第4話『異世界での目的』

事前のクエストは受けておいたのでそのまま冒険者ギルドを後にする。


実は私は冒険者になってから採集クエストしか受けていない。


だってモンスターとやり合うのはいまだに怖いからだ、戦えば多分勝てるんだろうけど。やはり命懸けだから慎重にもなるよ、人間だもん。


ラノベでもよくある採集専門の冒険者である。


もちろん冒険者になれたから路銀を貯めたら旅とかしたいなっとかおっさんながらに考えているわけなんだけどな。


そして1週間休まず冒険者としてクエストボードに出されるクエストの内容を調べて見たりもした。


その結果としてやはり採集クエストくらいが私の身の丈に合っていると結論付けた次第である。

一応どんなもんかと依頼内容を見たものは……。


モンスターの討伐。

これはまぁゲームとかなら良いんだけどな、やはりリアルだと躊躇してしまうよな。


町の清掃。

これは最悪だった。これって町のゴミ拾いとかじゃなくて下水回りのドブさらいだったからな、クエストの内容をよく確認しといてよかったよ。お陰で受けないですんだ。


行商の護衛。

これはどこか別の町に行くとき受けるのはアリだと思うが、雇ってくれる商人次第じゃあかなり横暴な事を言ってくる手合もいるらしい。


ダンジョン探索。

やはりと言うべきかファンタジーな世界ならダンジョンくらいあるかもと期待していた私だ。

この類いのクエストはダンジョンにある何かしらを取ってきてって依頼が多いらしい。

そしてダンジョンには罠とかも普通にあるらしい、流石に今の私には荷が重いだろう。


採集依頼。

そして採集クエストである、もちろん内容は薬草やら毒消し草とかアイテムの材料を集めて来て見たいなヤツである。


他にも色々とあるが基本的にこの四種類が基本のクエストである。

これらのクエストの中から冒険者は自分が受けるクエストを選び冒険者ギルドで手続きと斡旋をしてもらうのだ。


っと言う訳で手続きを済ませた私はそのまま町を出る。


「………よしっここならいいか」


場所はリベロの町からでて東、私が最初に異世界の地に降り立った場所である。

見た目も普通の森だし、他にもある探索出来る場所よりもモンスターとの遭遇率が何故かかなり低いのだ。


そんな場所に来て人気がないことを確認する。


そしてポケットから二個のビー玉を取り出す。


ビー玉は独りでに宙に浮き、思念で私に語りかけてきた。


(ご主人様、お早うございます)


(お早うございます)


「お早うございます、それじゃあ今日も採集クエストを受けましたから一緒に探しますか」


と言って私は周囲の警戒をビー玉状態のユーリとリエリに任せて、ガイドブックを開いた。


本来採集クエストはそこまで儲かるクエストではない、例えば薬草を大きな袋に両手で抱えるくらい詰め込んでも銀貨五枚で五千円くらいにしかならない。


そんな量を集めるのに一日以上は掛かるのにな、薬草が自生する場所を歩き回る事を考えるとわりに合わなすぎる。


採集クエストで宿代や食事代、そして今後の路銀と為の貯金とかするにはコツがある。


要は価値のある物を採集するって事だ、薬草なら両手で抱えるくらいの量でも全くお金にならないが、一輪で金貨に化けるお花なんてのもあるって話だ。


冒険者となった私が主に狙うのはそんな希少価値が高い物である。

しかしこの世界、そして冒険者としても何もかもが勝手すら分からない初心者だ。


本来ならプロの冒険者達が採集するのも苦労する物をただのオッサンである私がゲットするのは難しい。


しかし、そこで活躍するのがこのガイドブックである。


これには周囲の地図と現れるモンスター、さらに薬草見たいな物でもこの地図の範囲ならそれらについての情報と共に自生する場所に赤色の円で記されているんだ。


ちなみに薬草なんて名前の野草はないので注意が必要である。大抵カタカナな名前の後に草ってつく実にファンタジーっぽい感じの命名がされていたよ。


お陰で私は下手に探し回らなくていいしその手の情報を集めるのに手間もお金も掛からないと言う感じで、とてもチートみたいだ……本当に楽をさせてもらっていてすいません。


「……受けた採集クエストはマクマ草と日輪花を採用するのが仕事です、ある場所はこのガイドブックで分かりますし行くのは私の魔法で何とかなるので問題ないでしょう」


((分かりました))


このガイドブックで場所がわかっても歩いて行ける場所にはそんなに珍しい物はない、そこで頼りになるのが私の魔法って訳だ。


私は心の中で呪文を唱える。


【我に姿を隠し、万物を透過する衣を。異空法衣インビジブル


【我に天空を翔る不可視の翼を。飛行フライト


飛行の魔法はそのまんま空を飛ぶと言う魔法だ、魔法がある世界に来た時から絶対に物にしたいと考えていた私だ。


空を身一つで飛ぶってマジで異世界ロマンだよな。


もう一つの魔法、異空法衣は色々と厨二な説明とかあるが、それはとばして説明すると、この魔法は発動した本人や任意の人数を回りから見えなくしたり壁を通り抜けたりする事が出来る様になる魔法をかける。


