第24話『イケメンの襲来』

さてっ取り敢えずはミミック達にモンスター達の死骸のお掃除を頼もうか。


(ミミック達、この村と周囲に残っているモンスターの死骸を回収して下さい)


「「「「「…………………ッ!」」」」」」


無言で大きめの宝箱がピョンピョン跳ねて動き出したもんだから、村人達もビックリしている。

エレナちゃんも驚いていた、可愛い。


ん?村長がこちらに来ながらミミック達に驚いていた。年だからこけたりしないでくれよ。


「こっこれはやはりアオノさんの召喚されたモンスターなのでしょうか?」


「はいっそうです、もちろん村の人達を襲ったりはしませんから」


村長はハゲだ。バーコードの六十代くらいのお爺さんだ。

村の近くの空き地を拠点に使っていいと言ってくれた割といい人である。


「村長、村の人達は無事ですか?」


「ああっエレナが頑張ってくれたおかげだ。幸いな事に死者は出ていないよ……」


そしてそんな会話をしていると、ミミック達がモンスターの死骸を回収し出した。


モンスターの死骸の隣にミミックが移動してその宝箱な感じのミミックが開くと、あら不思議っ死骸は全て箱の中に回収された。


後には血の跡すら残らず綺麗なものである、以前は盗賊を生きたまま回収したりもしてのでこのミミック達は相手が生きていても問答無用で閉じ込める事が出来るのだが。


今回はモンスターだし殲滅してもいいと判断してミミック達にはお掃除担当をしてもらった。

恐らく10分もあれば終わるだろうから私はもう一つの仕事、村の周囲に現れたクレーターの対処に行くか。


「すみません、私は村の外に出来たクレーターを埋めて来ますね」


「あっ待ってアオノさん!私も行きますから」


「むっわっ私も彼の魔法を見てみたいですな…」


なんか村長の言葉を聞いて村人が少しずつついてき始めたぞ?。


そして歩く事数分で村の外のクレーターに到着した、おうっ深さも結構あるな、五メートルくらいか?広さも数メートル程のクレーターが村を囲む様に一杯空いているぞ。


……まぁ私の魔法なら一発だけどな。


【我が力を持って、大地を操る。大地操作アース・コントロール


この魔法なら大きな穴でも一瞬で元通りだ。


大地がひとりでに動く粘土みたいになって穴を埋めて行く。ものの数分で村の周囲の穴は消えた。


「おおっ!これは広範囲の土魔法か?」「まさかたった1度で全ての穴を塞いだのか!?」「とんでもない魔力量だっ!」「そう言えばあの召喚魔法も凄まじかったな……」「ああっ村の外には何十体もモンスターが召喚されていたぞ」「……は?召喚魔法って1度の召喚で1体か精々2体までだろ?」「そうだぜ、流石にそれは見間違いだろ?」


私の後からついてきた村人達も色々な話をしている、一応ミミック達は還しておこう。


そんで実はファントム君達は半分は還して残り半分は私が異空法衣の魔法を掛けて姿を消した状態で村の回りを巡回させてたりする。


これで次にモンスター軍団が来ても村が戦場になる事は無いはずだ。出来る魔法使いはそんな所も手を抜かないのだ。


全てはエレナちゃんやイオちゃんにイケてるおっさんウィザードをアピールする為。


イオちゃんに多少ディスられた位じゃへこたれないよ、女性へのアピールは諦めたらそこで試合終了である。故に最後の最後まで諦めない!。


………アアーーンとかイヤーーンとかが来たら流石に諦めるけどな。

アレは童貞の心を殺す魔法の言葉だ。


「実際に1度は殺され掛けたしな……」


マーブルちゃん、あのイケメンと色々と仲良くやってるかな?………なんか思い出すとムカついてきたな。


「すごいっ!本当にすごいですよアオノさん!これだけの広範囲に使える魔法もあの召喚魔法もとても私達には出来ませ……ん?どうかされたんですか?」


「いえっ何でもありませんよ?」


そうだな、全てイケメンが悪いのだ。


悪いのはおっさんでもマーブルちゃんでもない、全てイケメンが悪いのさ…アレリアちゃんの時だってあのイケメンギルドマスターさえいなければ……。


そんな自身の顔面偏差値や冴えないおっさんと言う事実を全て棚に上げた考えが頭に浮かんでしまうよな。


思わずイケメンへの怒りが込み上げる。


何でこのタイミングでイケメンへの怒りが再発するだろうか?まさかこの島にもイケメンが?。


………イヤイヤそんなバカな、そんな訳ないよな。


村の人々の顔は精々中の中から上止まりだ、イケメンには決して届かないフツメンか微妙にブサメンと言った連中ばかりである。


そんな連中ですら目鼻立ちは外人で、私よりも確実に顔面偏差値は高いと言う現実には……視線を逸らそう。


……そしてこの島に他の村なんて存在しない以上、これまで見たいに名前どころか顔すら碌に知らないイケメンにエレナちゃんやイオちゃんが颯爽と持ってかれるなんてあり得ないだろう。


