第二部のエピローグ

◇◇◇


「もうっ!貴方と言う人は!本当に貴方と言う人は!」


「すっすみませんでした……」


魔王軍と私が相対してから数時間後。


私は今、イオちゃんに激おこされていた。


ユーリに魔法で酒を抜いて貰ったんだけども、どうも飲んでいた時の記憶が曖昧だ。

リエリ曰くハッスルしまくったとか何とか……意味が分からない。


しかしイオちゃんのプンプン具合が凄かった、こんな時は怒ってる理由を聞くのはダメ絶対。

こんな時は理由が分からなくても素直に謝るしかないのだ、男のリアルである。


魔王軍との熾烈なる戦い(……だろう?私がそれだけ頑張ってんだからさ)の時の記憶は……。


イヤッ実はある、一つだけ鮮烈なのがな。


アレは………女物の軍服をエロい感じに着ていた美女であった。

名前は、そうっフリーレンスちゃんとか言ったな、私の泥酔してた時の記憶に刻まれているぞ。


プリンとしたお尻や太もも、そして細い腕では隠しきれないボインを抱えて走り去る彼女の後ろ姿が。

彼女とは、いつかまた巡り会う気がするな…。


(ユーリご主人様は……)


(ええっアレは女性の事を考えてる時の顔ですね、それも美人でスタイルが良い女性の……)


「………アオノさん、また誰か別の女性の事を考えてますか?」


「ッ!?……いえいえっまさか……」


ヒエエエッイオちゃんの女の勘がレベルアップしてる!?。

笑顔を浮かべながらも内心驚愕する私だ。

イオちゃんがエスパーになってるってばよ。


「…………まっまあ、それについてはもう私も何も言いません…」


え?もうバカにつける薬はない的な?。

イオちゃんに嫌われたら夏の水着観賞大作戦が水泡に帰す、私の生きる希望が……。


「そっそれはともかく、私からも1つ良いですか?アオノさん」


「はい……何でしょうか?イオリアさん」


私は力なく訪ねる、死にたくなってきた。


「……そのイオリアという呼び方ですけど、今後は変えてくれませんか?」


「………………」


名前呼びをやめろっと言う事か、確かにスケベな中年に下の名前で呼ばれるとかJKなら発狂するレベルで嫌悪する行動である。


目線を向けるだけで娘にキモッと言われるお父さんとかもそうだが女性に理不尽に嫌われるのはオッサンの宿命だよな。


………もちろん私がJKなら絶対にキモッて思うしスケベ中年に下の名前で呼ばれたら死ねって思っちゃうと思うんだ、だからイオちゃんの意見も分かるよ。


イオちゃんの苗字って確かめてマナスクラブって言ってたな。

仕方ない、これからはマナスさんと……。


「こっこ、これからはイオち……イオで構いませんから、それでお願いします」


「…………………え?」


◇◇◇


そこはダンジョンの下層、今もモンスター達が世話しなく忙しそうに動き回っている。


「おいっ16階の階層に宝箱を置いたか?」「ああっ中身はポーションだったな」「この階層のモンスターの分布、偏ってないか?」「魔法の罠だが強力な物は使うなよ?」「強力なのは高いからな~」「今月の給料、オレ達ダンジョン守れなかったからって減給されるって本当かな?」「え?俺は特別手当が出るって聞いたぞ?」


どこぞの中年の魔法により死んでいたモンスターは五体満足で生き返った、むしろ自分達が1度全滅した事すら碌に覚えていない様だった。


「オイッ!ダークエルフの新入り!さっさとその荷物を運べ!」


「はっはいーー!」

(チクショウ!なんで僕がっ!魔法さえ使えればこんな荷物持ちなんて……いつか必ず魔法を使えるようになってやる!)


坊主頭のダークエルフが荷物を抱えながら怒鳴られている。


「なぁっあんなワニ頭、うちのダンジョンに居たっけ?」


「ん?知らないのか?期待の新人ってヤツだよ……」


「……………ん?オレに何かようか?」


ワニ頭は普通に溶け込んでいた、かなり活躍している様だ。


ダンジョンの各階層を映し出したモニターを見ながら話をするのはエルゼシアと夜叉桜だ。


「ほうっネズミに話を聞いた時は本当かと疑ったが……本当に死んでいたモンスターを生き返らせるとはな」


「そうね、あの男は冒険者なのでしょう?まさか冒険者にダンジョンを救われるなんて、お母様に話したらどうなるかしらねぇ~」


「安心せいっエレリアは理由がちゃんとしていれば無下にはせん、アレも上に立つ者としてちゃんとしているからな。それよりエレリアの娘よ、他のダンジョンの幹部はどうした?」


