第15話『悟りを得た男、青野』
真のボスであるアレリアちゃんとの決戦が始まった。
挑むパーティーメンバーは私と領主パパのツーマンセルである。
まずは領主パパ、マレクセイからの援護攻撃。
「アレリアよ。私もゴードンも魔法については多少の心得はある、本当に実力のない魔法使いの幻惑魔法なら一目で見抜く自信はあるぞ?それにこのアオノは私の客人だ。失礼は許さ……」
「父上!父上がそこまで他者を持ち上げる事などまず有り得なかった話です。私から見れば今の父上は正気を怪しく思われても仕方ないのではないでしょうか!?」
マレクセイのフォロー
アレリアちゃんには効果が無いようだ。
「……アッアレリア!?私が正気かだと!?」
「そうです、少なくとも私は王立の魔法学園で学びましたが、何人もの人間をまとめて何度も転移して遠く離れた神殿の中のサハギン全てに幻術をかけ、単身でリヴァイアサンを封じる程の大魔法を使いそれでも平然としている?そんなのが有り得るとでも?」
「ッ!………そっそれは、しかし現にここにいるアオノは……」
アレリアの口撃にマレクセイは圧されている!。
青野は居心地がどんどん悪くなっていく……。
「そんな真似をすれば人間が持てる魔力では直ぐに干からびて死んでしまいます。リヴァイアサンを無力化する魔法など個人が発動出来る物ではそもそもありません。違いますか?」
「………だっだからな?実際に私やゴードンの目の前でそのリヴァイアサンを解体したりと……」
「ですからそれら全てがただの魔法による幻、或いはそれだけの力があり、サハギンとも会話をしていたとか。ならあのサハギン達もこの男の手引きと言う可能性が考えられませんか?」
……マジかよ。遂にサハギン達も私のせいって話が出てきたぞ?。
けどっサハギンユーリとは普通に会話をしていたし、実際そんな風に疑わられるかもとは考えてたんだよな。
あっちなみにサハギンユーリは目的を無事に果たしたので故郷に帰ったと話してあります。
「それにそのアオノ?と言う変な名前に冴えな……ええっと、お前は亜人?まさかゴブリンやリザードマンと何かのハーフとかか?」
「…………………」
アレリアの口撃だ。
青野は大ダメージを受けた。
一撃でヒットポイントの半分は持っていかれたな。普通に死ねる。
「アレリア!?そんな失礼な言葉を……」
「父上?私達は貴族、この男も貴族だとでも?身に着ている物も平民と大差なく何よりそう言った階級の人間が持つ品格を持ち得ませんが?」
「…………………」
アレリアの痛恨の一撃。
青野のヒットポイントは尽きてしまった。
ゲームオーバーである。ゲームオーバーである。
ご苦労様でした………てかっ。
「あっアオノ!すっすす、すまない!どうか、どうか怒りをおさめてはくれないか!?」
「ッ!…………ちっ父上!?」
アレリアちゃんの言葉に唖然としていたら領主パパマレクセイがいきなり土下座してしまったぞ。
現場はまさにカオスである、どうすんのこれっまさか私が収拾するのか?。
「………落ち着いてくださいマレクセイ様、私が怒る理由など何もありませんから……」
本音は流石にアレリアちゃんにも言いたい事はあるよ?当たり前じゃん。
しかしマレクセイと言う領主が実の娘の前で土下座までしてみせた、まさかここで魔法を暴力という背景に使ってまで怒るとか出来ないよ。
いっそ彼もそれに同調とかしてくれたら、こんな城ごと木っ端微塵にしてやるのに……。
いやっそんな真似を止めてほしいからこその土下座なんだろう。
正直アレリアちゃんとのエンカウントはまだ早かったのだ。もっと私が活躍するのを直接目で見てもらってもらえばきっとこの評価は覆る。
そうだきっと彼女は自身の目で見たことしか信じない娘なんだろう、ならばこれからの私の魔法無双によって全てが変わる筈だ。
むしろ底辺だったからこそ評価のうなぎ登りには凄まじいインパクトが……。
「父上!?貴様っ!まさか隷属の魔法でも使ったのか!?」
「なっ!アレリアよ!本当に止めてくれないか!?下手をすればこの国が……」
「……国にも何もしませんから」
ここは引き上げるとしよう、三人それぞれが頭を冷やす時間が必要だ。
大金の件もあるし後日必ず顔を会わせる事になるだろうし、ここはエスケープ。
……これ以上ここにいたら、心がぶっ殺されてしまうからね。
「……マレクセイ様、申し訳ありませんがあの話はまた日を改めましょう。失礼しますね」
貴族親子はまだそれぞれ何か言っていたが構わず私は転移の魔法を発動させた。
◇◇◇
そして後日、多分だけど向こうからそのうちアプローチとかあるだろうと考えた私はその間は冒険者として冒険者ギルドに顔でも出しておくかと、私は冒険者ギルドに訪れていた。