ただエレナちゃんとか村の人間だし、彼氏とか普通に……イオちゃんに至っては上級魔法を易々と扱える村の男達がモリモリいるのだが……いやっ!そんな事は考えるな!マイナスの可能性を考え出したらキリが無いぞ。


ならば自分に多少都合良くてもプラス思考で行こうじゃないか。


そうっその通りだぞ自分、意志を強く持て。


嫌な予感はフラグ立ての始まりだからな、一切気にせずに私は美女や美少女にアピールとかを続けるのだ。


もしもそれで過去の二の舞になるなら……。


中年魔法使いは激しく泣くことになるだろうな。


そんなタイミングにて。


(ご主人様、リエリです。村の少し離れた場所に男が一人村の様子を探る様に見ていますが、どうしますか?この男は以前ご主人様にダンジョンに行くように言ってきた男の様です)


(……なら私が直接行きましょう)


あのマイクって名乗っていたヤツだ。

本名も役職も不明な隠密部隊の人間だ、ダンジョンについてはどうしようか悩んでるんだよな。


ちょうど良いしこのマイクさん(偽)ともう一度話して見るか。


以前はなんかとにかくヤバイ見たいな話だけで行くって答えてしまったけど、よく考えたら冒険者にダンジョンに行けって言ってるのに報酬の話とか一切してなかったしな。


冒険者にダンジョンとくればクエストだからな、報酬はしっかり貰おう。


エレナちゃん見たいな美女や本当にお金がないとかなら別にってなるけど、野郎でお金くらいありそうな所からなら、普通に戴くのが私の流儀だ。


っと言う感じな訳で、そのマイク(偽)に合いに行こうと私は転移の魔法を発動させた。



………そして場所は村からちょっと離れた森の端。

そこの木々の間からチラチラと村の様子を伺う男がいた。


男の外見を説明すると、歳は三十路くらい、服装村人、以上である。……っあ後茶髪で獣人。


私自身は魔法で男の更に後方に現れてその様子をチラチラと見ている。


正直いくら見てもなんも楽しくないのでさっさと出て行く事にした私だ。


「しっ信じられん……あの数の島のモンスターが一方的に全滅だと!?」


「ええっ本当に結構な数で来たから驚きましたよ」


「そうか……って!ぬぅおおおおおっ!?」


マイク(偽)がかなり面白い感じで驚いている、そりゃあいきなり話し掛けられたらそうなるわな、私だってビクッてなるかもだし。


「アッアンタはアオノ、ビックリしたぜ。いきなり現れんなよ……」


「すみませんマイクさん、それにしても何故村から離れたこんな場所に?」


「……いやっ村があの状況だったからな、流石にもうだめかと呆然としていたんだ」


……本当か?まさかとは思うがあのモンスター共をけしかけたりしてないだろうな?。


一応、心意看破の魔法を使いながら確認していくか。


「それにしても驚いたぜ、ここから見てたがいきなりモンスター同士が殺し合い始めたんだぜ?」


「アレは私が召喚したモンスターですよ」


「召喚?オイオイッいくらアンタが腕の立つ魔法使いでもモンスターの召喚は召喚師サモナーの専売特許だぜ?あの手の魔法は門外不出だからそう簡単に手を出せないって聞いた事あるぞ?」


……え?召喚魔法もただの魔法じゃん。一緒だよ一緒、このファンタジー世界では召喚魔法って結構レアな魔法なのか?私にインストールされた数々の魔法の中に普通に入ってたから知らなかった。


