第13話『ボス戦』

転移の魔法で例の神殿に戻った。


するとそこにいたのは紫色の鱗を持った巨大なヘビ見たいなヤツだった。なんか頭とかがトゲトゲしていてドラゴン要素も感じるデザインだ。


デカイ、本当にデカイぞ。


軽く全長二百メートル以上はあるだろう、手足はないがブレスとか吐いてきそうですな。


ちなみに神殿は召喚された巨漢の持ち主によって粉々である。速攻で撤収しといてよかった。


私にくっついてきたユーリ(既にビー玉モードに戻ってる)が解説をする。


(ご主人様、あれはリヴァイアサンです。大陸から離れた外海に生息する海竜の類いで、恐らく人語を解するだけの知能があると思われます)


リヴァイアサン?名前だけでもゲーム好きな私にはかなりの強敵である事が直ぐに分かる名前だ。


「………人語を?それなら交渉とかは出来ますか?」


(……それは無理かと)


するとそのリヴァイアサンの近くに魔法陣が現れた。

黄色、赤色、緑色、青色の四種類の魔法陣がリヴァイアサンを囲う様に展開する。


「……四重呪文撃クアトロスペル・ストライク


見ると何故か女山賊の姿のリエリがデカイ魔法を発動させたのが確認出来た。


四個の魔法からはそれぞれ、黄色からは雷が、赤色からは爆炎が、緑色からは爆風が、青色からは氷嵐が魔法陣から大噴出。


リヴァイアサンは四種類の大魔法を同時に受ける。


ボゴォオオオオオオオンッ!。


大爆発が起こった、巻き起こる噴煙が視界を奪う。


これはやったか!?………とかフラグを立てると……。


「……フハハハッ!竜の鱗に人の魔法が効くと思うのか?愚かな!」


何やら重低音な声が響く。煙の向こうから巨大な鞭……っいや尾っぽが振るわれた。


リエリはそれを危うい所で回避する、しかしビッグサイズのリヴァイアサンテイルは干上がった湖の底の地面を一撃で粉々に砕く。


恐ろしい威力だ、あんなのでぶっ叩かれたら中年の脂身ボディなんて消し飛んでしまうな。


……っあ魔法鎧マジック・メイルの魔法が発動してるからいけるか?。


本当にこの魔法鎧の魔法って異世界に来てから最初に使ってからずっと発動しっぱなしなんだよな、効果時間とかってあるのか?。


って今はそんな事を考えてる暇はなかった!。


私は急いでリエリのヘルプに入り、リヴァイアサンとやらと相対する。


「……すみませんがそこまでにしてもらえませんか?」


「……ん?他にも人間がいたか」


「私達は争いに来たのではありません、出来れば穏便に」


「我をここに召喚した者の意思は人間の蹂躙だ!我はその意思に応え、この地の人間を皆殺しにするのが仕事だ!失せろ!」


交渉も何も、取りつくしまもない。リヴァイアサンからは返事代わりにブレスをかましてきやがった。


ユーリがマーブルちゃん(ウェイトレス仕様)に変身して魔法を発動する。


魔防壁マジック・ウォール!」


マーブルユーリの防御魔法が私と彼女の目の前に展開する、半透明の壁が現れた。


ブレス直撃。


ドッガァアアアアアアアアアアアアアンッ!。


………核爆発かよ。


「……凄まじい轟音ですね」


「ご主人様のなら音がうるさいだけならなんの障害もないかと…」


「………………」


一体私のこの転生した身体は、何をされたんだ。

怖いから聞かないけどさ……。


「チッ!人間ごときが我がブレスを防ぐか、身のほど弁えて…」


「よそ見をしている貴様が言うな!雷撃槍サンダージャベリン!」


「……効かんわ!」


ズッガァアアンッ!。


リエリが私が付与した魔法で応戦するが、悲しいかな全く効いてない。


「……魔法が効かないと言うのは本当何ですか?」


「悔しいですが、今のユーリとリエリの魔法ではダメージを与える事は出来ないかと……」


……なるほど、ゴーレムツインズの魔法ならっか……。


「じゃあリエリは私が魔法を使うまでの時間を稼ぐ為に?」


「……いえっあれは単にバカにされて意地になっているだけですね」


「……………」


リエリって負けず嫌いなんだな、少し可愛いじゃないの。


「……なら私が魔法で攻撃します、ここが湖の底ので助かりましたね。場所が町の中なら倒したとしても被害が大変な事になっていましたよ」


倒せるのか正直分かんないけどな。


「……しかしリヴァイアサンですか。普段は外海と言う人類の生活圏の外に生息する存在ですから、その素材を金に変えれば一生金に困る事はないのに……残念です。私達にヤツを生け捕りする力があれば……」


