第81話『お酒最強伝説(3)』
◇◇◇
青野が空を飛んで行ってから1分後。
「本気であの数の魔王軍を止めるつもりなのかしら?いくら力を持っているとは言え人間。やはり全て力ずくで解決するつもりって事?」
「我もあの男の戦いは初めて見るからのぉ~ネズミよ、この戦いどう転ぶと思う?」
「アッシに青野の旦那が何をするかなんでも分かる訳がないでしょう?夜叉桜様の占いではどう出たんですか?」
青野が大きな岩の塔を出現させた頃、高見の見物をしながら夜叉桜はギストの言葉を聞いて何やら1枚の鏡を取り出した。
青い金細工の装飾が施された美しい鏡である、それを一目見た夜叉桜は一言。
「………フフフッ信じられん事じゃが。あの男の未来は妾の占いでも全く見えないんじゃ、精々あの男の力を借りれば迷宮都市もダンジョンも大事に至らない事が分かるくらいかの?」
そんな事を話す傍ら、ダルロスとラバスもいた。
それぞれ手足に枷をされていて逃げたりしないようにされている。
それは魔法が込められた枷で外すことも難しく、そのまま逃げようとすれば激痛が全身を襲う。
それ故に逃げずにこの場にいるラバスだ、ダルロスは元から逃げる気もない。
「う~む、あの男が本当にあの蒼騎士ならこの戦い、ただでは済まないのではないか?」
「知らないよ、この僕の頭をハゲにしやがって!いつか……いつか必ずこの報いを受けさせてやる!」
同じように青野に瞬殺された2人だがダルロスは自分がコテンパンにされた事を理解している、しかしラバスは本当に一瞬でやられたので本当の意味で青野の力を理解していなかった。
(………このバカが余計なことをしたらオレまで巻き添えを食らいそうだ、少しはこの戦いであの男の強さを理解すればいいのだが)
しかし数分後、その心配は杞憂となる。
青野が鎖縛封の魔法で魔王軍を薙ぎ払い始めたのだ、更にキューブ型の音響機器と言う名の魔法兵器が数多の魔法で攻撃してきた魔王軍に反撃する。
現場は一気に戦場となった。しかしそれでも平然と歌いまくる青野に若干引いた見物組達である。
「何なのあの鎖の魔法は……魔族だけでなく巨人族もいる魔王軍の兵士達を軽々と吹き飛ばしてるわよ?」
蒼騎士としての戦いを知っていた、しかし魔法使いとしての戦いはエルゼシアも知らなかったのでかなり驚愕していた。
そしてもう1人、青野の戦いを碌に知らない者がいた。
夜叉桜である、今まではギストの適当な報告だけを聞いていたのだ。と言うより青野が魔法を使う時は大抵魔法で覗こうとしても弾かれてまともに見る事が出来なかったりする。
「…………………なっなんとのぉ~~」
それ故に酔っぱらいの魔法フェスを見るのは此方も初である、完全に引いていた。
「ネッネズミよ?あの男はあの様な魔法を次々と使っておるが、魔力は尽きないのかの?」
「ですからアッシに聞かれても……ただ1つ言える事は」
ギストは達観した様に現場の惨状を見ながら答えた。
「あの人なら……何をしても驚くだけ無駄でしょう?」
「「……………………確かに」」
一方ダルロスとラバスも青野の魔法フェスにビックリ仰天していた。
「なっ何という魔法だ、あれ程広範囲の結果を張るなど、しかも魔王軍の猛攻でも全く破壊されない程に強力な物を……」
「それだけじゃない、最初に空を飛んでいた連中がいたが、それが突然落ちた。恐らく魔力を消滅させる魔法を発動したんだ、それも魔王軍数千人の魔法を封じる程の物をな……」
「バカな……あの規模の大地を操る魔法といい完全に人間の限界を超えた魔法だぞ!?」
「それだけじゃない、あの四角いヤツの魔法もあの男の魔法もだが……魔王軍の兵士を誰一人致命傷を与えないで気絶させている」
「……………ッ!?」
「つまりアレだけ複数の魔法を連発してるのに、あの四角いヤツの魔法まで完全にコントロールしてるんだよあの男は……クソッあんなのがいんのかよ……」
悪態をつきながらも、同じ魔法使いとして彼我の実力差に脱帽するしかないラバスに、最早青野に復讐すると言う考えはなくなっていた、その様子をダルロスはただ黙って見ていた。
酔っぱらった青野は魔法フェスを見物する連中が勝手に圧倒されている事を全く知らない、ただどんどん良くなっていく気分のままに歌い。魔法を乱発するのみである。
青野は歌う。
「…………オォ~~~」
そしてまた別の場所では。
城門にて、最初こそ青野が現れて『何だあの冴えないオッサンは?』っとなっていた冒険者よ迷宮都市の騎士達は。
しかし突然の巨大な岩の塔の出現と青野のワンマンライブステージ宣言に困惑したが…。
その後の魔法フェスに完全にビビった。
命を捨てる覚悟だった冒険者も巻き添えを喰らっては冗談じゃないと迷宮都市に逃げ帰る。
騎士の大半は固まっていた、それも仕方ない事だ、冴えない変なオッサンが1人で魔法で暴れて歌い出したんだ、気が狂っていると思われて当然だ。
そこに現れたのはユーリとイオであった。
「何をしているんです!彼が時間を稼いでるうちに迷宮都市の城門を閉めてなさい!」
