第21話『隠密部隊』
エレナちゃんの上級魔法一発でモンスターは全滅しちゃったよ。
大きなクモ達を殲滅した彼女は、いつもと変わらない笑顔に戻るとイオちゃんと子供達に話し掛ける。
「みんな!大丈夫だよね?ケガとかない?」
「えっ……ええっありがとうエレナさん。助かりました」
どうやらイオちゃんとエレナちゃん顔見知りらしい、イオちゃんが素直にお礼を言っている。
更に子供達がワラワラとエレナちゃんを取り囲む。
「エレナさんスゲェッ!」「それはそうよっ!エレナちゃんはこの島で1番の魔法の使い手なんだから!」「そうだよな!」「スゲェッ!スゲェよ!」
「フフッありがとう!みんな無事でほっとしたわ」
エレナちゃんは子供達のもの凄いマシンガントークにも笑顔で対応している、私はあれを受けた時は笑顔が引きつってしまったな。
「エレナさん、正直あのモンスターは私の魔法が通用しませんでした。魔法学園の教師が情けないですよね」
「だから前から言ってるでしょう?この島のモンスターは本当に魔法に強いんですから……」
「確かに、この島のモンスターの魔法耐性は異常ですよね。もしかしたら何か原因が……?」
ん?何やらイオちゃんが考え込んでしまったぞ?。
思わず私は隠れてる木の陰一歩前に出てしまった、するとそれをエレナちゃんに見つかった。
「ん?あっ!アオノさん、もしかして助けに来てくれたんですか?」
………マジかよ、エレナちゃん今後ろを一切見ないで私に勘づいたの?。
何かの武術の達人とか?美女にそんなオプションいらない派なのに。
当たり前だがイオちゃんにも見つかった、エレナちゃんと違い彼女には厳しい視線を向けられた。
さっきまでの笑顔が遠い……。
そしてイオちゃんからは中年への質問が飛んできた。
「貴方は昨日の……一体この場所に何のようですか?ここはモンスターも出る危険な場所なんですよ?」
そんな場所に子供達を連れて来てるイオちゃんが言うのは違う気がする、まぁ相手が美女なら黙って頭を下げるのが私だ。
「すみません、少しこの島の探索をしていまして、ここに来たのは偶然です」
「…………そうですか」
「イオさん?アオノさんはそんなに警戒する必要は無いと思うわよ?私は優しい人だと思うもの」
「…まぁっ何かあっても私の魔法で対応は出来ますしね……」
エレナちゃんのフォロー、しかしイオちゃんからは何やら不穏な言葉しか出て来ないぞ。
恐らく未だにイオちゃんにとって中年魔法使いはただの中年でおっさんな生物でしかないのだろう。
まぁ今回も特に活躍とか出来なかったから仕方ないけど。
そんな感じでおっさんの心にじんわ~りとダメージが残るイベントが起こっていると……。
タタタッと、誰かが走って来た。
恐らく村の人と思われる四十くらいか?おっさんの年齢とかよく分からん。
「たっ大変だ!村に……村にモンスターの群れが現れた!」
……………なる程、そう言う感じか。
どうやらバトルパートほまだまだ続く予感。
ピシッと空気が張り詰める、私は自分から声を上げる。
「エレナさん、イオさん、お二人は
「私は使えます!直ぐに村に向かうつもりです!」
「私も使えますが……この子達を置いて行くわけには……」
エレナちゃんは村に向かうつもりでイオちゃんは子供達が気掛かりな様だ。
「それならイオさんはこの場に残り子供達の護衛をしてもらって私とエレナさんは村に行くのはどうですか?」
「えっ?あっアオノさんっで名前はいいですか?貴方も村に行くつもり何ですか?」
あっまだイオちゃんは中年魔法使いをただの中年だと思っていたんだった。
そもそも自己紹介すらしてなかった事を思い出した。いい歳した社会人が自己紹介を忘れるとは情けない。
「イオさん、アオノさんは本当に魔法が使えるんですって。私も実際に目の前で見ましたよ?」
「私は何事も自分の目で見たことしか信じません」
そう言うのって公平でいいと私は思う、だが何時までもここでのんびりしている事は……。
