第38話『参戦』

◇◇◇


エレナちゃんと村の人々による転送魔法(かな?)によって中年はボス戦にやっとのことで参戦する運びとなった。


どうやら魔法陣は空中に現れた様で、青い光のトンネルを抜けた先ではリエリとユーリついでに角イケメンとその部下達のピンチであった。


もちろん超越眼の魔法でその辺りの流れを全て把握していたので私は魔法を発動する。


【我が力により、魔力をかき消せ。魔力除去ディスペル・マジック


ゴスロリ魔神の必殺の魔法は、発動と同時に消滅した。

そして速攻で私に気付いたゴスロリ魔神はこちらを凝視してきた。


『ッ!?…………まさか、そんなバカな』


あの余裕ばかりの表情が驚愕に変わる、ちょっと気分が良いわ。


『貴様……あの虚無の空間からどうやって脱出した!?』


問われた私は素直に話す。


「もちろん、本当に多くの人々の助けがあったからに決まっているでしょう?」


私は少し気取って答えた。中年の冴えないキメ顔を食らえ魔神め。


『ほざきなさい、どの道たかが人間の魔法使い1人でこのイシュリアスを止められるものか!』


どうやら中年のキメ顔にかなりイラついているご様子、ならば更にイラついてもらおうか。


「私1人ではありませんよ?」


『………何?』


私は魔法を発動した。


それはラブーンと言う島に、今日まで散々呼んでいて殆ど放置していたモンスター達。


彼等をこの亜空間に再度召喚する、折角島の人々の守りやダンジョンの確保の為に召喚したんだし活躍の場を用意したいじゃん。


「「「「「「「「……………ッ!」」」」」」」


「「「「「「「「……………ッ!」」」」」」」


ファントム君シリーズ(戦士や騎士や弓師や魔法使いの装備だけが勝手に動いてる系のモンスター達)やブラック君達(顔も身体も真っ黒な成人男性型のモンスター、目はないけど見えている系のモンスター)が上空からもの凄い数ゴスロリ魔神に飛来する。


私は今のうちにゴスロリ魔神から離れてユーリ達に合流する、取りあえず私の魔法でこの場の人々の守りとかを強化したい。


「リエリ、ユーリ無事ですか?」


「はいっ問題ありません」


「しかしあの魔神と名乗る女、予想以上に厄介です」


確かに、何しろ身体を消しとばされても当たり前の様に復活してくるからな、ボスキャラが回復魔法や復活魔法とかふざけてる、最近そんなのが増えてきたけどもさ……。


「ビンゴさん、私はさっきまで魔法でこの戦いを見ていました。ですから現状を理解しています」


「そうか!なら余計な説明は省くぞ、あのイシュリアスと言う魔神は恐ろしい程の力を持っている。俺達の攻撃はヤツに取って話にならない様だ」


「分かっています、ここからは私が出ますのでイオさんや部下の人達を守ってくれませんか?」


「………本気か?あの化け物を相手にすると?」


角イケメンも本当なら自分も戦う気でいるのだろう、たとえ負けて死ぬことになっても……。

このイケメンは中身もそんな感じのイケメンだからな、これまでの短い付き合いながらも人となりを少しは理解出来た私だ。


このイケメンは良いやつなんだよな、その部下も角イケメンと共になら身体を張るくらいしそうだしな、そんな連中ってやはり死なせたくないと思うのが中年である。


「はいっ恐らくあのモンスター達でも足止めが精々です。この空間に閉じ込められた皆さんを魔法で防御を固めたら、私があの魔神と決着をつけます」


………もちろんコレにはイケメンの主人公ムーブを封じると言う作戦でもあるけどな。


そこに嘘はつけないよ、それが私だ。


まぁ死なれたくないと言うのも本音なのでトントンという事にしょう、私の心の中でね。


ちなみに超越眼の魔法で今もゴスロリ魔神の様子は絶えず伺っている。


ファントム君達の猛攻を防護結界でしのいでいるな、その結界をファントムメイジが脆くして騎士っぽいファントムセイバーの剣やファントムランサーの槍がガンガン攻撃して結界を破壊する。


