第23話『オッパイ女とユーリ』

◇◇◇


ユーリはご主人様の命令により森の何処かにいる子供とイオと言う女性の護衛をする事になりました。


確かご主人様はエレナと言う女性もそうですが、あの巨乳のイオと言う女性にも御執心だった筈です。


ご主人様ならモンスターとの戦闘などで魔法を使う姿でも見せれば大抵の女性はイチコロかと思うのですが、恐らくエレナと言う女性と村の人達の安全を考えて自身が向かうのが一番確実だと考えての行動だと私は考えます。


一番面倒そうな所にご主人様は行きますからね、何故ならそれが一番早く事件を解決出来ると知っているからです。


「……本来ならユーリとリエリが率先してするべき事を、私達の実力不足が情けないです……」


それでも任された任務は確実に果たします。


先ずは魔法で護衛対象の居場所の補足をして、それから歩くよりも遙かに早い飛行の魔法で移動します。


「………感知サーチ!」


これは簡単な物や人を探す魔法です、魔法の実力次第では数キロ以上離れた位置にあるものも見つける事が出来ます。


……森の東方面。十数人の子供達と一人の大人の女性がいますね。


恐らくこの一団がご主人様が言っていた者達ですね、では早速行きましょうか……。




そして空を行くこと数分で目的の一団を発見しました、イオと言う女性が子供達をなだめながらまとめています。


その手慣れ具合からもしかしたら元から子供を指導する職種の人間かと思われます。


「………アレは」


取りあえず声でも掛けようかとした所、その子供達のそばに近づくモンスターが数体いました。



それは狼の様なモンスターで、ご主人様がこの島に来た初日に倒したモンスターと同種の様ですね。

しかし幸いな事にそのモンスター達は子供達やイオと言う女性にはまだ気付いてない様ですね。


「………先ずはそちらから処理しますか」


そう決めた私はモンスターと一団との間に飛行して着地します。

距離感はモンスター、女性と子供達双方ともに数百メートル程の距離があると思います。


恐らくイオと言う女性には気付かれていると思います、何故なら私は気付かれる様に魔力を発しているのですから。


もちろんモンスターも私に気付きました、私の気配を察しても逃げたりはせずに此方に足音を消して向かって来ています。


これで間違っても子供達に向かう事は無いでしょう。


「逃げれば見逃したんですが……所詮は知性などありませんか」


足音を消しても気配も魔力も丸わかりです、これなら寝ていても対処出来ますね。


私は片手をかざして魔法を発動します。


「…………雷光球ライトニング・スフィア


ちなみに私とリエリはご主人様から新しい魔法を付与される事でその魔法をインストールされ、私達も同じ魔法を使える様になるのです。


厳密には私達の魔法はご主人様の魔法の劣化版なんですよね、だからご主人様の様に思考の中で詠唱する事で完全詠唱と同等の威力の魔法を放つ『思考詠唱』なんてのも使えないので無詠唱で更に火力を落とした魔法か、詠唱をちゃんとした上で発動する魔法しか使えません。