「すみませんイオさん。今は一刻を争いますのでそれらについては後にして下さい、それと私の従者を一人此方に向かわせます。メイドなので一目で分かると思いますので彼女と共に子供達を頼みます」
イオちゃんは納得がいかないけど仕方ないって感じだろうか、エレナちゃんは既に魔法の詠唱的な事を開始している。
(リエリ、ユーリ。すみませんが少し話を良いですか?実は……)
そして私もゴーレムツインズに連絡を入れて子供達の護衛を頼む。
そしてユーリが来ることが決定する。なんかリエリは島の探索をしていたらしく村から遠いとのこと。
そしてそれぞれの担当を振り分けも終わり、私とエレナちゃんは瞬間移動の魔法でその場を後にした。
◇◇◇
私はリエリ、現在は島の探索をしています。
ご主人様が近々ダンジョンの探索に向かうとの事ですので、そのダンジョンまでの道のりの確認ですね。
ご主人様はあのガイドブックを持っているのでこれが必要かと言われるとアレですが……まぁご主人様に護衛が必要なのか、いよいよ怪しくなって来たので何かしていないと気がすまない私です。
やはり出来るゴーレムとしての働きをしなければ、この前のリヴァイアサンに対して私とユーリでは何も出来なかった事とを気にしたりなんかしていません。
後は昨日ご主人様に接触してきた獣人、あの男とその仲間達の拠点を把握して置くべきだと考えてそちらもついでに探している私です。
今の私はゴーレム・コアの状態で
そして探索をしています、すると複数の魔力を感知しました。
この世界の生物は多かれ少なかれ魔力を持っています、その量で相手の力量を測る術をご主人様も私達ゴーレムも扱えます。
その精度は魔法の腕に比例するので、ご主人様には及びませんが私もユーリも中々の魔力感知の能力があると自負しています。
その自信満々の魔力感知に反応するのはこの島の人々ではありません。この島の住人はその全ての人がやたらと魔力が高いのでこの程度の魔力の人は島の人々ではないですね。
……一応フォローをするならその魔力が少ない一団も一般的に魔法使いと呼ばれる人並み以上の魔力は持っているので、恐らく戦闘を生業にしている集団だと思われます。
この島の人々が異常に魔力が高いのでその戦闘集団が雑魚な感じの説明になってしまうのが可哀想に感じました。
私やユーリも殆ど当初の護衛としての仕事はあのご主人様ですので意味を成しません、むしろご主人様の規格外の魔法で異常に快適な旅……いやっ旅行ですかね、それを満喫してるのが今の私達です。
ご主人様は些末な雑用とかも自分で片付けてしまうので、自分から何か仕事を探しているのが現状です……いよいよ存在意義が揺らぎ始めているどこかのゴーレムです。
島の住民よりも明らかに弱い戦闘集団、護衛目的で生み出されながらも護衛対象のよりも明らかに弱い私達。
どこか親近感を覚えますね。
「………………確認しに行きますか」
私はその残念集団の確認をするために移動を開始します。
そして到着したのは島の村があるのとは反対側の森を越えた先の湾岸部です。
「……これは、まるで前線基地ですね」
そこには幾つものテントが張られてあり、視認は出来ませんが魔力を感じるので結界の類いも展開していますね。
そして船が何隻かとまっています、しかし…。
あの船、海上を移動する時に目立たない様に普通の船に見える様に魔法でカモフラージュしてありますが、あれは戦艦の類いですね。
リエリの魔法で一瞬で見抜けましたよフフン。
そういえばご主人様と私達がいるこの国、名前を確かパイルラ王国と言いましたか、この国は魔力で動く魔道戦艦を幾つも保持しているとか。
そしてご主人様の話ではあの獣人がいる組織は隠密部隊の者らしいと言っていました、そう言われると全身黒で統一された鎧やら戦装束を身につけていますね。
確証はありませんが、この連中がその獣人の男が所属する一団だと見て間違いないでしょう。
