第29話『ダンジョン攻略中(2)』

ダンジョンの内部にブラック君軍団を放ってから20分後。

一体のブラック君が地面からヌウッと現れて人差し指と親指でマルを作る、ダンジョン内部のモンスターの処理と罠の破壊が完了した合図である。


ちなみに召喚したモンスター達が倒したモンスターは売れる部位以外はリエリとユーリが折を見て吸収して自らの魔力とかステータスを強化するエネルギーにすると言われたので後からミミックでも召喚して回収するつもりだ。


今はダンジョン内をモンスターの死体や血で汚すのが嫌なのでブラック君達の能力でダンジョンの地面とか壁にでも押し込んでもらっている。


生物を地下で放置なんて恐ろしい真似はしない私だ。


「ビンゴさん、ダンジョンの中のモンスターと罠等の処理が終わりました」


「何と、本当にこの早さで………しかしあれだけの魔法を見せられては疑う余地もないか。ではアオノ殿、これよりダンジョンを進もう」


「はいっそれではダンジョンのマップはありますか?」


私にはガイドブックがある、あの本には私が念じるだけでこのダンジョンの内部構造をマップ化した物がページに現れるので手元には完璧な地図がある。


もしも地図を持参していないならこちらの用意した物を出すつもりだけど……。


「ああっ地図ならこのダンジョンにモンスターが溢れる様になる前の物がある。万が一にも差異がないかを確認しながら進むつもりだが、それを使うつもりだ」


「分かりました、それなら問題ありません。その地図を見せてもらってもいいですか?」


「分かった、これがその地図だ……」


角イケメンはそう言うと懐から1枚の洋紙皮を取り出した。


フムフム、なるほどなるほど。


この手前のが入口だな、ならここから先がダンジョンの深部って訳だ。


「ビンゴさん、このダンジョンの1番奥の方にある大きな部屋が連続している所。ここが怪しいと思いませんか?」


少し古めのダンジョンが出て来るゲームってボス部屋の一つ奥にダンジョンのお宝がある小部屋があったりしたからな。


「ダンジョンにはダンジョンを創り出したダンジョンマスターがいるらしいです。なら戦闘になった時の為に…」


「……確かに万が一ダンジョンマスターがいるなら広めの場所に陣取っていても不思議はない、しかしどのみちここから先は歩いての移動になる時間も相応に掛かるだろう。まぁモンスターも罠の警戒も最低限で済むのならこれ程楽なダンジョン探索も無さそうだがな」


