第19話『島のダンジョンとモンスター』
私は子供達が言っていた村長を探した、村長はまぁ普通にお爺さんであった。
話をするとそれなら村の外れに丁度いい広さの空き地があるとの事、そこになら好きに使っていいと言ってもらった。
後でゴーレムツインズには思念で伝えておこう、そして私はその空き地へと向かった。
そして歩いて数分程でその空き地に到着した。
早速魔法でこの島での拠点となる家でも作ろうかとしていた時である。
「おおーーいっ!」
「ん?私に何か用事ですか……?」
見ると男の獣人がこちらに向かって来ていた。
「おうっ俺はあの場にいたんだが、アンタの魔法、まさかこの島のモンスターも一発で首を落とすなんて大した魔法の腕前だと思ってな!」
野郎で歳も自分の近いのに誉められてもちょっとしか嬉しくないよ。
「そうですか?私などまだまだですよ。それにあの場にいた方の上級魔法も素晴らしかったですから」
「へへっそうか?ありがとよ……それで実は相談があってな……」
ヨイショからの相談って、ベタなコンボをかましてくる獣人である。
まぁ手助けくらいなら私も構わないけど。
「はいっ私に出来る事ならですが…」
「そう言ってもらえると助かる。実はアンタも見ただろうがこの島のモンスターはやたらと魔法に対して高い耐性能力があってだな、島の人間もその対処に難儀してるんだよ」
「……確かに、あの狼みたいなモンスターですが本来ならあれだけの魔法の直撃を受けて無傷なんてのはあり得ませんね」
「そこを理解してくれてるのならますます助かる、そうなんだよ、連中依然はあんなに魔法に強くなかったんだ。それがここ数年でいきなり……まるで何かによって強化でもされた様にな…」
「……何かに、ですか?」
「……ああっ実はこの島には、ダンジョンが在るんだよ」
それなら私もこの島に来る前から話には聞いていた、一応1回は行ってみようかなってくらいには考えていたけど……。
「そのダンジョンに、何かあるんですか?」
「いやっ………ないんだよ」
「…………は?」
思わず聞き返してしまった。え?何も問題はないの?どういう事だよ。
「あのダンジョンには本来ダンジョンには必ずいるダンジョンマスターがいないんだよ。それなのにダンジョンからはモンスターがずっと湧いていやがる、こんなのどう考えてもおかしいんだ!」
「……………」
ほほうっダンジョンマスター、それがいないと本来ならダンジョンでモンスターは湧かないのか。
全て初めて知った情報である。
しかしなんと言うか。本当にしてきたな……。
冒険の気配ってやつが。
そして話を詳しく聞いた。
何でもこの島にダンジョンが出来てから二十年程らしい、ダンジョンはダンジョンマスターと呼ばれる強力なモンスターが造り出すと言われているらしい、まぁ真偽は不明らしいけど。
そしてそのダンジョンも出来た当初は大騒ぎだったらしく国からも騎士団とかが派遣されて内部を隅々まで調べたがそのダンジョンマスターは居なかったらしいのだ。
「俺達島の人間には何をしているのか全然分からなかったが、少なくともダンジョンマスターを倒したなんて話はなかった…」
しかしモンスターは出てくる、本来ならダンジョンマスターがいないダンジョンはただの遺跡や洞窟でしかないから、モンスターの巣になる事はあってもモンスターが自然に湧くような事はない筈なのに、っと言う訳である。
そしてそのダンジョンから出てくるモンスターは、異常なまでに高い魔法耐性を持っているから魔法が得意な島の人間じゃダンジョンに入る何て自殺行為……っと言うかただの島の人々と言うモブの立ち位置な人々が上級魔法をブッ放つのも驚きだけどな。
あんなの普通じゃないからね、いくらファンタジーな世界って言っても。
まぁつまり、その騎士団がダンジョンで何か変な事をしてないか、本当にダンジョンマスターがいないのか、あの魔法が効かないらしいモンスターは何なのかを調べて欲しいと言う話である。
「頼む!この島の人間が使える魔法じゃ恐らく通用しない、昔はもう少し効いていた筈なんだがアイツらはどんどんその魔法耐性を強化されていってな、最早俺達では……」
「………………」
だったらどうにか出来るうちにどうにかしろよっと思わなくもないが……恐らく何か理由があるのか?。
流石にそれが何なのかまでは私には分からないが……。
