第31話『悪魔呼ばわりの真相とおっさんが決めた事』

その後角イケメンから聞いた話は中々に困った内容であった。

曰く、20年程前にダンジョンが突如として現れた。しかし当初はタダの洞窟かって言うくらいに広い空洞が広がるだけの物だったらしい。


島の人々も島外の人々と普通に交流があったそうだ、しかし10年もすると島外の人々は異変に気付く、何しろ島の子供達が10年経っても子供のまま、老人もその姿が変わらず寿命で死んでしまったと言う話も無くなっていたからだ。


そしてその事についてさり気なく聞いても島の人々は決して話さなかったそうだ、流石に数年前にまでなると島外の人々も異常だと感じた。


その頃には島のダンジョンからモンスターが湧き始めた事もあって島に上陸する人も減った事から、島の人々との交流も激減。


悪魔呼ばわりはその頃からいきなり出回り始めた話だそうだ。出所は不明。


ちなみに角イケメンの前任者達は代わる代わる島の人間とダンジョンを監視する様にと言われた理由だが、何でも最初にこの島にダンジョンを攻略しようっと国から派遣された騎士団とその団長だがそのダンジョンには当初モンスターが全く存在しなかった。


そこでワザワザここまで来たのにっと手柄が欲しかった団長は魔法がやたらと得意な島の人間に目をつけたらしい、何があったのか詳しくは教えてはくれなかったが、角イケメンのあきれ顔がある程度の事の詳細を察する事が出来る。


そしてそのバカ団長のお陰で島の人々との関係は悪化、しかしそれだけでは終わらなかった。


バカ団長は島の人々にコテンパンにされた事を根に持っていたらしく島の人々が何でもいいから不穏な行動をしたら報告しろ、粛正だ罰だと後任の団長に伝えていたらしい。


バカと陰険が権力を持つとファンタジーな世界でも大変ですな、無論そんなアホな物言いには適当な返事だけを後任の団長はしていたのだが。


ここで1つ、あるウワサが目立ち始めた。


曰く、島の人間は邪教の儀式を使い。不老長寿を得たらしい云々。


そして10年以上の監視によって、マジで島の人々が殆ど歳も取っていなければ老衰で逝く人すらゼロであをったと言う事実が、パイルラ王国のお偉いさんの耳に入った。


角イケメン曰く『富も権力も力も手に入れた者が次に欲しがる物は何だと思う?……それは若さと寿命だ』っと自国の者ながら情けないと言っていた。


そんなお馬鹿さん代表人間に角が生えた人外イケメンが社畜が如く苦労をさせられる、異世界ファンタジーの闇を見たな。


そんな訳でイケメンが言っていた島の真実ってのは島の人々は本当に不老長寿とやらをゲットしたのかとかそんな儀式魔法があるのかを調べに来たのが本来の目的だったらしい。


それじゃあ島の人々の村がピンチだった時の助っ人もそれが理由なのかと聞いたら、あれは部隊の人間達の総意によるものだったと言われた。


上司がイケメンだと部下にもいい影響があるって事だ、イケメンが羨ましいです。


そして別れる際には出来れば島の人々を探って欲しいと言われた、こんな事を貴殿に頼むのは厚かましいのは理解しているがどうかっと頭を下げられてしまった。


なんかこれ以上突っ込んだ行動をすると泥沼かもっと思いながらも頷く私だ。


乗りかかった船と言う言葉もある、何より今回は私がまいた種ってヤツだしな。


けど……万が一邪教の染まるだ何だと言う話が真実であり、その影響が……この島の子供達にまであったとしたら。


私の脳裏に、人間を生贄にして儀式を完成させようとしたサハギンの邪教徒の姿が島の人々と子供達に重なる。悪い冗談だ。


「………イオちゃんになんて説明すりゃあ……いいんだよ……ハァッ」


私は少し重たい気分のまま拠点への帰路についた。


◇◇◇


私の名はリエリ、ご主人様によって創り出されたゴーレムです。


私とユーリは今、ご主人様に科せられた新たなミッションに挑んでいました。

何でもご主人様はダンジョンに挑むとの事でした、それに私達もついて行くものとと思っていたら2人には別の頼みがっと言う話でした。


そのミッションとは……私達のオリジナルボディの作製です。


リエリは気付いていましたよ、ご主人様がマーブルやアレリアと言う女性の姿でメイド服を着て給仕をしていると頻りに胸や太ももに視線が飛んできます、しかしそれと同時に切ない様な気配をご主人様が発する事を。


