第26話『巨乳美女の襲来』

そしてなんやかんやとしまくってから時間停止の魔法を解除。


うん、部屋の感じも石室から大分離れたな、外見はそのまま真四角のデカイ岩だ。流石に外見までイジると外にいるイオちゃんとかに露骨に怪しまれそうなので諦めた。


しかし中の内装は別物だ。

先ずは特殊召喚の魔法で私が適当な物を見繕って召喚して床には敷物を、そして壁も石壁ではなくレンガを積んだ壁にリューアル。


無論床も地面からフローリングに変えている、これでイスやテーブルやソファーを並べれば中年から見てもまあまあ見れる内装になったのではと考える。


もちろん殆どの仕事は魔法で全自動だ、私はイスやテーブルを運んだ位が精々の肉体労働だった。


よしっこれならいいだろうって所まで来てやっと時間停止の魔法を解除した私だ。


そして外に出て様子を窺う。


「……いつまでここで待たせるんですか?普通待たせるにしても建物の中で待たせるのが当たり前ではないですか?」


「ご主人様は準備中です、そして拠点に易々と他人を入れる事は出来ないんですよ」


「……拠点?あの四角い岩がですか?あれは牢屋か何かでは……」


「……………あ?」


不味い、ユーリがマジギレ寸前だ。

中年魔法使いは急いで出て行く。


「すみません少々準備に手間取ってしまいました。どうぞこちらへ……」


「いえっ話はここで出来ますから……」


……え?中年がリフォームした部屋に来てくれないの?それは割とショックである。

相当に頑張ったのに……イオちゃんつれない。


「わっわかりました、では私に話があるんですね?聞きましょうか」


「……そういえば、まだ名前を名乗ってもいませんでしたね、では改めて私はイオリア=マナスクラブ。魔法学園都市で教鞭を取っている者です」


あっそう言えば、なんか当たり前の様にイオちゃんの名前を呼んでいたかも。こんな中年に気安く名前とか呼ばれたら不快に感じてた?ごめんなさい。


「では私も、名前は青野。旅の冒険者です」


「では話を戻します、私はこの島に魔法の才能を持つ多くの子供達がいると聞き、この島に来ました」


あっそれは村の人にも聞いた話である。

そしてイオちゃんは自身が島に来た経緯を割と細かく語ってくれた。


何でも彼女がいる魔法学園都市とはその都市一つが1個の国として周囲に認知される程の規模の大都市であり学園都市なのだそうだ。


そしてその学園都市と言う名前が指すとおり、毎年世界中の様々な国から多くの若者を学徒として向かい入れているとか、まぁもちろん学生になれるのはある程度の私財を持った商人や貴族の御子息や御令嬢が殆どだと言う。


しかしこれには例外があるらしい。


何でもこの世界にもやはりと言うべきか、不世出の天才と呼ばれる才能を持って生まれても、平民の生まれやら環境やらお金やらでどうにもならない人々が結構いるんだそうだ。そんな所は私の世界でもよく聞く話である。


そんな人々の中で消えていく才能ある若者を救済する取り組みを、その学園都市は大分前から取り組んでいるだとさ。


まぁそのやり方は単純で情報を集める感じの人を世界中に派遣する、そしてより信憑性の高いと判断された所にイオちゃんみたいな教師を単身で送り込むらしい、いわゆる一本釣り的なヤツだ。


しかしこの原始的なやり方で魔法学園都市とやらは世に轟く程の天才を数多く輩出し、その存在をこのファンタジー世界全土に響かせているのだそうだ。


ちなみにそんな結果を魔法学園都市が実際に出しても殆どの国では貧しい人々への学習施設やそう言った学びを手助けすること様な仕組みも組織も碌に発展していないとのこと。


……まぁどこぞの島国でも外国の先進的な学業に対する取り組みを横目に何十年も碌に進歩がない授業をずっとし続けていたしな。


最新鋭の授業で使う様々な道具を作っておきながらそれを自国では使わず海外に輸出ばかりしているんだよ。


外国じゃあ電子黒板とかスマートボードってのがあって、マジモンの黒板とか30年以上前に消えているなんてネット記事を見たよ。


そんでその電子黒板を作ってる会社はどこぞの島国にもありましたよ~って話だ。


「なるほど、その学園都市の命で来ているんですね?」


「ええっだから子供達を相手に学園都市の授業を出来るだけ再現したものを教えてました。もちろん学園都市へ連れて行ければそれが良いんです、あの子達の才能は本物ですから……きっと学園都市ならあの子達が広い世界に羽ばたく助けになると、私は考えています」


