第83話『お酒最強伝説(5)』
◇◇◇
フワフワした夢心地の中、私は誰かの肩を借りて歩いている。
その相手を見た。
「………佐藤君?」
佐藤君だ、私と同じおっぱい星人の系譜である佐藤君じゃないか。
何で彼がこの世界に?いやっ中年の私が来てるんだし、若い彼が来てもおかしくはないのか?。
何より彼のおっぱい星人としてのレベルの高さを知る私は、彼ならおっぱいの為に異世界転移でも転生でも幾らしても不思議じゃないと思っている(酔っぱらってる)。
「佐藤君もこの世界に?実は私も何ですよ~お互い魔法がある世界になんて来てしまうなんて、オタクなんですかね、ハッハッハッ………」
「&!?@#*な#**?_~~さ/:&#。。##?@@*&。は*?」
………なんて?佐藤君、何を言ってるのか分からないよ?。
「…………………ハァッ」
やっぱ夢か、そりゃあそうだよな。
しかし肩を借りていて、歩いてる感覚がある。偉くリアルな感じの夢である。
「佐藤?……まぁいいです。それにしても、また随分と無茶をしましたね」
「……え?」
今度は佐藤君の言葉が分かった、さっきのは何だったんだ?まぁいいか、夢だと分かってんだ。
ならさ………たまには素直になるのも良いだろう?中年は懐かしい顔を見て対して良い思い出もない前の世界を思い出して……少しだけ気分が良いんだ。
本当、何でかは分からないけど気分が良い。
「無茶ですか?」
「そうでしょう?1人でダンジョンに乗り込んできた妙な集団と戦ったり、しかもその理由が如何にも怪しい美女とのお酒の席の為にって、流石に私も呆れましたよ」
「ハッハッハッ佐藤君がそれを言います?」
少なくとも私が知る彼はスタイル抜群の美女との酒の席の為のなら犯罪以外なら全力で取り組む様な男だった筈だ、まっこれ夢だから気にしないけど。
「君が私に女性の母性の象徴であるおっぱいは~~ってよく話をしてましたね」
「…………………」
お陰で私もいつの間にかおっぱい星人の系譜である、きっと佐藤君が全ての元凶に違いないな。
………アレ?違うなっ元からだったわ。
「そっそれに今度は魔王軍ですよ?これを無茶と言わないでなんと言うんですか?」
「……ああっまぁ仕方ないですよ、だって……」
「迷宮都市やダンジョンが大変な事になれば、その美女の機嫌を損ねるからですか?」
いいえっ違います。
「美女は合ってますが、別の女性ですね。その人………って言うかエルフなんですよ」
「……………え?」
「ですからエルフの女性ですよ、それも佐藤君も驚く程に巨乳の美女ですよ?」
佐藤君ファンタジーゲームには興味無かったけど、巨乳エルフには興味深々だった事を思いだした私だ。
「……………そっそのきっ巨乳の美女が何の関係が?」
乗ってきたな、流石おっぱい星人の母星の大統領である佐藤君だ。
本来ならこんな話とか絶対にしない、しかしこれは夢だからな。何を言っても大丈夫なのである。
「聞いて下さい、何とその美女と私の連れである美人メイドさんと美人秘書でこの世界にある夏のリゾート地に向かう事になってるんです、そこでは当然水着ですよ水着……佐藤君も大好きでしたよね?スタイル抜群の美女の水着…」
「…………………」
驚愕し固まる佐藤君、やはり冴えない中年の私が美女を3人も連れてリゾート地になんて行くと聞かされたらそりゃあ固まるよな。
私なら嫉妬に狂う自信がある、これが夢だから出来るお話である。
「まぁその美女3人が水着を着る保障なんて無いんですけどね、私としてはリゾート地に行って楽しい思い出の1つでも作って欲しいんです」
「…………え?」
「実はそのエルフの美女、名前をイオリアさんと言う方は……」
そして話したのはイオちゃんの事とラブーンでの事だ、あの島で私も彼女も悲しい別れがあった事を説明した。
「その話と今回の事と、一体なんの関係があるんですか?」
「……親しい人や見知った誰かとの死別は、そう簡単に折り合いがつくものではありません。しかし彼女はそれを私達に察しない様に振る舞おうとしています」
「!」
1人で魔法の研究をするのもそう、もしかしたらリエリやユーリもその当たりの機微を察してイオちゃんと接してくれているのではないかと考える私だ。
本当にあのゴーレムツインズは人の感情とかを理解してきてるんだよな。
「この世界が理不尽で不条理なのは、私も同じ様に感じています」
「青野さん見たいな魔法使いでもですか?」
「何を言ってるんです佐藤君、私が魔法使いなんて始めたのはほんの数カ月前。前の世界に居たときはお互い会社にこき使われたでしょうに……」
「……………」
「君も知っての通り、私は困ってる人は絶対に見過ごせないとか、皆を救う事を使命としてるなんて考えを持った人間では断じてありません。
私の世界ではよく、成功した人間に対して、自分も同じ様な才能が、環境があれば、同じ様に人生で成功していた………っとを言う人間を、愚かだとバカにする風潮がありますのね?」
「………?それは、そうでしょう?同じ物を持っていても、出来る人間には出来ますが出来ない人間には出来ません」