ここは召喚魔法も出来る魔法使いって感じで話をするか。


「私は召喚魔法も使えるんですよ」


「イヤッ…そもそも使えてもあんな大軍を召喚したとかいくら何でも無茶苦茶な話だって……」


なんか話が横に逸れるのを感じる、自分はここに野郎と世間話をしに来たのではないのだ。


シンプルに直で聞こう。


「すみません、もしかしてあのモンスターを村にけしかけたりしました?」


「は?俺にそんな真似出来る訳ないだろ?」


……真実である、なんかホットした私がいるな。

まぁ偽名とは言え名前と顔を知ってる人間…獣人だったな、茶髪獣人だ。それが悪者じゃなかったのは素直に嬉しい。


さてっ最低限の確認作業は済んだし、後は昨日のダンジョンの話をしておくか。


「それもそうですよね……あっ昨日のダンジョンの件なんですが私はしばらくあの村の守りを固めようと思うので、ダンジョン探索はしばらく無理だと思います」


「……何だと?」


おやっマイク(偽)はダンジョン探索が遅れる事にはいい顔をしないな、流石にあの数のモンスターが村を襲ったんだし、村をほっとくのはあり得ないだろ?。


アレで最後なんて保障も無いからな、色々と考えなければいけないじゃん?ならダンジョンは後回しって話だ。


「村の心配をするなら早くダンジョンを抑えてればモンスターが村を襲うのを止められるだろ?何でそれをしないんだ?」


「ダンジョンからモンスターが現れると言う話は聞きました。しかし本当にダンジョンからだけモンスターが現れるのか、私自身の目で確認したわけではありませんから」


そもそもモンスターが出入りする場所が一カ所なのか、それとも複数あるのかも不明なのだ。


島以外の場所だとモンスターは町の外とかなら何処でも現れるって話だったし、ダンジョンを見張れば安全だってのは安直過ぎるのよ。


私的には村の守りをもう少し手を加えたいし、今はイオちゃんと子供達の安否確認もしなきゃならない。


本音を言えばこの島に来てからあんまり休んでもいないので休みたい……私は週休二日制で月に1度は三連休を取れ、それでも金銭的に余裕のある生活に憧れていた。長期休暇とかも1度は取って見たかった私だ。


ワーカーホリックと言われる国民性が謳われるどこぞの島国で、働いた量で偉いだ何だと話をする世代に泣かされてきた中年世代の嘘偽らざる悲哀である。


折角異世界に来たんだしそんな感じの生活とかも憧れるよな。


しかしこの茶髪獣人はそんな私に労働を強制してくる。


「ダンジョンからモンスターが現れるのは俺自身の目で何度も確認した、時間がないんだ。これ以上あのダンジョンをほっておくとあの村も大変な事になるんだ!今すぐあのダンジョンに向かうべき何だよ!」


何でだよ、まさか今から行けってのは無茶だろ。

仕方ないな、ここは少しお金の話をして熱くなった頭を冷やして貰おうか。


「マイクさん?そもそも私は冒険者なんです。分かりますか?」


「…………あん?」


「冒険者にダンジョンに行くように話をするなら先ずは報酬について話をするべきですよね?」


そもそも私は、少し親しくなったからと言ってお金について話を一切せずに何かしらの『働き』を求めてくる人種が、5本の指に入るくらい大嫌いなんだ。


中には最後までお金の話には触れずに一銭も払わないでとんずらするヤツとかマジでいるのだ。

社会人として、大人として、そもそも人間として最低の部類だよな。


それに並ぶのがオレオレ詐欺やアポ電強盗とかでお年寄りから財産を奪う輩と子供を虐待死させたその子のいわゆる毒親である。


アレってさ、色々と理由はあるのかも知れないけど、罪が軽すぎる気がするのは私だけなのだろうか?。


「あっあ?金の話か?今は島と村の危機なんだぜ?……そんな事を言ってる場合じゃっ…」


…………なんか嫌いな奴らの事を考えると流石に私も顔に出ないか心配になるんだよな。


「ッ!?………わっ分かった!金なら用意してあるから。別にただ働きさせようって訳じゃないんだって。だからその殺気を抑えてくれよ、な?」


ん?何故か向こうがこちらの都合が良いように勘違いしてくれたぞ?。

思い出しムカつきをしていただけなのに。


「私は別に怒ってはいませんよ?それにお金を用意されても数日は村の方でやることがあるので動けませんから。今回はそれを伝える為に来ただけですので……」


「ッ!………だっだから……」


まだ食いつくの?いい加減私は、何か面倒な目的がダンジョンにあることを疑い始めた頃である。


いつの間にかマイク(偽)の背後に長身の男が立っていた。


「失礼、オレの部下が何か非礼をしでかしたのか?」


………え?ナニコノ…イケメン。


どうやらワタシが一瞬立ててしまったフラグが、また余計なイケメンを登場させてしまった様だ。


思わず……嫌な顔をしてしまったぜ。




























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