「はいっブラックダイバー達はしっかり仕事をしていると思いますが、やはり自分の身の安全は自分でお願いしますね?」


こちらはあくまでも必要最低限の安全を確保しただけである。


「もちろん分かっているさ、しかし地図でそんなことを確認したのは何故なんだ?」


「はいっそれはある魔法を試しに使って見たいと思ってですね……」


【我が力を持って、大地を操る。大地操作アース・コントロール


その名前の通りに大地を好き勝手に操れる魔法を発動、ダンジョンがズゴゴゴッと音を立てて震えだした。


そしてダンジョンの壁が変形、大きな穴が空き、それを広げていく、そして凸凹な地面も魔法でならしていく。


直ぐに地面は平らになって壁の一部が消えた、それによって真っ直ぐな一本道が出来上がった。


当然ダンジョンの深部へ続く一本道である。


「はいっこれで完成です。新しく作った道ですから罠の類いもありませんよ、真っ直ぐ歩けばダンジョンの1番奥の部屋に行ける筈です」


「なんと、それはまた便利な魔法がある物だな…」


「ビンゴ隊長!?ダンジョンの構造を作り替える魔法なんて聞いた事もありませんよ!?」


「そもそもそんな魔法、人間の持つ魔力では無理な話だ!」


「しっしかし現にこうして私達の目の前で……」


何やら後ろが騒がしいがみんな男なので大して気にも止めずに私は歩き出す。


冒険者がダンジョンに冒険しに行くのにパーティーメンバーがイケメンや黒ずくめの野郎連中ばかりと言うのは、本当にテンションが下がりまくり。


角イケメンめ、もう少し考えてメンバーの選抜をして欲しいもんだ。


美人が1人いるいないで中年魔法使いのやる気は天地程に違うんだよ。


………なんかテンションが下がる事を考え出したら歩くのも億劫になって来たな……。


「………………私の魔法で地面を動かしてますから、立ったままか座ってて下さいね~」


「「「「「「!?」」」」」」


地面がエスカレーター的にウーンッて動きはじめた、ちなみにスピードもあんな感じだから深部に着くまで小一時間はかかるけどな。


別に村の方はリエリとユーリに任せてるし、準備出来る事はしたので大丈夫だろう。


そして動く地面に突っ立ったまま、我々は様々なモンスターの死体を掃除しているブラック君達がこちらを見て頭を下げる度に黒ずくめ君達がビクッてなっていた。


君らも端から見たら十分に怪しいし怖いからね?まぁブラック君達は目もないのにどうやって私達の確認とかしてんのか不思議なもんだ。


召喚した私にも、その生態が全く分からんモンスターって多々いるんだよ。


「……まさかこのダンジョンをこれ程簡単に攻略してみせるなんてな、貴殿の魔法は俺の想像を遥かに超えたものだったよ」


「お褒めにあずかり光栄ですね」


「ふっ言われ慣れているんじゃないか?」


「イヤイヤまさか……」


イオちゃんには雑魚い中年魔法使いだと思われてるんだぜ、そしてイケメンに褒められてもあんまり嬉しくない。


イケメンのあまいマスクの方が私の魔法なんて遥かに超えたチートだと考える私だ。



そしてちょくちょく会話をしながら過ごす事しばらく………。


「………ビンゴさん、見えてきましたね」


「ああっここからが本番と言う訳だ。お前達、気合いを入れろよ」


「「「「「「……ハイッ!」」」」」」


一本道の向かう先、巨大な門が現れた。


洞窟の土の壁と床と地面、人工物的な感じとか一切無かったのにいきなりドンッと出て来たな。


ゲームに出て来るダンジョンなら間違いなくこの先にはボスがいる。それがダンジョンマスターなのかそれとも別の何かなのかは分からない。


未知に飛び込む感覚だ、なんか冒険者してるって感じだな。

そして角イケメンが作戦を指示する。


「よしっ扉はアオノ殿が開けられるか?」


「はいっ問題ないかと…」


「分かった、なら貴殿が扉を開けてもらい俺が最初に侵入するそして部下達だ」


角イケメンの部下達は無言で頷く、それでは先ずは私だな。


物を浮かせたり、動かす魔法は割と簡単に習得出来る魔法なんだ。しかしその動かせる重さや大きさの上限でその魔法使いの腕が如実に分かる代物でもある。


そして私は目の前の巨大なゲート。全長三十メートルはある高さと横幅も十メートルはあるこの鋼鉄(かは知らないけど)の塊見たいなデカブツも普通に動かせる。


「…………いきます」


魔法を使う……ん?この扉、やっぱりただ見た目がゴツいだけでなく何やら魔法で施錠されているっぽいな。


もしかしたらこのダンジョンの何処かに魔法のアイテムとかあってそれをゲットしないと扉は開きませんよ的な?。