「魔法が此方を攻撃する事は有り得ません、落ち着いて冷静になるんです」
美女2人に言われて騎士達は冷静に動き始める、青野が敵ならば自分達も結界の中にいないのはおかしい事に気付きだした。
青野が敵じゃないと理解した騎士達は都市の安全な所に都市の人間の非難と逃げた冒険者に事情を説明して自分達の仕事を手伝わせる様に動く。
騎士の1人がリエリに訪ねた。
「あっあの魔法使いが敵じゃないのは分かった、しかし本当に城門を閉めて良いのか?1度閉じて我々まで非難したらまと開くのにかなりの時間が掛かるぞ?」
「構いません、ご主人様にとってむしろ都市の人間が自由に動きすぎてあの戦場に近付く事の方が問題です、全員迷宮都市の避難所に行って下さい」
「…………分かった」
やがて騎士達の姿も消えた。
そこでリエリがイオに話し掛けた。
「イオ、私達は魔法で姿を消してご主人様の元に行こうと思います」
「………分かりました」
「イオ、どうかしましたか?少し機嫌が悪い様に思えますが」
「きっ機嫌が悪いってまるで私が子供見たいな言い方じゃないですか、やめて下さい」
イオはどこかの中年が美女の色香に惑わされたが故に、あのダンジョンと迷宮都市を救う結果になった事を聞いた。
要は色んな女性とそのおっぱいに惑わされる中年の本性を知ったのだ、そして当たり前だがそんな中年にとてもイオは怒っていた。
激おこプンプンと怒っていた。
そんなイオを見てリエリは冷静に言葉をかける。
「ふうっ何をそんなに怒っているんですか?ご主人様が美女や美少女に頼まれたら面倒事も引き受ける所ですか?
それとも可愛い女性や綺麗な女性人に弱い所ですか?胸や太ももを何度もチラ見してくる所ですか?
スケベな所ですか?おっぱい星人な所ですか?」
「全部ですよ全部!全くもうあの人ときたら……やはり私の
「落ち着きなさい、そもそも……ご主人様がエロい人だと貴女は知っていましたよね?ご主人様が貴女の胸や太ももやお尻をチラ見するのを貴女は知っていて尚その身体の線がハッキリ出る教師の出で立ちで生活をしてたではないですか」
「こっこれは私が教師と言う事を忘れない為に大事にしてるスーツ何ですよ!そっそれに何故私がそんなスケベな視線を意識しているなんて……」
「そんな理由はリエリが考える事ではありませんよ、私が聞いてるのはご主人様のチラ見を貴女が知っていてもそれを口にして指摘してこなかった事実です」
青野本人が聞いていれば、心が死んでしまいそうな会話をする美女2人である。
イオは少しは目を伏せるとボソボソと口を開いた。
「だっ……だって以前と大差なく何度も遠慮なく見てきましたよ?アレでバレてないとなんて…」
「それがご主人様です」
「あっあんなにジロジロ見ておいて!他の女性に簡単に目移りし過ぎではないですか!?」
「………それがっ!ご主人様です」
青野なら絶対に抗議する宣言だ、しかし全て覆し様がない事実である。
青野の敗訴は濃厚だ、そもそも死刑はとっくに執行されている。
それでも食い下がるイオ。
「貴女達は、どうして平気なんですか!」
「リエリとユーリはご主人様の力により創られた存在です、ご主人様を否定する理由がありません。しかしそこまで気になるのなら……」
食い下がるイオにリエリは事もなげに言い放つ。
「今回の騒動が終わった後にでもご主人様と2人の時間を作りましょう。そこで聞きたい事は全て聞けばよろしいかと」
「…………………分かりました、ではそうさせてもらいますからね!」
(もしもただのスケベオヤジだったら……
酔っぱらって魔法で無双する青野、その背後に恐ろしき存在が迫っていた(笑)。
更に場面は移り変わる。
次は青野に只今絶賛フルボッコにされている魔王軍の状況である。
酔っぱらいのテンションは更に進み、夏へ向けてボルテージを上げる青野は魔法で大量の水を出した。
結界で水は流れるのをせき止められとても巨大なプールの様に青野のワンマンライブステージの眼前はななっていた。
そして当然ながら、鎧をガチガチに着込んだ魔王軍の大半の兵士は………地獄を見る。
「ギャアアアッ!マジか!?マジかあの魔法使い!結界で閉じ込めといて水攻めしてきやがったぞ!」「イカレてやがる!急いで鎧を脱げ……ぐわぁっ!」ザッバァーーン!「うぉおおおおっ泳げねぇーー!」ザッバァーーン!ザッバァーーン!「助けておかぁちゃ~ん!」ザッバァーーン!「なっ!?なんか全身黒い変なヤツがサーフィンしてんぞ!?」ザッバァーーン!「フゴッ!?サーフボードで突進されるぞ!気をつけろ!」ザッバァーーン!「もうやだぁああーーー!」
そんな地獄絵図を見ている1人の美女がいた。
「………どうして、こんな訳の分からん事に」
女は魔族だ。魔族と言っても肌は色白で人間と大差ない、代わりに耳が少し尖っていて(エルフ程ではない)瞳が赤色で露出の多い女物の軍服の様な服を着ていた。
名をフリーレンス、今回動いている魔王軍の総指揮を執る女幹部である。
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