第一部のエピローグ

◇◇◇


角イケメン達が島に来た時に乗ってきたと言う船に乗せてもらったのだが、この船は完全に軍艦をファンタジー仕様にしたような感じだった。


砲門とかも普通にあったし全体的にシャープなデザインだ、イラストのイメージはファイナルだけどシリーズがいっぱいなファンタジーに出て来そうなもの凄く格好いい感じのヤツだった。


空とか余裕で呼びそうな程に細部の仕事が細かい軍艦である。


そんな船の個室にて。



ムクッ。

ムククッ。


ムッキィーーーーーーンッ!(意味深な擬音)


私は再び無くしていた大切な物を取り戻した。

そして絶望した。


バカッ!私のバカたれ!アホンダラ!。一体何を……何をとち狂った真似をしてんだよあの不能賢者がぁあああああああっ!。


エレナちゃん達を逝かせるとかマジで意味分かんないよ、アホなの?バカなの?マジでふざけんなよアホンダラぁああああっ!。


マジで賢者の石をまた使えば、魂とかも何とか出来たんじゃないか!?身体なんて生前の姿を知ってんだから私ならちょちょ~いと作り直せただろう!?魂が劣化しない完璧なボディをさぁっ!?。


頭の中を埋め尽くすのは凄まじい罵詈雑言と後悔の嵐であった。

しかし………。


「いやっ分かってたんだよな……」


そっ分かってたんだよ、これってやった後、思い出した時に絶対に後悔する事になるなってさ。


エレナちゃんとの別れの時に既に性獣根絶魔封イィーディーの魔法がガタガタになっていつも通りのちゃん付けで私は内心で呼んでた……。


精神に結構な影響があったって事だ。


あの時の私は、スケベ根性な私が結構な勢いで顔を出していた、要は今の私の殆ど一緒………ってか不能賢者も私だからな。


「…ハアッそもそも成功するかも分からん方法に、エレナちゃん達の魂を賭ける様な真似を一瞬でも試そうとか考えるとは、私もバカだよな」


私はアニメの主人公でも何でもない。そもそもエレナちゃん達の魂を了承もなく扱おうなんてのはどんな理由があろうとただのおごりから来る物だと思うのだ。

そんな真似、昨今じゃお医者さん先生もやらないよ。有り得ないからな。


そもそも確実に助ける方法があったとしてもエレナちゃん達がNOと言えばダメなんだよ。


………そして。分かっていた事はもう一つある、例えどれだけ後悔しても。時間が巻き戻り何十回あの場面に戻ったとしても、私はエレナちゃん達の最後を見届ける選択をすると言うことだ。


人生なんて後悔があってなんぼだ、だったらせめて逝こうとするエレナちゃん達が悔いを遺すことが無いようにするのが私だ。


だって後悔はいつか何とかなるかも知れないけど。悔いは故人の思いだ、後からじゃどうにも出来ない。


或いは考えなしに魔法で好き勝手な真似をして全てが丸く収まるなんてのは、最強のチート能力『ものすごぉ~いご都合主義』がなければ成立しないのだから。


……真面目な話、もしもエレナちゃんに止められなかったら死者蘇生を実行していた可能性は高い。しかしそれをする私は自身の力を使う事にルールも躊躇いも何もかも無くなってしまった私だ。


力を使う事に最初は理由がある、しかしそれらは何度も力を使う度にその理由すら失われていってしまうものなのだ、そしてその末路あるのは他ならぬあの………魔神イシュリアス何だよ。


力に溺れ、力を持つ自分に溺れるナニかだ。


あの青い世界でエレナちゃんを前にした時、私は分かれ道に立っていた。


力を振るい、力だけを信じ、力で全てを支配する魔神となるか。


力ではなく、力に立ち向かう強さを持っていたエレナちゃん達の正しさを信じるか。


答えは最初から出ていた、それでもやはり悩んでしまったのは、やはり私が弱いからだろう。


出来る事が多少増えたからと言って、いい歳をした大人が子供のようにわきえる事を忘れてはならない。


それらも含めてエレナちゃんには多くを託され、教えられた事ばかりだな。


……ともかくあの島で私に出来る事は全てしたと言う事にしょう、エレナちゃんにもいいひとをちゃんと見つける様にとか言われちゃったしな。


やっぱり女神な彼女にも中年のチラ見と美しい女性に対する並々ならぬ関心を看破されていたらしい。


そう考えるとやっぱり恥ずかしいやら情けないやら……いっいやっそれではダメだ、流れ的にあの話にも頷いた感じになってしまったのは事実だ。ならばやれる事はやらなければ。


元から私がこの世界での活動の目的は人生のメインヒロインをゲットする事こそが最上位に来るコンテンツなのだから、まぁそれに合わせてあの魔神みたいな連中の退治もこれからの目的に付け加えられたってだけの話だ。