理由は簡単です、マーブルと言う女性はご主人様が最初に目をつけた女性でした。しかし最後の最後でご主人様は彼女が本命とのガッチャンコを扉越しに耳にしました。


ご主人様はそれにショックを受けて……町から逃げ出してしまいました。


……まぁ私はユーリと違って割と冷静なのでマーブルと言う女性が初めからご主人様を男と見ていない事は知っていたので結果はなんとなく分かってましたが……。


アレリアと言う女性は、イケメンとのラブを優先するあまり命の恩人であるご主人様を散々な言葉で罵倒してましたね。


ご主人様はその言葉に傷付きまして……その後なんやかんあってナトリスを逃げ出してしまいました。


そんな女性と同じ顔が近くにいたらやはり別人だとしても過去を思い出すのが男性です、ご主人様も男性ですので仕方ありません。


そこでご主人様が考えた作戦が、そろそろ私達自身のオリジナルボディを生み出してみてはっと言う物のでした。


以前ご主人様は自身が所有していたマンガやラノベと言った読み物を私達に面白いから読んでみてはと勧められました。


そして言われたのが、それらの読み物に登場する人物をモデルにした姿に変身出来ないかっと言うものでした。


ユーリもリエリもゴーレムとしての変身能力を何度も使ってきたのでそれも可能だとお伝えした所、ご主人様は内心を隠しきれない感じで喜んでいましたね。


そして私達はそれぞれ違うジャンルの読み物を渡されました。ユーリはマンガでリエリはラノベです、そしてその中から好きなキャラクターを元にした姿に変身出来る様にして欲しい事と、これからはそれをオリジナルボディとして基本的変身しておくようにして欲しいと言われました。


無論元となる登場人物は全てイラスト、絵なのでそれをリアルにするのなら今まで吸収した人間達の顔や身体のパーツをコラージュして不自然さも無くさなければなりませんので時間を必要とすると伝えました。


ご主人様は時間は気にしないで欲しいと言われ1人でダンジョンのある場所に向かいました。


本来ならご主人様を守るのが私達の使命なのですが、そこはご主人様の願いが優先です。

そこから私達のオリジナルボディゲット作戦が始まりました。


「リエリ、ご主人様は私達にどの登場人物になって欲しいのか、分かりますか?」


「もちろんです、いいですかユーリ。私達が渡されたそれぞれの読み物、実はこれらにはそれぞれ似たような登場人物が現れているのです」


「ッ!?なっ何という事ですか!確かにリエリの言うとおりです!」


そうっ私のラノベには必ず黒髪の美人で巨乳の秘書が登場し、主人公を時に影から支え、時にトラブルを解決する活躍をしています。


そしてユーリのマンガには銀髪の巨乳メイド(ミニスカート仕様)が必ず登場し、主人公に喧嘩を売る、モブと呼ばれる雑魚達をちぎっては投げちぎっては投げて活躍しています。


数種類のシリーズ物ながら、それぞれそんな登場人物が確定で現れているのです。


ご主人様が口にしない思いをくんでこその私達です。ここは私が黒髪巨乳の美人秘書。ユーリは銀髪の巨乳メイド。


この選択が間違いの筈がありません。冴えないくせにモテまくると言うこのマンガの主人公になんて変身したらご主人様は心の底から悲しんでしまいますよ。


そして私とユーリはそれぞれご主人様の魔法で生み出された個室にて変身能力を試行錯誤し、完璧な形でオリジナルボディに変身出来る様にと準備をしていると……。


「すみません、今戻りました」


「ご主人様が帰って来ました!行きましょうかリエリ」


「はいっユーリ…」


最近は拠点としているあの四角石の建造物は見た目だけで殆ど中にはいません。

その中に魔法陣を展開してこの魔法部屋マジック・ルームに転移するのが当たり前になって来ました。


ご主人様曰く好きな方で寝泊まりしていいとの事、だったらエアコンも冷蔵庫もある快適なこちらに来るのが普通なので、私もユーリもこちらに基本的にいます。ご主人様もいますね、そうでしょうとも。