そしてファントムウォーリアーの戦斧の一撃を受けるゴスロリ魔神、しかし笑いながら復活して次々とファントム君達を殲滅していく。


魔法陣から赤く光る光弾とか撃ち出してきてファントム君達が次々と消し飛んでいく。


そこに地面に潜んでいたブラック君達が漆黒の爪を伸ばしてゴスロリ魔神を串刺しにする、それでも効かないとばかりに潜っている地面ごと魔法で吹き飛ばしてやがるな。


まぁリエリやユーリが手も足も出ないレベルの敵だ、ファントム君やブラック君が勝てないのは分かっていた。


………けどな。


ゆるさんぞゴスロリ魔神、たとえゴスロリドレスの胸元を押し上げる程の巨乳の持ち主と言えどウチのファントム君達やブラック君達ををいじめるなんて……。


彼等を召喚したのはやられた時に自身の精神的ダメージを軽減する為に痛みとか感じ無さそうなのをチョイスしたんだが、これが呼んでみると思いのほか思い入れってのが生まれてしまうのは仕方ないよな。


仇は取るからなっと心の中で決意する私だ(モンスター達をけしかけたのも私だけどな)。



そして黒ずくめ達が集める場所に到着した、みんなダメージとかは無さそうだ。だってゴスロリ魔神は黒ずくめやイオちゃんとか一切視界に入ってないよ的な扱いだったからな。


それでも黒ずくめ達の殆どが魔力を使いすぎての疲労困憊って感じで肩で息しているよ。


取りあえず回復魔法でもしとくか。


【我が力を持って、命あるものを癒す。回復ヒール


「おおっ身体に力が入るぞ」「魔力も回復しているのか!?」「………すっ凄い回復魔法だ」「これならまだ戦える!」「疲れが吹き飛んだぞ」


一応イオちゃんにも回復魔法である。


「イオさん、大丈夫ですか?」


「……この回復魔法は、かなり上位の魔法ではないですか?それにあのもの凄い数のモンスターは一体……」


「知らないのか?アレはアオノ殿が召喚したモンスター達だ、その全てが並みのモンスターを凌ぐ力を持っているだろうな、確か村を襲ったモンスターを駆逐したのもアオノ殿が召喚したモンスター達ではなかったか?」