「っま異世界物らしいっちゃらしい感じになったよな……」


思えばこの世界に来てヒロインをゲット以外の目的なんてマジで無かった私だ。後はお助けボランティアが精々である。


正直地に足がついてない感じは否めなかった、しかしエレナちゃんとラブーンでの一件から新たな目的が加わった。


お陰で少しは、やたらと強力な魔法を使える中年魔法使いにもやることがハッキリした感じがある、地に足がついた感じがする……多分な。


この感覚が錯覚じゃない事を祈ろう。


っあそれと角イケメンから今回の戦いとイシュリアスの討伐の報酬的な物を用意したいからと王都にまで来てくれないかと誘われたが……速攻で断った私だ。


角イケメンには悪いが、不老不死に血眼になるようなタイプの権力者がいる所に魔神倒しました~イェ~イっと大手を振って行きたいとは思えない。

行くなら普通の旅人として観光気分で行きたい。


断る変わりに角イケメンには私が魔法で作り出した魔法の手紙マジック・レターを渡した。


この便せんに入れた手紙は一瞬で私の手元に現れるので緊急の時とか便利だと伝えた、数枚渡したから暇な時にでも出して欲しい。


角イケメンが言っていたエレナちゃん達の悪魔呼ばわりと言う悪評を正すと言う考えには個人的には賛成だからな、それ関係なら彼に協力するのもアリかも知れない。


……けどそれだけじゃない、角イケメンと同行出来ない理由。それは……。



なんとイオちゃんから魔法学園都市へ一緒に来ませんかって誘われちゃったんだ~~。



最初は魔法の才能があり、尚且つ若い子だけを探してるんだと思ってたから中年魔法使いの出る幕とかあるのかと思った。


何しろ魔法で攻撃とかされたし、色々と言われた事も覚えてる私だ。彼女がどれだけこちらと距離を置いていたのかももちろん理解している。


けど嬉しい、マジで嬉しいよ。当たり前じゃん。


やっと中年魔法使いもイオちゃんから魔法の腕的なものを見込まれた的な?まぁ貰いものだからカッコはつかないけどな。


もちろん生徒云々って話ではない。イオちゃん曰く実力のある魔法使いが訪れる事は魔法学園都市としても意味がある事らしい。


個人的には臨時講師として採用、イオちゃんがいる教師で副担任として美人教師と美少女学生の授業風景を教室の後ろ方から眺めたい。


そしてゆくゆくは……て・き・なっ!エレナちゃん貴女に言われた事、案外近い未来に現実になるかも知れないっス。


おっとまた妄想の中でバカな事を吠え散らかしてしまった、冷静にならなければ。

イオちゃんが私を魔法学園都市に誘った理由は分からない、心意看破で確認するのも流石に有り得ないし……これも保留だな。


そして私がその気になれば魔法で一瞬でその魔法学園都市に行けるのは極力内緒にしたい。何故ならそうすれば角イケメンと別れた後はイオちゃんとパーティーを組んで冒険出来るからな、冒険者万歳。


今はそれだけで十分に幸せな私だ。


それ以外に気になることと言えば…あるな。


魔法部屋の私の個室には恐らくあのイシュリアスのゴスロリ美少女バージョンの黄金像があるし、魔法学園都市とやらはぶっちゃけどれだけ遠くにあるのかも聞いてないし(別の大陸でも良いですよ?)。ガイドブックは何かの意志に取り憑かれたかの様に自立行動し出すし………何というかなぁ~。


そしてそのガイドブックだが、現在は部屋のベッドの上にエレナちゃんから貰ったペンダントの下に置いて……。


「…………ない」


ガイドブックはある、その上の青い貝殻のペンダントが無くなってる!?。


嘘だろ、消えるならまだガイドブックの方が遥かにマシだぞ!?。


私は速攻でベッドの上のガイドブックをどかしたりベッドの下を見るが……ない。


有り得ない、女性から貰った物をその日に無くすとか有り得ないだろ。死ねよ私。

ガイドブックを手に取ってみる、この魔導本にそっくりなガイドブックめ~!確かにコイツの上に置いた筈だ…ん?。


「これは、本に何か挟まって……!」


あった!本に挟まっていた?いつの間にだよ、そしてペンダントを取り出した拍子にペンダントが挟まっていたそのページが開いた。


おや?また新しい記述が増えている。私はそれに目を通す。


「………………」


…………これってまさか。私は思わず手のひらのペンダントを見つめた。


「……………フッ」


私はペンダントを懐にしまう、なくしたらエレナちゃんに叱られてしまうからな。


ちなみにその記述とは……。


『記憶のペンダント』

『これは何の変哲もないただの貝殻のペンダントである、但しこれを託された者にとっては全く違う意味の物となる。


これを託した者は大いなる世界を愛した女神、幾千幾万の時を超え、為すべき事を為すために世界を歩んだ者の魂は天へと昇り星となった。


託された者が歩むは、神さえ見通せぬ未知たる未来、その道を照らすために星は輝く、これは星々となった者達が貴方に託した意志。


決して潰えぬ、世界を守る意志の記憶。』


「世界と来たか……随分と大きなモノを託されてしまったな」


まぁ………もちろん託されましたとも、それが中年魔法使いだからな。


部屋の窓を見る、随分と小さくなったがまだラブーンが見える。


私は、あの島で起こった出来事を……いつまでも決して忘れないだろう。



























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