ここは頷いておくか、どのみちダンジョンとか1度は行こうと決めてたし。
「分かりました、なら明日にでも向かいましょう」
「!たっ助かる、ありがとう」
獣人の男は頭を下げて直ぐにこの場を去ろうとする。
……っあそうだ。
「ああっそれと、私は青野と言います。貴方の名前は?」
「………マイクと言う、それじゃあ失礼するぜアオノ」
獣人は去っていった、なるほど、マイクねぇ…。
暫し考え込む私の元にまた新しい人が訪ねて来た。
「こんにちは!」
「エレナさん?」
それはなんとエレナちゃんである、女神様降臨である、野郎の獣人と言う誰得な存在によって汚された我が視界が浄化される様だ。
「村長から聞きましたよ?本当にこんな何もない空き地に野宿をするんですか?」
流石に野宿はするつもりはない、けど村長からしたらそう考えるのが普通だよな。
「いやっ野宿はしませんよ?一応魔法で生活するのに適した建物を一つ出そうと思いますが…」
「……?、建物を出す……ですか?」
「はいっどうせなら見ていきますか?」
「えっ本当ですか!是非見せて下さい」
美女にいい格好を見せたい男、それが私だ。
【我が力を持って、大地を操る。
これはそのまま大地を好き勝手出来る魔法である。この魔法一つでチョチョイッとすると…。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!。
一瞬で四角い岩のプレハブ小屋の完成だ。
見た目四角い岩だけど中は十分な広さの空洞となっていて入り口もある、外からの光を取り入れる窓口もあるぞ。
「まあっ!本当に一瞬で……凄いですね」
「そうでしょうか?かなり不格好な感じですけど…」
「普通魔法で人が住める場所を簡単に作るなんて早々出来ないと思いますよ?」
そうかな?。本当は私の魔法の中には私が想像した物なら家だろうが城だろうが大抵の物を無から生み出す様なふざけた効果の魔法もある……が。
まぁそれを使うとこの異世界生活が便利だけど大変味気ない物になりかねないので使わないようにしている私だ。
便利さだけを追求する様になったら人間碌な事にはならない。
やはり不十分や不自由を楽しむ余裕がないとな。
いい歳をしたおっさんが余裕もなく振る舞うのは本人も傍目に見る人にとっても気分が悪いものさ。
前の世界でのおっさんと呼ばれる中年群衆とは、大抵そんな扱いに甘んじているのが殆どさ、でなければ空気さんがウザ男扱いだな。
しかし今は中年の悲哀よりも美女との会話だ。
「……もしかしてアオノさんってとても凄い魔法使い様なんですか?」
「どうなんでしょうか……素直に話すと私にも分かりません」
この世界に来て一月も経っていないだろうか、まだまだ分からない事ばかりの私だ、流石に傲るには速すぎる。
「けどっ出来る事があるのなら、私はこの魔法を遠慮なく使って行こうと決めてますので」
「フフフッそうですか」
あっそうだ、これも聞いておくか。
「すみませんエレナさん。この村にマイクと言う獣人の、男性の方は今はどちらにいるか知っていますか?」
「マイクさんですか?確か今日は村の近くの森に他の村人数人と一緒に狩りに向かっている筈です。あっ用があるのなら夕方くらいには戻ると思いますけど……」
「…………………」
分かってたよ。
あのマイクって獣人。あれはこの島の人間じゃない、何で分かるかと言うと、私はあの男に心意看破の魔法を会ってから速攻で使ったからだ。
相手が女性ならプライバシーとかも気にするが、野郎相手にそんなの気にしない。
しかもこの島に来て数時間の人間にダンジョンがどうのとか色々吹き込んでくる手合だ、怪しさが半端じゃない。
どう考えても信用するのは危険だろう。
っと言う訳で私はあの男に魔法を使ってその背景を色々と確認した。
彼は本人が話した、国から派遣されダンジョンを調べた騎士団のそれも隠密部隊の人間だそうだ。流石に国の目的とかまで知ると色々怖い事になりかねないのでそれまで調べるのは自重した。
ちなみに彼には結構な人数の仲間がいて、島の端の方に島の人々にバレない様にキャンプとかしているらしい。
話した情報に嘘はない、ダンジョンを調べたのは元々ダンジョンが生まれるとそのダンジョンがある国は騎士団や兵士団を使ってその危険性を調べるのが、この世界の決まりらしい。