「………あの数のモンスターを使役?そんなの最早超級の召喚魔法ですね」


そうなの?私は自分の魔法の等級とか知らない、便利ならそれで良いじゃんって考えてるからね。そして角イケメンのフォローグッジョブ。


「そうなんですか?」


「………フフッ貴方は、本当に魔法使いとして驚くべき実力を持っていたんですね。全ては私の実力不足だったようです」


「その通りですね!貴方は自分の能力至らないくせにご主人様に失礼な態度や言葉を散々言いました!土下座で謝罪しなさい」


「……………」


「……………ユーリ」


気持ちは有難いけど今は緊急事態だから。


「どっ土下座はしませんよ!しかしっ今までの言動が非礼以外の何ものでもなかったのは事実ですね。アオノさん失礼しました」


そう言うとイオちゃんは頭を下げた。美人に頭を下げられるとか……何となく興奮するかも。


「頭を上げて下さいイオさん、今はそんな場合ではありませんから」


そして私は一緒に来たリエリについても軽く紹介を済ませて、魔法鎧の魔法をその場の皆に発動した。


これで恐らくは巻き込まれて死ぬとかは無くなると思う。


っと安堵したのも束の間であった。


『あら?もうモンスター達は全滅してしまったわね?』


周囲を睥睨し、回りのモンスター達が動かなくなった事を確認するゴスロリ魔神。

この短時間で全滅か、けどよく頑張ったぞファントム君とブラック君の皆。


「………それでは私はあの魔神の相手をします、皆さんは決して近づかないように、可能なら距離をもっと取って下さい」


「ッ!?やっやはりあの化け物と戦うつもりなんですか!?危険過ぎます、アレは人間が……いえっまともな生命が勝てる様な存在ではありません!」


イオちゃんが震えている、きっとあのゴスロリ魔神を間近で見たときの恐怖が再発したんだろうな。


私も怖くないと言えば嘘になる、けどっここは中年魔法使いがはったりでも大きく出るべきだろう。


「大丈夫ですよイオさん。私は勝ちますから」


「……そんなの無理です、確かに貴方の魔法使いとして腕は私よりも遥かに上です。しかしあの化け物にはどうやったって…」


「たとえどんな存在が相手でも、私は負けませんよ……決してね」


「何故、何故そんな事が言えるんですか!?」


イオちゃんが叫ぶ、ユーリとリエリ以外も戦いはするが勝てるとは考えていないという雰囲気である。

まぁアレに勝てなきゃ脱出は無理、多分内心では死ぬことを覚悟しているんだろう。


そんな人々に私が言えるのは……1つの嘘が精々である。



「何故なら……私は青天の魔法使いだからです」



「………………………え?」


もちろん嘘だよ、エレナちゃんが私をその青天の魔法使いの弟子じゃないかと言ってたからそれに乗っかっただけである。


ただ弟子になるのは嫌なので青天の魔法使い本人と言う事にした私だ。直ぐにバレる嘘である。

あっ嘘だけだと決まりが悪いし本当の事も言っとくか。


「だから案外何とでも出来るんですよ、あの程度の相手ならね…」


まっ後は、要はアレだな………。


「それに貴女みたいな美人が、傷付く様な事態になるのも御免ですからね」


「………………ッ!?」


おっと独り言まで聞き取られてしまったか?いいやっもう言っとけ言っとけ私。


「この場の人を皆助けたいのも、私が1人で戦うのも貴女を守りたいのも全部私の勝手なエゴです。文句は助かったら受付ますので、ここは見送って下さい。貴女の綺麗な笑顔でね」


「なっ!ちょっ……あっ貴方は!」


真っ赤になってるイオちゃんも可愛くて綺麗だな、無敵かよ。


私はイオちゃんにツッコミを頂戴する前に瞬間移動の魔法でその場を後にした。



そしてゴスロリ魔神が立っている場所に来た私だ。


「……よく追って来ませんでしたね」


『それはそうでしょう?私を倒さなければこの空間から出る事は出来ませんから。バカと臆病者でなければ勝手に私の元に現れます』


っまそりゃあそうか、コイツ倒さなきゃ出られないんだしこんな荒野のど真ん中みたいな場所じゃ食糧とかとても手に入るとは思えないので、どの道勝たなきゃ餓死とかで死ぬだろうからな。


このゴスロリ魔神、私が来たときは大分焦っていたけど今はかなり冷静に見えるぞ?。


少し間が空いて平常心になったのか、それとも……。


「もしかして罠とか仕掛けました?」


『………当たりです』


ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


その瞬間、ゴスロリ魔神を中心に大爆発が巻き起こった。

このゴスロリ。自分は身体が消しとんでも平気だからってふざけてる。


そして私は爆炎と爆風に巻き込まれながら考え事をしていた(魔法鎧があるから平気です)。


………ダメだ、やはり中年魔法使いにはあのゴスロリ魔神を倒せそうにない、何故なら……。


そうっおっぱいである、あの巨乳なおっぱいが悪いのだ。

身じろぎ1つする度にプルンプルンと、お陰でゴスロリ魔神と相対してからずっと視線はおっぱいに釘付け、こんなアホみたいな罠にものの見事にハマッた私だ。


ここまで真面目にシリアスなのに、このドスケべ根性がファンタジーなボスバトルを台無しにしやがるのだ。


仕方ない、ここは………使


かつてあの魔法を私は使い、多大なる精神的被害を受けた、しかしこのゴスロリ魔神、私の予想が正しければ正真正銘の腐れ外道だ、そんな邪悪系美少女を倒す為にはやるしかない。


だってエレナちゃんに頼まれたから。


イオちゃんにも負けないとか言っちゃったから。


私は一時の間だけ、エロから離れる決意をした。


【世界に蔓延る悪鬼魔獣を滅し封じよ。性獣根絶魔封イィーディー


これっ掛けた相手を一定時間不能にする魔法なんだぜ?。

赤色の魔法が私の頭上現れ、そこから光が降り注いだ……。


うおおおおおおおおおおおおおおっ!。


これより私は、完全草食系不能賢者形態モード・グランドワイズマンとなるんだぁあーーーっ!。



そして爆風も煙も消えた………。


「……まぁ効かないんですけどね」


魔法鎧の防御力を舐めてもらっては困るな、私が使える魔法でも屈指の防御力を誇る魔法である。そんな大爆発如きで……。


『それならこれは如何かしら?』


「………ッ!」


気づくと私の身体にっいや魔法鎧に紫色のイバラの様な物が巻き付いていた。

まず間違いなく拘束系の魔法である。


『私を舐めすぎましたね?確かに貴方の魔力は異常です、正直人間なのか私にも判断がつきませんからね、しかし……ディスペル・フィールド!』


更にイシュリアスは何かの魔法を発動させている。


『言っておきますが、私は相手を舐めて油断など一切しない性ですからね?』


「そうなのですか?その余裕綽々っと言った態度も演技だとでも?」


『先程の魔法は私を中心に約1キロの範囲で全ての魔法は発動出来なくなる特殊な領域を生み出す魔法です。最早貴方は魔法を使えません、先程私の魔法が消滅した様に、貴方の魔法も消えます』