ん?いやっこれ魔法で鍵を閉めてるわけじゃないな、これは封印?だなっ何かを封印している魔法っぽいな、けど………。



これ、既にその封印が……破られてねぇ?。



私にインストールされている魔法関連の知識がそう答えを出している、これ既に誰かがこの破壊している。


しかもこのデカイ扉は破壊しないでだ、お陰で私はただ扉を魔法で開くだけで事足りる。


………取り敢えず、開けるか。


ギイィッと音を立てて巨大な扉が開く、そしてビンゴが事前の話の通りに1番に入る。

続いて部下の黒ずくめ、そして私だ……。


「アオノ殿、これをどう見る?」


「…………これは」


そこには蒼い金属で創られたであろう巨大なゴーレムが2体いて………それが破壊されていた。


何か大きな鈍器や武器でボコボコにされていてボロボロの残骸と化している。

ちなみに私にインストールされた魔法関連の情報にはゴーレムに関する情報もあるのであの残骸を一目見てそれだと気付いたのだ。


そして他にも分かった事が幾つかある。


「ビンゴさん、あれはミスリルゴーレムです」


「なっミスリルゴーレム!?あの超兵器級の戦力を有すると言われる代物が…」


そうっミスリルである、ファンタジー世界のゲームとかなら結構出て来るファンタジーな金属である。


ミスリルはあの蒼く美しい色と決して錆びないと言う特性、金属にしてはかなり軽くそれなのに強度があると言うチートくさい代物だ。


当然希少でありあんなバカでかいゴーレムの素材にするとはとんだブルジョアダンジョンだな。

しかしそんなのがここまで破壊されてるとか、一体何者が……。


すると角イケメンが何かに気付いた様に話す。


「これは……アオノ殿、このミスリルゴーレムについた傷。恐らくだが貴殿の召喚したモンスターに駆逐されたトロールウォーリアーにつけられた物ではないか?」


え?言われてみると確かにそうかも、そもそもこの大きさのミスリルゴーレムにこんな大きな傷をつけられるのなんてあのトロールウォーリアーとか他にもいた大きいサイズのモンスター位しかいないよな。


けどそれじゃあこのダンジョンのボスモンスターをダンジョン内部を徘徊していた雑魚モンスターに倒されたって事になるぞ?。


ダンジョンのボスが同じダンジョンのモンスターにやられるとかあり?そんな事が起こるとかリアルファンタジーは怖いな。


「同じダンジョンのモンスター同士が争ったと言うんですか?そんな事が起こりえるものなんですか?」


「俺も何度かダンジョンに侵入した事はあるが、ボスモンスターが既に倒されていたなど初めての事だ、しかし……」


角イケメンは私を見て話す。


「ダンジョン内部にいたモンスター、あれは元々このダンジョンにいたモンスターじゃないとしたらどうだろうか?」


「……………」


角イケメン曰く、このダンジョンには元々このミスリルゴーレムがボスで配下に別のモンスターがいた。

しかし何者かが私が島や村、それにこのダンジョンで戦ったあの様々なモンスターを召喚。遂にはそのモンスターがこのダンジョンを乗っ取ってしまったのではないかと言う話だった。


「しかしその第三者なんて物が本当にいるんですか?ビンゴ隊長?」


「……あくまでも俺の仮説だ。しかしそうで無ければダンジョンのモンスターは自分より上位のモンスターには絶対服従だ、こんな事は起こりえない」


「………私もビンゴさんの仮説はあり得るかと」


「貴殿もそう思うか?」


私はミスリルゴーレムの残骸から視線を外し、この広い部屋の奥にポツンとある扉を見る。

何の変哲もない一般人が通れる普通の扉である。



…………その向こうからなんかスッゴい魔力を感じるんですけど。



「はいっそしてその第三者について知っているかも知れない手合いが、あの扉の向こうにいるかも知れません……」


「………そうか」


「あの扉の向こうには何者かがいます、そして油断なりません。今度は私が最初に行かせてくれませんか?」


挨拶もなしにドーーンっとかされたら下手をすると私の魔法でも守り切れない可能性がある、それくらい危険だと私は判断した。


角イケメンとその部下も静かに頷く、どうやら先程からした魔法のデモンストレーションが少しは中年魔法使いの言葉に重さを与えてくれてる様だ。


「………………」


私は無言で扉を開ける。


そしてそこには……。


『…………よもや人の子がこの迷宮を超えてくるとは、驚きましたよ』


そこには、ゴスロリドレスを着た巨乳のおねぇさんが光輝く魔法の鎖に拘束されていた。
























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