第80話『お酒最強伝説(2)』
私の歌声(魔法で変声した声)が眼前の魔王軍に響く、アニソンは基本的に平和と友情ベースなので心変わりしてくれないかと思ってチョイスした。
取り敢えず……夏は海って事で海賊がその道の王様になるために頑張るマンガの初代主題歌からいくか。
「ありったけの夢を~~~!~~……!探しも~~~~~のを~!」
声がマジでクリソツ!最高に楽しい~~(酔っぱらってる)。
むむっ?先程の魔力除去の魔法で連中のMPはゼロにしたから空は飛べなくなったのに、今度は地道に断崖絶壁を登って来ているだと?(私は魔法で全範囲を視認していま~す)。
魔王軍の兵士達は鬼の形相、何が何でも中年をフルボッコにしてやろうと言う殺気が凄い……。
………なる程、どうやら向こうも私のお・も・て・な・しに対しておもてなし返しを持って返礼しようとしてる様だ(酔っぱらってる)……ならば私は更にそれを返す(酔っぱらってる)!!。
【魔法の鎖よ、我が敵の身体の自由を奪え。
私の回りだけでなく、この広範囲の結界に覆われた空間内に無数に魔法陣が出現する。
そしてその魔法陣から現れた光る魔力の鎖が…………魔王軍連中を引っぱたく!。
バシーン!。
「あべしっ!」
バシーン!バシーン!バシーン!。
「むろぐっ!」「ぱぷりか!」「べほいみ!」
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーンバシーンバシーンバシーンバシーンバシーン。
「なんだよこの鎖!?顔を狙って引っぱたいて来やがるぞ!?」「鎖のくせに拘束もしてこねぇで的確に鎧の隙間から……ぐあっ!?」「ガッガモンツは股間をやられたぞ!」「うぎゃあああっ!」
本来この鎖縛封の魔法は対象を拘束して宙に縛り付ける魔法だ、しかも身体だけでなくその体内の魔力とかも縛るので魔法も使えなくなる代物だ、無論魔法以外の変な能力とかも全て封殺する。チート鎖魔法である。
そして何故に連中を拘束しないのか?それは私が鎧を着込んだマッスル共を縛ると言う真似をしたくらいないからだ、魔法だろうとあんまり触りたくないんだよ。キモイ。
だから鎖縛封の魔法は連中を引っぱたいて牽制する魔法として発動した。
私は更に別の歌をそのまま歌い続ける。
あっユーリにはそれとなく頼み事をしておこう。
(ユーリ、恐らく向こうも手練れが多い筈、このステージにも上がってくる者もいるはずです。だから私がステージに集中する間、私を守って下さい!)
(ご主人様がステージに集中して歌い続ける間、誰一人としてご主人様には近付かせません!……しかし歌を歌う意味が分かりませんよご主人様)
(歌は…………歌いたいから歌うのですよユーリ(酔っぱらってる)!)
あいどんと、ふぃーーる(酔っぱらってる)。
(………なる程、分かりました!)
分かってくれましたかユーリ(酔っぱらってる)!。ちなみに私はさっぱり分かりませ~~ん(酔っぱらってる)。
まぁいいやっこれでユーリも活躍して私は歌に集中出来る。
私は次に歌うアニソンは何にしようかと考えながらステージを盛り上げる。
魔王軍もどんどん盛り上がるしな(酔っぱらってる)。
「オイッ!あの歌を辞めさせるぞ!あのオッサンをぶっ殺してやる!」「アアッてかさっきから女の声の歌を歌ってるぞ!?オッサンのくせにキモイ真似をしやがって!」「オッサンが気持ちよく歌ってるだけだも腹が立つんだよ!」「ぶっ殺せーー!」
「「「「「オオォオオオオオオオオッ!」」」」」
私の魔法なら声を女性シンガーにも出来る、好きな歌を完コピ出来るってサイコ~。
調子に乗ってバンバン歌うぜ(酔っぱらってる)。
………オッサンへの同調圧力が凄い事になっている所は許せんのでしばいてやるけどな。
「オイッ!この四角い青いヤツからあのオッサンの歌声がするぞ!こんなキモイ物ぶっ壊してしまえーー!」
私の声がするからキモイ物ってひど~~い(酔っぱらってる)………けど、それ攻撃すると。
「ギャアアアッ!ぶっ武器で攻撃したら電気が流れたぞ!?」「こっちは火炎放射されましたヒィィーー!?」「私の方は氷の槍が……うわっと!」「何だと!?まさかあの四角いのも攻撃魔法を!?」
そうだよ当たり前じゃん、私が創りだしたキューブ型音響機器は自衛能力もある。攻撃には攻撃魔法で返すのだ。炎も雷も氷も風もポンポンかましてくるぜよ~~~(酔っぱらってる)。
魔法の鎖が敵を薙ぎ払い、音響機器が色とりどりの魔法を発動。ステージに登ってきた的は頼れる銀髪ツインテールメイドが料理してくれる。
正に最高の布陣、どんどん掛かってこいよ魔王軍共、私のステージは更に盛り上げるぜ。
次は平成の夏曲とかいいかな~~(酔っぱらってる)。
◇◇◇
私はユーリです、現在ユーリはご主人様のワンマンライブステージにてステージによじ登ってくるバカ共を掃除しています。
幾つも召喚した剣を宙にうかべながらそれらをバカ共にかまします。
ご主人様は殺生を基本的に好みませんので召喚した剣は鞘もつけたままです。
ユーリはそれを操り魔王軍とやらの頭や股間に鞘突きを喰らわせます、すると半死半生の屍の出来上がりです。
「………魔王軍と言っても大して動ける者はいませんね」
「ふざけんな!このメイド風情がぁあっ!」
迫るのは黒い鎧を着込んだ騎士か何かでしょうか?この岩をよじ登ってくる時点で中々に大した物です、しかし肩で息をしながら私の相手が務まると思っている事が不愉快ですね。
ハルバートを振り回すのでそれを回避しながら間合いを詰めます。
「遅すぎますよ?」
「くっくそっ!」
(何だこのメイド!はッ早過ぎるぞっ!?)