さっきの事はしっかり根に持ってるわけか、そしてこのイバラは見た感じ魔法を徐々に弱める魔法でもある様だな、地味に嫌な魔法を使ってくる。


私の魔法鎧に対抗する為にこのイバラを呼び出す魔法を使い、そして私が魔法除去の魔法を使えなくする為の魔法まで使って来たわけか……。


こちらの手を一手ずつ確実に潰してくるな、なる程言葉通り向こうは油断とかは無さそうだ。


……………しかし。


【不可侵の刃よ、切り裂け。消失刃ロスト・エッジ


『……へ?』


イシュリアスは私の魔法で一瞬にしてサイコロカットされた。


そして直ぐに蘇った。


『なっなんで!?私は防護結界も五重に張って』


はい消失刃、今度はサイコロを更に細かくしてカットした。……けど普通に復活してくるな。


『くっ!どう言う事よ!?今!ここでは私以外は魔法を使えない筈なのよ、それなのに何故貴様は……』


「何故と言われても、そもそも貴女の魔法は私に通用しないからですよ」


『………………………………は?』


この際ハッキリ言うが、これはゲームじゃないんだぞ?魔法を無効化!っとか、物理無効!っとか幾ら能書きを垂れようと、はいそうですねっと全てを無力化出来る訳ないじゃないか。


そもそも自分だってエレナ達から封印魔法食らっておいてダンジョンや島にモリモリとモンスターを召喚してたくせに何をビックリしてんだよ。


レベル1でもチート能力がバンバン通用して無双するだなんて展開は実在しない。


格下は格上には勝てないんだよ、普通そうだろう?。常識だよ常識、ここファンタジー世界だけどな。


格下の魔法がどれだけ強力な効果であったとしも私には意味なんて無い。


それと私の消失刃の魔法、アレは見えないカマイタチか何かで敵を切り裂く魔法では

アレは『切った』と言う結果と事象だけを現実にする魔法だ、だから切れない物なんてないし、魔法で幾ら守りを固めても無駄と言う魔法なんだよ。


防護結界なんて無視してサイコロカットだ。


要はチート魔法だな。こんな魔法ばっかでゴメンね。


心の中で謝りながらも私は遠慮なく魔法を発動しまくる、一体何度あのイシュリアスを細かくカットしたのか数えるのも面倒くさくなってきた。


ついには塵よりも細かくしても復活して来たんですけど、本当に不死身かって感じだな。


『くっ!あり得ない!あり得ないわこんな事が……!この魔神イシュリアスが圧倒されるなんて、それもこんな不細工な人間に……』


不細工への差別反対(そんな私も美人に弱いけどな)。


『やはりその魔法は驚異ねっ!なら力ずくで始末してあげるわ!』


言うとゴスロリ魔神は跳躍してこちらに迫る、超高速だな本当に早い。

……しかしまだ彼女は1つ勘違いをしている。


私も一歩前に出る、そして走る。すると魔法鎧に絡まっていたイバラが弾け飛んだ。

一瞬呆けたゴスロリ魔神に接近した私は、そのお腹に本気の右ストレートをかました。


ボグォッ。


「……………」


女性を殴るとか有り得ないっと言いたい所だが、此方も他者の命も背負っているのでね、悪いが遠慮は無しだ。


「がっ……ハァッ!?……何故……結界……」


防護結界?私の身体が触れたら全て消し飛んだ様だが?。


「イシュリアス、貴女は1つ勘違いをしてます……」


口や鼻から血を流しながらも思いっきり私を睨むイシュリアスに私は言い放つ。


「私は魔法が得意ですが……素手でも貴女を圧倒出来る程度には強いですからね?」


「!?」


これまで散々モンスターを倒してきた成果である、だってこの世界、レベルアップはちゃんと実装されてんだからね。


ステータスオープンとか言ってもウィンドウとか出ないだけでさ。一応はレベルアップすると強くなる世界なんだよ。


そもそもだ……。


この身体、青い太陽さんお手製の謎に満ちたボディだ、舐めるんじゃないよって話だよ。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る