第79話『お酒最強伝説』
◇◇◇
時刻は深夜もかなり深まった時間帯である。
迷宮都市にはあのファンタジーゲームではお馴染みのバカでかい城門があり、そこから冒険者であれ商人であり多くの人々が出入りしている。
そんな城門に今、何十人もの冒険者やら都市の兵士や騎士が集まっていた。
「オイッ!報告にあった事は本当か!?まっ魔王軍が現れたなんて!」「ああっ何でもダンジョン帰りの冒険者が偶然行軍する連中を発見したとか…」「どっどれだけの規模とか分かるヤツはいるか!?」「そんなヤツいるわけねぇだろ!少なくとも数千人以上って話だ!」「マジかよ!?この迷宮都市の戦力なんて冒険者も兵も騎士も全部合わせても……」
おうおうっ暫く前までのんびり日常を生きていた筈が、ご覧の有様である。
まるで戦争でも始まりそうな雰囲気だな、ちなみに私は超越瞳の魔法で彼らを確認、我々は迷宮都市から少し離れた小高い丘に転移している。
………う~~ん、何故か身体がポカポカする。
まさかあの妙な酒を一口飲んだだけで?いやいやまさか(他にも飲んだ酒の事を忘れている)。
いくら飲んだら死ぬなんて話の酒とは言え、今の私の身体はチートな謎仕様、物騒な酒でも一口くらいで何とかなりはしないだろう……多分。
「全く、お前達が仕込んでいた連中が今更現れたのは、まさか狙っての事かしら?」
「いっいや、オレ達は本当に負けを認めている、アレは既に話したが魔王軍に入り込んでいる間者が此方の内情を知らずに動いた結果だろう」
「………オイッ僕も1ついいか?この頭、もう2週間位立つのに全く髪の毛が生えないんだが?そこの不細工なオッサンがやったんだよな?これはいつになったら生えるんだよ?」
「……………」
ハゲイケメンよ、良くこの場でそんな事を言えるね、ある意味凄いよ。普通なら問答無用でキルされても文句言えない立場のくせに……。
そしてそのハゲは治ることはない。私の魔法の炎で焼かれたら物が再生する訳がないのだ。
「魔王軍ですか……まさかそんな手合いが迷宮都市に向かっていたとは。少し気を抜いてしまっていたかも知れません。あとその頭はずっとそのままですから」
迷宮都市に視線を向ける私の後ろでハゲイケメンがギャーギャーと五月蝿い。
現場はシリアスなのだ、少し空気を読んでもらいたいよな。
しかしなんだろうか?この……全能感は(酔っぱらってる)。
そうっさっきからムクムクと私の中で何かが大きくなるのを感じる。これはなんだ?。
青野は気が大きくなってる。
今の私は……とても気分が良いんだよな。
そんな青野を見て、夜叉桜は不敵に笑った。
「……………………フッフフ」
そうか……私は理解した。
今の私は、無敵だぁーー!(酔っぱらっている)。
飛行の魔法を発動。私は城門の方に向かう、何故ならば遂に敵さんが現れたからだ。
「ッ!?みっ見ろ!魔王軍だっ!」
城門に集まった人々が一斉に同じ方向を見る、その視線の先には漆黒の鎧を着込んだ連中が行軍してきた。
………なんかラグナが来てた鎧よりもショボい鎧を着ている、同じ色合いの鎧を着るならもう少し……まぁ勝手な言い分なのは分かってるから言わないけどさ。
現れた黒い軍団に恐れおののく都市の面々とちょっとコイツら数だけじゃね?っと肩透かしを食らった私。
一体どちらが間違っているのだろうか?……私か……イヤッ連中だな(酔っぱらってる)。
取り敢えず城門にいる連中を戦わせる気は無いので彼らより200メートル位手前に着地する。
当然私の姿を見た冒険者辺りからは声が上がる、そして迫る魔王軍とか言う連中はなんだコイツ?って視線を受けた。
両方とも無視する。
「…………………さてっそれじゃあ」
始めますかっと宣言、魔法をかます。
【我が力を持って、大地を操る。
大地を好きにリメイクできる魔法を発動。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!。
私の足下から地面が迫り上がる、魔王軍から見たら目の前にいきなり大きな岩の塔が現れた様に見えるだろう。
しかしよくもまぁこんな夜遅くにきたもんである、魔王軍は暗視の能力持ちが多いのか?。
夜の大自然ってさ、1人でいるとアソコがキュッとなる時ってあるよな。
「なっなんだこの大岩は!?」「恐らくさっきの黄色い人間の魔法です!」「なにっ!?ヤツは人間か!?オークの亜種とかでは……」「ハーフかも知れません!」「オークがこんな魔法をつかえるか!」「おのれ不細工な魔法使いめ!」「おいっこんな岩無視して迷宮都市に攻め込むぞ!」「ダメです!結界に閉じ込められていて出られません!」「なんだと!?」「あの野郎は何者だっ!?」
フッフッフッ、大地操作の魔法を発動するのと同時に不可視の結界で君達は包囲させてもらった、これで逃げる事も迷宮都市に進行も出来まい。
何気にこの大人数を1度に結界に閉じ込めるのって凄い事なんだよ?誰か私を褒めてくれ、あの黒髪美人とか金髪ボブちゃんに褒めて欲しい。