別にクエストを受けるつもりとか毛頭ありません、だって近々大金が入ってくる予定だからな。
何かすごい大金って話だし、領主パパに握られる分とホームレスな人々への生活支援へと充てる分を差し引いたとしても私一人が生活するには十分過ぎる大金が入ってくる。
……っと思う。取らぬ狸のなんとやらにならないといいんだけどな。
っと今はそれよりもシエラちゃんに挨拶でもするか。
……別にアレリアちゃんの当たりが予想以上に苛烈だったからビビってシエラちゃんをキープしようって魂胆ではないぞ。本当だぞ。
「……ん?受付にいない?」
いやっギルドの奥の方にいる。何やら誰かと話をしていた、相変わらず素晴らしい笑顔で可愛いなシエラちゃん。
「あの茶髪は……」
そこで気づいた、シエラちゃんが話してる相手はあの茶髪のイケメンである。相変わらずのイケメンスマイルでいけすかないったらないな。
あのイケメン、失踪事件とかほっぽり出してギルドの受付嬢と仲良くお喋りしてるとか。
領主パパにチクって打ち首獄門にしてもらおうかな……。
しかしシエラちゃんも何故にあんなイケメンとの会話であんなに楽しそうにしてるのだろうか?イケメンだからか?。
…………いやいやいやっあのシエラちゃんに限ってそんな……。
すると冒険者ギルドに用意されている休憩所、まぁテーブルと椅子があるだけのものだが。
そこで談笑している冒険者の男達二人が何やら気になる会話をしている事に気づいた。
「おいおいっまたシエラちゃんと話してるぜ?あのイケメンギルドマスター様がよ」
……マジで?あの茶髪がギルドマスターなのかよ。ワカスギルだろ、イケメン過ぎるだろ?。
「アイツ、ギルドマスターの権力でここの受付嬢をみんな美人で固めたんだよ、すげぇよな」
「……男としては理解は出来る。けど殺されてしまえともおもっちまうな」
え?じゃあここの受付嬢がみんな可愛いのは彼のお陰なのか?。
なっならまぁシエラちゃんと会話をするくらいは、我慢してや。
「……けどあの茶髪ギルマスな、採用した受付全員と関係を持っているんだぜ?」
「……………は?」
………………………ハァッ!?。
「それは、本当なのか?……」
「ああっ見ろよ、シエラちゃんの顔、あれは惚れてる女の顔だ。そしてその回りの受付嬢達の隠しきれない嫉妬の表情をっ!」
「……あのギルマスを狩るクエストは出ないのか?」
そんなのあったら私が絶対に受けるぞ。
多数の女性に手を出してそれが黙認されるなんて殆どマンガやラノベの主人公じゃないか、そんなヤツは地獄に落としてやる。
………いやっまっまだだ!。
私にはアレリアちゃんがいる、今はまだ私の立場が胡散臭すぎる冴えないおっさんだからこその塩対応で誤解してしまいそうになるけど、絶対に性根は真っ直ぐで優しい娘なんだよ。
だって……だって物凄い美人なんだから!。
「……あっ後な、何か領主様の娘にまで手を出してるらしいぜ?」
「そっそれはいくら何でもあり得なくないか?領主のマレクセイ様と言えば1人娘を溺愛してる親バカなんて噂が絶えない人だろう?」
「……それが何かの事件を切っ掛けに出逢ってな?あのイケメンギルマスが口先だけでちょちょ~いっていけたんだとさ。本人が酒に酔って自慢気に言いふらしてたぜ?俺はそれを聞いただけさ……」
「………おいおいっマジか……」
「…………………………………………………」
もうっ……………こんな糞冒険者ギルドで働きたくない。
「……お金を貰ったら、もうこんな町出ようかな………うんっ」
私は1人無言で宿屋に帰還した。
そして宿屋にて、私は個室で魔法陣を宙に出現させていた。
魔法陣は赤い光を発して、煌々と輝いている。
……フフフフフッ完成だよ。
私が何もせずに全て諦めて引き下がるとでも?そんな負け犬はリベロで死んだわ!。
あの茶髪イケメンめ、ギルマスめ。あのモテモテリア充には一発魔法をかまさないと旅に出ることも出来ないんだ!。
完全なる逆恨みだが知ったことか、私はあのイケメンに地獄を見せてやると決めたのだ。
って訳で………。
宿屋に戻った私は3分程の時間をかけて……。
この世界には、今まで全く存在していなかった魔法を1から創ったのだ!。
魔法があるこの世界でも1から全く新しい魔法を創るのは………とにかく大変で、とにかくしんどくて、とにかく面倒くさい物らしいが、私はあのイケメンへの怒りをパワーに変えて…。
カップラーメンが出来る程度の短時間で完成させたよ!。
その魔法の名は……
この世に蔓延る、とある一部の男性の生きる全ての気力を奪い去る。禁忌の極大魔法である。
「……フフッこれをあの茶髪にぶち込めば、ヤツは未来永劫草だけを食って生きる。完全草食系男子に強制ジョブチェンジだ……」
(リエリ、ご主人様から凄まじい怒りの思念を感じます!)