「……………」


なるほどなぁ~言われて見れば確かに、このバカでかいウミヘビはリヴァイアサンと呼ばれる海のモンスターの代表格見たいなヤツだ。


それにこれだけ厄介な相手なら倒してお金に変えれば大金になるのも納得出来る。


何しろここはゲームみたいとかファンタジーみたいな、で定評がある異世界だ、モンスター素材も買い取りはお手のもの。


モンスター退治はしない?そんな過去の私はリベロに捨ててきたわ。


「……1つ私に考えがあります。ここは生け捕りを目指します」


「………分かりました」


私は飛行フライトの魔法で空中を翔る。

物凄いスピードで接近する私にビッグウミヘビも気づいた様だ。


「…!人間風情がたかが2人で何が出来る!」


「ご主人様!」


「リエリ、私がこのウミヘビを相手にします、貴女は離れて下さい!」


「ッ!……分かりました」


一瞬申し訳なさそうにするリエリ、姿は女山賊だけどこちらは根が真面目だからな。


なんかこっちまで申し訳ない気分だ。


そして対照的に向こうのリヴァイアサンとやらは激おこである。


「うっウミヘビだとっ!?この我を、人間ごときちっぽけな虫けらがバカにするだと!?」


「人間が小さいと言うよりそちらが無駄に大きいだけですよ」


「ふざけるな、虫けらがァアアアアアッ!」


リヴァイアサンの咆哮である。

まぁ魔法で守りを固めている私には何の影響もないけどな。


ちなみにリエリとユーリは私の後ろに来たので魔法鎧の範囲を少し広げて彼女達も守っているから多分平気だろう。


さてと、それでは……。


「すみませんが、これで終わらせますね」


魔法職は一撃で決めるのが使命なんだよ。ネトゲではね。


【魔法の鎖よ、我が敵の身体の自由を奪え。鎖縛封チェイン・バインド


魔法が発動する、無数の魔法陣がリヴァイアサンの回りに出現した。


「……これは!」


「はあっ!」


意味もないが気合いを込めて唸る。


現れた魔法陣からいつぞやの虎のモンスターの時とは出てきた魔法の鎖の大きさが違った。


デカイな、バスくらいの太さはある鎖でしかも長い。そんなのが無数の魔法陣からいっぱい伸びているぞ。


恐らくモンスターによってその魔法の規模が自動で変わるんだろうな。


その辺りの自動変更がある魔法って便利。


ジャラジャラと無数の鎖が宙に踊る、その全てがリヴァイアサンに向かってミサイルよろしくまっしぐらだ。


「こんなものでこの我が封じられるとでも……くっ!……こ、このっ!……」


何かエラソーな事を言いながら簡単に拿捕されたぞこのウミヘビ。


「リヴァイアサンはあの巨体ですし、そもそも水棲生物ですから水がないこの場所では分が悪かったのかもしれません」


「……それは確かに、ありえますね」


リエリからの言葉で案外向こうも不利だった事を知った私だ。


見ると魔法の鎖は見事にリヴァイアサンを捕らえてギッチギチ、その巨体を空中に吊し上げている。


「……くっ!おっおのれぇー!人間の魔法がこれほど強力だと言うのか!?」


……なんかお喋りしてたら決着がついていた。


何故か悪い気がしてしまうな、ゴメンね。


「………取り敢えず、帰りますか」


「……流石はご主人様です」


「我々が不甲斐ないばかり、ご主人様の手をわずらわせてしまいました。申し訳ございません」


「いやいやっあの怪物を相手に無茶をしなかったリエリは賢いですよ、私の魔法だって通用したから良かっただけで、駄目なら転移で逃げる事しか出来ませんでしたから」


……まぁ保持してる魔力の量的に私の魔法ならいけるかぁ~とは思っていたけどな。

ゴーレムへのフォローも大切だよな。


「……それじゃあ戻りますか」


「……え?このまま持って行くんですか?」


「リエリ、それがご主人様の意思よ」


そして私は転移の魔法を発動する。


こんな感じで無事にボス戦は終了したのだ。



そして領主パパ達と別れた場所に戻ると、領主パパ以外の人はみんないなかった。


きっと人を避難させたんだな、仕事をしてくれて何よりである。


「……無事に召喚されたモンスターを無力化しました」


「むっ……無力化?まさかそのリヴァイアサンが、そうなのか?」


「はいっ今はまだ生きていますね」


領主パパも上のリヴァイアサンを見つめて唖然って感じ。