しかも物理的な攻撃も全てすり抜けると言う実にチートな魔法なのである。


そんな二つの魔法のコンボによって私は不可視の飛翔体となった、空が飛べれば大抵の場所には行けるし姿を見られないので他の冒険者に見つかって自分が採用をする場所を見られる心配もない。


準備完了、出発だ。


◇◇◇


場所はガイドブックによると森の南側の方にある高さ二十メートル程の絶壁である。


私達は飛行しながらその岩壁に訪れた。


「ガイドブックによるとこの岩壁の隙間に日輪花と呼ばれる太陽見たいな花弁の花があるそうです、探してくれますか?」


………これひまわりじゃね?。


((分かりました))


私もゴーレム達も空を浮きながら壁に張り付く様にして隙間を探す。


しかしこんな所に咲くとか、人間に取られまいと言う意思を感じる。或いは取りやすい場所は採集をする冒険者によってその殆どを取り尽くされたのかもしれない。


この世界じゃまだ自然の保護なんて思想は無さそうだしな。


「……やはり、素人には難しいか?」


見つからない。それも仕方がないけどな、だってこの高い壁みたいなヤツは横幅が十数キロはあるなが~い壁である。


魔法がなかったらこの岩壁を見ただけでギブアップしていたな。


………マジで見つからないな。


もういいや、魔法で解決しよう。

中年は採集クエストとかさっさと終わらせたいのである。


【我が求める物を見つけよ。物体探査サーチ


「………よしっあった」


私が使ったのは文字通りある一定の範囲内にある探し物を見つける魔法だ、使うとどの辺りにあるのか、頭の中にその場所が浮かびその場所の方角が大まかに分かると言う魔法である。


ざっくりしてるが何も情報が無いよりは遥かにマシなんだ。


私はその場所に向かって飛んでいった。


そして魔法で確認した場所には岩の隙間があったので覗いて見る。


「………!」


あった。太陽見たいな花弁の花、日輪花である。ようやく見つけたぞ。


う~~んひまわりとは若干違った、やはり異世界って事なんだろう。


私はリエリとユーリの二体のビー玉ゴーレムを呼んだ。


(リエリ、ユーリ。見つけたからこっちに来てくれない?)


((今から行きます))


返事があってから数分もせずにビー玉が飛んで来た。何気に飛行速度が早いな。


私は未だに空を飛ぶのにも慣れないからおっかなびっくりで低速飛行である。


「あれです、間違いないですかね?」


(はいっあれは間違いなく日輪花です)


(一輪で金貨一枚になる大変高価な花です)


念のために他の人にも見てもらっての二重チェックだ、素人の目にはそう見えても全くの別物ってオチがわりとあるのが採集クエストだからな。


確認は大切である社会人の時の経験だ。


岩の隙間に自生していた日輪花は二輪、他はまだ咲いていないのが三輪あったので咲いている二輪だけを頂いた。


希少な花だからな、取り過ぎにはやめておこう。


「……よしっ後はマクマ草ですね、確かこの森に分布していた筈で…」


(ご主人様、それならこの岩壁の近くにあるのを見つけました)


(黄緑色でハート型の葉と言う特徴的な外見でしたから間違いないありません)


「え?っあ確かにガイドブックにも殆ど同じ所にあると記されているいますね。これなら問題なく採集出来そうですね」


私達は空をピューと飛んでいく。

それから問題もなく採集クエストは完了した。


モンスターは二度ほど発見したがこちらは魔法で姿を隠しているし、特に向こうから見つかることもなかったから無視してリベロの町に帰る。


争い事は余程利益がない限り、っまぁあったとしても基本的にゴメンな私だ。


安全第一である。


そして採集クエストは完了したが、あまり早くギルドに戻るとそれはそれで怪しまれたりするらしい。

何でも偽物を事前に用意していたんじゃないかと疑われたり、変に腕利きだと思われると面倒な依頼が増えると言う話だ。


私はどちらもゴメンなので程々に頑張っているおっさん冒険者を目指して行こうかな。


冒険者ギルドの酒場には晩御飯の時にでも訪れるとして今は別のお食事処によってご飯を済ませる。

その後は夕方まで取っている宿屋でお昼寝とかして過ごした。


「………こういうのって、悪くないな」


ベッドで寝転がりながら心底からの本音が口から出た。


自分が起きたい時に起きて、ご飯を食べて、仕事をして、休みたい時に休んで、寝る。


悪くないってよりも最高だと思う。


勿論それは冒険者と言う、保険、保証の類いが皆無。手当ても将来の年金的なシステムも何も無いって言う、どこぞの島国でエリートと呼ばれる人種なら発狂しそうなリアルファンタジー故のものなんだが。


私はその辺りラノベとかでよく読んでそんな設定がよくあったから、大体そんなもんですよねって普通に受け入れていた。


そんな事を考えていた時に、ビー玉ゴーレムの一体、ユーリから話掛けられた。


(ご主人様、私達はご主人様の魔力から生まれました。だからご主人様がこの世界とは別の世界から訪れた存在だと知っています。ご主人様は何を目的にこの世界を訪れたのですか?)