………それでもご主人様の魔法には攻撃魔法の威力、様々な魔法の効力共に遠く及びませんが。


話がそれてしまいましたね、そんな私の魔法が発動しました。それは雷撃を纏った光の球体を3個生み出す魔法です。


その雷光球が瞬時に1度消えます、そして……。


バリリッ!バチンッ!バチリッ!。


「キャウンッ!」「キィインッ!」「……ツ!?」


その雷光球は消えたとほぼ同時にモンスターの背後に出現しヤツらに直撃します。


なにしろ雷撃の魔法ですからね、雷の速度に比肩するスピードと雷撃の威力は回避も耐えるのもまず無理だと思いますよ。


しかしここで1つミスが発覚しました。


「モンスターが5体いましたね、雷光球は5個生み出しておけば良かったです……」


「ガゥウウアウッ!」「グルルルルルルルルッ!」


突っ立ている私に狼のモンスターは一気に距離を詰めて襲い掛かります。


「パラライズウィップ!」


すると横から光るムチの様な物がモンスターに当たりました。

そのままモンスターを二体とも拘束して動きを封じます、まるでムチに意思があるような動きでしたね。


「私の魔法で拘束しているうちに!」


あのイオと言う女性の助太刀でした。

私は彼女を見て1度頷くと、モンスター二体の間をすり抜ける様に移動します。


そのまま私は手刀でモンスターの首を切り落とします、私はゴーレムですので身体の一部だけを魔鋼鉄よりも硬くする事くらい出来るんですよ。


実はあのままモンスターを接近させて始末するつもりだったのですが、彼女の手前黙っておく事にしますか…。


そして私がモンスターを始末したのを確認してから彼女、イオは此方に近付いてきました。


「つい魔法で援護してしまいましたが、貴女には世余計なお世話だったのかも知れませんね」


「いえっおかげで楽に倒せました、礼を言います」


「どういたしまして、それにしても貴女は何者ですか?何故この森に……?」


「私の名はユーリ、ご主人様の命で貴女達の護衛をする為にここに来ました」


「……ご主人様?」


そう言えば、ご主人様はその辺りの説明を一切していませんでしたね。まぁモンスターの襲撃と言う話ですから時は一刻を争います、これも仕方がないですね。


「ご主人様の名前は青野と言います、私はあの方に仕える者です……」


「え?アオノさん?あの人のメイド何ですか?」


私の言葉に心底驚いていますね、何がそこまで驚きなのでしょうか?。


「……もしかして彼は異国の貴族なんですか?」


「貴族などではありません、そもそもあの方は一国に仕える様な、程度の知れた器ではないんですよ」


「そっそうですか……分かりました」


………ん?何やら少し引いている様な視線を感じます、何かおかしな事を言いましたかユーリは?。

そして彼女は口を開きます。


「失礼ですが、あの人にそこまで入れ込む理由が分かりかねます。もしかして隷属魔法によって奴隷にされていたりするのでは?」


は?何でいきなり魔法で奴隷なんて話が出るんですかこの女は。


「奴隷?いきなり何ですか?」


「いえっ貴女程の魔法の使い手が何故彼に付き従っているのか教えて欲しいと思って……いきなり無礼な事を言ったのは謝ります。すみません」


何でご主人様はこんな女を守る様に言ってきたのでしょうか?まぁご主人様は基本的に美しい女性には甘いと感じていましたから仕方ないと言えば仕方ないのかも知れませんが…。


それに一応は謝って来たんです、1度は大目に見て上げましょう。


そしてその誤ったご主人様の評価を正してあげますよ。きっとご主人様もそれを喜ぶ筈ですからね。


「私がご主人様に従う理由ですか?それはご主人様が私など足下にも及ばない魔法使いだからですよ」


「………………まさか」


まさかとは何ですかまさかとは……。


「ご主人様の魔法の実力に疑う余地はありませんよ?」


「…実は私はこの島がある国とは別の国で魔法を学ぶ学園で教鞭を取っています」


それは既にそうじゃないかと思ってましたよ?むしろそれなら何故ご主人様の魔法の素晴らしさを理解出来ないのか聞きたいです、だからそのまま話させます。


「そして私自身も魔力の量や魔法の素養を見る目を多少なりとも持っているつもりです、その上でお伝えすると……彼には魔法の才能はあまり期待は出来ないかと」


「…………………」


面と向かって言い切りましたよこの女!。

なんかムカムカしてきました、一発魔法で黙らせてもいいんでしょうか?。


「どこからそんなふざけた結論になるのか聞いても?確かご主人様はここから村に行くときに転移テレポートの魔法を使った筈ですよ?アレは魔法使いでも上級クラスの腕を持つ者にしか使えない事は知っていますよね?」


私が様々な情報を集めてる時に知った情報の1つです、つまり転移の魔法が使えるご主人様は最低でも上級魔法の使い手レベル以上の実力がある事くらいは気づいてる筈何ですよ。


