第30話『封印されし美女』

ボス部屋の一つ奥にある小部屋にはお宝がある。


あの言葉はマジであった。

何しろボス部屋の先にある部屋にはもの凄い美女がいたのだから。


ルビー見たいな赤色の髪のロングヘアーにゴスロリなドレス、そして髪と同じ色の瞳と……巨乳だ。

そんな美女が魔法で生み出されたッぽい鎖に拘束されている。


エロすぎおねぇさん的なポジションの美女か?歳の頃は二十代中頃かな?。もう少し若いかも知れない、だってここも薄暗いんだよ。


魔法の鎖は光ってるけど、それが余計にこの美女の外見年齢の予測を邪魔してくる。

何より巨乳に目が行って仕方ないのだ。


私より大分年下の外見だけどおねぇさんである。

大事な所だよここは。


そしてその拘束する魔法の鎖も良い仕事をしているのだ、ゴスロリドレスに巻き付いてるんだけど何故か胸の谷間にとかこうっ身体のラインをとにかく強調する様な仕事をしておられます。


けしからん、なんてけしからん魔法の鎖なのだろうか!。ありがとうございます。


私の魔法の鎖にもいつか美女を拘束するなんて役得な仕事が訪れる日が来るのだろうか?今のところ虎とリヴァイアサンとかしか縛っていない。


いやっまぁ美女を拘束するなんてダメだよなってのはもちろん分かっているんだけどね、この歳なると背徳的な何かにも魅力を感じるお年頃なのさ。


しかしそんな美女の姿に呆けていた間抜けな野郎連中に一言冷めたツッコミが入る。


『何で此方が話しているのに無視をするんの?さっき一言起きているって感じでアピールしましたよね?』


知ってます、けど話し始めるとそのエロい格好を集中して見れなくなるから気付かなかった方向で我々は行動したのである。


角イケメンはともかく他の黒ずくめはきっと私と同じ心持ちだと信じてる。


しかし向こうさんはお話を所望している。

ここは話を戻すとしようか……。


よしっ!ここは速攻で封印を解除して好感度ゲットだ!。


「…………」


ってはならないんだよ、だって敵かも知れないからね。


先ずはこの封印、これ解くのはかも。何故なら……。



………このゴスロリねぇさん、ヤバイよ。



何がヤバイかと言うと、洒落にならないくらい強い。

あの魔法の鎖による拘束が果たして本当に機能しているか本当に心配になるくらいだよ。


その気になればいつでもあの魔法の呪縛を破壊してきそうなんだけど、本当に封印されてるの?。


魔力なんてファンタジーな代物の存在を肌で感じれるから分かる事だけど、この美女は人間じゃないと思うんだ。


別に耳が尖ってるとかしてないけど、直感でそう感じるのだから仕方ない。

その正体はファンタジーな世界的に考えると精霊とか妖精とか魔族とか、或いはこの世界固有のなにがしか…。


考え出すときりが無いから、今はこの封印されし美女とのトークを開始する。


「すっすみません。私は青野と言いますしがない冒険者です、此方の方々は私のパーティーメンバーでこのダンジョンには冒険者として訪れ…」


『嘘ね。このダンジョンに溢れたあの強大な魔物達を倒してしてまでここに来る理由があるの?。特に冒険者と言うのはそれで生計を立てている者達のはず、そんな人間がワザワザこのダンジョンに来ると?』