身のこなし一つとってもかなりの手練ればかりだと一目で分かります。明らかに訓練を受けた者です。
まぁご主人様にも私達にもとても敵いませんけどね、あくまでも一般人を例に挙げたらの話です。
ご主人様は言うまでもありませんが、私達だってリヴァイアサンの一部を吸収した事で更に戦闘力を上げました。今の私なら一撃ですね。
余裕ですよ余裕……。
……おっと折角発見したので更なる情報収集をするとしますか。ダンジョン探索は後回しです。
私は魔法で姿を消したまま侵入します。
「このラブーンって島のモンスターは本当に厄介だな」「ああっ魔法の類いが全く効かないからな。おかげで魔法職の連中はプライドがズタズタだとさ」「島のヤツらに協力させて何とかならないのか?」「昔、力ずくで島の住人に協力させようとして国の騎士団が返り討ちにされたんだよ」「そっそれ以降はその馬鹿な騎士団のせいで俺達隠密部隊がこうやって細々とダンジョンの調査とモンスターの調査をしてんのさ」「一体何の為にだよ」「それは隊長にでも聞けよ」「あの人に?怒らせたらヤバイから嫌だよ!」
……特に大した情報はありませんね、やはり部隊の頭を探すのが早いですね。
私はテントを抜けて停泊している船の方に向かいます、ある一定以上近づくとカモフラージュに使われている魔法は効果を失うのか私の視界には本来の厳つい戦艦の姿が現れました。
ご主人様が見たら、ファンタジー仕様の戦艦。とでも言うでしょうね。戦艦なのに要所に装飾や金属的な物体で補強された姿は、戦艦でありながらどこか幻想的な美しさも感じれるものです。
私はそんな船を一隻ずつその内部まで色々と調べ回りました、主砲や副砲とかありました。
あとは船員に心意看破の魔法を使い、役に立ちそうな情報をかき集めます。
するとこの船は船自体に魔法攻撃を行う機構が搭載されていたり、短い間なら空も飛べたりする戦艦だそうです。流石は魔道戦艦っと言うところですね。
ただし色々と多機能な代わりに戦艦自体の防御力が若干低く、打たれ弱い見たいですね。
戦艦に張ってある防御用の魔法を破られたら割と簡単に沈む様です。
そんな情報を集めながら、最後に私は1番大きな魔道戦艦に侵入します。
そこでも色々と調べていきます、そしてある部屋の一室に入ると……。
そこには真紅の鎧を着込んだ一人の男がたっていました。
オレンジの髪と黒い瞳でご主人様ならイケメンだと嫌な顔をするであろう整った目鼻立ち。
身長も高く百九十センチはあります、そして男ですが髪が長いですね。そして手にはこれまた赤い槍を持っています。
あの槍、恐らく属性持ちの武器ですね。
「…………ん?誰かいるのか?」
「…………ッ!?」
まさか、異空法衣の魔法を見抜かれた!?。
思わず硬直してしまう私です、まぁゴーレム・コアの状態ですから見た目に変化とかありませんけどね。
「……気のせいか」
………どうやら気付かれなかった様ですね。
しかしこの人間……人間?。
私はもう一度その男の顔を見ます、すると額に2本の角が生えている事に気付きました。
肌が人間と同じだから気付きませんでしたが、どうやらこの男は鬼人族の様ですね。
鬼人族は額に角を持っていて、この世界では亜人や異種族て呼ばれる人々です。
人間に近い見た目ですがその身体能力は人間どころか他の戦闘に特化した異種族すら超える程に高いと言われています。
そんなのまでいるとは、一体この島には何があると言うんですか?。
そんな事を考える私に………。
(リエリ、ユーリ。すみませんが少し話を良いですか?実は…)
私はご主人様の話を聞き、ユーリが子供達の方に向かうと言うので私はご主人様の方のサポートに向かいました。
この男がいる隠密部隊もこの島の秘密も、今は後回しです。
なんか色々と後回しにし過ぎたと思わないでもありません。
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