(リエリも聞いてみたいです)


そんな事をゴーレムなこの子達が気になるとは、本当に人間の様なビー玉ちゃん達だ。


「私は別に来ようと思ってきた訳ではありませんよ、しかし行ってみたいなとは考えていた事があると言うか、それで機会があって偶々この世界に来ることになったんです」


肝心な部分がボヤボヤですな、仕方ないだろ。何と説明すればいいのか分からないのだから。


「それとこの世界に来た目的と言うのはありません。まぁ折角訪れた訳ですし、この世界の様々な場所を訪れたいとは思っていますから。君達の力を今後も貸してくれたらと思います」


………嘘である。


大嘘である。



あの青い太陽の様な存在から、異世界へのご案内を受けた時に真っ先に浮かんだ事柄。

私のこの世界での目的とはそれに起因する物だ。

その目的とは………。



そうっ………私は………彼女が欲しいのだ。



私は年齢イコール彼女がいないオッサンである。


………………………童貞である。


魔法だ異世界だって話を聞いたときに真っ先に思い浮かんだのは、異世界に行けるって事はカラフルな髪やカラコン見たいな瞳の色をした美女や美少女ともこんな冴えないオッサンでも出会いがあるかも知れない云々。


異世界で魔法無双や俺ツェェとかしてれば女の子が自然と可愛い子が集まってハーレムとか出来たりすんの?って異世界とかの話そっちのけでそんな事ばかり考えてたなっうん。


……しかし現実は甘くなどない。

このリベロの町に来て、異世界に来ても普通に可愛い子も綺麗な子も相手は若くてイケメンな彼氏がその隣に収まっているのを何度も見た。


どうやらこの世界は醜美の感覚があべこべになってるとか言うご都合主義はないし、冒険者になっても直ぐに向こうから美少女が声をかけてくれる訳でもない。


そんな所もリアルファンタジーだ。髪がカラフルな異世界産の女性もカラコン見たいな瞳のあの子も冴えないオッサンには見向きもしない。リアルだぜ。


「しかし、それでも私は………」


そんな感じだからハーレムは早々に諦めた。

けどもやはり。彼女は欲しい。


人生の伴侶。異世界産のメインヒロイン。


私の物語のメインヒロインを張るに足る、圧倒的な美女を彼女にしたい。


髪がカラフルでも瞳がカラコンでも別に良い、しかしそんじょそこらの女性や歳が近いのは絶対に嫌だ。絶対にな。


歳は十代後半から二十歳前後くらいで、髪は長めがいいな、スタイル抜群は譲れない項目だ。ボインボインで腰は括れて太ももはムチムチで足はスラッとしていて超絶美人がいいんだ。


そんな子をメインヒロインに据えての異世界生活。ハネムーンは異世界一周旅行で決まりだ。


これが私がこの異世界で成し得たい大いなる目的である。


私は特に意識もしないで平然と美少女達のハーレムを築けるラノベ主人公でもなければ、少し歳をとったことを理由に枯れたオッサンを演じそれでも美女のハーレムを築けるオヤジ系ラノベ主人公でもない。


欲しい物はハッキリ欲しいと思わなければ何も手に入れられない凡人である。

必死に手を伸ばしても、何も手にできてこなかった負け組である。


私はエロい、スケベなのも事実である。しかし敢えて言おう。



男はスケベじゃなくなったら……最早は死ぬだけなんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!。



四十路手前で未婚のまま、何より童貞のまま死ぬなんてあり得ない。………絶対に嫌だ!。


……あっそう言えばもう1回死んでたわ。

そっそれはそれとして!。


私は……私は絶対にこの魔法があるファンタジーな世界で異世界産のメインヒロインをゲットして見せる。


「…………………」


(ユーリ!ご主人様の思念が溢れる程にみなぎっていますよ!)


(はいっリエリ。ご主人様は目的などないと言っていますが、その胸中には私達では及びもつかない深い考えがあるに違いありません!)


(…………え?そっそうですか?あの鼻の下の伸びようは…)


異世界に来た目的は決まった、なら後は邁進するのが男ってもんである。
































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