「そっそれはですね……」


『それにお前がその人の子達のパーティーのリーダーの様な振る舞うのも不自然です、私から見るとそちらの角の男の方が遥かに信頼されている様に見えるぞ?』


嘘が速攻でバレてしまった、そしてリーダーとして中年と角イケメンを並べてしまうという、おっさん的には絶対にやめて欲しい事を平然と言われてはしまった。


ショックである。事実だけどな。

イケメンめ……許さん。


この封印されし美女はやはりと言うべきか、かなり頭がキレる様だ。

果たして私の様な中年にこの美女の本音を知ることが出来るのか、不安でしかない。


ここでリーダー的なカリスマを褒められた角イケメンが前に出てくれた。


「俺達が求めるのは、この島の真実だ。貴殿が知っている事を教えて欲しい、貴殿を封印しているその魔法についても可能なら頼む」


この島の真実?何それ、けど相変わらずイケメンは直球ストレートだな。


それでいて決して不用心に近付かないのは封印されし美女が只者ではないと感覚で理解しているんだろうな。


そんなイケメンの言葉に眉一つ動かさず封印されし美女は答える。


『……私はかつてこの島を守る存在でした、しかし今やその力も奪われこの迷宮に封印されるだけの存在です』


嘘つけ!おたくの魔力シャレにならねぇレベルだろ。


「………そうか、ならその封印を施した者と何故封印されたかを話せるか?」


『私が封印された理由はある者達が私の力を欲したからだ、その者達が私の力を奪う為に私から自由を奪ったのです……』


そして封印されし美女はこちらの方を見てそのある者達について語る。


『その者達は……今もこの島にいます』


「……………………」


……………………………………あ?。


この美女、まさかあの島の人々の事を言ってんのか?流石にそれだと口を挟むのが中年である。


「失礼、それはこの島にある村の人々の事を言っているのですか?」


『………そうです、あの者達は邪教に染まっています』


「貴女を封印する事と邪教になんの関係が?」


『あの者達に私を封印すれば私の力や欲する物を得られると唆した何者かがいるのです、その者が何者かは私にも分かりません、しかしその者は私を封印する術を島の人間に与えた。そしてあの者達はその言葉に乗ったのです』


「……………」


『かつては同じ島に生きる良き隣人でしたが。その者の言葉に欲望を刺激されたのでしょう、あの者達は私を封印しその力を奪った。そしてなにをしているのかは……そちらの人間と角の男の方が詳しいんでしょう?』


封印されし美女の言葉に少し私はイラついてしまっていたが、何やら角イケメンが知っている風な物言いに私の視線は自然と角イケメンの向かった。


するとどうした事か角イケメンが少し戸惑っている、ここは島の人達を守ろうとしたイケメンのイケてる所が火を噴く所だろうに。


「んっ……それは……」


「ビンゴさん?彼女の言葉に何か引っかかる事がありましたか?」


しかし角イケメンは難しい顔をするばかりだ、そして少しこちらに視線を向ける。

………もしかして二人で話がしたいのだろうか?ならここは。心意看破の魔法を……。


……あれ?この部屋、魔力の通りが悪いな、これじゃあ無理矢理魔法を使う事は出来ても、細かいコントロールがいる心意看破の魔法とかが使えないじゃん。


マジかよ、誰だよこんな特殊な部屋を作ったのは、ある意味凄いけどさ。

仕方ない、ここは………撤退だ!。


「すみません、多くの情報を与えてくれたのにこちらには何も……」


正直有難くない情報ばっかだけど、情報なんてそんなもんだ。


『……………』


「もしかして情報を渡した代わりにその封印を解けとでも?」


『ふぅん?そんな真似が人の子に出来るの?』


「すみません出来ません、ですので今日の所は1度帰ろうかと思います。それではまた……」


『………まっでしょうね』


落胆する美女、ごめんね本当は出来るけどしたくないんだよ。だってその封印魔法って……。

………ああっそうだ、最後に1つ確認しとかないと。


「すみません、このダンジョンのボスであるミスリルゴーレムを倒した無数のモンスターを召喚したのも島の人達なんでしょうか?」


『……その通りよ、あの者達は無数のモンスターを召喚して私が何とか召喚したゴーレム達を容易く破壊してしまいました。お陰でここから助けを呼ぶ手立てすら無くした私は今日までここに封印されています』