「1度ダンジョンが壊滅しかかったのよ?急いでダンジョンの問題点を探したりって忙しそうにしてるわぁ」


エルゼシアの話を聞いた夜叉桜は満足そうに話す。


「そうかそうか、それは殊勝な心掛けじゃな」


「それを言うなら、そっちのラットマンは?」


「ん?ヤツは報酬を渡したら直ぐに迷宮都市を立ったぞ?元からそれまでの関係じゃったからな」


「ふぅ~~ん、そう……」


「我もそろそろ行くとするか、また道中であの男に会うかもしれんなぁ」


「……本当に放蕩ダンジョンマスターね、あのアオノってのに付いて行く気?」


「いいや?我の占いでそう出てるだけじゃよ、まあまだまだ先の話だがな?今から楽しみじゃ~」


「……………」


「ん?なんじゃ、お主もあの男に興味があるならついて行って見れば良かろうに?」


「ちっ違うわよ!ただ今度開かれる大陸中のダンジョンマスターが集める会合で今回の事をどう説明するか私は考えて……」


ダンジョンマスター同士の話は続いた。



場所は青野がハッスルして魔法フェスを開いた場所。


召喚した大量の水もモンスターも何処にも姿はなく、破壊された様な後もない。

青野が酔っぱらいながらも敵も周囲の自然にも危害を加えない様にしたからだ。


その開けた森の平地に、1人のフード野郎が魔法で上空に浮かんでいた。

フードをかぶり性別は不明、しかしその口元は見えた、その口元は邪悪に歪んでいた。


「クックックッまさかここまで入念に準備したワシの策を容易く打ち砕くとはな。流石は『青天の魔法使い』の弟子といった所か、恐ろしい程の力であった」


そう語りながらもフード野郎は笑う。


「しかしその魔法、既に見切ったぞ?果たして次はどうなる事か、楽しみにするが良い……クックックッ…」


(いやいやっそんな次回に続くみたいなノリ、要りませんからね?)


「………………は?」


青野の思念がフードに届く、それと同時にフードの全身が青い炎に包まれた。


「なっ何だと!?まさかワシに気付いて……ギャアアアアアアアッ!!」


フードは苦悶の悲鳴を上げると間もなく消滅した。


◇◇◇


「……………ふうっ」


はいっラグナを禄でもない道に引きずり込んだヤツの始末も完了、私の超越瞳の魔法ならどれだけ離れていたとしても補足は容易だ、そして1度補足すれば魔法でワンパンである。


ラグナの記憶にあった如何にもの邪教の神殿って感じの場所も、そこの信者達も今頃は炎に包まれているだろう。


復活する事もなく滅びた名も知らない悪神竜の眷属さんよ、悪いねっ私は興味もないキャラが終盤に出て来て更なる次の戦いを示唆するって言う感じの?……あんまり好きじゃないんだよ。


どうせ大したオチもないんだから、その場で全員倒しちゃってよって思うんだわ。

だから今回、私はそうした、悔いとかは特にない。当然だろ。


あんな陰険な連中と何度も事を構えてやり合ってられるかっ私の異世界物語は観光と道楽がメインなんだよ、私がそう決めてんだからな。


さてっこれで完璧に後始末も完了である。


「………………フッ」


「どうかしたんですかアオノさん?何か嬉しそうにしてますけど」


「いえっ知り合いの借りを無事に返し終わったと言うか何というか……」


「?、知り合いの借り……ですか?」


そっ私と違って美人な奥さんと結婚して可愛い娘さんまでいた……何処ぞの騎士のな。

まぁこれももちろん私の自己満足である、取り敢えずコイツだけはシメるって決めていた私だ。


「ええまぁっ迷宮都市でたまたま知り合いまして、気の良い方でしたからね。少し力を貸したと言うか……」


「………そっその方というのは」


「はいっ迷宮都市で酒屋を開いていた年配の方ですね、私がお酒に興味が持った時にそれとなく話を聞いてくれた男性です」


「そうですか、良かった……」


「……イオさん?」


イオちゃんがボソッと何か言ったけど聞こえなかった。


「なっ何でもありませんから!」


「そっそうですか?」


「そうなんです!」


イオちゃんにそうなんですと言われたら、もうそれから先は聞けない私だ。


現在我々は徒歩で迷宮都市から出て次の町まで向かっている。

あの時間じゃ乗り合いの馬車もなかったんだよ。


そして何気にイオちゃんの事を島に居た頃の様にイオさんって呼んでいる事に嬉しさを感じる私だ。

美人に下の名前で呼んで良いって許可されるとテンション上がるよな。


リエリとユーリはビー玉モードで周囲のモンスターを警戒してくれてる、お陰で私とイオちゃんほピクニック気分である。


………ん?そんなことを考えていたら雨が、未だに雨期の真っ只中である事を忘れてた。


「ご主人様、恐らく雨は暫く降るものかと…」


「ユーリ、分かりました。イオさん、リエリ、魔法部屋マジック・ルームを発動します」


「「はい」」


「お願いします、アオノさん」


さてっ暫くは雨とにらめっこしながの旅である、そして雨期が開けるタイミングでこの世界の夏のリゾート地、アルバトラスにたどり着ける様に進んで行きますか。


時間はあるんだ。ゆったりと行くとしよう。


そんな事を考えながら美人との旅を楽しむ事にした私だ。








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