(ええっ!ここまでの怒りをご主人様が!これはこの町が火の海になるかもしれませんね……)
………しかし実際に効果の程を試して見なくてはならない、だってこの魔法は私の完全オリジナル。その効果の程はインストールされた知識にもないのだ。
あくまでも完成していれば、この魔法は掛けた相手の息子を永遠に半死状態にする筈なんだが。
やはりここは私自身を被験者にするしかないか?しかし下手をすれば私が一生不能になってしまうからな……。
「……いやっいける。魔法に効果時間を設定しその時間が経過すれば魔法が消える様にすればいい」
私は宙に出現している魔法陣、マンガやゲームでも幾何学模様みたいなのが描かれているが。
この世界の魔法陣の模様、あのマンガとかでよくある魔法陣に刻まれた文字は
そしてその魔法文字をいじくると魔法の効果が変わったりもするし、その魔法文字を新しい組み合わせで組み上げると新しい魔法を生み出せるのだ。
………まぁそれがほぼ不可能な程に高難易度らしいのだが、私には出来たのでやっただけである。
そして再びその魔法文字を、意識を集中させて書き換える………よしっこれで効果時間が一応1時間くらいで設定出来た。
少し怖いが、魔法の効果も安全性も私自身が納得出来る物でなくてはな、早速発動する。
【世界に蔓延る悪鬼魔獣を等しく滅し封じよ。
そして赤色の魔法陣からの光が、私には降り注いだ!。
……………。
………………………。
………………………………………。
「……………………………………………はぁっ」
一体何を………私はアホな事をしているのだろうか、他人を不能にする魔法とかっ誰の為の魔法だ?非モテのリア充への嫉妬から生まれた嫉妬魔法じゃないか。
バカらしい。ああバカらしいな。
さっきまで私の心を支配していた諸々の憑き物が全て落ちてしまった様な圧倒的な解放感が、私の心を満たしている。
まるで悟りの境地にたったような心境である。
別にあの茶髪のギルドマスターの人生は彼自身の物だ、何が起ころうと彼自身の責任であるからして、横から私がシャシャリ出てモテ過ぎてるから魔法で下半身の息子を殺すとか、意味が分からない。
もう中年だ中高年だ言われる歳になって、何を考えてるんだ?さっきまでの私は……。
そもそもだが、シエラと彼の関係は普通に考えて私がナトリスに来る前からの物であろう、それをただ知らなかっただけの私がその事実を知って、さらに他の受付嬢までお手つきだと言う話を聞いて勝手に嫉妬に狂っているだけ。
更にアレリアにいたっては、普通に……どう考えてもあれからどうすれば両思いになれると言うのだろうかって話である……完全に現実から目をそらしている童貞の思考だ。
それにアレリアのあの敵意にも似た怒り、あれはもしかしたらこの失踪事件を理由に茶髪のギルドマスターとの交流を重ねていたものを邪魔されたところから来ている可能性も高い、なら私がどんな努力をしても、このナトリスに幾ら留まったところで全ては無駄な徒労に終わる可能性が高いのだ。
女性の感情からくる問題は理不尽であり、そもそもの解決などその怒りの対象が消えて無くなるまでその攻撃性を緩めないのが女性と言う生き物なんだから。
恐ろしいと言うべきか、何と言うべきか。
まぁどっちでもいいけどな。
……とりあえず、ホームレスの人達への支援と路銀の確保が終わったらさっさとこの町から出て行くのが正解だろう。
マレクセイがいくら言っても全く聞く耳を持たなかったアレリアだ、あまりこの町に長居すれば貴族の権力やコネで私を物理的に…っと言う話しにもなりかねないからな。
そうなればマレクセイには悪いが、私も加減なく魔法で答えるだろう。
………これ以上あの女性達について考えるのは心身共に良くないな。
私が気晴らしに散歩にでも行くかっと考えていた時。
コンコン。
「どちら様ですか?」
まっ普通に考えれば訪ねて来るのは1人である。
私の了解と共に扉が開いた。
「失礼する、ここにアオノと言う男がいないか?」
やはりな、マレクセイが訪れてきた。
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