そして中年をオークとか不細工と言ったヤツらは覚悟をする事だ、以前不細工と言う言葉を使ったダークエルフは今やハゲ、その連中には同じ末路を辿って貰おう。
……えーーっと言う訳で、私のスーパーな特設ステージが完成した(酔っぱらってる)!。
そして私は魔法でマイクを右手に召喚、そして更に蒼く四角い1メートルサイズのキューブを十数個召喚した。
このキューブは別にファンタジーな効果のあるものではない、浮いてるけど。これはただの音響機器だ。
私の声をマイクを通して魔王軍の人々にちゃんと届けてもらう為のアイテムだ。
なんでそんなものを召喚したのか、それは…。
「これより、私の1人カラオケショーを!開催させていただきま~~~す(酔っぱらってる)!」
喰らえっ!これが島国流の私史上最大のお・も・て・な・し……怒最天殴死だぁああああっ!。
マイクを片手に私は全力で吠える。
「
一応超越瞳の魔法で城門前の連中と魔王軍の連中の表情は逐一確認している。
みんな……いい顔をしてるぜ(酔っぱらってる)!。
全員なんだあのオッサンは!?と言う顔をしていた。
酔っぱらいの暴走は始まったばかりだ……。
「三十路!童貞!魔法使い!全ての異世界物の産みの親ぁああっ!そうっ我こそわぁああっ!。
あぁっ!おぉおおおお!のっ!イエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェイッ(酔っぱらってる)!」
サ○シャイン青野となった私を、最早誰も止められない。どんどん行くぜ。
「なっなんだ!?いきなり大声出しやがって!」「完全に我ら魔王軍をバカにしている、許せん!」「飛行魔法が使えるヤツはあの男を叩け!他は結界を破壊するぞ!」「魔法使い1人が張った結界など恐れるに足らず!行くぞぉっ!」
「「「「ウォオオオオオオオオッ!」」」」
ウォオって、おたくらに私の魔法をどうにか出来るわけないだろう?。まぁいいやっ私はそれよりもこのマイクを使って……。
歌うんだぜ。
無論中年の歌声なんて誰も必要とはしていない元々歌自慢って訳でもないしな。
そこで私は魔法で自身の声を変える事にした、これでどんなイケメンボイスも女性シンガーの声も再現出来るのだ。
小さな青い魔法陣が私の喉にうっすらと現れた。
先ずは……夏に関係する歌とかで良いかな?まだ雨期あけてないけど、とにかく気分が上がる歌を歌いたい。
まぁ好きな歌なら何でも言いや……少年○代とか良いよな、アニソンも絶対歌うんだ、ドラマの主題歌だって……。
……ん?おっ魔王軍の兵隊が空を飛んで来だしたぞ、他にも遠距離から魔法を打ってきた…っあ!。
「……………私のステージに、着弾したぞ?」
火球がズドンッときた………ムカついた。
「貴方達の魔力、カラにしてしまいますか」
私は魔力除去の魔法を発動。魔王軍の連中はMPを全て失った、それと同時に空にいた一団が地面に向かって落下する。
フッフッフッ私のステージを汚した罰だ、少し痛い目を見るといい。
すると私のステージに見知った者が現れた、ユーリである。
「ご主人様!」
「………ユーリ?どうしてここに?」
「…………まぁっその、ごっご主人様が強力な魔法を発動した事を察して、それとリエリはイオを連れて城門の近くにいます」
えっイオちゃんもいるのか………まっいいか、どうせこれだけ派手にやれば直ぐにイオちゃんの耳に入る。
私は目立ちたくない~っとか自重して~~っとかは……そこまで気にしない大人なんだよ(酔っぱらってる)!。
どうせ騒がれても魔法でチョチョ~イってすれば何も問題なんてな~~~い(酔っぱらってる)!。
「分かりました、ならあまり近付き過ぎないようにユーリはリエリに話をしておいて下さい」
今は金髪ボブちゃんも黒髪美人も高みの見物をしている、…………っあ!。
そこで私に天啓がキタッ!ここで私の美声(魔法で創ったパチもん)と魔法で、魔王軍を圧倒する光景をプレゼントすれば……。
下手した美人3人の心をトときめかせてしまうのではなかろうか!?。偏差値トップクラスのフェイス持ちの巨乳ヒロイン2人と美乳ヒロイン(イオと夜叉桜とエルゼシア)をこの手に?正にそれは異世界物における勝ち組確定のお知らせに他ならない。
胸を張って私は主人公ですと言い切れる程の偉業である、正にチート主人公だ。
そうか……そうだよ……そうだったんだよ、これは私がヒロイン候補をゲットする為イベントだったんだ。
ならば私も……真摯な気持ちを持って………彼女達3人の好感度の爆上げを狙おう(酔っぱらってる)!。
私は今夜、モテモテキングのハーレム王にジョブチェンジしてやる(酔っぱらってる)!。
………メインヒロインはいい歳した中年童貞に相応しい清らかなヒロイン希望なのであくまでもハーレム要因って事で。
ユーリが来てしまったけど、私のソロステージなのは変わらない。マイクを握り、私は渾身の歌を歌い出した。
やっぱり最初はアニソンにしよう。
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