さりげなく封印されてるアピール。黒ずくめ達が私に何とかしてやれよ、おっさんなら何とか出来るだろっ的な視線を向けている。無視するけどな。


「………………そうですか」


自分で召喚したモンスターに襲われたりする間抜けな魔法使いはこの島にはいないんじゃないかな?。

少なくとも彼らの腕でそんな失敗はしないと思うんだけどな。


そして、恐らくこの封印されし美女は扉を二枚程超えた先のモンスターが残らず駆逐された事を知らない。しかし角イケメンの隠密部隊の事は知っているって所か?。


本当はそんな所を突っ込んでしまいたいのだけど、少なくとも今はビンゴとの意見の擦り合わせを優先である。


何故ならビンゴは島の人々について何か情報を持っている様だしな。


そして封印されし美女をその場に残して、中年魔法使いのパーティーはダンジョンから脱出した。


そして青野達が出て行き扉を閉め。その扉の向こうの気配が完全に消えた時である。


『…………ちっあの男、魔力もそうだが私の言葉にもにも完璧に対処されたか』

(間違いなくあの魔法使いは危険ね、私の魔力が完全に回復するまであと少しその後は……)


『封印を解くためのは既に用意しているんですもの』


邪悪に微笑む美女の視線の先にはついさっきまでいなかった者が立っていた。


「…………………」


まるで意思のない人形の様になっている男。

あのマイクを名乗っていた男である、その男の肩には小さなトカゲの様なモンスターが止まっていた。



そしてダンジョンの入口に黒ずくめを配備してもらって、私も引き続きブラックダイバーをダンジョンに残してまたモンスターが出て来たら処理してもらうつもりだ。


そして村への帰り道、今は角イケメンと二人きりである、イケメンと二人きりとかなんの罰ゲームだよって思わなくもない。

しかし必要な事である。


「すまない、貴殿に嫌な役をやらせてしまった」


「構いません、それで……あの女性の言葉をどう見ますか?」


「それについてだが、まず貴殿の意見を聞きたい。あの女性について何か気付いた事はないか?」


私からか、確かに話をしていて思った事は幾つかあったな、それについて話すか。


「まず、あのダンジョンのモンスターを召喚したのが島の人々と言うのは嘘ですそれは分かりましたよね?」


「確かに、俺達は村がモンスターに襲われた事を知っている。流石にあの騒動が芝居か何かとは思えない…」


いやいやっ実はリエリとユーリにモンスターの死骸を吸収してもらってそのモンスターの記憶を読んでもらったんだよ。


ゴーレムツインズからは何者かは分からないが、島のモンスターは確実に召喚された存在である事は確認済みなんだ、そしてあの数のモンスターを召喚するとか私以外だとあの封印されし美女くらいしか考えられない。


「はいっ恐らくですが、あのモンスター達は召喚された後、最低限の命令を遂行する以外は殆ど野放しだったのでしょう」


あの部屋の中に召喚する事は無理だったんだろう、だって殆ど魔法が使えない仕様の部屋だったから。


「最低限の命令……それは、もしや島の人間を始末するという類いの?」


「…………恐らくですが」


そして封印されし美女、あんな存在を封印する魔法。一応あるにはあるが少なくともその方法を知っているからと言ってそんな使える代物ではない。


邪教のなにがしとやらは本当にいるのかすら怪しんでいる私だ。


「そうか、貴殿がそこまで警戒すると言う事はそれにも何か理由があるのか?」


「理由も何もと言う話なのですが。恐らく彼女は助けを求める事が出来ない様になっています、または助けを求めると命の危険がある呪術的な何かがある筈です」


だってあの状況で助けを求めないのには理由があるからだ、そして私はその理由に心当たりがある。


「なるほど、魔法には疎い方だから分からんが何故そんな事が分かるんだ?」


「あの魔法の封印、誰でも解けるんですよ。あの光る鎖に封印されている本人以外が触れさえすればですね……」


ただし。


「あの封印魔法は外から封印の解除を簡単にする代わりに封印されてる本人だけには絶対の制約と封印を施す魔法です。ある意味あれだけの封印をされて普通に口がきける事に驚きましたね」


