第78話『報酬と美女とお酒』

そしてその日の深夜になった。

私は自室で寝てるって事になってる、何故か精霊幼女がいるけど今は放っておこう。


よしっ全ての準備は整った、では行くとしょうか……美女との1対1サシでの決闘場へ!。


(お前よ、その酒盛りには当然私もお邪魔出来るんだよな?)


えっついてくる気なの?。


まぁ確かに今回のアルコールクエストでの精霊幼女の働きを思えば当たり前だが……。


(…………………)


だが……断る!。


私は指輪に付与された魔法を発動、すると異空間に置かれていたであろう『落命の秘酒』が私の両手に収まる様に現れた。


うんっ魔法で覗いた時は気付かなかったけど、このお酒は入れ物である容器もかなり凝った装飾とか嵌め込めれた宝石でパッと見かなり高価な美術品の壺にも見えるな。


「これが『落命の秘酒』ですか…」


(そうだ、それは飲むと人間どころか酒好きのモンスターでも死ぬぞ)


私の言葉に答える精霊幼女、黄金の魔神像にチョップをしながらの説明である。


あっやっぱり飲むと死ぬのね。

そんな物騒な物をあの黒髪美人は飲むの?まさか私にも飲ませたりしないだろうな……。


まっその時は絶対に断ろう。


そんな事を考えながら私は酒を持ってあの黒髪美人の名前を呼ぶ。


「……夜叉桜さん、お酒を手に入れてきましたよ~」


「良くやったな……」


声が聞こえた。


その瞬間、私は気がつくと例の満開の桜が咲き誇るもの凄い大きな桜の大樹の上にいた。


今回は最初っからピンクの絨毯の上にいた私だ、そして精霊幼女はいなかった、呼んだ黒髪美人が精霊幼女に気付いてなかったんだから呼ばれないのは当たり前である。


私はそれを知っていて何も言わなかっただけだ、私は何も悪くありません。


気を取り直して、目の前には黒髪の着物美人事夜叉桜ちゃんが待っていた。


「今晩は夜叉桜さん、依頼通り『落命の秘酒』を持ってきましたよ」


「ふむっよく持ってきたなぬしよ。やはり我の占いは完璧じゃったなぁ」


占いって何だよ、知らんがな……。


見るとやたらと豪華そうな料理が彼女の背後に並んでいた。これから酒盛りすっぞ!って感じのボリューム感満載の肉料理やら野菜料理やらがいっぱいだ。


一応晩御飯の量は調整してきたけども、どこまでついて行けるのか不安になってきた。

まぁ私の目的は料理でも酒でもない、美人とのスキンシップである。


肌色多めのスキンシップが報酬である。


「それではこちらに来るのじゃ」


「わっわかりました……」


ちょっと緊張してる中年だ、その手のお店の経験すら碌にないんだよ。


私はお酒は苦手だ、1人でとかたまにしか飲まない派である。

しかし今回は隣に異世界美人がいる、この状況でならお酒も最高に美味しくなるのだ。


そして私と黒髪美人が隣どおしで座って酒盛りが始まった。


先ずは私が必死こいて手に入れた『落命の秘酒』を速攻で頂こうとする黒髪美人が私にしゃくをする様に言ってきた。


何で苦労して酒を持ってきた張本人がしゃくをするのかっと思わない訳でもない……しかし相手が自分より歳を食ったガマガエルみたいなオヤジではなく着物を着た黒髪美人なのだ、ならそんな不公平も塵に等しい。


私は嬉々としてしゃくをする、私は普通の酒を飲むつもりだ。こんな物騒な酒は飲む気はない。


「んくっ!んくっ!……ぷはぁ~っ!これはいけるのぉ!正に名高き名酒じゃ!」


「それは手に入れたかいがありますね」


ってかそれ飲んだら酒が大好きなモンスターでも死ぬんだよね?何で平気なの?。

まぁこの黒髪美人も只者ではないのだろうから平気なんだろう、細かい詮索とかモテない男がする事だ。


私はモテる男になりたいから相手が話す気がないなら詮索しない。命を狙ってきたりしたら話は別だけどさ。


そして二人きりの酒盛りは……かなり盛り上がった。


黒髪美人ほ酒が入れば入る程に着物が乱れてドンドン際どくなっていく。

私はそれにテンションを上げてバンバンしゃくをする。


完璧なコンビネーションだ。私も楽しくなり用意された料理をもぐもぐと頂く。

そして食べ物に夢中なフリをしてチラ見百連発。


中年の神速のチラ見を喰らえ!。


「オ~~イぬしも少しは飲まんかぁ~我ばかり飲ませてこのすけべいぃめぇ~」


ポヨンポヨョ~~ン(幸せの音)。


私の右腕に感じる確かな存在感……後数センチで確かに触れられる所に幸福の象徴がある。


これは、いっていいですか?。

私は幸せの象徴に訪ねた。


ポヨンポヨョ~~ンポヨョ~~ン。


幸せの象徴は何も語らない、しかしその沈黙は肯定とも取れなくはないか?。

取れるような気がする………ってかそんな気しかしない。


そもそもだっ何で私みたいなおっぱい星人の系譜がイオちゃんはともかく、リエリとユーリに全く手を出さないのか……。


それは以前彼女達が言っていた見た目は完璧な美女、しかしその身体の硬度は鋼鉄なんて目じゃないって発言にある。


あのプルンプルンと揺れる幸せの象徴が、もしも、万が一、億が一……硬かったら。

私は女性の胸なんて触った事すらない、童貞だからな。


おっぱいパブに行く勇気もなかったからだ。上司も同僚も、誘ってはくれなかった。


故に、このプルンプルンヴァージンを硬い石みたいな感覚を持って失ってしまったら。

私は………私は気が狂ってしまうだろう。


それ故に私はあのゴーレムツインズ、自らの魔力で創り出した僕的な彼女達にも何も出来ないでいる。


それにやっぱりメインヒロインは自分で用意するよりも、探して見つける方が燃えるんだ。

読みたい本もネット通販よりも書店に行って買いたい派なんだよ。


つまりこれは、この黒髪美人ともなんかあるかも……っと言う、その可能性もあるんじゃないかな?っと言う事でもある。


私は常にあらゆる可能性を否定しない男、そこに微かにでも光があるのなら全力で挑むのだ。

何故ならそれが………冒険者だからだ。


これは決戦なのだ、私と黒髪美人との男と女の全てを賭けた。

行くぞオラァアアアアアアアアアアアアアッ!。


「まぁまぁ器が空ですね、ではどうぞ……」


私はトクトクとしゃくをした!。


「んくっんくっんくっ……はぁ~~」


「ではもう1杯」


私はトクトクとしゃくをした!。


「美味いのぉ~ッ!ホレッ、流石にこの酒は無理だろうがお主も飲むのじゃ!」


「え?わっ私は……」


トクトクトク、ゴクゴクッ。


トクトクトクトクトクトク、ゴクゴクゴクゴクッ。


飲ませた分を……倍返しされた!?。

うおぉっ……キツ!一気に飲んで酒が頭に来た。


そうやって酒盛りということ名の決戦は繰り広げられていく。


そして流石の黒髪美人もその頬を赤くしだした頃合にて、予期せぬ客が現れた。

ネズミオッサンである。


「酒盛りの所すいやせん!緊急の話があります!」


我々が酒盛りをしてる場所から数メートル離れた場所に魔法陣が現れたと思ったらその中からネズミオッサンが飛び出して来た。


なんかとても大変な事が起きたって顔である。


「ん?どうかしたのか、ネズミよ……」


ネズミオッサン事ギストはラットマンとか言うモンスターである、けどそれでも本人を目の前にしてネズミ呼ばわりはあんまりじゃない?。


私が内心引いているとネズミオッサンはそれどころではないとばかりに声を張り上げる。


「魔王軍が!……魔王軍が今、この迷宮都市に迫っているそうです!」


「「…………………………は?」」


我々は同時に意味分からんって感じで聞き返してしまった。


魔王軍?この世界に転生する時に魔王なんていないってあの青い太陽が……。

あいやっ……言ってない。魔王がいないなんて一言も言ってなかったぞあの太陽。


…………マジで?本人に魔王いんだこの世界。


しかもその軍がこの迷宮都市に向かってる?何でだよ、意味が分からな……。


「…………………………あっ」


ネズミオッサンと黒髪美人の視線が私に向けられる。思い……出した、確かあの厨二の使途の1人であるワニ頭、ヤツに心意看破を使った時に気になるワードが1つあったんだ。


何でもダンジョンを抑えてから暫く後に、がどうのってさ……。

まさかそれが……その魔王軍?。


「アッアオノ旦那?どうしたんですか?」


「………ギストさん、今すぐダンジョンにいるあのダルロスさんとダークエルフに聞きたい事があります、共に来てもらって良いですか?」


取り敢えずあの2人をつるし上げて知ってる事を吐かせよう、まぁ心意看破を使えば直ぐに済むが、酒盛りを邪魔されたのでつるし上げは確定だ。


早速転移の魔法を……。


「転移をする必要はないわぁ?」


「「!」」


「………良く来たのぉマレリアの娘よ」


「私の名前はエルゼシアよ『桜花の郷』の放蕩ダンジョンマスター?」


現れたのは暗夜皇女事金髪ボブちゃん……じゃなくてエルゼシア=バルハーゲンちゃんである。

そしてその後ろにはあの厨二の使途の2人がいた。


その顔は真っ青である、どこぞの元ギルマスを思い出す私だ。彼はここのところ毎日ギルドでしごかれている。


おっと今はそんな言葉通りどうでもいいんだ、早速この厨二の使途達に話を聞きたい。

しかし今の私はあの中年蒼騎士形態ではない、ここは黒髪美人と知り合いらしいし彼女に頼んで…。


「あーあと、そこの人間があの騎士である事は既に聞いているから、そこの商人を語るネズミにね」


「………………そうですか」


マジかよ。ならあの騎士のまま気張っていた中年は一体……。


「さてっそれじゃあこの2人から聞いた話を聞かせるけど構わないかしら?」


気落ちした中年の代わりに場を回すのは金髪ボブちゃんであった。

その説明によるとどうやら本当に魔王軍と呼ばれる連中が只今迷宮都市に軍隊で進行中とのこと。


そしてそれを手引きしたのがハゲイケメン達、厨二の使途の同僚らしく魔王軍とやらにも入り込んでいるヤツが色々手引きしたんだとか。


魔王軍自体は邪教一派とは中はよろしくないらしい、そもそも邪教一派と仲良くするヤツとか人間でも異種族でも魔族でもそれぞれの国の国軍の討伐対象者にされるらしい。怖いね。


何でもハゲイケメン達の目的はダンジョンを破壊するのではなくダンジョンを奪ってモンスターの指揮権も奪う、そしてモンスターを使って迷宮都市を落とす。


そして手駒にしたモンスターと魔王軍をスパイが上手いこと協力関係を作り、そのままパイルラ王国の王都に進軍ってな青写真を描いていたらしい。


その他詳しい話を色々と説明された。

その結果として私が言える事は1つであった。


……だからさ?何度も心の中でだけど言ってんじゃん、もうこの迷宮都市でのボスバトルはあのラグナのヤツで終わってんだってさ。


本当に、いい加減にしつこいよ?ウザいよマジでさ~~。


「……………夜叉桜さん、そのお酒を少し頂いても良いですか?」


「ほう?良いぞ、どんどん飲むと言い……フフッ」


どんどんは飲まない、1杯だけだよ、私は酒得意じゃないからな。

私は注がれた『落命の秘酒』を一気にあおる。


大丈夫、魔法鎧は魔法も物理攻撃も、そして私の身体に害のある諸々の効果も無効化する。

飲んだら死ぬお酒も丁度良い感じに仕上げてくれるのさ。多分な。


「………………美味いですね」


ヤケ酒だよ、折角の美女との酒盛りを台無しにされたらそりゃあヤケ酒をあおるよ。


魔王軍だか何だか知らんけど、アレだよアレ。


とある島国出身の私を怒らせた罪は重い、よって私は魔王軍とやらに最高の………おもてなしをしてあげようじゃないか。


お・も・て・な・し……怒最天殴死おもてなしだ!………ヒクッ。





















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る