すげぇ~こんな教室も教科書も殆ど何もない場所で授業をやろうとする所も学園都市にかける誇りも感じれる、かなりバイタリティー高いなイオちゃん。素直にスゴイと感じる。


中年もこれくらい勤める会社や組織に誇りやら情熱やらを持ち続けられたら、もう少し変わった社会人生活を送れたかもっとか考えてしまう。


若く、才能もやる気もある若者って近くにいるだけで冴えない中年は眩しさを感じるな。


私はそんな若者が素直にスゴイと感じれる大人でいたいよ…それを鬱陶しいと感じる様な年寄りにはなりたくないなぁ……。


そんなオヤジ臭いことをしみじみと考えていると。


「……アオノさん、いきなりで申し訳ありませんが………………1度手合わせを願えますか?」


「…………………」


嫌なんでだよ~ん。


話の流れをガン無視してこの子何言ってんの?、この島に来たのは才能豊かな子供達への学園都市への裏口入学の為でしょうに……。


それが何でいきなり私とのタイマンになるって話だ。意味が分からないだろう?。


「……どうしてそんな話になるんですか?」


「私がこの島で初めて会った島の人間はエレナさんでした、彼女は私よりも遥かに高い実力を持った魔法使いです、その彼女が貴方に一目置いている」


「それは……」


正直私はイオちゃんとやり合うとか勘弁なんだよな、だって彼女が中年に厳しいのは彼女が魔法の才能と単純な実力の有無で相手を判断するからであって、中年の冴えない見た目や冒険者と言う職業、それにいい歳をしている所なんかを一方的に見下してるからって理由で舐めてくる手合いとは違うんだよ……多分。


「それに貴方の従者と言う其方のユーリと言うメイドの女性も魔法使いとしてかなりの実力者です」


「………私は魔法使いではなくメイド何ですが」


「ユーリ、少し待って下さいね?」


「そっその彼女が言う貴方の圧倒的な魔法使いとして実力と言う物を私は全く見抜けないんですよ。すみませんが私には貴方がエレナさんやメイドの彼女が貴方をそこまで高く買う理由が分かりません」


「だから直接闘って見たいと?」


「はいっそうです」


なんてアグレッシブなんだイオちゃん、こっちは村の防衛手段とか色々とやるべき事があるこのタイミングで何故そんな事を言ってくるのだろうか?。


(ご主人様、少し話を良いですか?)


ん?ここで村を巡回しているリエリから連絡が来た、一体何だろうか?。


(どうしました?)


(実は村を見回っているときにですがご主人様が話してくれたエレナと言う女性がイオというに、ご主人様の実力が知りたいのなら直接闘って見れば良いとか物騒な話をしたと他の村人に話していてですね?万が一ですが其方にイオと言う女性が……)