そのまま片手を出して魔法を発動。
バチッ!。
「ギャアッ!」
雷撃の魔法を弱くしたものです、鎧を素通りした電気は良い感じに男を感電させました。
悲鳴もなく倒れる魔王軍の兵士を尻目に他にも現れる敵を相手取りながら私は戦闘を続行します。
そもそもユーリやリエリ、そしてイオがこの場にこれたのには理由があります。
あれは今から小一時間位前ですかね?ユーリとリエリはご主人様のゴーレムです、疲れもしなければ睡眠を取る必要もない存在です。
だからユーリとリエリは常にどちらかはご主人様が寝ている魔法部屋の個室の前、それとイオの方も一応ですが見回りをしています。
まあご主人様の魔法部屋の魔法はご主人様が創りだした異空間です、普通に考えて侵入者なんて有り得ません。
しかしご主人様は常々自身の魔法を破れる様な存在が決して居ないとは考えていないと考えている御方です、万が一を考えて常に新しい魔法の開発を宙に浮かべた魔法陣を弄くりながら研究しています。
よくイオがその光景を覗き見出来ないかとリエリやユーリに聞いてくるんですよね、彼女は私達をご主人様のゴーレムだと言うことを忘れているんでしょうか?ご主人様のプライベートを侵害する真似をさせる訳がありませんよ。
おっと話がそれましたね、とにかくご主人様はどんな能力にも弱点があり。完全無欠なんて事は有り得ないと言うのです。
だから常にユーリとリエリは万が一、いえっ億が一に備えて見回りをしていました。
するときょうの深夜に事件が起きたんです。
今日も個人の個室以外のリビング、バスルーム、ダイニングテーブルにトイレに迷宮都市での買い物した衣類をハンガーに掛けて並べてあるファッションルームと言う、新しくご主人様が新設した部屋を見てまわりますました。
最後にご主人様の部屋の前に行きました、ご主人様も個室のプライベートは万全にされていてドアの外には音漏れ1つしません。
恐らく魔法で色々と対策しているんでしょう、ご主人様も男ですからして。
ですから本来ならご主人様の部屋のドアは中から開けなければ開くことはない様になっています。
しかしそのドアが私の前で突然開きました、ご主人様がトイレにでも行かれるのかと思った時です。
中から現れたのは黄緑色の髪と瞳を持つ私と同じツインテールの幼女でした、可愛いドレスを着ています。
「………この魔力は、精霊ですね。何故ご主人様の部屋に?」
「…………置いて行かれた」
は?。
「あの魔法使いはクエストで活躍した私を置いて1人で楽しい所に行った……許せん。だから私はお前達にあの男が何をしていたのか……その全ての真実をバラす事にしたのだー!」
「……いきなり大声はやめなさい、他の者達が起きて……」
「もとからり起きてましたよ、ユーリ、その子供は何なんですか?」
「うっうう~~ん……どうかしましたか?ユーリさん、リエリさん、ん?その子供は一体?」
幼女が身体を大の字のポーズをしながら、のだー!っと大きな声をあげるモノだからリエリはともかくイオが起きて来てしまいました。
「私の名はラブーン、あの島から付いてきた精霊だ。そしてお前達にあの魔法使いが本当は何をしていたのか、そして今何をしているのかをバラす者だ!」
バラすバラすとさっきから五月蝿いです、まるでネタバレするのが大好きな人間みたいですよ。
そして仄暗い影をたたえた表情の幼女は静かに語り始めました。
ご主人様が何故に迷宮都市のダンジョンの下層にいたのか。
その結果、現在何をしているのか。
「「「……………………………………………」」」
そして私達3人の表情は消えました。
ユーリとリエリは基本表情を顔に出しませんが、感情がモロに顔に出るイオも無表情です。
そして私達もその心境を少しは理解出来てしまうのです。
…………………………まぁ、今は迷宮都市のピンチでもあるらしく戦おうとしている最中との事、これらについては後々と言う事になりました。
ご主人様、取り敢えずこの戦いが終わったら覚悟が必要かも知れませよ?。
私はそんな事を考えながら魔王軍とやらの敵を相手に無双状態で戦い続けます。
本来なら事前に説明しておくのがゴーレムとして、メイドとしては普通なのかも知れません、しかし今回は何も言わない事にした私です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます