第49話『好感度を求めた結果…』

それから一気に口数が減った美少女2人とイケメンフォッシュを連れてダンジョンを進む。


パメラちゃんは前面に出してたけど、きっと口には出さなかっただけでマーナちゃんもパメラちゃんと大差なく中年の実力を疑っていたんだろう、まぁそれもこれも私の外見が冴えないのが悪いって事にしとこう。だから………。


「この辺りは以前イリーガルバッドと遭遇した場所ですね、もしかしたら同じモンスターが出るかも知れません。注意をして下さい」


「おっおう!分かった!パメラ、マーナ気をつけろよ?」


「……………」


「……………」


「やっ……やっぱりアオノは冒険者としてかなりの実力者なんだったんだな!あのトロール達を瞬殺した時は驚いたぜ」


「私なんてまだまだですよ、気を抜けば簡単に命を落とします。それがダンジョンと言うものかと…」


「……………………」


「……………………」


その無言で私の後に続くのをなんとかしてくれませんかね?。

見下してた中年に仕切られるのが嫌なのは分かるけどさ。


人を見る目がないのは私も一緒だからさ、そこはお互い様って事で水に流してもう少し場の空気をよくしようとかって考えてはくれないらしいよ。悲しいね。


私の隣のイケメンが、とても情けない感じになっちゃってるから。もう少しリーダーの顔を立ててあげて欲しい。


そしてトロールを退治してからもダンジョンを探索しているから当然だが他にもモンスターがドンドン現れた。


まぁトロール程強いモンスターはいなかったらしく、駆け出し冒険者パーティーも善戦した。


イケメンは大剣でモンスターを一刀両断していたし、パメラちゃんは雷系の魔法で吹き飛ばしてた、マーナちゃんは回復魔法で2人を癒していた。

中年はかすり傷1つ負わないから回復魔法をかけてすらくれなかった。


流石はイケメンと美少女達だ、その顔面偏差値同様に高い水準でコンビネーションが取れていると、素人ながら凄いと思った。


おっ少し広めの部屋に出たな。


「………!」


私の魔力感知に引っ掛かった、これは…。


「………………………ッ!」


「やはりモンスターですか」


現れたのはグールと呼ばれている、ファンタジーゲームでも近頃はゾンビの親戚筋で出番も増えてきた手合いである。


青白い水死体見たいな見た目だが頭や腕が有り得ない角度にひん曲がっていて見ていてキモイ、サイズはまだ人間の大人サイズ……よりはデカいな、2メートル超えの高身長なグールだ。


ほぼ全裸ながら腰には布を装備しているが、どのみちあまり視界に入れたくない外見だ。


「ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!」「ヴヴヴヴッ!」「ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!」「ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!」


こちらを確認した瞬間、虫の羽音見たいな声を上げてきた、超キモい。

女子学生が中年をキモいと言う時の心境ってもしかしてこんな感じなのかな?それならショックすぎる。


そんな超キモモンスターのが複数体現れるんだから、ダンジョンってやっぱし危険だな。


よしっここは私も魔法を使って一掃しよう、ゴーレムソードのユーリを使ってアレに攻撃とかしたくないからね。


「キモすぎなのよ!このグール共!ファイアーウェーブ!」


「流石だパメラ!」


「見て下さい!グール達が一掃されました!」


どうやらあのキモイのに近づきたくない、近距離戦闘とかお断りだと考えてたのは私達だけではなかったらしい。


「どう!?これが魔法使いの力よオッサン!」


「はいっ素晴らしい腕前ですね」


あっそう言えば私も魔法を使えますって話をしてなかった……まぁいいかっここでパメラちゃんの顔を潰す様な真似は酷すぎるし、今回のダンジョン探索では魔法無しで行こう。


そして頼もしい美少女魔法使いの魔法1発で戦闘に勝利した私達は更にダンジョンを進んで行く、更に2度ほどモンスターと遭遇しそれを排除した。


後は3度程ダンジョンに仕掛けられた罠(落とし穴とか天井が崩れてくる系のヤツ)に無防備に歩くパメラちゃんとマーナちゃんが掛かりかけたので声を出して止めたりもした。


マーナちゃんからはお礼を言われた、パメラちゃんはそっぽ向いてしまったけど、まぁいい。今はツンデレのツンの時期ってだけだと考える私だ。


フッフッフッ能力のある冒険者として確実に実績を重ねてる予感がする。

好感度は確実にたまっている、そう感じるんだよ。


やがてダンジョンを進んで行くとその内部構造が変化してきた。


今までは洞窟のクセに入ると何かの建物内部の様に壁も天井も床も石造りのそれだったのだが、なんと更に下に続く階段を下りると何故か深い森になっていたのだ。


………まぁイオちゃんと一緒にダンジョン探索してた時にここにも来た私はそうなる事を知ってたけどな。


イオちゃん曰く、ダンジョンの内部構造はそのダンジョンを作成したダンジョンマスター思い通りになるらしく。地形を利用した罠とかも仕掛け放題だとか。気をつけよう。


「フォッシュさん、この階層には来たことがありますか?」


「あっああ、流石にここまで速いスピードではないけどな。アオノのおかげでかなりの速さで探索出来てるからな助かるよ」


ちなみに倒したモンスターのお金になる素材は処理をしたらイケメンフォッシュが背負っているバックパックに入れている。


私の方は魔法で重さを殆ど感じてないようにしてるけどイケメンの方はそんな効果はないからな、さっきから重そうである。


「フォッシュさん、確かこの辺りの近くには休める場所がありましたよね?」


「ああっ確かにある、モンスター除けの香りを出す花が自生してる場所だ、よしっそこで一旦休憩をしょうぜ」


「分かったわ、私もそろそろ魔力が少なくなった所よ」


「私も後回復魔法が3回使ったら魔力がなくなりそうです……」


と言う訳で我々は休憩所を求めて移動した。



そしてその休憩所にて。


その場所は色とりどりの花が咲いている自然の花畑だ、岩壁に面していて花畑を抜けた先には洞窟がある。


このダンジョンに潜り探索する冒険者なら誰でも知っている、モンスターが寄りつかない安全地帯ってヤツだ。


不思議な話だがダンジョンには広大な階層には必ずと言っていいほどそんな感じの安全地帯が幾つか存在しているのだ、イオちゃんも詳しい理由は分からないと言っていた。


なんでも魔法学園都市にはダンジョンやダンジョンマスターについて本気度で調べている人もいるらしい。


私的にはダンジョンがダンジョンマスターが作った物ならその安全地帯もそのダンジョンのダンジョンマスターが作ったんじゃないかと思ったけど……ワザワザ冒険者が休める場所を提供する意味が分からないよな。


イオちゃんも流石にそれはって顔をされてしまった私だ。


その安全地帯の洞窟の入口前には花が咲いていないので、今日はここで野営をしてまたダンジョン探索に向かおうって事になった。


そして野営をするにあたって私達だが……。


「アオノのおかげで野営の準備をする時間にも大分余裕があるぜ、これなら休憩をしたら野生の動物でも狩ってくる時間もあるな」


「そっそれなら私が持ってきた食材を使って料理をしょうかと思います、私は戦闘では何も出来てませんから……」


「何言ってんだよマーナ、回復魔法がなくちゃあダンジョンになんてとても潜れねぇんだぞ?」


「何?私を差し置いて2人で仲良くしてるの?」


「そっそんなのじゃありません!」


「そうだぜパメラ!」


「……………………」


そんなパメラちゃんにも空気として扱われる私は一体何なんだろうか?異物感が半端じゃないな。

好感度を手に入れていたはずなのに……。


……しかしここは私も用意しておいた物があるので会話に混ぜてもらおう。


「それなら私のバックパックにあるその手の食材、野菜や肉類ならある程度準備していますよ?もちろん調理用具の類いも」


「え?そのバックパックそんなに物が入るのか?」


「………まさか、マジックバックですか!?」


「まぁ、そんな所です。皆さんが休憩してる間に私が調理を進めておきますね」


言うが速いか私はバックパックから調理用具を取り出して料理の材料も引っ張り出す。


キャンプ用品の中でも焚き火を使った調理をするときに使いそうなヤツを一式用意する、火種は私でもパメラちゃんでもいいのでいつでも準備が可能だ。


20分もすれば料理の準備は完了、そして休憩を済ませた駆け出し冒険者パーティーと軽い昼食を済ませる。


今日はこの安全地帯にある洞窟で野営する予定だと言う話なのでここを拠点にする、ある程度の探索をし終えたら今日のダンジョン探索は終了である。



ダンジョンの中に夜も朝もない……と言う事はなく地上が明るいと普通に回りが見渡せるこの森も、夜になるにつれて少しずつ暗くなってくるのだ。


ファンタジーな世界観でも不思議な物は不思議だよな、本当に意味が分からん。


ちなみにこの夜の時間も数時間以上に及ぶので冒険者はダンジョンの夜には安全地帯で休むのがセオリーだと言われる。


夜行性のモンスターはゲームとかと同じく危険なヤツが多いらしい。


そして私達がいるダンジョンにも夜が訪れた、夜の森って怖いなぁ~虫や動物でも怖いのに自分よりデカいモンスターとか出て来たら悲鳴を上げる自信がある。


そんな夜に……何が悲しくてイケメン野郎と寝ずの番をしなけりゃならんのだ。


「暇だな~アオノ~」


「まぁまぁっモンスターに襲撃されるなんてのは御免でしょ?暇が1番です」


「なんか冒険者とは思えねぇ言葉だな~」


うっせ、こっちとら夜の美少女が休むと聞いて僅かでも片方と夜の見張りからの洞窟中でのお休み~とか期待していたんだよ、それがやっぱりコイツと一緒とかテンション下がりまくりだよ。


内心の不満を押し殺し、イケメン野郎と無駄話をする私だ。


晩御飯も私が調理してそれを食べたマーナちゃんが褒めてくれた、すると珍しくパメラちゃんも褒めてくれたのだ。


さらにダンジョンのトラップを見破った事にも感謝されたのたりもした。


まだまだ好感度のアップが足りないって事は事実だけどそれでも進歩は感じた。ならもっとがんばってやると決意を新たにする。


そして数時間後。


「………よしっアオノ、そろそろ2人と夜の見張りを交代しょうぜ」


夜の見張りは交代制である、ここで男だ女だと言うヤツは冒険者になるなと言われる。誰であろうと睡眠時間の確保は大事だ。


「それじゃあオレがパメラ達を起こしてくるから、少しも待っていてくれ」


「分かりました」


そしてイケメンフォッシュが洞窟に消えた。


待つこと数分………遅いな?洞窟の深さは10メートルかそこらだ、行って戻ってくるのに何分もかかることはないはずだ。


まさか何かあったとか?なんか嫌な予感がして私は洞窟に入る。そして数メートル程歩くと目に見えない何か壁の様な物に進むのを阻まれた。


「………………」


……これは結界だな。


これは物理的に侵入を防ぐ魔法の結界だ、この階層のモンスター位なら先ず間違いなく全ての侵入を防ぐだろう。

けどっその結界に私まで弾かれるとは、この手の結界は術者が入れる人間を選ぶ事が出来るが。あの駆け出し魔法使いのパメラちゃんにこんな魔法が使えたのか?。


……そういや、彼女の魔力とか探ってなかったな。駆け出しって話だったからその言葉を鵜呑みにしていた。


けど、もしこれがパメラちゃんの魔法で結界に弾かれる対象に私が入っているとしたら……恐ろしい想像が私の思考に広がる。


意味が理解出来ない私の目の前に小さいマンホールサイズの魔法陣が現れた。


「………魔法陣?パメラさんですか?」


そして私の質問に帰ってきた言葉がこれだ。


「アァンッ!フォッシュ!もっとぉー!」


「……………………」


……………………。


……………………………………これって、マーナちゃんの声だな。


「ちょっちょっとフォッシュ!魔法で外と繋がったわよ!?あの汚いオッサンも来たみたい……っていつまでしてるのよ!」


………嘘だと……言ってくれ。


「アァンッ!……フォッシュ?」


「悪いな、ちょっと待っててくれよ?」


………………………………ここでも、なのか?。


「おっ!やっときたか?アオノ、お前遅すぎだぜ?もう少し速く来いよ」


「フォッシュさん?すみません状況が見えないんですが、何故私が侵入出来ない様に結界が張られているんですか?」


「ハハハッああっそれだけどな?」


そして………このイケメンフォッシュの言葉が、私の願いを粉々に打ち砕いた。


「悪いけどなアオノ。お前はここで死んでくれ」




























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