………するとこの女は。


「………アレは、恐らくエレナさんに瞬間移動の魔法を使って貰って一緒に運んでいただいたのではないですか?」


「………………何でそうなりますかね?」


この女、ご主人様に対する悪意を持って話していませんか?それならご主人様のメイド兼ゴーレムとしてフルボッコにしてやるのも吝かではありませんよ?。


「何故なら彼が魔法を使う時、本来ならあるはずの魔力の放出が全くと言っていいほどありませんでした。アレでは魔法を発動させているとは考えられません」


「…………なるほど」


確かにそれは事実です。何故ならご主人様は自身に魔法鎧マジック・メイルの魔法を掛けています、それ故に物理的、魔法的防御に完璧に対処する事と引き換えに自身の魔力を外から殆ど感知されなくなったのです。


っと言うのもそれも感知や看破系統の魔法に対する防衛機能だからです。


だからこの女の言う事の真相は、単純にこの女にはご主人様の魔法を見透かすだけの実力がないだけだと言う事なんですよ。


自分の実力不足から相手の実力や才能を理解すら出来ないとは、哀れですらあります。


ご主人様は本気で魔法を行使する時はその魔法鎧の外側にまで魔力が溢れます、その立ち上る青い光の様な魔力を1度見ればその辺りを理解出来るのですが……。


しかし、ここで勝手にご主人様の情報を渡すのは出来るメイド兼ゴーレムのする事ではありません。


「それに実力者には隠しても隠し切れない風格や気配の様な物がある筈です、彼からはそう言った物を一切感じませんしそもそも私の胸への、あの視線はいただけませんね」


……なんか最後の方に本音が見え隠れしていますね、ご主人様の視線は確かに分かりやすいですから。私もこの女性のメイド姿の時は顔や胸への視線を感じます。


しかしこのまま言わせておくのは悔しいので…。


「それならエレナと言う女性の話はどうなんですか?確か彼女もご主人様の魔法の腕を買っていた筈ですよね?」


「……そっそれは」


「そして私もご主人様の実力に疑う余地はないと考えます。使それがどう言う事か分かりませんか?」


「ッ!………わ、私の実力不足故にあのアオノと言う男の実力を測れていないと言いたいの!?」


「……………」


そうとしてか言っていませんが何か?。

お互い様ですがこのまま剣呑な雰囲気に流れかけた時に子供達の存在を思い出したのか、この女は口論を避けようと子供達の方に向かいました。


おかげで私もそれ以上は何事もなく、ご主人様達のモンスター退治待ちになった訳です……。



(そんな訳ですよご主人様!今すぐあの女を魔法でコテンパンにして下さい)


しませんよ。本当に話が長いんだからこのゴーレムちゃんは、しかし罵詈雑言って割にそんな程度であればむしろ良かったとか考える私だ。


……なんかこの世界に来て、女性からの口撃への耐性が上がった気がする。


(流石にコテンパンにするのはやり過ぎですよ、それに子供達に危害がなかったのなら別にそんなことはいいではないですか)


(………本当にそれで良いんですか?)


(良いんですよ。それよりも村に無事に子供達を連れて来るまでは仲違いは避ける様にお願いしますね)


(分かりました)


ふうっこれでいいか。


……イヤッ良くねぇよ?何が良くないかと言うと。


私の視線。完全にバレてたわ。


そりゃあ嫌悪感を抱くのも当たり前だよな……今後は気をつけよう。バレない様に気をつけます。


ちなみに此方は村の中はモンスターの死骸だらけだし、村を囲む様にクレーターが出来ているのでぱっと見大惨事だ。


これでも死者が一人も出なかったのだから大したもんだと自画自賛でもしたい気分だ。


しかしそれは……。


「あっエレナさん、少し良いですか?」


「アオノさん今回は本当に助かりました、本当はお礼をしたいんですけど……」


「それは気にしないで下さい。それよりも村のモンスターの死骸と村の回りのクレーターを消しても構いませんか?」


「…………え?消す?」


「はいっまぁアフターサービスとでも言いますか……」


取り敢えず魔法でさっさとお掃除と行きますか。

私は召喚して起きながら大して活躍してなかったミミック達に思念で命令を飛ばす。


モンスターの死骸とか血の汚れとかを回収する様にってさ。


そこまで含めてが、中年魔法使いの仕事である。

















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