しかしご主人様。何やら元気がありません。


表情こそいつも通りと変わらない柔和な笑みを浮かべていますが、本来ならここで私とユーリの顔をそれぞれ見て……。


その後に胸や太もも、首筋に向かってまた胸にと、視線が縦横無尽にチラチラッと動きます。

しかし今はその気配すらありません……明らかに異常です!。おかしすぎますね。


あっちなみに私は今、アレリアと言う女性のメイド姿で、ユーリはマーブルと言う女性のメイド姿でご主人様と会っています。


実は既にオリジナルボディは完成しているのですが、それはまだ秘密なんのです。

サプライズを私達は狙っています。


まさかそれで?いえっご主人様はたとえ以前自分をすげなく扱った相手でも、その視線は胸や太ももに向ける事が出来る猛者です。


あのイオリアと言う女性にも何度も距離を置かれても視線は常に胸や太ももに向かっていましたから。


流石にこれは変です、だから私はご主人様に質問をしました。


「ご主人様、もしや何かあったのですか?」


「…………はい、実は」


そしてご主人様は重い口を開きました。



そして話を聞いた私とユーリです。

現状ご主人様はその封印されていたと言う美女と島の人々……ッというよりエレナと言う美女のどちらを信用して、どちらに協力すべきなのか悩んでいました。


「ご主人様!ユーリならその両方に心意看破の魔法を使って事の真相を明らかにして御覧に入れますが!」


ご主人様でもそれは出来ます、それをしたくないなからご主人様は悩んでいるのですから……。

ご主人様も困り顔ですね。


しかしそこは私も同じ様な意見だったりします。


「ご主人様、例えばの話ですが。ご主人様が手を貸した方が。或いは双方が悪意のある者だったとして、ご主人様を背中から刺す様な真似をしてきたとします……それでご主人様はどうなりますか?」


「え?……まぁっエレナさん達島の人々でもあの封印されていた女性でも、私の魔法鎧を破る事は出来ませんから…」


……っと言うのがご主人様です、本当にこの人はその封印されていた美女との時も自身ではなくあの隠密部隊の人間の安否だけを気にするあまり撤退をして、島の人間が邪教に染まった存在なら、あのイオリアと言う女性辺りが心配なのでしょう。


本当に、それだけ。ご主人様は力ずくで解決する手段もありながらそれをした際の彼ら彼女らへの被害を心配し過ぎる所があります。


少し長い間その人々と交流を持ったが故のものでしょうね、しかしそこもご主人様の魅力だと私達は考えますけど。


今回はそれが悪い方に働いている様に私は感じました。

ですので、ここは一言申し上げるとしますか。


「ご主人様が魔法で相手の真意を問答無用で見通そうとしなければ、やはり無用な手段を取るしかありません」


「…………はいっそうですね」


「ならば……この際マイナスになる結果の想定は後回しにしましょう」


ご主人様がえ?っと言う顔を向けます、ユーリも私の方を見てますね。

私は話を続けます。


「悪意を持つ者が分からないなら、分かるまで好きに背中でも脇でも刺させてしまえばいいんです。そうすればあのイオリアと言う女性もビンゴと言う青年も理解をせざるを得なくなりますから…」


ビンゴと言う青年はともかく、ご主人様はイオリアと言う女性が教えている子供達、あの子供達までも邪教とやらに染まっていた場合をも想定しています。


そしてその想定が現実になった時にイオリアと言う女性が心を深く傷つける事を心配している様なのです。


しかし私は……。


「それとご主人様。ご主人様が以前いた世界には『初志貫徹』と言う言葉があります。

私は最初に守ると決めた相手をコロコロと変える人間よりも、そう言った人間の方が絶対に魅力的であると思いますよ?」


「ご主人様はいつも魅力的ですよ!」


「……………ッ!」


そうっ、この島に来た当初のご主人様はらあの桃色の髪のエレナと言う女性にぞっこんでした。

ついでに島の人々への好感も良かった筈です、ならばぽっと出の美女よりは島の人々の方に今まで通り力を貸して行くのが好いのではと思ったのです。


ご主人様の目に……力強い光が灯りました。


「ありがとう、リエリ、ユーリ。すみませんがまた少し出かけてきますね」


そしてその視線は胸や太ももや腰にまでチラチラと行ったり来たり。

どうやら万全の様ですね……。


ご主人様は魔法陣をブゥンッと展開すると、その上乗って村に転移していきました。


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