「ええっ確かに正論です。例えばそれは、部屋の掃除を全くしない人間が部屋を幾らでも綺麗に出来る魔法を使えたとしても、何かしら理由をつけて部屋の掃除をサボろうと結局はするでしょうね」
けどね、私はそればかりじゃないと思うんだ。
「しかし魔法であれ何であれ、力は責任を伴ってこその物です、そんな正論を何時までもその通りだと言っていては。人は変われない」
「青野さんが………変わる?」
そうっその正論で行くと、魔法使いになった私は何かと屁理屈をつけて結局は自分の為にしか魔法を使わない……そして他人の為には恐ろしい程の
そんなしょうもないおっさんでも、やっぱり誰かの為に生きれる人間ってのに憧れるもの何だよ。
「私は救いようのない凡人だ、ショボくれた冴えない中年ですよ。元来、他人様の為になんて言う柄じゃない、しかしこの魔法はそんな私が変わる『
あっ……ま~~た私は言いたい事の前にやたらと長い前置きを、これは私の癖だ。悪い癖である。
私はコホンと一息ついて仕切り直す。
「さっ佐藤君がよく言っていたでしょう?綺麗な女性の笑顔には計れない価値があるって、私の魔法は要するにそれを見る
何度か私が言った人を助ける
山賊退治はマーブルちゃんの笑顔を。
サハギン退治はアレリアちゃんの笑顔を。
魔神退治はエレナちゃんの笑顔を。
チャンスってのは彼女達の最高の笑顔を拝むチャンスって事なんだよ、まぁ他にも関係ないおっさんや野郎連中でも困ってたら助けはするけど、そっちは完全についでであるのであしからず。
………私は別にきれい事を言ってる訳じゃない、ハッキリ言うけど人助けなんて先ずは『自分ありき』で良いんだよ。
自分と近しい人が幸せで、ほんの少し遠い誰かにも手を貸せる余裕がある者が助けるってくらいでさ。
無理な助けをすれば助けようとした方も共倒れするものだ、だから無理とかはしない、線引きとか普通にする。
………けど、どうやら私の魔法と言うファンタジーな代物は、結構な人数を助ける事が出来るらしい。
だから………。
「私の様なタダの人間でも、人の笑顔の為に出来る事がある、ならそれをする事に私は迷う事はしません、そうっ決めたんです……」
異世界に転生して魔法使いになった時からな。
特に美女の笑顔の為ならな。
エレナちゃん、長い桃色の髪をなびかせて笑顔を向ける彼女を思い出した。
魔法使いにとって、魔法の使い方はそのまま人生の生き方。
それは命の使い方に他ならない。だったらつまらない理由を付けて使わないのは勿体ないよな。
「………青野さん、貴方は」
「だからまぁ夜叉桜さんやエルゼシアの為に動くのは自然な」
「ハア?」
えっ佐藤君が凄いキレた、何で?。
「っと言うのは冗談としても……」
酒のせいだ、全ては酒のせいである。
それに夢だしな、だから私はイケメンでもないのにここまでキザでアホなセリフが言えるのさ。
そのお酒の勢いに任せて更に口走るぜ。
「そのイオリアさん……まぁもうイオちゃんでいいですかね?私としてはそう呼びたいですし」
「………………ッ!」
「今私は、そのイオちゃんの心からの笑顔を見たいから。色々と頑張っているんですよ」
お酒最強伝説。こんなセリフは夢の世界でもお酒の力がなければ言えないね~~(酔っぱらってる)。
ん?佐藤君がさっきからフルフルと震えてる?そうか、私ばかり巨乳美女に良い格好を見せようとハッスルしてるもんだから彼の嫉妬の炎に薪をくべてしまったかな?。
分かるよ、私も佐藤君が巨乳美女とかゲットしたら同じ様に嫉妬するからさ。
「……………!」
ヤベッ夢の世界でも酒のせいで足にきた、クラッときてるよ。
これはアレだな、きっと夢から覚める的なヤツだよ。起きたらリエリやユーリ、そしてイオちゃんがいる的な。
出来ればイオちゃんの膝枕とか切望する私だ。
「っと言う訳で佐藤君、私はイオちゃんの笑顔と……胸を強調するエロい水着の為にこの世界を生きていくよ。君も……」
そこでガクッとまた寝落ちする青野である。
◇◇◇
「なっ!?最後の最後でこの……ッ!本当にアオノさんは最低なのか、かっ格好いいのか……もうっ!どっちなんですか!?」
「いきなり叫ばないで下さいイオ、ちゃんと2人だけで話せる時間を与えたのに何をブーブー言ってるんですか?」
「ご主人様の身体から酒を抜きましょうか、リエリ」
「…………そうですね、ユーリ」
魔法で姿を消していたリエリとユーリが、青野に肩を貸して迷宮都市を歩いていたイオの側に現れる。
再びお酒の力で夢の世界に旅立った青野はイビキをかいていた。
何も知らないのは中年ばかりである。
ふとユーリがイオに話しかけかけた。
「…………ん?イオ、何で顔がそんなに真っ赤何ですか?」
「…しっ知りません」
「耳まで真っ赤ですね」
「知りません、知りませんからね私は!」
リエリの追撃も喰らったイオであった。
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