更にここのモンスターが全てそのダンジョンから出てくるのも地道な十数年の調査の結果らしく、そしてモンスターにろくに魔法が効かないのもマジらしい。
彼らの部隊もコテンパンにされる事度々だそうだ。
以上が心意看破の魔法によって得た彼の背景である。
それを軽くあしらった私に協力を頼みたい、しかし自分達は表に出られない部隊。そこであんな明け透けな話を持ち掛けて来たのだ。
私が動くのを期待してというよりも直ぐにじゃなくても良いので、ダンジョンに興味を持ってくれれば勝手に向かうだろうと言う考えだ。まぁ私は見た目完全に冒険者だからな。
冒険者ってわりと安い金で捨て駒にされたりする事があるらしい。注意しようっと……。
それとダンジョンを調べた二十年前からいる人は流石にいない、数年毎に団員は交代している模様だ。きっと自分達だけの船とかあるだろう。
騎士団か。私は美人な女騎士と言う存在の有無を是非とも知りたいです。
「あのどうかしたんですかアオノさん?」
「…いえっ何もありません下らない事を考えていただけですよ」
本当に下らない事を考えていてごめんなさい。
「…ああっそれよりも、実は明日っは流石にないですね。数日後に1度ダンジョンに向かおうと思うのですが…」
「ッ!?ア、アオノさん。この島のダンジョンのモンスターはっ実はかなり魔法に強くてですね…魔法で戦うと言うのなら危険ですよ?」
その辺りを素直に話してくれるエレナちゃんは本当に優しい女性だよ。中年ハートが射抜かれる。
「そこは、やれるだけやって見てから考えようかと思っているのですが…」
「………アオノさんは冒険者ですもんね。ただの村人である私がこれ以上言うのは間違いですよね、なら一つだけ。ちゃんと生きて帰って来てくださいね?」
「……………」
ただの村人何かじゃないよ。立派なメインヒロイン候補だよ、そして帰って来てくださいねって、最早奥さんのセリフですわ。
ありがとうございます。心が満たされました。
「もちろんですよ。冒険者は生きて帰って来るまでが冒険ですから」
まるで遠足かなにかのような物言いである。
私はダンジョン探索へのやる気がモリモリと湧いてきてしまう私だ。
そして時刻はそろそろ夜になるって時間帯だ、リエリとユーリも無事に帰還した。よかった。
何でもこの島の様子を二人は手分けして見て回ったらしい、ダンジョンの場所とモンスターがいたらそれの対処をと考えていたとか。
「しかしこの島はモンスターがかなり少ないと思われます」
(結局私達は1度もモンスターと遭遇する事はありませんでした)
ちなみにこのゴーレムツインズ、今はリエリがビー玉モード、ユーリがアレリアちゃんメイドと、出掛ける前と逆になっている。
何でも一時間毎に交代でメイドさんをやって、もう一方が影からサポートと言うツーマンセルで探索にあたっていたらしい。
「そして食料の確保は出来ました」
(これは内臓以外は美味しく食べられる筈です)
そしてユーリが鹿っぽい動物の死体を床におく。
合流した時にはある程度の処理が済んでいてビックリした、一体どこでそう言うの覚えてくるのか。
この島はモンスターは少ないけど動物はわりといたらしく、また狩りをするのもやり過ぎなければ問題ない事をこの村の村長にあった時に許しをもらっている。
これでおおよそこの島での生活の基盤が整って来たかな?。
「ご主人様、今日はこれを調理しようかと思いますが構いませんか?」
「分かりました、調理の際の水等は…」
(それなら私達で十分かと、ご主人様に付与された魔法も数多くありますから。それで問題なく調理出来ます)
「そうですか」
(……それと出来ればこの拠点に誰かが入ったり覗いたり出来ない様にして頂ければ私も人間の姿になり、より効率的に調理が出来るかと…)
「なら結界魔法と魔法による遠視等を阻害する魔法を使っておきましょう」
(「ありがとうございます」)
自分からも意見を言ってくれるのはとても助かる、私が気づける事なんて少ししかないからね。
こう言う関係って大事だよな。
そして今晩はメイド達(アレリアちゃんとマーブルちゃんにそれぞれ変身)による手料理が振る舞われて最高に幸せでしたな。
そうして私達の島での1日は終わった。
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