そりゃあそうだわな、私もこんなのが空を浮いていたらパニックになる自信があるぞ。


「そっそれで、この怪物をどうすると言うのだ?」


「はいっそれで1つ伺いたいのですが……」


そこで私はリヴァイアサンの素材について何かしらその価値に詳しい知識はないかと尋ねた。


すると領主パパがかなり詳しく知っていた、なんでも彼は元々モンスターへの知識を習う学問に傾倒していたらしく、その知識はかなりのものだとか。


おかげでリヴァイアサンの素材に対する世間一般的な価値を知ることが出来た。


曰く、その価値はドラゴンに匹敵する。


曰く、その鱗から肉、果ては血液まで金に変わり、一頭のリヴァイアサンで金貨の山が出来るとか。


「……して、そのリヴァイアサンをおぬしはどうすると言うのだ?」


「恥ずかしい話ですが、これを金に変えるつてなど私にはありません。そこでマレクセイ様にそれをお願い出来ればと……」


「ほうっ……まぁ娘を助けられたのはおぬしのお陰だ、それにリヴァイアサンなどが万が一暴れられたらナトリスの港町は崩壊していただろうからな」


「ありがとうございます。それとそれに伴って発生した利益ですが……」


ここでさっき私が思いついた事をお願いする。

それは……あの港町のホームレスについてだ。


「出来ればその一部でナトリスにいるホームレスっいえ浮浪者への支援をお願いしたいんです」


大金は用意出来る、そしてナトリスの町を取り仕切る偉い人が目の前にいるのなら案外行けそうじゃないかと、いつかの妄想を実行に移す。


「……ふっ浮浪者?ここで何故そんな連中が出てくるのだ?」


「ナトリスは素晴らしい町です、しかし多くの人が出入りする港町なのに彼等の様な人々が居てはナトリスへの心情にも影響があるかと……」


「…………まさか、浮浪者達を排除しろと言うのか?これはその手付金だとでも……」


「そんな愚かな真似を願うなら大金など私は必要としませんよ?」


こちらは普通にお金を渡してあの人達への支援をしてほしいって言ってんだろ。


変に勘ぐってくるよな領主パパ。


「私が願うのはあの人々がある程度の生活が出来て、出来れば手に職をつけるまでの間の衣食住などの支援です。お金だけでは解決するのも難しいのは百も承知ですが、何卒お願い出来ますか?」


「……それをして貴殿に何の得があるのだ?」


そんなん何もないよ。ただこの町でご飯を食べるって時に町の隅にホームレスがいるのが嫌なだけだよ。


異世界に来てまで前の世界と被る部分とか見たくないじゃん、理由なんてそんなもんである。


「……私は商人ではないので、特に利益や損得勘定でしているわけではありませんよ」


「……………それはいくら何でも」


領主パパ的に納得出来る答えではなかった様だ。

けどっ本当に何もないんだけど……。


「それでしたら……」


「マレクセイ様、拐われた娘達の避難とアレリアお嬢様を屋敷に運んで……ッ!」


「……お迎えの様ですよ?マレクセイ様…」


タイミング的に悪くない的にお付きのジーさんが現れた。何か瞬間移動見たいに現れたぞこのジーさん。


けど魔法ではない、まるでマンガの中の忍者みたいな速さで移動してきたのだ。

スゲェ、ジーさんスゲェ。


「……分かった、アオノよ、話の続きは私の屋敷で良いか?馬車の用意をするので暫し待たれよ」


「……分かりました」


「………」


マジかよ、いきなりお呼ばれか…。

けど結果的にナトリスも助けた訳だし口封じとかで消されたりはしないだろう。


その時は、私は旅する根なし草だからまぁ……。

それなりの対処をするだけである。


あっそれと……。


「すみません、このリヴァイアサンですが。流石に町の近くまで運ぶと目立ちますよね?魔法で見えなくしておきますね」


「ぐぅっ………き、きさ…………っ!」


異空法衣の魔法を発動、ついでにウミヘビが喋らなくなる様に魔法で処置する。


「……本当にリヴァイアサンが消えたな」


「…………そうですなぁ……」


「姿が見えなくなっただけですが、後は音を出さない様になる魔法を使いましたからナトリスの町の人達もパニックにはならないかと」


そして領主パパが言う馬車が用意されたら貴族様の屋敷に出発だな。











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