……そう言えばあのビンゴとか言う角イケメンの時もリエリの報告が少し遅れて来てた事を思いだした、どうやら今回も遅れてしまった様だ。


もう来ちゃってるし、闘いを挑まれているぞ。


どうやらエレナちゃんの差し金か、村がピンチになった翌日なのに随分余裕があるよな。

そりゃあ私の魔法なら簡単に無力化出来る手合いだけども……。


「………本気何ですか?」


「ええっ全力で行きます」


本当に全力で来そうで怖いなあ…。



それから10分くらい何とかバトルを回避しようと営業で培ったトーク力を発揮したのだが、結局はイオちゃんのやる気に押し切られてしまった。


バトル決定である。


場所は変わらず拠点の前の空き地、十メートル程の距離を取って我々は向かい合っている。


ちなみに何度もユーリに助けてくれって視線を送ったが、何故か彼女は満面の笑みでサムズアップをしてきた。


遠慮なくバーーンッとやってしまえってか?誰かあの親指をへし折ってくれとか考えてしまった。


「一応は模擬戦と言う事で非致死性の魔法のみを使用しての模擬戦と言う形を取ります、アオノさんもそれでいいですね?」


「はいっそれでお願いします」


イオちゃん相手に傷を負わせる魔法とか使うわけないじゃん。

しかしだとするとどうしょうかな、時間を停めて眼前に氷の槍でも出しとくか?それとも火の玉で囲んでしまえば引いてくれるかな。


うーん………やっぱないな。そんなんは。


よしっ決めたよ、この勝負……。


ユーリが試合の合図を言う。


「それでは………始め!」


「先手必勝!トリオンボム!」


イオちゃんの周囲に光る玉が10個ほど出現、それらは煌々と輝きながら宙に浮いている。


「ハァッ!」


イオちゃんの気合いの声と共に玉がこちらにすっ飛んで来る、私は防御魔法を発動する。


【魔の元素よ、我が意思に従い盾となれ。魔素盾マナ・シールド


私はイオちゃんの魔法の玉10個に対して一つの魔方陣を生み出す、この魔方陣は物理的の攻撃も魔法攻撃も防いでくれる。

魔法使いが最初に覚える防御魔法である。


今回の勝負はこれで十分だ。


「!?………そんな下級の防御魔法で何が出来ると言うんです」


もちろん全ての攻撃を防ぎますとも。

イオちゃんの無数の攻撃魔法はバカ正直に真っ直ぐ向かって来ているので魔素盾を二回り程大きくサイズアップ。


ドゴゴンッドゴゴンッと私の魔法陣な盾に攻撃が命中。やはりボムとか言ってたから着弾と同時に少し爆発とかしてた、しかしこちらはビクともしないのだ。


「……なるほど、確かに魔法を使えるのは事実何ですね」


「それを分かっていただけて嬉しいです」


じゃあこれでお開きとは……。


「ならこちらもここからは真面目に行きますよ!」


……なりませんよね。

イオちゃんの新たな魔法が発動、彼女の立つ地面に数メートルサイズの紫色の魔法陣がバーンッて現れたぞ。


「直撃したら死ぬかも知れませんので、ちゃんと防いで下さいね?」


模擬戦って話はどしたーい、非致死性の魔法だけって話はどしたーい。


イオちゃん……さっきの魔法を無傷で防がれたのが余程の事ムッと来た様だな、見た目は大人な美人なのに子供っぽい所があるギャップ、良い。


……ってそんな事を考えてる場合じゃないな。ごめんなさい。


「ブレイクエーテル・ファンタズマボムズ!」


なんて?そんな長ったらし過ぎる名前の魔法、私は使った事ないぞ?。

見るとイオちゃんの頭上に魔法陣から溢れた光が集約している、そしてその光がやがてイオちゃんの数倍の大きさの結構な大きさの1個の紫色の光球に変わる。


魔法に込められた魔力の量を見るだけでも分かる、あれば大技だ。


「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


イオちゃんが雄叫びを上げながら両手を開いてこちらに向けると、その巨大な光球がドンッ!って感じで発射された。


無論私は魔素盾を更に大きくして受け止める様に操作する。


両者の魔法が真正面からぶつかる。


強烈な光、後からボゴォオオンッと結構な轟音が辺りに響き黒煙がもっくもくだ、これ聞きつけた村人が集まったりしない?。


しかも煙の量が凄くて視界がゼロに……っあ。


そんな事を考えている時、私は気付いた。


私の両足を何かが絡め取っている、動けないぞこれっ……。


「……………やられましたね、流石です。イオさん」


煙が少し晴れた瞬間、私が発動させた魔素盾に小さなヒビが入っていた。

そしてボンッという音と同時に私の上半身が爆発する。


2つともイオちゃんの魔法である。

まず目を引く大魔法で私の視線を上に集める、そして魔法をわざわざ魔素盾にぶつけて爆発させて光と煙で視界を奪う。


そのタイミングで私に気取られ無い様に無詠唱で魔法を使ったんだろう、1つは地面を操作して私の足を拘束する魔法。

そして2つ目は防御魔法を破壊出来る攻撃魔法、貫通属性の魔法を使って私の魔法を破って完璧な一撃を決めたのだ。


私は爆発しながら倒れる、まぁ魔法鎧マジック・メイルがあるので普通にノーダメージな私だ。


しかし魔法使いの闘いとしてなら……完敗だな。


中年魔法使いは美人魔法使いに負かされてしまったんだよ。



















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