第41話『魔神対魔法使い(3)』

やがて光が収まる、そこにはとても美しい景色が広がっていた。


ウユニ塩湖と言うのをご存じだろうか?あの塩湖に反射した雲の上を自転車や車でシャーッとしている動画や写真で有名な絶景スポットだ。


ここは正にそんな感じの世界である、何故なら私がそんな世界をイメージしたんだから。3つ目の賢者の石を使ってね。


力を使い果たした賢者の石は消滅した。


足元には薄く水が張っている、しかし本物のウユニ塩湖とは違って塩の床は広がってはいない、これは白い砂である。


何処までも続く青い地平線、実際の場所には山々が普通にあるのだが、ここは360度何処にもそれらは存在しない。


そして空の雲はまるで真夏の入道雲の様にモクモクとして水面にはしっかり雲を反射している、まるで空の世界に立っているみたいだ。


『グッ!………オノレぇ……ッ!』


「折角気分が良い時に、無粋ですねぇ…」


私の背後には縛鎖封チェイン・バインドの魔法により光る鎖にがんじがらめされた超ビッグサイズの頭蓋骨がいた。


ヤツのフィールドではこの手の魔法は使えなかった、何しろ本体はマジで化け物だったからな。

恐らく消失刃の魔法も効かなかっただろう、全く莫大な魔力を持っているだけでデバフ魔法も攻撃魔法も機能しなくなるとか反則だな。


……私もその手合いだった。

まぁそれも私のお手製フィールドに引き込んだんだから最早無意味だ、ここからは私の無双タイムだ。


魔法の鎖に封じられるのは2度目と言う事もあって、人外の姿ながら少し様になっている様に感じるな。………まっ私からは赤い小山がうめいている様にしか見えないがな。


それにしてもシャレコウベのくせに不死とか笑わせる、オバケ……要はゴースト系やアンデッド系の仲間だから不死だと吠えていた可能性が高いビッグシャレコウベだ。


そしてもちろんこの鎖は魔法の鎖、捕縛した敵の身動きも魔法も他の殆どの能力も封じる。何重にも掛けたのだ流石にこれなら魔神も魔法も特殊能力も使えまい。


ちなみにイオリアやビンゴ、それにユーリとリエリは今の私が視認で見える位置に呼んでいる。

大した理由はない、彼らもこの魔神と戦った者達であるし、この魔神の最後を見る資格は十分にある。


まぁ横でゴチャゴチャと言われるのは嫌なので少し距離をおいた所にいてもらうが。


「時に魔神イシュリアス、貴女は私に真の姿と力とやらを見せてくれましたね?」


『……………………ッ!』


「まぁ私には真の姿なんて物はないのですし……代わりと言っては何ですが……」


私の魔法鎧の魔法、それが膨張した。


魔法鎧に先程の真紅の空の世界見たいなヒビが入る、何故こんな事になるのか。


それは私の発する魔力に、この魔法が耐えられなくなっているからだ。


「私の……本気を見せるとしますか」


……そもそもの話をしょう。


私がこの世界に転生してきた時、あの青い太陽はこの世界の知識全般ではなく魔法関連の知識と私自身の魔法使いとしての能力についてだけ、知識をインストールされた。


おかげ私の知識は虫食い穴だらけだ、いやっ今はそれはいい。大事なのはその知識のお陰で私は自身の魔法使いとしてのポテンシャルをほぼ完璧に理解していた事である。


そんな私がこの世界で最初に使った魔法、それは魔法鎧の魔法だった。当時は自身が紙装甲だと思い込んでいたし、実際にこの魔法はとても強力で便利な魔法だったのだ。


しかし実はもう1つ理由があったりする。

とある映画であった名セリフだ。


『大いなる力には大いなる責任が伴う』私はあの映画のこのセリフが好きなんだよ。


しかしまさかその言葉をする日が自身の身に起きるとは思わなかった。


私の魔法は……弱体化させてからじゃないと適当な攻撃魔法でもこの世界がジュッと一瞬で蒸発とかしてしまうのさ。


……と言うより私が持つ魔力を発するだけで何もかもが消し飛んでしまうのだ。とんだ魔力核爆弾である、イヤッ威力が核より遥かに大きいけどな。


魔法鎧の魔法、アレは自身が敵や味方に向けて発動する全ての魔法の効果やその威力をギリギリまで下げる代わりに絶対の防御力を得る魔法なのだ。


つまりこの魔法鎧の魔法は、私を守る魔法ではなく私の魔力からあの世界を守る魔法なんだ。


まぁその魔法鎧も私が少し力むとご覧の有様だ、魔法鎧はまるで私を包み込む卵の殻の様になるまで膨張し、広がったヒビから崩壊した。


その瞬間、私の魔力が解き放たれた。


これの為にユーリ達全員に魔法鎧の魔法を掛けておいたんだよ。


私の身体から溢れた青く輝く光は巨大な光の柱となって青い空に伸びていく。魔力は波動の様に周囲に広がる、果たしてあの魔神は今の私の力を感知する事が出来るのか?。


『こっ……こンナ魔力!…アリエナイ…アリエナイ、アリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイ!………コンナのはヤツしかいない筈だ!あの……青天の……』