「それ程強力な魔法だったのか?ならやはりあの場で解放すべきだったのだろうか……」


「いえっそれはやめておくべきかと、何しろあの魔法は解除は簡単に済みます………代わりに封印を解いた者は死ぬんですよ。絶対に……」


「…………なんと」


そっあの封印されし美女が自身を封印している魔法について何も知っていないとは考えられない、だから誰かがあの美女に近づかない様にそれとなく気をつけていたのだ。


そして気付いたのが全然助けを求めないけど、これ見よがしに助けが必要な事をアピールする事だ。


ああっこれ助けを求めると何かペナルティがあるのか、そもそもその類いの言葉を口に出来ない様になっているなって気付いたんだ。


そもそも封印されていてあれだけの力を持つクセに力を奪われたなんて話が嘘くさいったらないんだよ。

だったら元はどれだけ強いんだって話だ。


あんなのたとえ上級魔法をバンバン放てる人々が集まってもどうこう出来るレベルの相手じゃない。


そして上手い事封印を解かせようとしてくる封印されし美女、あの時点でコイツ限りなくクロだと思っていたらなんと島の人々をディスり始めたからな……。


あの時はムッてなってしまったぜ、一応少ない日々ながら島の人々には十分に良くしてもらったしその恩にも報いているつもりだ。


流石にあの島の人々が邪教だなんだとかって話はあり得ないだろ。


「以上が私が気付いたあの女性の怪しい点でしょうか、全てが嘘とは思いませんが全てが真実とはとても思えません。何より彼女はビンゴさん達について何か知っている様でしたね?」


そうっあの封印されし美女は角イケメン達隠密部隊については知っていた、しかし直ぐ近くのダンジョンの現状には気付いていなかった。


2つの違いは簡単だ。


「…………ああっ考えたくは無いが、俺の部隊の人間にあの者に情報を流している者がいる可能性が………高いな」


「…………恐らくは、ですね」


あの部屋にいて千里眼的な魔法やスキル的な特殊能力なんて使えるとは思えない、なら誰か協力者がいて情報を集めてると考えるのが自然だ。


今回のダンジョン攻略については流石に情報を仕入れる時間なんて無かったんだろう。


「なるほど、貴殿があの者に警戒をする理由はあらかた理解した。今度は俺が知っている情報……このラブーンと呼ばれる島の人間について話そう」


「…………」


「先ず、この島と島の人々が他の島や大陸の人間からなんと呼ばれているか知っているか?」


え?確かガイドブックには『夢を見る島ラブーン』って……っあ違うな、コレはガイドブックの中だけでの記載だった。


確かもっと物騒な呼び名だった。


「確か、悪魔の島とか……」


「そうだ、そしてそう言われる所以を貴殿は知っているか?」


「いえっ私は存じません」


「そうかっかなり有名な話だから貴殿も知っているものとばかり思って話さなかったが。分かった、なら少し長くなるが話をさせてくれ」


私はこの世界について知っている知識は魔法関係一点突破な感じの情報ばかりである。

だから知識に穴が多すぎるんだよ、今回はそんな穴だらけの知識が問題だった様だ。


角イケメンは少し間をおくと、話始める。


「この島の人間は、ダンジョンが生まれた日を境に誰一人として歳を取る事が一切無くなったんだよ」


…………………え?。


「ここの指揮を任された者は俺で既に5人目だな、4年毎に別の部隊に島の人間とダンジョンの監視をする部隊の人間を殆ど変える。引き継いだ情報が確かなら、少なくともこの20年の間あの村で人は死んでいない、老人は老人のまま。若者は若者のまま。そして子供は子供のまま今日まで普通に生活している」


「…………………」


「元から島と交流があった島外の人間には、島の住人が理解の及ばない何か別の者になったと感じてもおかしくはないだろう?」


「………なっなるほど、それで悪魔ですか……」


正直、それだけ言うのが精一杯だった。


角イケメン、もの凄い爆弾を落としてくれやがったな………。



























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