぽくて好きな私だ。


行者の人は何気ない事を聞いてきた。


「冒険者の旦那、この時期に俺の馬車に乗るって事は目的地はアルバトラスかい?」


「はいっそうなんです」


「あそこは金回りの良い連中しか行かない所だが、リゾート地ってだけあってアルバトラスの回りのモンスターは念入りに退治されるから、冒険者の仕事も安定してあるからな~」


行者は私が観光客としてアルバトラスに向かっているとは考えていない様だ。


まぁ別に訂正する必要もないし、ここはアルバトラスの観光名所とかの話を聞きたいな。


「そうなんですね、しかしアルバトラスと言うのは本当に有名なリゾート地何ですね…」


「そりゃあそうさ、この大陸でアルバトラスを知らないヤツなんていないよ。夏はどっかの国の王族が来るなんて話もあるくらい有名な場所だぜ?」


「なんと国の王族が?それはまた余程の観光の目玉があるんですか?」


「当然さっ先ずは雨期さえあけたら連日青い海と空、海のモンスターも近付かねぇように高価な魔道具が設置されてるから気兼ねなく泳げるぞ?」


海か、夏と言えばだよな~~。


「海にはまるで宝石みたいな魚がわんさかいるぞ?それに海だけじゃない、アルバトラスはあそこから見渡せる山々もリゾート地として解放してる。

モンスターも小まめに退治されてるから武器もなしに渓流や湖まで歩きや馬車で行けて自然の中を楽しめるぞ」


おお~~森のアクティビティ的な事も出来るって事?良いじゃん素敵じゃん、リゾート最高。


それからも私はアルバトラスについて色々と聞いた。

例えばやはり高級リゾート地って事でゴロツキの類なんて皆無の治安が取れている街であるらしい、何でも冒険者ギルド等のゴロツキも入れる組織とかはリゾート地の外にしか作られてはいないとか。


するとイオちゃんから声がかかると、私は速攻で行者のオッサンとの会話を終えてイオちゃんと合流した。


「お待たせしました、少し魔法で探すのに手間取ってしまって」


探すのに手間取った?イオちゃんの言ってる事の意味が今一分からない。


「成る程、ではイオさん私は何をすれば良いのでしょうか?」


「アオノさんは人の目がない所であの姿が見えなくなり物体を透過出来る様になる魔法をお願い出来ますか?後は私が転移の魔法で目的地まで直ぐですから…」


………え?目的地まで直ぐ行ってしまうの?。

プチデートがぁーーー。


ガックリした私は異空法衣インビジブルの魔法を発動した、そしてイオちゃんが転移の魔法を使った。



そして視界が一瞬で洞窟内部から雨が降りしきる空に変わった、どうやらそれなりの高度の場所を浮遊している様だ。森とか山が眼下に広がってる。


飛行魔法の提供元はイオちゃんだと思われる。


「イオさん?なにも無いようですが?」


「フフッ分かりませんか?」


イオさんがクスッとしてるのは可愛いのは分かるけど。


周囲は雨が降るばかりで他にめぼしい物はなかった、しかも霧が濃くて遠くまではとても見通せないし

まぁ異空法衣の魔法のおかげで雨は全て私達を透過してくれるので何も問題はないけど……。


そんなことを考えてると私の頭の中に念話が届く。


(ご主人様、ユーリです。恐らく魔力を感知すれば分かるかと)


(魔力を?分かりました)


……………ん?これは。


(ご主人様、リエリです。かなり巧妙に隠されていますがご主人様なら直ぐに気づくかと…)


ポケットからビー玉モードのユーリとリエリがフヨフヨと現れる。

彼女達は私が魔法て生み出したゴーレムだ、こんな風にビー玉みたいにも美女にもなれる頼れるゴーレムツインズである。


馬車ではお金をケチる為に乗る頭数を減らそうって事になり私のポケットに隠れていたのだ。


ちなみにいつの間にか精霊幼女とも普通に知り合っていた、その精霊幼女は私に酒盛りに置いてけぼりにされた事を根に持っていて無言で人の部屋の黄金の魔神像をヤクザキックしていた。


ってその話は後だ、今は………あっ分かった。


そしてそれに気づいた私に、イオちゃんが説明をしてくれた。


「この霧は魔法なんですよ、とある存在が姿を隠す為に使われた物です。そして……」


イオちゃんが何かの魔法を唱える。

すると私達の身体に淡い光が、そして改めて前を見ると視界が開けていて………何かいた。


デカイ、とにかくデカイぞ。森の木々とか比べ物にならない。山よりも、バカデカイ……カエルがいた。


ゲコココッゲコココッゲコココッ。


「こっこれは………」


「この存在の名は神獣アモン、雨期を世界にもたらす神獣の一体です。途方もない過去から世界中の大陸を飛び回り渇いた大地に雨をもたらす存在として信仰されています」


マジかよ。雨を降らせる超巨大カエルとかマジかよ。しかもカエルが神獣って……。


異世界マジかよスゲェ……っとしか言えないわ。


山よりデカイカエルはさっきからこちらには目もくれずにゲコゲコと鳴くばかりだ。

しかし………。


「恐らくそろそろですね……」


「そろそろ?………それはまさか」


その時である、あのカエルは身体を少し震わせるとカエルらしく思いっきりジャンプをした。


そのジャンプ力もスケールが凄い、一瞬であの巨体が消えたかと思えば遙か上空の雨雲にこれまたバカデカイ大穴が空いていたんだぜ?。


「…………あの穴のある方向に跳んでいったのでしょうか?」


(やりますね、あのカエル。流石は神獣かと)


(ユーリもそう思います、いつか戦ってみたいですね)


リエリは普通にカエルを神獣とか言ってるしユーリは不穏な事を言っている、2人の主として私がちゃんとしないと。


「あの神獣は、別の大陸に向かったんですよ、新たな地に雨期をもたらす為に……」


「……え?ジャンプして別の大陸に向かったんですか?」


「はい、今のジャンプ1回で別の大陸に行けるんですよ?流石は神獣アモンです」


それおかしいから、ファンタジー世界だからって何でも許されると思うなよ?。カエルジャンプで海を越えるって何だよ。


っとか思う所はあるけど口にはしない私だ。


何故ならカエルがジャンプして空にあけた穴、アレがどんどん広がっていき……本当にさっきまでのザーザー降りの雨が止んでしまったからだ。


普通に青空が広がってるよ、マジでファンタジー。


しかしイオちゃんは笑顔を見せると私に言う。


「フフッこれでこの辺りも夏の季節になりました、アルバトラス、楽しみですね……」


笑顔が眩しいですな。


「そうですね……」


そして転移の魔法で直ぐに馬車に合流、私達はアルバトラスに向かう。


そうっ………オッサンの夏休みの始まりだ!。





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