「私がそうだと言ったら?」


『…………ヤツは女ダ!貴様のヨウナ不細工でもナイ!』


なんと、青天の魔法使いは女だったのか?まさかイオリアはそれを知っていてあの場の空気を読んで黙っていたと?。


……死ぬほど恥ずかしくなってきた、流石は魔神と言った所か?恐ろしい事を土壇場で教えてきたな(不細工の件は無視だ)。


「さてっ本気の私の魔法をご覧下さい…」


そして私は指をパチンとならした。


【災厄をも焼き払う青き浄化の火をここに。蒼空天火フレム・ブルー


………………。


『……?』


………………………………。


『…………ハ?何もオキナ……』


……フフッ魔神は封じられて勘が鈍った様だ。

私は少し離れているユーリとリエリを指差した。

ん?イオリアとビンゴも気づいた様だな。


「……なんと、これは……信じられん」


「言っておきますが、は幻術の類いでも何でもありませんよ」


「これがご主人様の力です」


そしてイオリア、あの紫色の髪をしたエルフが呟く様に、何が起きているのかを言った。


「空が……燃えている………?」


『………?』


イマイチ理解出来ていないのだろう、わざわざ顔を上の方に向けて捕縛しているのに……。


「空を見なさい、先程よりのが分かりませんか?」


『…………………………………………そんなバカな』


私も空を見上げた、この世界は何処までも続く青空とそれを反射する水面それに雲があるだけという正に青空の世界と言える場所だ。


太陽もないのに青空が広がっているのにも私的には不思議だったのだが………。



今、その空が………燃えていた。



正確には見上げる空、その端から端まで遥か上空に青い炎が渦巻いていた。


アレはファイアーボールである。

もの凄くデカい、ファイアーボールである。


私が創ったこの世界、まぁ様はあの青い星をモデルに創った惑星だな。あのファイアーボールはそれよりも更にバカでかいんだよ。


詳しくは私も知らないが、サイズ的なのは太陽と青い星位の対比になる筈だ。そんなのが月位のあまり離れてない宇宙空間にポンと出て来れば、視界の端から端まで見切れる程にファイアーボールが空一杯に見えるのも当然だな。


何で空気のない宇宙空間のファイアーボールが消えないとか、そもそもどうして宇宙があるのかを気にしたら負けだ、だって世界を創るなら宇宙もないとリアリティがないからな、賢者の石ががんばったのさ。


ファイアーボールについては……元から太陽も燃えてるから似たよう理由だよ。ファンタジーに科学的な見解とか私は必要としていない。


そしてこの魔法は、あの青い太陽に出会った事で生まれた魔法だ。青いファイアーボールってまんまあの謎存在とクリソツじゃないかと言う思いつきから生まれた。


『あっアレがドウシタと言うんダ!?あんな物をワタシニ撃てバキサマらも確実に死ぬゾ!?』


「……確かに、そうですねぇ」


焦ってる焦ってる、いい気味だ。

もちろんアレをこちらになんてナンセンスだ、そんなバカな真似をするわけがないだろう?。


私はとある魔法を発動させた。


『…………!?』


赤い小山を囲むように青く輝くの魔法陣が現れた。


「そう言えばこの魔法には名前がまだついていないと言ってましたね」


そうっこの魔法はエレナ達が私をイシュリアスの元に送り届ける時に使った魔法である。


私は誰かの動きや技を1度見ただけで再現するなんて芸当は全く出来ない凡人なんだが、どうやら魔法に関しては話が違うらしい。


そしてこの魔法をチョイスした理由は簡単だ。あの超巨大なファイアーボールをぶつける?そんな訳がないだろう。

この魔法で魔神イシュリアスをあのファイアーボールにぶつけるのだ。


「……それは長距離転移の魔法ですよ」


嘘である、この魔法は恐らく空間も時間もその気になれば越えられる魔法だ、平行世界とかにも行けるかも知れない魔法だ。まぁ試しはしないけどな。


私はあの世界を渡り歩くだけで満足できる人間だ、剣と魔法のファンタジー世界かっ素晴らしいと思うんだがな。


『あ?そんな魔法で何ガデキる?私を転イサセル事が容易だとデモオモウのか?』


その言葉は正しい、魔力には魔力で干渉出来る。

だからどれだけ凄い性能を持つ魔法でも大きくに魔力に差がある場合だと魔力だけでその魔法を消滅させる事も容易いからだ。


この超巨大シャレコウベの内に秘める魔力は途方もない量なのだろう、それ故にこの手の魔法で自身をどうこう出来ないと知っているのだろう。

しかしそれはこの魔法には関係ないんだよ。


「この魔法には他者の魔力干渉は出来ません」


『そんな魔法はソンザイシナイ』


「……それならば試してみるといい」


エレナ達の魔法が発動する、魔法の中央が光のトンネルの様になりシャレコウベが少しずつ落ち始めた。


『ッ!?なっこれハ………そんなバカな!?』


「イシュリアス、この魔法はエレナさん達が生み出した魔法だ。貴様を討ち倒すと言う意思によって生まれた魔法だ。しかしまだ名前が無いそうです」


『ほっ本当に魔力による干渉がデキナイだと!?そんなフザケタ魔法が……エレナだと!?あの死にぞこないのボウレイ共がどこマデモ私の邪魔を…』


ゴチャゴチャとウルサイ魔神に、私は最後の言葉を掛ける。


「そこで私がこの魔法の名前を考え様と思いまして、この魔法の名前は『青き星に願いは届くブルースター・ウィッシュ』っというのは如何でしょうか?」


『ふざケ………ッ!』


お前を倒すと言うエレナ達の願いを果たすのに、これ以上相応しい魔法は無いだろう?。


魔法は発動し見上げる程にデカいシャレコウベはい『光の門』とやらに落ちていった。


◇◇◇


そこは宇宙空間、青野の魔法により創られた仮初めの星の海である。


魔法によってそこに一瞬で飛ばされた魔神は虚空の佇む青い火球の対面していた。


(何だ?このファイアーボールは?大きさもキカクガイだが………熱を感じない?)


一瞬で焼き付くされると考えていた、その時である。


『中々にお早い呼び出しですね……』


その青い火球から声が発せられた。







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